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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
325/856

321階 打爆ハンマー

「あっはー!さあ行きますわよ!ダンジョンへ!!」


朝起きて1人で宿屋の1階にある食堂でサービスの朝食を食べているとカレンが朝とは思えないテンションで登場した


他の客も居るのに・・・思わず口に含んだコーヒーを吐き出しそうになったぞ?


「カレン・・・騒がしくせぬと約束したのに・・・各々方申し訳ない」「後で沈めておきますので御容赦を」


2人共大変そうだな・・・こんな破天荒なお嬢様を・・・うん?お嬢様?


別に呼び方は『カレン』と呼び捨てにしているし特段カレンを敬っている感じはないのに・・・カレンがお嬢様でそれに従う従者のように感じてしまうのは何でだろう・・・カレンの喋り方?


「行きますわよロウハー!ダンジョンは待ってくれませんことよ!」


いや、普通に待ってくれるだろ


「・・・分かりました。荷物は全て持って降りているのでこのまま行けます」


「あっはー!話が早いですわ!では参りましょう・・・未踏の地へ!」


「先ずはギルドだな」「ロウハーさんいる物がありましたら気軽に仰って下さい。足りなければすぐに買い足して参りますので」


・・・うん、やっぱりお嬢様と従者だな・・・間違いない




そんなお嬢様一行とギルドに行き受付を済ますと足りない物がないか示し合わせる


一応3日分の携帯食料と水を人数分用意してくれており不足に感じる事はなかった。あまり多くても邪魔になるしそんなに長く潜るつもりもない・・・ゲートの存在を教えられれば荷物も気にしなくても済むのだけどこの人達がまだどういう人達なのか知らないからゲートの存在も隠した方がいいだろう


にしても・・・カレン達が組合に加入しない理由がいまいち分からないな


組合費を惜しむ程貧乏じゃなさそうだしギルドに入った時の冒険者からの視線から嫌われている訳でもなさそうだった・・・もし加入していれば野良ヒーラーなんて待たずに30階の攻略に行けたはずなのに・・・


「あっはー!通行許可証ですわ!」


「おうカレンさん今日も元気だね。見ない顔がいるようだが新メンバーかい?」


「ええ!これで30階を攻略してみせますわ!」


「気を付けてな・・・30階は鬼門だぜ?」


「ええ・・・心得ていますわ」


ダンジョン入口にいるギルド職員との関係も良好っと・・・本当に何でなんだろ?



中に入ると早速ゲート部屋に向かい21階のゲートの前へ


「本当に行った事がおありで?」


「ええ・・・かなり前(昨日)ですが・・・」


ここで僕がゲートを使えなかったら1階から攻略しないといけなくなる。そうなると作戦の練り直しが必要になるからカレンは不安そうに僕を見て尋ねてきた


ちゃんとこの格好で戻って来たし大丈夫なはず・・・てか、この格好を解いてロウニールとしても入れるのだろうか・・・どうやって認識しているのか考えた事なかったな


「あっはー!では参りましょう!」


勇んでゲートを潜るカレンに続いてダハットが潜り次に僕が入った。ゲートを抜けると後ろからアンガーが潜り抜けこれで全員が21階に到着・・・ここから攻略が始まる


「先ずは肩慣らししながら戦い方をお伝えしますわ」


まあヒーラーの僕は特にやる事はないから別に知る必要もないのだが見ていて損はない


カレンは腰に差したハンマーを取り出すと柄の部分を引っ張り伸ばした


キースの大剣みたいに巨大化でもするかと思ったが柄が伸びただけ・・・拳くらいのハンマーで果たして魔物に通用するのだろうか・・・


「それでは行きますよ・・・あっはー!」


『あっはー!』便利だな・・・挨拶も掛け声も全て賄えている


2m近く伸びた柄を持ち走り出したと思ったら器用に回しながら突っ込んで行く


まだ魔物も見えてないのにこれが戦い方?と思ったらダハットとアンガーが舌打ちしていたからいつもより事なのだろう


慌てて追い掛けると早速魔物に遭遇・・・鎧を着込んだスケルトン・・・スケルトンナイトに出会すとカレンは更にスピードを上げて向かって行った


「カレン!」


「承知!」


「何が『承知』じゃい!」


うん、多分ダハットは無闇矢鱈に突っ込むなと言いたかったのだろう・・・けどカレンはそのまま突っ込みハンマーで殴り・・・・・・爆発した


「・・・?何ですか?あれは・・・」


「お見苦しいものをお見せしました」


「いやいやそうではなくてですね・・・」


アンガーに尋ねたけどそうじゃない・・・ハンマーで殴ったら殴った部分から爆発が起きてスケルトンナイトが吹っ飛んで行ったぞ?・・・ついでにカレンも・・・


「くっ・・・やりますわね・・・まだまだですわ!」


やりますわねって何が!?


多分爆発はハンマーに付与された能力なんだろうけどそれに吹き飛ばされて『やりますわね』は誰に対して何だ!?


「だから飛び跳ねて使えばそうなるのは目に見えとるわい!ちゃんと腰を据えて打てい!」


「淑女に腰の使い方を指導するなどハレンチですわ!」


何だこのやり取り


「アンガーさん・・・もしかして私の役割は魔物にやられた人の回復ではなく・・・」


「察しが良いですね。ついでに自ら傷付くカレンを治してもらえると助かります」


どっちがついでなんだか・・・


とにかく進んで行くとこの3人の戦い方が分かってきた


暴走するカレン・・・そのカレンを生暖かい目で見つめる2人・・・それがこの3人の戦い方だ


その後もカレンの暴走は続き1人で21階に出て来た魔物を倒してしまう


結果的には魔物の攻撃は一切受けずに済んだのだがカレンはボロボロ・・・よく今までヒーラーなしでやって来たもんだ・・・


「ロウハーさんはカレンの回復をお願いします。次の階は私とダハットで行きますので」


「まだわたくしは!」


「ここで引き返しますか?」


「うっ・・・分かりましたわ!」


満身創痍のカレンがまだまだ出来ると言い張るがアンガーの冷たい視線を浴びて大人しくそれに従う


にしてもよく自分の武器でここまで怪我を出来るもんだ・・・諸刃の剣にも程があるぞ?


「・・・『ヒール』」


「あっは~!癒される~また戦える~」


「・・・カレン」


「分かってますわよ!本当アンガーったら口うるさいんだから・・・」


ブツブツ言いながらもなんだかんだ言われた通り22階は後方で待機するカレン


ようやく2人の実力が見れるようで安心した


ダハットは典型的な盾タンカー・・・どっしりとした構えから魔物の攻撃を正面から受け止め腕力で突き放す


そうして離れた魔物に対してアンガーが魔法を放つ基本的な戦法・・・アンガーが得意な属性は二属性みたいで地と火みたいだ


地属性は魔法が効きにくい相手にも有効打が多いいからこの二属性を使えるなら色んな魔物にも太刀打ち出来るだろう・・・マナの余裕さえあればこの2人だけでもかなり下の階まで行けそうだ


それにアンガーは二属性の割にはかなりの水準まで魔法を使えるようだ。普通は属性を一つに絞らないと難しい上級魔法まで使えるとカレンは自分の事のように自慢しながら教えてくれた


「さて・・・次の階はカレンに任せますがそろそろ『打爆ハンマー』を使いこなしてくれませんと・・・」


すんなり22階を攻略し階段を降りながらアンガーが言うとカレンは先に行く2人を追い抜き再び腰に差していたハンマーを引き抜き柄を伸ばす


「あっはー!当然ですわ!更に上手く使いこなしてみせますわ!」


「少しでも使いこなせてから『更に』と言わんか」「無駄です。あれで使いこなせているつもりなのでしょう」


そんな2人のツッコミを聞く間もなく前の階と同じように1人突っ走るカレン


現れたウサギの魔物ジャンピングフットに一撃を加えて爆発し互いに吹き飛ぶ


このままじゃいくら命があっても足りないぞ?かと言ってあの爆発は防ぎようがないような・・・


不屈の闘志で立ち上がり、再び駆け始める彼女の姿を追いながらどういう使い方をしているのか注意深く見てみる事にした


まず走りながらハンマーを回すのは・・・あまり関係ないみたいだ


次に魔物に近付いた時に回すのをやめてハンマーにマナを流している


そしてそのままハンマーを魔物に・・・ん!?インパクトの瞬間にもう一度マナを流している?


普通の魔道具なら最初にマナを流した時点で発動条件は満たしているはず・・・それであの魔道具は当たれば爆発する状態になるのだと思っていたけど違うみたいだ


叩いた瞬間にマナを流す意味・・・叩く前にマナを流す意味・・・爆発のタイミング・・・・・・なるほど


「カレンさん!叩いた後すぐにマナを流すのではなく爆発の影響を受けない位置まで下がってからマナを流して下さい!」


「え?・・・や、やってみますわ!」


既にこの階に来て二度の爆発に巻き込まれフラフラのカレン・・・見事に形の崩れない縦ロールを揺らしながら三度魔物に突進すると僕の言われた通りにインパクトの瞬間にマナを流さず魔物から離れた場所でマナを流した。すると・・・


「きゃっ!?・・・あれ??」


魔物との距離はかなり離れていた


カレンはマナを流したらハンマーの部分が爆発すると思っていたみたいで体から遠ざけ片耳を塞いでいたが実際の爆発は離れた魔物の場所で起こる


意味が分からないといった感じでハンマーを眺めるカレンが次に見たのは必然的に僕だった


「どうやら予想通りみたいですね」


「ど、どういう事ですの?なぜ魔物が・・・ハンマーから離れていますのに・・・」


「あんなに近くで毎回爆発してたら誰も防げません。相打ち覚悟の武器とも考えられますが・・・多分使い方はこうでしょう。最初にマナを流す事で起爆の準備をし、次に叩いた相手に設置する・・・そして再びマナを流すと・・・」


「あっはー!」


「・・・爆発する」


説明の間に『あっはー!』挟むなよ・・・


「ほう・・・そんな使い方が・・・いや、それ以外に使い方はないか・・・」


「ですね。毎回吹っ飛んでいては間抜けにも程がありますし・・・」


いや誰か気付いてやれよ・・・まあ本人以外マナをどう使っているか分からないから本人が気付くしかなかったか


「こ、これで無敵ですわ!無敵ですわー!!あっはー!」


無敵ではない


けどこれで戦略の幅もだいぶ広がる・・・例えば地面を叩いて罠を仕掛ける事も可能だし一度の爆発で倒せないような強敵には何個も設置して・・・出来るかどうかはさておきかなり強い魔道具だぞ?


「あっはー!?」


クセなのかまたインパクトの瞬間にマナを流してしまい爆発に巻き込まれるカレン・・・それを見て僕達3人は顔を合わせるとため息をついてカレンの元へ歩き始める


30階までにそのクセが治るか心配になってきた──────

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