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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
326/856

322階 方便

カレンは不器用では無い


怖いもの知らずなところがあり自分が傷付く事を恐れない無鉄砲さが思考を停止させていただけで考えて動けば普通に武器を操る事が出来る器用さは持ち合わせていた


打爆ハンマーはかなり優れた武器だ


最初に流したマナの量により爆発の威力が調整出来るし続けて叩けば何個も設置出来る


もちろん設置の数により爆発の威力は等分されてしまうが知っているのと知らないことでは戦略の幅が違う・・・更に魔物だけではなく地面や壁にも設置可能・・・好きなタイミングで爆発させられる為にトラップとしてもかなり優秀だ


「カレン今だ!」


「あっはー!」


迫り来る魔物にタイミングを合わせて爆発させる簡単なお仕事・・・移動速度の速い魔物や空を飛ぶ魔物には通用しないが地面に設置し爆発させるだけでほとんどの魔物は為す術なく倒れていく


「これは間違っても悪人には渡せねえ代物だな」


「ええ・・・カレンはギリギリセーフ・・・といったところでしょうか」


ギリギリなんかい!と心の中でツッコミつつ悪人に渡せないには同意する


もし街道に仕掛けられていたら商人の馬車など簡単にひっくり返されてしまう・・・注意深く見ればハンマーと設置した場所がマナで繋がっているのは見えるけど本当にか細い線だ・・・護衛がいくら気を付けても流石にそれを爆発の導火線であるとは気付けないだろう


「あっはー!そろそろお昼に致します!?」


「だな・・・このペースで行けば今日中に待機部屋まで行けちまう・・・焦らなくてもな」


「ではこの階を降りた辺りでお昼にしましょう・・・と言っても簡易的なものしかありませんがね」


既に25階を降り26階に到着する所まで来ていた


カレンの快進撃により大幅な時間の短縮が出来ている・・・が、マナは無限ではなく休みを入れないと彼女のマナは枯渇してしまうだろう


最初のように交互に役割を変更すればいいのだがカレンは慣れる為と連続して前に立つ・・・マナポーションも限りがあるから出来るだけ温存しておいた方がいいのだが・・・まあ仕方ないか



26階に降りた地点で少し遅めの昼食


と言っても干し肉と水のただ腹と喉を満たす程度のものだ


みんなすぐに食べ終えて各々壁に寄りかかり休憩しているとカレンが僕の横に座り顔をじっと覗き込む


「・・・なにか?」


「いえ・・・どうやってハンマーの使い方を知ったのか気になりまして・・・」


「当てずっぽうですよ。流石に武器を作るものが使用者の身の安全を考えないのはおかしいと思ったので『こうだったらいいな』というのを言ってみただけです」


「使用者の安全・・・作る側の方はそこまで考えられるのですか?」


「もし私があの武器を作ったとして売り込む時に『叩くと爆発します。但し巻き添えになります』じゃ売れないでしょう?」


「・・・私なら買ってしまいそうですが・・・」


買うなよ


「と、とにかく誰かが使う事を前提に作るのであればそれ相応の安全装置みたいなものは考えるはずです。使う度に使用者が亡くなっては製作者の名折れですからね」


「・・・もしかしてロウハーは制作したことが?」


「・・・いやいやしがないヒーラーですよ私は・・・」


っとあんまり話すとボロが出そうだからやめておこう



しばらく休んだ後、再び進み始めた


流石に小一時間の休憩くらいじゃマナは回復せずカレンを説得して後ろに回す


ダハットとアンガーのコンビは安定して魔物を倒し27階に到達・・・するとカレンが待ってましたと言わんばかりに暴走しまた爆発に巻き込まれる


そんな事を繰り返していると何とか30階の待機部屋まで到着・・・これまでの魔物は中級上位くらい・・・ボスは上級魔物のバフコーン・・・しかも予想通り三体だ。ちょっとバランスおかしいような・・・


「予定よりかなり早く着いたのですがテントを組んでしっかり寝てから挑みましょう。食事はまた同じもので申し訳ありませんが・・・」


「アンガーさん・・・バフコーンって上級魔物ですよね?これまで中級魔物しか出て来なかったのにいきなりボス部屋で上級魔物三体ってバランスおかしくないですか?」


まるでここで引き返せって言っているようなものだ・・・あまりにも難易度が上がり過ぎている


「ええ。ですのでこの30階は鬼門とされています・・・せっかく苦労してここまで来ても引き返す冒険者が後を絶たない・・・初めから上級魔物のバフコーンを三体倒すつもりで潜る冒険者は少ないですからね」


だよな・・・初見なら絶対引き返す事になりそうだ


「けどだからこそですの・・・アジートの30階を越えた者は一流冒険者の仲間入り・・・これだけ浅く一流冒険者と認められるダンジョンは他にはありませんわ」


確かに・・・30階なら1階から降りたとしても頑張れば2日か3日くらいで到達出来る・・・ウチのダンジョンでも上級魔物となると50階のドラゴニュートか・・・しかも三体相手・・・倒す事が出来れば一流冒険者と呼ばれてもおかしくない


手っ取り早く一流冒険者に名を連ねるにはうってつけのダンジョンって訳か


それで3人に・・・もしくはカレンには手っ取り早く一流冒険者にならないといけない理由がある・・・そんなところかな


「・・・聞かないのですの?無茶をする理由を」


「聞いて何かが変わる訳でもありませんしね・・・私にも秘密にしたい事もありますし」


「・・・そうですわね・・・」


僕が聞いてカレンが答えたら僕もカレンの質問に答えないといけなくなる。野良ヒーラーなんて珍しいからな・・・突っ込まれたらボロが出そうだし・・・


「んでだ・・・話は変わるがお前さんはバフコーンと戦った経験は?」


「残念ながら」


「そっか・・・俺らもないから対策の立てようがなくて困ってんだよな・・・あの見た目から想像するしかねえか・・・」


見た目・・・扉は最初閉まっていた為に開けて中を見てみると馬面の魔物が三体並んで立っていた


頭が馬で身体のほとんどが人間のそれと同じ・・・で、膝から下がまた馬の足となっていた


「足は速そうですね・・・それと手に持つメイスもかなりの威力がありそうです」


それぞれ片手にメイスを持ち、あとの装備は腰に布を巻いてあるだけ・・・一見するとそんなに強そうには見えないが・・・


「一体だけなら俺が足を止めさせる事は出来そうだが三体同時に突進して来たらそうもいかねえ・・・予め魔法とハンマーの爆発を用意しといてバラけさすか・・・」


「準備を終える前に突進して来たら終わりですね」


「まあな・・・かと言って他に方法はあるめえ」


相手の行動パターンが分からないと厳しいよな・・・しかも相手は三体・・・それも部屋はかなり広いときたもんだ


しかもやっぱりアレ・・・亜種だよな?


遠くからパッと見ただけだから確実な事は言えないけど黒っぽいような気がした。もしかしたらバフコーン自体が元から黒っぽいかもしれないけど10階と20階のボスを考えると亜種と思った方が良さそうだ


攻撃方法はメイスによる打撃メイン?他にも特殊な攻撃が?


ダンコかサキに聞けば分かるだろうけど戦った事がないと言った手前今更知っていると言うのも変な話だしな・・・


こういう時に組合に所属しているかいないかで大きな差が出てくる。もし組合に所属していれば情報は簡単に入手出来ただろうに・・・


「あっはー!ここまで来れば後は野となれ山となれですわ!わたくしが三体まとめてぶっ飛ばしてみせますわ!」


一体ならともかく三体は・・・ん?待てよ・・・


「皆さん・・・こういう作戦はどうでしょうか?──────」




その日はテントを二つ組んで一つはカレンが使いもう一つは男3人で使って眠りについた


おそらく朝だろうと思った時間に目覚めると干し肉と水の朝食を食べ各々がボス戦に向けて準備する


「ロウハー・・・本当によろしいのですの?」


「逃げ足には自信がありますので・・・けど出来れば早目にお願いします」


「あっはー!任せて下さいまし!速攻で倒して差し上げますわ!」


そりゃあ心強い


僕の見立てではこの3人は上級魔物にも対抗出来る実力はあると思う・・・カレンが爆発に巻き込まれさえしなければここまで危なげなく来れたのだから・・・


「すまんのう・・・危険な役割をさせてしまって・・・」


「いえ、最初の内はサポート能力のないヒーラーは役立たずですからお役に立てて嬉しいです・・・ただバフコーンが予想通り動いてくれれば良いですけど・・・」


「そこまで賢くなさそうなので問題ないと思いますが・・・一度入ってしまえば作戦の立て直しは出来ません・・・本当によろしいのですか?」


「大丈夫です」


野良ヒーラーの僕を心配してくれるなんていい人達だ


でも・・・


「そう言えばここに来て何ですが皆さんは以前にここまで来られたのですよね?それでヒーラーが居ないから諦めたと聞いていますが・・・逆を言えばヒーラーがいれば倒せると踏んだって事かと思っていました」


だからカレンはヒーラーを探していた・・・組合に所属出来ないからギルドで野良ヒーラーがやって来るのをずっと待っていた・・・


「あ、あーそれはな・・・」


「率直に申しますと『方便』です」


言い難そうなダハットの代わりにアンガーが答える


方便?


「もしかして・・・引き返す為の?」


「・・・はい」


「あっはー!?」


「フリーのヒーラーなど現れるはずもないと・・・なので見つからなければ諦めると思ったのですが・・・」


なるほど・・・カレンを諦めさせる方便だったのか


何か理由がないと突っ込みかねないカレンに対して『ヒーラーが居ないと無理』と宥めて引き返す・・・2人はソロ冒険者の中でヒーラーなんていないと思っていたところにカレンが僕を連れて来た・・・か


2人にとっては完全に予想外・・・でもそれならここに来る前に正直に話せばいいのに・・・


「・・・実はここに来るまでの間にどうやって諦めさせるか考えようってアンガーと話してたんだけどよ・・・ハンマーの使い方を覚えたカレンを見たらいけるかもって思い始めてしまって・・・」


「実際にここに来るまでも悩んでいました。いえ、ロウハーさんが立てて下さった作戦を聞くまで・・・でも今は違います・・・カレンの成長とロウハーさんの作戦・・・その二つがあれば勝てると思っています」


「ロウハーの存在とカレンの執念が結んだ奇跡ってやつだな・・・偶然にしちゃ出来過ぎて怖いくらいだぜ」


「お二人共・・・ま、まあ嘘をついた事はこの際不問にします・・・それに奇跡はまだ起こしていないですわ・・・これから起こすのですから!」


「・・・だな」「そうですね」


理由は知らないけど成し遂げたら奇跡と呼ばれる程の事を3人はやろうとしている・・・そうまでしてやらなければならない理由とな一体何なんだろう──────

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