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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
334/856

330階 猫は魚がお好き

関所を抜けると三つのルートがあり、北に向かうルート、東に向かうルート、南に向かうルートとなっていた。北はどこに向かう為か分からないが東はリガルデル王国の中心部に・・・南はアーキド王国に向かうルートとなっており、僕達は迷わず南のルートを選択する


僕達の前後に関所を通った商人達はほとんどが東のルートに向かっており南のルートを選択したのは僕達だけ・・・なのですぐに人気はなくなりゲートを使って先に進む事が出来た


しばらく進むと街が見えて来た・・・特に寄る用事も無かったのだがリガルデル王国に入って初めての街だったので2人で話して寄ってみる事に


門番に身分証を見せると畏まり領主を呼ぶか尋ねられたが丁重に断った


長居するつもりはないし特に用事もなかったから


ここはハーズダンの街というらしい


国境近くの街って事はリガルデル王国の王都よりかなり離れているはずなのにそこそこ栄えているように見える・・・普通は王都から離れると寂れていくイメージだが関所が近いからなのだろうか?


「・・・そんなにフーリシア王国と変わらないのね・・・」


「だね・・・この辺で得られる情報は特になさそうだし適当に食事でもして先に進もう」


この付近の情報なら商人を通して得られているだろうし街の雰囲気を見ても特に変わった事はなさそうだし・・・


適当な店を見つけて中に入ると軽く昼食を済ませて街を出た


特に気になった事はなかったけど・・・


「辺境伯として用事がない限り変装しておくか・・・」


「そうね・・・お店でも街中でも視線をかなり感じたし警戒されているような感じだったしね・・・あれでは話を聞こうにも逃げられてしまうわ」


この国でも貴族ってだけで警戒されてしまうのは変わらないか・・・サラが見られていたのは多分別の理由だけどね


街を出て更に南に進むと再びゲートを使って先に進む


今日中にアーキド王国に着けるか微妙なところだったが何とか夕暮れ前にはリガルデル王国とアーキド王国の関所に辿り着いた


門番に身分証を見せてあっという間に二つの国アーキド王国に到着・・・リガルデル王国は最後にじっくり訪れるとして先ずはこの国アーキド王国の情報収集から始めよう


関所を越えるとすぐに街となっていた



アーキド王国玄関の街イラハイ


関所と隣接している為か商人の数が多く見られかなり賑わっているように見えた


関所を越えるといきなり店が立ち並び売り子が声を張り上げる光景は初めて見る者にとっては新鮮であり圧倒されてしまう


「・・・凄い熱気・・・しかも品揃えも・・・あ、魚が売ってる!その横で武器!?」


料理として出された事はあるけど魚が売っているのは初めて見た。その横でしれっと武器が売られているのもビックリだ・・・統一性がないというかなんと言うか・・・


「旦那!イラハイは初めてかい?ここに来れば何でも揃うぜ!色々見てってくんな!ただ魚はやめとけよ?目利きが出来なきゃ腐った魚食わされますぜ?」


「ちょっと!アタイの店に腐った魚がある訳ないじゃないか!どれも新鮮で活きのいいのばかりだよ!どうだい旦那!産地直送生きたまま凍らせてきたから鮮度は抜群だよ!」


「魚買うなら捌く道具が必要だろ?どうだいこの包丁・・・魚捌くにゃもってこいの形状だぜ?」


魚屋の隣は武器屋じゃなくて道具屋だったか・・・よく見れば確かに料理に使うような形状のナイフが並んでいた


「・・・魚・・・魚にゃ・・・」


肩に乗っているサキが目をまん丸にして今にも飛び出しそうな状態で呟く


どうやら魚が食べたいみたいだけど・・・その格好で喋るなよ・・・


「魚が食べられる店はあるかな?」


「街の中ほどに行けばいっぱいありやすぜ!」


「そうか・・・ありがとう」


「また寄ってくんな!おっ!そこの旦那!ちょっと見てってくんな!」


商魂逞しく次々に声を掛ける男・・・他の売り子も夕暮れ時だと言うのに声を張り上げて道行く者に声を掛ける


そこら中で商品の説明や値引き交渉、それに混じって世間話が飛び交っていた


「最近魔物が・・・」「商隊が襲われて・・・」


気になる話も聞こえてきたが耳元で『魚・・・魚・・・』と呟く声が邪魔して集中出来ないのでとりあえず進んで腹ごしらえをする事にした


店は途切れる事を知らずズラリと建ち並び、少し進むといい匂いを振りまく露店が増えてきた


更に進むと賑わいは少し収まりきらびやかな店が建ち並ぶ区域に突入した。店の看板の文字は幾つもの色で発光し暗くなってもはっきりと文字が見えるようになっている


「どうやって光らせているんだろ?」


「普通に魔核にゃ・・・魔力を変換してマナにして発光させているだけにゃ」


「でも色が付いてるよ?ほら赤とか黄色とか・・・」


「そんなの魔核に色を塗れば良いだけにゃ!それより魚にゃ!魚を食べさせるにゃ!」


なるほど・・・王都でも灯りをロウソクではなく魔核を使った道具で確保していたけどここでは看板にも使用しているのか・・・


「あの店はどう?サキが食べたがっている魚料理も出してるみたいだし」


サラが指さした店は店前に料理名の横に料理の模型を並べていた。これなら頼む前にどんな料理が出てくるか分かるし便利だ・・・この模型は何で出来ているのだろう・・・


「もうここで良いにゃ!早く入るにゃ!」


「分かった分かった・・・別に魔力があれば食べなくてもいいくせに・・・店の中では喋るなよ?」


〘分かったから入るにゃ!〙


「はいはい・・・喋り方だけじゃなく本格的に猫化してきたな・・・」


急かすサキに言われるがまま店に入ると表にあった模型を参考にいくつか料理を注文する


さほど待たされることなく料理が運ばれて来たのでその中でサキが食べたがっていた料理を小皿に乗せて床に置くとサキは肩から降りてテーブルの下でガツガツと魚を食べ始めた


よっぽどお腹が空いていたのかペロリと食べてしまいすぐに催促の声が・・・呆れながら再び小皿に乗せると再びガツガツと食べ始める


「っ!美味しい・・・細かい骨が気になるけど身が引き締まってて味付けも酸味があって魚に合ってる・・・お肉料理とはまた違った美味しさね」


「確かに・・・この焼き魚もホクホクして美味しい!」


魚料理を食べる機会がそんなにないので今回は全部魚料理にしてみたけどどれも美味しい・・・味付けはシンプルな塩だけのものや酸味の効いたソースを掛けてあるもの、甘酸っぱいタレが掛かっているものまで様々だ


〘もっとにゃ・・・もっと寄越すにゃ・・・〙


サキが腹を満たすまでかなり追加注文をしたけれどそれでも店の魚料理の半分も頼んでないだろう・・・魚料理の豊富さと美味しさに驚いたが値段にも驚いた・・・ダンジョン亭なら1ヶ月は食べられる金額だ


「・・・問題は値段のようね」


「うん・・・魚を仕入れてエモーンズに出すようにしても普通の人じゃ手が届かない・・・もう少し安価で出さないと誰も見向きもしないだろうな」


なぜここまで値段が高いのか不明のままだがアーキド王国と交易を始めたとしてもこれだけ高くては意味が無い・・・安く大量に仕入れてみんなが簡単に手を出せるくらいの金額に抑えないと・・・


店を出てしばらく歩くと適当な宿屋を見つけて部屋を借りた


特に借りる必要はないのだが参考までに借りてみた


部屋は2人部屋を借りたがベッドが二つ置いてあるだけの非常にシンプルな作りだった・・・まあここは値段相応って感じか


「じゃあ戻ろうか」


「うん」


部屋を記憶しゲートを開くとエモーンズの屋敷に到着


自室から下に降りるとちょうど食事を終えてゆっくりとしているナージ、セイム、ジェファーが広間にいた


「あらお帰り・・・今日はどこまで行って来たの?」


「アーキド王国のイラハイって街まで」


「は?もうアーキド王国まで?」


「うん・・・アダム、私とサラにコーヒーを」


「畏まりました」


傍にいたアダムにコーヒーを頼むと僕とサラはソファーに座る。ジェファー以外は僕が来たタイミングでソファーから立ち上がっていた為に座るよう合図した


「失礼します・・・それにしてももうアーキド王国とは・・・ゲートとは便利ですね」


「そうだね・・・あ、セイム・・・そのイラハイって街で魚料理を食べて来たんだけど凄い高くてさ・・・どうしてそんなに高いか分かる?」


「え?・・・・・・そのイラハイという街は港町でしょうか?」


「いや、関所からすぐの街だけど・・・」


「関所・・・となると港からかなり離れていますね・・・恐らく輸送コストなどの問題かと・・・」


「輸送コストか・・・それがなければもう少し安く提供出来るかも・・・」


「ええ・・・ただ難しいのが量です。魚は日持ちしないと有名なので消費する量が少なければ余ってしまい廃棄する羽目に・・・店はある程度見込みで仕入れるので仕入れた量がさばけませんとかなりの赤字になってしまいます。なので魚の値段はお肉よりも高目に設定されていると聞いた事があります」


「肉はなんで安いんだ?日持ちするから?」


「それもありますが陸地で生きられるのも理由の一つでしょう。魚は海に住むので捕って来たらすぐに死んでしまいます・・・肉となる牛と豚などは必要な分だけ捌いて残りは生かして置けるので・・・」


ふむ・・・中々難しいな・・・必要な分だけササッと捕って来れればいいのだけどそうもいかないだろうし・・・


「フーリシア王国ですと西側にあるヤッチシという街が漁業が盛んで有名です。もし漁業を営む計画があるのでしたら参考にしてみるのもよろしいかと」


「ヤッチシか・・・ナージは行ったことあるのか?」


「いえ。漁業が盛んなだけで戦とは無縁の街なので興味ありません」


「そ、そうか・・・ただ参考にするにしても港を作ったり船をって考えるとだいぶ先の話だな・・・現実的には自分達で獲るより別で仕入れた方が・・・でも日持ちしないのだったな・・・うーん・・・」


距離があるとそれだけ輸送コストが掛かる・・・そうなれば値段は高くなるし・・・かと言って自分達で獲るって言うのも時間と金が掛かるし・・・難しい問題だな・・・


「もしこの街に魚料理を浸透させたいのでしたらご主人様が高く買い取ると宣言されてみてはどうですか?」


「私が?」


「売れるか分からないものを獲りには行きにくいもの・・・ですが買ってくれるという確約があるのでしたら獲って来る者も少なからずいるでしょう。それを消費するも良し、安価で市場に流すのも良し・・・そうなれば自然と市場に浸透し後は商人達がどうにかして安く大量に仕入れるか考えると思います」


なるほど・・・どんなものか売れるかすら分からないものを獲りには行かないもんな・・・けど買うと約束すれば・・・それに売れると分かれば商人達だって手を出してくるかも・・・僕があれこれ考えるより商人達の方がその辺は得意だろうしいい考えが浮かぶかも・・・


「それじゃあ魚を持って来たら高値で買い取ると宣伝しておいてくれ。この屋敷で消費してもいいし余ったらみんなに分けてもいい・・・量が安定してきたら店を出してもいいかもな・・・」


「畏まりました。もしよろしければ料理人の確保をお願いしてもよろしいですか?あまり魚料理について詳しくはないと思いますので詳しい者がいた方がよろしいかと・・・」


「ああ、それもそうだな・・・アーキド王国にいる料理人で魚料理に詳しい者でエモーンズに来てもいいって人を探してみよう」


「お願い致します」


エモーンズは海の近くにあるけどその辺はさっぱりだからな・・・ここらで海を活用出来ればもっと栄えるかも知らない・・・魚料理が食べれるようになったら人も多く足を運んでくれるかもしれないし・・・ダンジョンだけだと増えるのは冒険者ばかり・・・それはそれでいいのだけどもっと他にも人が来る理由を作らないと・・・


そうすれば自ずとムルタナやケセナも栄えるはず・・・情報収集の傍らで料理人探し・・・美味しい魚を食べる為にも頑張ってみるか──────

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