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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
323/856

319階 アジート

ゲートは便利な能力だ


一度行った場所であれば瞬時に移動出来る


しかもその場所が移動していたとしても移動した先のその場所に繋ぐ事が出来る優れものだ


それだけに僕がこの便利な能力を使えると知られれば厄介な事になるのは目に見えていた


知られないようにするのは簡単で『ただ使わなければいい』だけだった。けれどこんな便利な能力を使わないなんて勿体ないし使う事で失うものより得るものの方が大きいという思いに至った


けど自ら知らせるつもりはない。知られたら仕方ないと思うようになっただけで自ら知らせるのは身近な人だけ・・・それもある程度濁して伝える事にした



「・・・つまり()()()()()()()に転移出来ると言う事ですか?」


「転移というか繋げるというか・・・まあ似たようなものか。とにかく私は()()()()()()()()()()()()()にどこからでも戻って来れると思ってもらって構わない・・・それがゲートだ」


王都に向かったはずの僕が屋敷に現れて驚くアダム達にゲートの説明をした


特定の場所に繋げられる能力として


一度見た場所なら行けると分かれば僕に敵意を持つものは脅威に感じるだろう。いつ寝首を搔かれるかもしれないという恐怖に怯えないといけないからね


でも『特定の場所』だけに行ける能力ならさほど脅威には感じないはずだ・・・言ってみればダンジョンにあるゲートを持ち運べるだけの能力なのだから


「素晴らしい能力ですね・・・その能力があれば輸送コストをかなり減らす事が・・・いえ、無くす事が出来ます」


「残念ながら二つまでしか記憶出来ないんだ。だからエモーンズから王都には瞬時に行き来出来るけど他の街には行く事は出来ない・・・だから商売にはなかなか利用するのは難しいな」


「そうなのですね・・・いえ、それでもかなりの・・・」


「あー、あと人くらいの大きさまでしか入れないんだ。だから大きな荷物とかは運べない・・・もしかしたらこれから大きくなるかもしれないし記憶出来る数も上がるかもしれないけど・・・今は王都に行って帰って来るくらいしか使い途はないかな?」


こう言っとけば後々バレた時でも言い訳出来る。別の場所にゲートを繋げたのを知られた時に『成長した』とね



アダム達への説明が終わると次はナージ達を集めて同じように説明する


セイムとジェファーさんはただ驚いていたがナージには根掘り葉掘り聞かれた・・・多分ゲートを使って何か企もうとしているのだろう・・・説明を終えるとブツブツと何事かを呟いていた



そんな訳でこれからは王都とエモーンズを行き来している間は完全な自由時間


これからも偽装工作として空の馬車は走らせないといけないけど僕が乗ってない分馬車は軽くなるし食料も少なくて済むしだいぶ楽な旅になるはずだ


で、早速自由時間を満喫しようとこっそり屋敷を抜け出して宿舎に向かう


今の時間はサラが4人組に掃除させて自分は修行に励んでいるはず・・・そのまま一緒に修行してもいいしダンジョンに行くのもいいな


サラにどっちがいいか選んでもらおうとウキウキな感じで宿舎の地下に行き尋ねるも・・・


「どっちも却下」


「なぜ!?」


「私は強くなりたいの」


「だったら尚更・・・」


「貴方よりも、よ。確かに手合わせや実戦の方が強くなれるかもしれない・・・ううん、強くなれる。けどそれだと貴方は超えられない・・・超えなくてもせめて横に並びたいの」


「・・・サラ・・・」


「それになんだかんだ言って触ってくるでしょ?昨日だっていきなりキスしてきたし・・・」


うっ・・・それはまあ・・・隙あらばみたいな・・・


「とにかくしばらくは1人で修行したいの・・・ちょっと試したい事もあるしね」


「試したい事?」


「それは完成してからのお楽しみ・・・って事でお帰りはあちらよ」


そ、そんな・・・くんずほぐれつの楽しい時間が・・・


「・・・落ち込み過ぎよ・・・ハア・・・会いたい時は連絡くれれば会えるように時間を作るわ・・・この前みたいに無視しないから」


「・・・本当に?」


「本当よ本当・・・まったく・・・あっ!今日はダメだからね!」


「え!?」


「『え!?』じゃないわよ!あれだけ好き勝手しといて・・・今度から強引に続けたらしばらくナシにするからね!」


「ええ!?」


「とにかく!今日はナシ!それとさっさと出て行ってちょうだい!時間にも限りがあるんだから」



・・・追い出されてしまった・・・


こうなると何処にも行けないぞ・・・かと言って王都かエモーンズの屋敷に篭っているのも・・・うーん・・・




「確認出来ました。アジートの街へようこそ」


「ありがとう」


ロウハーと書かれたギルドカードを門番から受け取ると僕は街に足を踏み入れる


ケセナからゲートを繰り返してやって来たアジートは街と村の中間くらいに位置する辺境の街って感じで人は多くも少なくもなく王都並みに建物がぎっしり詰め込まれている訳でもなく程よい感じで発展していて住みやすそうな印象を持った


「結局時間を持て余すとこれしかないよな・・・」


歩きながら呟きため息をついた


表向きは馬車に乗り王都に向かっているのでロウニールとして外に出る訳にはいかない。となると屋敷の中で過ごすか変身して外に出るかなのだが・・・武器作りに励んでみたけどサラに言われた事を気にして作ったら妙な剣が出来てしまうし・・・これといってやる事がないので仕方なく新規開拓をする事にした


行った事のない街に行き色々と見て回れば今後の領地発展にも役に立つはずだし冒険者としてダンジョンに行けば時間も潰せるってわけだ


趣味とかあれば良かったのだけど・・・他の人達は時間がある時何をしているのだろうか・・・今度聞いてみよう



何気なく歩いていると目的地に辿り着く


冒険者ギルド・・・さあロウハーの冒険の始ま


「あっはー!もしかしてもしかしてヒーラーですか?そうなのですか?」


意気揚々と扉を開くと突然冒険者と思わしき女性が目の前に現れ迫って来た


あっはー?ヒーラー?


あっ・・・そう言えばヒーラー役をやってた時の格好のままで来てしまっていた・・・


「・・・えっと・・・」


「答えはシンプルに『イエスそれともハイ』」


どっちも肯定じゃないか


「・・・はい・・・ヒーラーですが・・・」


ここで否定して『じゃあなんでそんな格好をしているのか』と聞かれるのが面倒だと思った僕はヒーラーだと名乗ってしまう。これでこの街ではヒーラーとして過ごさないと・・・いや、ギルドカードをもう一枚偽造して別の顔にすれば・・・


「あっはー!じゃあわたくし達パーティーですね!」


おい・・・『じゃあ』ってなんだ『じゃあ』って・・・着いて早々おかしな奴に遭遇してしまったぞ!?──────




彼女の名前はカレン・・・本人曰く『天才ハンマー少女』・・・らしい


鎧を着ているのと冒険者ギルドに居たので咄嗟に冒険者と思ったが、よく見るとあまり冒険者に似つかわしくない気品に溢れた顔立ち、どうやってセットしてんだって感じの腰まで伸びた縦ロールに腰に差しているハンマー・・・冒険者なのか貴族なのか大工なのか・・・とっても不安になる出で立ちだ


「カレン・・・あれほど犯罪はダメだと・・・」


「なーんで犯罪なのです!?ただただ勧誘してきただけですわ!」


そう・・・これから冒険者ギルドで入場許可証をもらってダンジョンに突入しようとしていたのに入口でカレンに捕まり連れて来られたのはカレンのパーティーメンバーがいるという場所だった


そのカレンのパーティーメンバーであるダハットとアンガーは近くにある店でくつろいでおり、カレンが僕を連れてその店に入った瞬間とても嫌そうな顔をしていたけど・・・なるほど・・・カレンが僕を攫って来たと思ったのか


「勧誘って・・・本当かい?えーっと・・・」


「ロウハーです・・・まあ、勧誘・・・なんですかね?」


ほぼ攫われた状態なのだが・・・


僕に尋ねて来たのがダハット


背は小さいががっちりとした体格に座っている椅子の後ろに立て掛けている盾を見る限りパーティー内の役割はタンカーのようだ


「君・・・無理しなくていいですよ?どうせカレンに強引に連れて来られただけでしょう?」


続いて話し掛けて来たのはアンガー


ローブと杖から魔法使いだと思われる。ダハットと違って高身長でスタイルも良く、店内にいる女性からチラチラ見られるほどイケメンだ・・・ケッ


「アンガーまで・・・わたくしの事をなんだっと思っているのです?」


「ワガママ」「お淑やかという言葉をどこかで落とした女性」


「ムキー!あなた達覚えてなさい!」


よく分からないなこの人達の関係性・・・てか、どうしよう・・・激しく帰りたくなってきた・・・


「約束通りヒーラーを連れて来たのだから早速行きますわよ!30階のボス部屋へ!」


なぬ!?


「ちょ、ちょっと待って下さい・・・30階のボス部屋って・・・この街のダンジョンのですか?」


「?それ以外に何処だと言うのです?諦めて戻った雪辱を晴らす為に・・・30階のボスであるバフコーンを倒すのですわ!──────」




バフコーン・・・僕は創った事がないからどんな魔物か知らないけど上級だったような気がする


カレン達は3人で30階まで到達して待機部屋に入ったものの引き返したらしい・・・彼女は行こうとしたが2人が止めたのだとか


それが正に僕を強引にここまで連れて来た理由・・・パーティーにヒーラーがいないからだ


「・・・2人がどうしても『ヒーラーがいないとダメ』と言うので仕方なく帰りましたの・・・信じられます?バフコーンを倒せば一瞬で地上に戻れましたのに20階まで上がったのですよ?」


「命には変えられん」「無闇矢鱈と突っ込む人がいますからね」


この会話で何となく戦い方を理解した


普段からカレンが1人で突っ走りそのフォローに2人が回る感じだろうな・・・諦めたのもカレンを心配してかもしれないな


それにしてもエモーンズのダンジョンならその階の入口に戻ればゲートでゲート部屋まで戻れるけど他のダンジョンはボスを討伐した次の階にしかないから引き返すのも大変だな・・・エモーンズももうちょっと厳しくした方がいいか?簡易ゲートもある事だし・・・


「って訳ですの!なので御助力お願いします!」


「・・・組合に頼めばいいのでは?」


「く、組合はちょっと・・・ですのでギルドの入口で待ち構えておりましたの・・・組合に属してないヒーラーの方が来られるのを!」


「野良ヒーラーなんぞいないと思ってたんだがな」「執念が結んだ奇跡・・・ですかね」


道理で入った瞬間に・・・僕が組合に加入してからじゃ遅いと入口で話し掛けて連れ出したのはその為か


にしても組合に加入しない理由はなんだろ・・・気になるけどカレンの様子からすると教えてもらえそうにないな


「お願いします!バフコーンを倒すまでで良いので・・・御助力して頂けませんか?」


うーん・・・正直断りたいけど別にやる事ないし・・・


「・・・期間限定なら構いませんよ?」


「本当ですか!?助かります!」


ちょっとバフコーンって魔物も気になるし暇潰しに付き合うか・・・


「それで・・・その期間はいかほどでしょうか?」


「・・・一週間・・・かな」


馬車の進み具合が分からないからとりあえず一週間と答えるとカレンは顎に手を当て考え始める


そして・・・


「では今から参りましょう」


「・・・どこに?」


「決まってます・・・ダンジョンです!」


「・・・えっと・・・色々と準備が・・・」


「ですがロウハーさんはこのダンジョン初めてですよね?となると1階からになりますので一週間となりますと時間が足りませんの」


「・・・いえ、実は過去に来た事がありまして・・・遠い昔ですがその時に20階のボスを倒して21階のゲートで戻って来ました。なので皆さんと同じく21階から始められますよ」


「!そうなのですね!でしたら明日・・・それまでに準備を整えておきますので明日からお願い致します」


「分かりました。私もそれまでに準備をしておきます──────」

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