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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
333/856

329階 旅の始まり

めでたくサラが僕の専属メイドとなった


他のメイドも専属なのでは?と言う声もあるがそうでもない


要は個人に仕えるか家門に仕えるかの違いだ


グレア達普通のメイドはローグ辺境伯に仕えている。だから妹のシーリスも主扱いとなるのだ。もちろん僕に子供が出来たらメイド達にとってはその子も主となる


けど専属メイドは別・・・家門にではなく僕だけのメイドとなり出掛けるにしても何するにしても一緒となる・・・初めからそうしておけば良かった・・・


グレア達は昨日の件が余程効いたらしくサラへの態度を一変させる・・・もはや奥様扱いだ


サラのお陰で命拾いしたんだ・・・当然ちゃ当然なのかもしれない


しばらく留守にするからまだ王都にいるラルの事が心配だったけどもうあんな事は二度としないだろう・・・一応保険でジェファーさんに何かあったらすぐに連絡くれとは言ってあるけどね


「そうですか一年ほど他国に・・・でしたら事前に確認を取りたいのですがモルタナは街に・・・ケセナは村のままが良いとの返答でしたが如何致しましょうか?」


今は頭脳担当3人組・・・ナージ、セイム、ジェファーさんとの打ち合わせ中だ。はっきり言って僕が下手に口出すよりこの3人に任せていた方がいい方向に向かうと思うけど・・・


「住民の意向に沿うようにしてくれ。やり方は任せる」


「はい」


「あの・・・ムルタナの場合は別の商会をメインにしようと思うのですが構いませんか?」


「構わないけど一応理由を聞いても?」


エモーンズはクリット商会が仕切っているからな・・・ムルタナも任せてしまった方が楽なのではと思ってしまうが・・・


「他の商会がもう少し入れるように風通しを良くしたいと・・・クリット商会は色々と融通を利かせてくれますがあまりにひとつの商会とベッタリですと他の商会が入って来づらくなってしまうので・・・」


「分かった。その辺も任せるよ」


「私からもいい?参入して来たところと既存の商会から資金を募りたいのだけど」


「何の資金?」


「何でもいいわ。まあ当面のところはムルタナ開発費ってところね」


「資金不足ってこと?それなら私が・・・」


「ダメダメ・・・足りてないのではなく資金を募る事に意味があるんだから」


「??」


「冒険者の武器が剣だとしたら商人の武器はお金よ。冒険者だって武器が通用しない敵とは戦いたくないでしょ?商人も同じ・・・自分の武器が効く相手と見せる為にわざと資金を募るの・・・そうすれば商人はそこにつけ込んで来るはず・・・要は付け入る隙をわざと見せるのよ」


「な、なるほど・・・」


「だからロウニールの『辺境伯』って肩書きで資金を集め事業をする・・・商人はそれを上手く使い事業を拡大、私達は元手なくお金がっぽり・・・そうやってお金を回すの」


「お、おう・・・頑張って」


・・・それから3人と色々話したけど・・・金があればいいってもんじゃないんだな・・・


とにかく最初は赤字でもいい・・・逆に赤字の方がいいとか言い出すし税も安けりゃいいってもんでもないらしい・・・儲けさせ過ぎず儲け過ぎず・・・そのバランスが重要なのだとか


まあよく分からないからその辺は3人に任せておこう




午後になると王都にいたみんなをエモーンズに移動させる


マウロがグレアと何かを話した後、床に額を擦り付けながら謝罪していたが・・・まあ見なかった事にしよう


馬車はナージ、セイム、ジェファー専用として使う事になった・・・これからは偽装の為に空の馬車を走らせる事もないだろう


宿舎に来ていたムルタナとケセナの兵士や新たに募った新兵はケインに丸投げしいよいよ明日から各国に向けて旅立つ


「どの国から行くつもり?」


湯船に浸かりボーッとしていると身体を洗い終えたサラが湯船に入りながら尋ねてきた


こうして堂々と一緒に入れるなんて・・・最高だ専属メイド


「・・・商王国アーキド・・・」


「へえ・・・どうして?」


「南の海岸を整備してアーキド王国と船で商売を始めたいらしい・・・陸路だとどうしてもリガルデル王国を経由しないといけないから海路を使ってアーキド王国と直接取引を・・・その為のパイプを早目に築いておきたい」


「へえ・・・それって勝手にやっていいの?」


「もちろん駄目だろうね・・・だから報告する時に許可を得る・・・実現しないかもしれないのに『アーキド王国と商売させてくれ』とも言えないしね」


「報告して許可が下りなかったら?」


「国の利益にも繋がるし下りない事はないって話だけど・・・その時はその時で考えるよ」


そう言いながらスッとサラに近付くと同じ距離だけサラが離れていく


「・・・」


「・・・次に行く国は?」


「武王国ラズンかな」


「あっ、そこ一番興味あったのよね・・・フーリシア王国と同じくらい小国なのに武だけで大国と渡り合うらしいし」


また少し近付くとやはりススッと離れていく


「・・・基本的には反時計回りで次に魔王国シャリファ、農王国ファミリシア、覇王国リガルデルの順番で行くつもり」


「どれも楽しみね・・・普通なら一生国を出ない事が多いのに」


「そうだね・・・それはそうとサラさんや」


「なーに?」


「近付こうとすると離れるのはなんで?」


「さあ?ロウが動くと波立つからその影響じゃない?」


「・・・随分とお軽い身体をお持ちで・・・ちゃんと食べているのか心配だな・・・触診して健康状態をチェックしてあげよう」


「触診なんて出来るとは知らなかったわ・・・それよりもその手・・・ちょっといやらし過ぎない?」


両手をワキワキさせながら近付くと横目でそれを見てため息をつく


「そうでもない・・・ちなみに逃げちゃダメ・・・ご主人様としての命令だ」


「・・・権力を使って女性をどうこうするの嫌いじゃなかったっけ?」


「・・・サラのみOKって事で」


「何よそれ・・・サラ差別だわ」


ジリジリと近寄る僕と逃げるサラ・・・もう少しで手が届きそうになったその時・・・


「ふぅ・・・たまにはお風呂もいいものだにゃ」


「サキ!?・・・いつの間に・・・」


普段は黒猫姿をしているサキがサキュバスの姿に戻り湯船に浸かっていた。入って来た気配はなかったからゲートで来たのか?


「面白い事になりそうにゃ・・・私も行くにゃ」


「え?・・・行くってどこに?」


「決まっているにゃ!2人で各地を旅するって聞いたにゃ・・・それに私もついて行くにゃ!」



僕とサラの2人っきりの旅に予想外の人物?がついて来る事に・・・せっかくのサラとのイチャイチャ旅行が──────




何とかついて来ないように説得を試みるも失敗・・・ダンジョンの事とか話して思い留まらせようとしたけど・・・


『どうせすぐに帰って来れるにゃ』


と一蹴されてしまった


そうなんだよな・・・ゲートを使えばすぐに戻って来れるから各国を回る旅って言ってもそんなに大袈裟に考えなくても平気なのが気軽に行けてしまう理由・・・だから断る理由にもならない


断る理由はただひとつ・・・僕がサラにちょっかいを出す機会が減るってだけだから・・・


「荷物はこれだけでいいの?」


「うん・・・着替えも何も要らないよ・・・身分証としてギルドカードさえあればそれで・・・」


「また暗い顔して・・・一体旅先で何を企んでた事やら・・・サキが加わっただけじゃない」


「そうにゃ!いかがわしい事考えてたに違いないにゃ!」


「黙ってろクソ猫!小動物のお前に何が分かる!」


「何にゃ!やる気かにゃ!」


「上等だ!かかって来い!」


・・・とまあこんな感じで始まった2人と1匹・・・厳密に言うと2人と2匹か・・・の旅が始まった




旅と言っても移動は基本ゲート、寝泊まりは基本屋敷など旅らしくない感じだ。食事は極力現地で食べたいと思っているけどタイミングが合わなかったらエモーンズか王都に戻る予定だ


必ず通らないと行けないのは各国を隔てる関所・・・ここは記録が残るらしいから後々調べられた時にちゃんと通った記録がないと不法侵入を疑われてしまう


なのでまず目指すのはリガルデル王国の関所だ


王都より北東に進むとあるらしいのでゲートを使って王都近くまで行き、そこからちょっとずつ北東を目指して進んで行く


道中にある街など興味を引くものもあったが寄っていては時間が掛かる為にそのままスルーして関所を目指す


「今上から見たら大きい門が見えた・・・あれが関所かも」


「早いわね。あっという間・・・関所を越えたらアーキド王国を目指すのよね?」


「うん。南東を目指せばアーキド王国のはず・・・直接行ければ楽なのに・・・」


「仕方ないわよ。さあ行きましょう」


そう・・・アーキド王国とフーリシア王国はギリギリ隣接していない。アーキド王国に行くには一度リガルデル王国を通らないと行けないのだ


まあ5ヶ国に囲まれているリガルデル王国が各国の連携を恐れてわざとそのようにしたのだとか・・・さすがに覇王国と呼ばれていても5ヶ国に同時に攻められたら滅亡待ったナシだしその辺の対策は仕方ないだろう


何事もなくフーリシア王国とリガルデル王国を隔てる関所に到着し並ぶ商人達に紛れて順番を待っているとようやく僕達の番に


馬車もなくメイドと2人っきりの肩に猫を乗せた僕を見て訝しげな表情を浮かべるのは致し方ないだろう


「・・・身分証を」


「はい」


「辺境伯ロウニール・ローグ・ハーベス・・・様ですか。今回我が国に訪れる理由をお聞きしても?」


「観光だよ」


「観光?護衛を付けずにメイドと2人でですか?」


明らかに疑いの目を向けられているのでサラに身分証を出すように促すとサラのギルドカードを見て門番の目の色が変わる


「これは失礼致しました!良い旅を」


「ああ、ありがとう」


侯爵に次ぐ身分の者が護衛を付けずに他国に行くなんてまずありえない・・・だがお付きの者がサラ・・・Sランク冒険者なら話は別だ


道を譲られ大きな門をくぐり抜けるとそこはもうフーリシア王国ではなくリガルデル王国となる


生まれて初めて他国に来て少しばかり感動した後ゆっくりと歩き出した


「国は変わっても空気は・・・変わらないな」


「そうね・・・でもようやく実感が湧いて来たわ・・・これから各地を回るんだなって」


目指すはアーキド王国・・・少しだけリガルデル王国を満喫する為に僕達はしばらく歩いて南東を目指した──────

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