311階 新体制スタート
言う事なしの大満足で帰路に着く
普通にではなくちょっと趣味趣向を凝らして致したのが良かったのかも
サラには『旦那様』と呼んでもらい、忘れ物がないか部屋を確認している彼女の後ろから回り込み・・・『いけません旦那様』という台詞は背徳感を感じて今までにない興奮を・・・
「ご主人様、お顔が緩みっぱなしですよ?」
「・・・そりゃあ3週間は長かったと言うか・・・サラは全然平気だったの?」
「・・・バカ」
顔を赤らめ僕にだけ聞こえるようにボソッと呟く
くっ・・・なかなかの破壊力だ・・・
またどこかに寄って・・・とか考えるも既に屋敷は目と鼻の先・・・非常に残念だけどそのまま屋敷へと入っていった
「お帰りなさいませご主人様」
「ただいまアダム。来客は?」
「ありませんでした。代わりにここに来るよう言われた二組の方がいらっしゃいますがどう致しますか?」
「ジェファーさんはこの屋敷に住む事になるから部屋を用意してくれ。4人組は・・・さて、どうするか・・・」
自室に戻りながらアダムと会話を続ける
あの4人組に関しては来るように言ったはいいけどその先を考えてなかったな・・・部屋を与えるつもりはないけど野宿させるのは・・・
部屋に戻るとメイド長のグレアとメイド2人が待ち構えていた
3人は頭を下げるとグレアの指示に従い2人のメイドが僕の服を脱がす
「お召し物はどうされますか?」
「部屋着でいい」
「畏まりました」
即座にグレアは部屋着をクローゼットから取り出し2人のメイドに渡す
流れるように着替えさせてくれるからツッコミを入れるタイミングを逸したが・・・1人で着替えれるわ!
「それで・・・どのような役目をお与えになるおつもりですか?」
そう言えば話の途中だった
振り返るとアダムが1人部屋の入口に立っていて一緒に帰って来たはずのサラはいつの間にか居なくなっていた。アダムと話しながら歩いている間に自分の部屋に戻ったのかな?
「私兵にするつもりだ。使えるかどうかは分からないけどね」
「ではまず制服を与えなくてはなりませんね。あの格好では表に出す訳にはいきませんので。それまでは宿舎でよろしいですか?」
「宿舎?」
「屋敷と隣接している土地に宿舎が建っております。私やメイド達のように住み込みで働く者以外は全て宿舎から通っているのです」
へえ、そうだったのか。王都の屋敷はどうしているんだろ?・・・そもそも執事とメイドしか居なかったから今までは必要なかったとしても今後は必要になるだろうな・・・明日にでもサーテンに確認してみるか
「やはり私兵でも礼儀作法とかちゃんとしてないとダメ?」
「もちろんです」
だよな・・・辺境伯の私兵がチンピラみたいだったら周りも引くだろうし・・・
「・・・ナージに相談してからどうするか決めるから宿舎に連れて行ってくれ。指示があるまでそこで待機、飯だけはちゃんと食わせてやってくれよ?」
「畏まりました」
ナージの人手不足の中に冒険者崩れも入ってたらいいけど・・・まっ必要ないと言われたら僕直属の隊でも結成するとか・・・何でもやります隊とか名前を付けてこき使ってやるか
着替えを終えると1階の広間へ
アダムは4人組を宿舎に連れて行ったみたいで広間にはジェファー、セイム、ナージの3人が集まっていた
「ちょうど良かった。金の管理を担当してもらおうと思っているジェファーさんだ。2人共よろしく」
「今その事を話していたところよ。てか本当に偉くなったのね・・・ここに来るまで半信半疑だったけどこの屋敷を見たら疑いようがないわ」
「偉くなったつもりはないんですけどね。それでその事を話してたってどういう話をしてたんですか?」
「ナージさんが今日募集をかけたみたいなんだけどね・・・この街で職に溢れている人ってそんなに居ないのよね・・・」
言われてみれば確かにそうだな
仕事をしていない人って少ないような気がする
「パッと見でまだまだ空き地が多いようでしたが誘致が上手くいってないのでしょうか?」
「市長は移住者に家をプレゼントしたり色々と試行錯誤していたみたいだけど最初の勢いはなくなってきたな・・・最近だと移住者なんてほとんどいないと思うぞ?」
セイムの言う通り空き地はまだ多い。けどダナスさんも色々頑張っていたのを僕は知っている
「・・・となると問題は仕事・・・ですね。移住して来ても先立つものがないと不安になりますし余裕のある人はわざわざ移住する事もないと思います。新天地に求めるのは現状よりいい暮らしをしたいと思う方が多いと思います」
「家があっても仕事がなければ生活出来ないか・・・でも仕事を増やす事なんて出来るのか?」
「もちろん可能です。が・・・」
「ここからは私が・・・閣下には広く人を募集して欲しいのです」
「広く?それって・・・」
「閣下の治めるエモーンズ、ムルタナ、ケセナより更に広範囲にです。人を集めてから開発を進めたいと思っております」
「・・・どういう事?」
「初めから移住を目的になるとかなりの覚悟が必要です。知った土地ならいざ知らず知らない土地に越すなど特に・・・なので人口を増やすにはまずこの街を知ってもらうことから始めます。人を集め割のいい仕事をさせて短期間でもこの街で生活してもらう。継続して仕事があり、家も貰えるとあれば移住者は増える事でしょう。それと何をするからこういう人を募集するという内容では来る人が限られてしまうので人が来てから何をしてもらうか決めます。それを考えるのは私達の仕事なので閣下はとりあえず人を集めてもらいたいのですがひとつだけ問題があるのです」
「お、おう・・・その問題とは?」
「他領地からの人員募集はその地を治める領主の怒りを買う事もしばしば・・・なので貴族同士の争いに発展する場合も・・・」
「なるほど・・・その時は私が話をつければいいんだな?」
「話だけで終わればいいのですが・・・閣下の治める領地の隣を治めるのはファゼン・グルニアス・トークス侯爵閣下です」
ファゼン・グルニアス・トークス?・・・ああ!
「お前の元主人か・・・すぐ隣の領地とは・・・もしかして知ってて?」
「はい。グルニアス侯爵閣下はマドミヌ子爵を利用し閣下より優位に立とうと考えていました。まだまだ体制の整っていない閣下なら簡単に組み伏せられると考えておりましたので」
「けどそれは失敗に終わった・・・そんな状態で侯爵の領地から人が私の領地に流れたとしたら・・・」
「当然揉めるでしょうね」
「・・・意外だな。黙っていれば大好きな戦にありつけたものを」
「閣下を騙すのは敵を騙す時だけです」
「敵を騙す時は騙すんかい・・・まあいい。侯爵の事は気にせず人を集めろ・・・それが『安全かつ過ごしやすい街作り』の為に必要なのだろ?」
「はい」
「ただしわざと争うような事はするなよ?」
「もちろんです」
どこまで信用出来るか分からないけど今の段階では3人に任せて問題なさそうだな
本当は全てを任せてしまいたいがそれだと無責任だし彼らもやりにくくなってしまうかもしれない
「それではセイム殿とジェファー殿にこの街は任せて私はムルタナとケセナを見て参ります。護衛として冒険者を雇ってもよろしいでしょうか?」
「構わない・・・私も行こうか?」
「いえ、見て回るだけなので・・・閣下は屋敷に居られた方がよろしいかと」
「分かった。魔物が現れるかもしれないから冒険者は多めに雇った方がいいぞ?馬車は使う予定がないから使ってくれて構わない」
「ありがとうございます」
「それとコレを渡しておく」
「・・・通信道具ですか?」
「ああ、何かあればコレで知らせろ。2人にも後で渡しておくから気軽に連絡してくれ」
「はっ」「はい!」「うん」
頼もしい3人だけど完全に信用する事は出来ない。ジェファーさんはともかくセイムは宰相のところから来ているから何か企んでいる可能性もある・・・ないとは思うけどそう思わせる為にセイムのような奴を送り込んだかもしれないし・・・逆にナージの方が怪し過ぎるから安全だと思えるほどだ
ようやく人も揃った事だし本格的に始めるか・・・領地経営──────
彼と共に屋敷に戻ると先輩メイド達の視線に気付く
ロウは執事のアダム様と話すのに夢中で2人で2階へ向かい、私は先輩メイドの元へ向かった
「ご主人様のお供ご苦労さま。服が乱れてますよ?」
「あっ・・・すみません・・・」
あの時に少しズレてしまったようで慌てて直すと先輩メイドのマウロはその間に近付き何故か匂いを嗅ぐ
「・・・汚らしいニオイしかしないわね・・・なぜこんな女を・・・ご主人様はそういう趣味が?」
「・・・あの・・・一体何を・・・」
人の匂いを嗅ぎながらブツブツと・・・そもそも汚らしいニオイって何!?
「まっ性欲処理の使い捨てにはピッタリだったのかも・・・汚れたら捨てればいいだけだし・・・」
「マウロさ・・・っ!?」
「ご主人様との旅はどうでしたか?戯れに抱かれたからと言って正妻面しないで下さいね?」
突然顔を上げて迫って来るマウロ
ニオイってまさかアレのニオイ?でも制服にはかけられてないし制服は毎日洗ってるのに・・・
「勘違いしないで下さいね?汚らしいニオイと言ったのはご主人様の精液のニオイではなく色仕掛けでオスを誘うメスのニオイの事よ?ご主人様もそんなニオイに騙されてしまわれたのでしょう・・・それも致し方ないこと・・・」
「・・・」
「でも私達がいる限り過ちは二度と起きないでしょう・・・ご主人様にはご主人様に見合った女性と・・・そう思いませんか?サラさん」
強さで言うと新人冒険者以下のマウロに気圧される
言い返そうにも言葉が出ない
「そうそう・・・貴女はしばらく隣にある宿舎の担当に決まりました。食事の配膳から掃除、洗濯・・・話に聞くとこれからご主人様の私兵が増えていくようなので気をつけて下さいね・・・その汚らしいニオイがオスを惹き付け襲われてしまわないように・・・ね──────」




