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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
327/856

323階 バフコーン

「あっはー!!行きますわよ!!」


扉を開けると部屋の中央には三体のバフコーン


気合いは十分・・・後は作戦通りに事が進めば僕達の勝ちだ



カレンの掛け声に合わせて全員が部屋へと足を踏み入れる


すると間もなくして扉は閉まり決着が着くまでボス部屋に閉じ込められた形になる


「では作戦通りに」


「ええ!・・・『アースウォール』!!」


広い部屋を二分する壁がまだ動かないバフコーン三体を分け隔てる


更に僕達も


「あっはー!速攻で片付けますわよ!!」


壁の反対側からカレンの勇ましい声が聞こえた


僕は微笑むとこちらに向かって来る()()のバフコーンを指さした


「さてと・・・鬼ごっこならぬ馬ごっこでもして時間を潰そうか──────」




作戦は至ってシンプル


三体のバフコーンを個別に撃破するだけ


その為に開幕アンガーがバフコーンを二体と一体に分けるよう部屋に壁を作る・・・ただそれだけだと壁を破壊されて合流されるのが関の山・・・なので二体の方に囮を置く必要があった


その役目を戦闘では役に立たない僕が引き受ける事に


結局ヒーラーのいない状態での戦いになってしまったが三体と同時に戦うよりはマシだろう


一番懸念していたのはバフコーンが賢くて僕がいるにも関わらず壁を壊して離れた一体と合流しようとする事だったが・・・


「・・・どうやら賢くはないみたいだ・・・な!」


足は思ったより速い


攻撃は予想通りメイスの攻撃がメインみたいだ


交互に振り下ろされたメイスを躱し、振り返るバフコーン


二体のバフコーンに向けて軽くお尻を叩き舌を出して挑発する


「ンモォー!!」


牛か


どうやら挑発に乗ってくれたらしく二体は鼻息荒くして僕へとまっしぐら・・・壁の反対側の事なんて全く考えてない様子だ


そんなに脅威でもないし逃げながら隣の様子でも確認しておくか・・・


十分に距離を開けて小さくゲートを開き隣の様子を伺うと・・・


「・・・!・・・マジか・・・ちょっとマズイなこれは──────」




「あっはー!いい?数分以内に片付けますわよ!」


「おう!」「ええ!」


アンガーが壁を作り反対側にはロウハーと二体のバフコーン・・・そしてカレン達3人がいる側にはバフコーンが一体


ここまでは作戦通り・・・後はこの一体をどれだけ早く倒せるかに掛かっていた


一体を早く倒せれば残りは二体となり再び一体をカレン側に閉じ込めればロウハーの負担も半減する・・・たとえ攻撃せずに逃げ回るだけとはいえ一体と二体では雲泥の差であると考え先ずは一体を倒す事に集中した


「あっはー!」


先ずはカレンが突進しバフコーンのメイスを躱しながらハンマーの一撃を掠めさせる


掠めても設置は問題ない事は道中の魔物との戦いで立証済み・・・後は爆発に巻き込まれないよう距離を取ればいいのだが・・・


「ちょ!?離れてくださいまし!」


離れようとするもバフコーンは執拗にカレンに突進し離れてくれない


巻き込まれても爆発させるべきか悩むがもしそれで動けなくなれば頼みの綱のロウハーは壁の向こう側・・・なのでなるべく怪我のリスクは避けたかった


「カレン!安全な距離を保つまで使うでないぞ!」


「わ、分かってますわ!でも・・・」


バフコーンの猛攻は続く


背後に回り離脱しようにも視界が広いのかすぐに見つかり攻撃を仕掛けて来る


2mを超えるであろうバフコーンの手足は長く、その分攻撃範囲も広い。更に脚力も人間より遥かに高くまるで飛び跳ねるようにしてカレンを先回りし攻撃を繰り返す


「この馬面!俺を攻撃せんか!」


必死に叫ぶダハットに目もくれずカレンばかりを狙うバフコーン


それを見て壁を維持しながら魔法で援護するアンガーが何かに気付いた


「・・・あの馬・・・おっ立てていませんか?」


「なに!?」


それを聞いて足を止めたダハットが見たのは人間のソレと変わらぬ下半身・・・申し訳ない程度に巻かれた腰布を盛り上げるブツだった


「カレンだけを攻撃しているのは・・・犯そうとしている?」


「かも知れません・・・もしかしたら殺さないよう手加減すらしているかも・・・」


「・・・貞操の危機・・・か」


「子供が産まれたら『マレン』とでも名付けますかね」


「ちょっと!バカな事言ってないで助けて下さいまし!」


「どうする?」


「・・・あれの時なら隙だらけになりそうですが・・・」


「オニィ!アクマー!」


「・・・仕方ないですね・・・取っておきの火魔法をお見せしましょう・・・深淵の炎よ無数の槍となり彼の者を貫け・・・『ファイヤランスインフィニティ』」


無数の炎の槍が上空に浮かぶとターゲットであるバフコーン目掛けて飛んで行く


さしものカレンに夢中になっていたバフコーンも危機感を抱いたのか足を止め両腕をクロスさせて守りに徹する


炎の槍はそんなバフコーンに止むことなく降り注ぎ辺りは煙に包まれる。ようやく執拗な攻めから脱したカレンは距離を取り満を持してハンマーにマナを流す


「あっはー!これで終わりですわ!!」


その声と共に煙の中心から爆発が起き更なる煙がバフコーンを包み込む


この煙が晴れたら倒れたバフコーンの姿が・・・そう信じて固唾を呑んで見守る3人に信じ難い光景が広がる


「・・・そ、そんな・・・」


「マズイぞ・・・これは・・・」


「魔法耐性・・・ですか・・・」


無傷ではない・・・が、煙が晴れて見えて来たのは両腕をクロスさせたままその場に立っているバフコーンの姿だった


身体中に火傷のような跡はあるものの大してダメージを与えられていないのは一目瞭然・・・となると考えられるのはアンガーの呟いた『魔法耐性』によるダメージの軽減だった


魔法耐性のある魔物は少なからず存在する


完全に魔法が効かないのではなくある程度の魔法は弾いてしまったり吸収してしまう体を持つ為に魔法による攻撃は有効ではなく近接アタッカーによる剣や後衛でも魔法を使わない弓矢や投げナイフで対抗するのが主になる


カレン達のパーティーはこれまで魔法耐性のある魔物と運良く出会っていなかった。もし会ってたとしても中級レベルならゴリ押しで倒せていたかもしれない


しかしバフコーンは上級・・・しかも亜種である


アンガーの放った『ファイヤランスインフィニティ』やカレンの打爆ハンマーの『爆発』の威力では耐性を越えられる程ではなかったのである


「くっ・・・しかし全く無傷ではない!繰り返せば・・・」


「先にこちらのマナが尽きますね」


「うぐっ・・・」


「炎の槍で貫けないとなれば直接打撃を叩き込む土魔法を主とします・・・が、そうなれば壁の強度は弱くなり隣のバフコーンに崩される可能性も・・・」


「消えなければ問題あるまい!ロウハーが引き付けている間に倒せば問題は・・・」


「あっはー!!」


「カレン!!」


「魔法が効かないのであれば叩いて叩いて叩きまくるのみですわ!!わたくしは決して諦めませんことよ!!」


諦めずハンマーを握り締めバフコーンに立ち向かうカレン


その姿を見て2人は顔を合わせて頷くとダハットは盾を構えアンガーは壁に送り続けていたマナを断ち切った


「ぬおおおお!!」


「『アースハンマー』!!」


カレンに向けてまた欲情するバフコーンに対してダハットが盾を突き出し体当たりをしアンガーが追い打ちをかける


不意をつかれたバフコーンが体勢を崩すとカレンがハンマーで滅多打ちに・・・するとバフコーンは身体を震わせ嘶いた


「お黙り!隣でロウハーが待ってますのよ!このまま全力で・・・っ!?」


攻撃の切れ目・・・アンガーの魔法とカレンの攻撃に一瞬の間が出来た瞬間、バフコーンはメイスを持つ手とは逆の手をカレンに向けて伸ばすとハンマーを持つ手を掴んだ


「ぬっ!させるかー!!」


すかさずダハットが盾をかざし突っ込むがバフコーンはそれを冷静に体を入れ替えて躱しダハットの後頭部にメイスを打ち付ける


「ダハット!くっ・・・このっ・・・」


倒れるダハットを見て何とか手を振り解こうとするが強力な力で掴まれていて解けない。そればかりか力は強くなり痛みで持っていたハンマーが床に落ちてしまう


「あっ・・・あっ・・・」


バフコーンは片手でカレンを持ち上げる


顔を近付け鼻息荒らくカレンを見下ろすと邪悪な笑みを浮かべた


「させません!!」


アンガーは叫び地面に触れるとマナを流す。するとバフコーンの足元から土の触手が現れバフコーンに絡み付き身動きを封じた


「カレン!今の内に!!」


「ええ!」


カレンは足を上げバフコーンの顔面に蹴りを当てる・・・が、バフコーンは全く効いた様子もなく平然としており、そのまま土の触手に絡め取られていたメイスを持つ手を強引に振り上げるとアンガーに向けて投げ放った


「がっ!!」


地面に向けてマナを流し続けていたアンガーは避ける事が出来ずメイスの餌食に・・・倒れていくアンガーを見てようやくカレンは置かれている状況を理解する


バフコーンの口からヨダレが滴る


その様子を見てガタガタと身体を震わせていると触手が完全に無くなり自由になったバフコーンは壁際までカレンを持ち上げたまま歩き始めた


そして壁際にカレンを押し付けるとメイスを手放し自由になった手で胸元から服を掴み一気に引き裂いた


露になる身体・・・叫びたくとも恐ろしくて声も出ない


死の覚悟はしていたつもりだがその覚悟は足りていなかった事に今更ながら気付いた


床に伏すダハットとアンガー


ハンマーを落とし抵抗する術を持たない自分



この最悪な状況を覆す術などあるはずもなく・・・



「う・・・いや・・・お願い・・・」


これまで自分の力を証明する為に排除しようとしていた魔物に懇願しようとするが聞き入れてもらえる訳もなく下半身に押し付けられるモノ


このまま犯されるならいっそう殺してくれと願って目を瞑った瞬間・・・轟音が鳴り響く



その音はアンガーが最初に作った壁が破壊される音だった


それに気付いた時、カレンの全身の力が一気に抜ける


まだ僅かな希望が心の奥底にあったのかもしれない


ダハットかアンガーが立ち上がり助けてくれる・・・そんな甘い期待を抱いていたのかも


だが壁が破壊されたという事は隣にいた二体のバフコーンがこちら側に来るという事になる


一体でもこの状況なのに三体になれば・・・


もはや抗う意味などありはしないと全てを諦めた



バフコーンが嘶く


それはまさに勝利の雄叫びだった





「殺るのは良いけど犯るのはダメだ{待て}」



声が聞こえた瞬間に掴まれていた手が離され床に落とされる


そしてカレンが見たのは見ず知らずの男性がこちらに向かって歩いて来る姿だった──────

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