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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
313/856

309階 不法侵入5人組

「おう姉ちゃん!こっちにも注いでくれや」


「・・・はい」


彼らの要望に応えてサラは心を無にして酒を注いで回る


『彼らの言う通りにする』・・・主人である僕が決めた事に健気に従うその姿を見て心が痛む


ただあくまでも言う通りにするのは一部の要望のみだ。サラだけ置いて行くのではなくサラと共に僕も残った


理由は単純に彼らの話を聞きたかったからだ


僕を知らない彼らの率直な意見・・・エモーンズをどう思うか何か不満はないか・・・僕の正体を知っていてはなかなか話せない事が聞けるかもと思ったからこうして我慢しているのだけど・・・てめえらサラの胸を見過ぎだ!


「・・・皆さんは組合に入らずに冒険者をしていると言う事ですが大変じゃないですか?」


「ん?ああ、別に・・・俺らはそこそこ稼げりゃいいから無理して下に行くつもりもねえし・・・となると情報も共有する必要もましてやサポートも要らねえし・・・な」


酒を注ぐ時に見える谷間を凝視しながら答える男に内心腹を立てながらも表面上は笑顔を作る


後どれくらい耐えられるだろうか・・・幸い男達がサラに触れようとするがサラは上手く躱している。触れたらもう耐えられないだろう・・・流石Sランク冒険者


「しっかし商人の坊ちゃんが冒険者の冒険者の話を聞きたいとはね・・・商人は俺らの事を見下しているように思っていたがそうじゃねえ奴もいるんだな」


「商人が冒険者を見下している?」


「おうよ・・・奴らは俺らが手を出せねえと思ってつけ上がりやがる・・・護衛の仕事をやった事あるがまるで番犬扱いだぜ?自分は馬車に乗って悠々自適に移動しているのに俺らにゃ休憩もさせねえし夜通し見張りもさせる・・・ケチだしそのくせ文句ばかり・・・もう二度と護衛なんてやるもんかよ」


いやそれが仕事だろ・・・まあでも見下しているのが態度に出てたら気持ちよく仕事が出来ないのは分かる気がするな・・・僕も気を付けないと


「商人の中じゃ頭の悪い奴が冒険者になるって考えている奴が多いからな・・・奴らの中じゃ俺らは底辺扱いだ。本当頭来るぜ」


「そうなんですか?僕の中では戦う力がない人は冒険者になれない・・・そう思ってましたので考え方が真逆ですけど・・・」


「ん?まあそりゃあ栄えてない場所ではな。栄えている場所は力よりも鐘が物を言う・・・命懸けでやっても稼げるのは一部の冒険者だけだ。商人なんてのは座っているだけでガッポガッポ儲けてやがる。ぶっちゃけ使う側と使われる側になっちまうんだよ・・・そりゃあ見下しもするさ」


なるほど・・・エモーンズは元村だから商人なんて店を開いている人以外は外部から来る人がほとんどだった・・・大都市とかになると商会などがあるしそういう商人は護衛に冒険者を雇ったりするのだろう。シークスも歓楽街で護衛みたいな仕事してたしそんな感じか・・・


雇う側と雇われる側・・・雇う側は傲慢になり雇われる側卑屈になる・・・そんな状態なのかもしれないな


「商人に対する不満は分かりましたけど、他には何かありませんか?例えばこの街で何か足りないとかこうした方がいいとか」


「・・・別にねえな。強いて言えば色気が足りねえか?歓楽街はあるが一区画だけだろ?しかもひとつの商会が仕切ってやがるから高くて仕方ねえ。他にも店がありゃ値段で競争してくれっから安くなるが・・・」


歓楽街を仕切っているのはクリット商会だったかな?


他に歓楽街にあるような店がないから値段を上げても客は来る・・・そうなると値段は上がる事はあっても下がる事はないか・・・これはいい事を聞いた


「他には?」


「・・・なあ、知りたがりなのはいい事だけどよ・・・そろそろパパの元に帰った方がいいんじゃねえか?」


「いや別に・・・」


「空気読もうぜ?なあ僕ちん」


言わんとしている事は分かる・・・目の前に美味しそうな果実が実っているのにお預けをくらっている状態だしな


けど・・・その果実は残念ながら僕のものだ


「分かりました。貴重な意見を聞かせてくれてありがとうございます。サラ、帰るぞ」


「おいおいおいおい・・・そりゃあねえだろ僕ちん」


僕が立ち上がりサラと共に家を出ようとすると男達は一斉に声を上げる


「・・・何か?」


「『何か?』じゃねえだろ・・・商人の卵なら分かんだろ?取引ってのは互いに得るものがあって初めて成立するもんだ・・・僕ちんは俺らに話が聞けた。それに無事にこの家から出られる。だったら俺らが得られるものはなんだ?」


「この家を使用出来る・・・とか?」


「ここが僕ちんの家って証明出来るか?まあ証明出来たとしてもそれじゃあ割に合わねえな・・・メイドを置いていけ・・・それで成立だ」


「なるほど・・・置いていくのは構わないが今の話だと釣り合いが取れないからそっちはもっと差し出す必要があるぞ?」


「あん?どういう意味だ?」


「僕がこの家を立ち去るなんて造作もない事だ・・・何の価値もない。聞かせてくれた話は・・・まあ参考になったから少しくらいの価値は認めてやろう。だからこの家を無断で使用した事は不問にしてやる。となるとこの時点で取引は成立している・・・それなのにお前らがサラを置いていけと言うのならそれ相応のものを差し出さないと割に合わないだろ?」


「酒も飲んでねえのに酔ったか?僕ちん」


「酔っているのはお前らだけだ。忠告はした・・・これ以上は命に関わるぞ?」


「・・・勘違い僕ちんか・・・見下す商人も嫌いだが・・・ハア、これだから温室育ちは嫌いだぜ・・・自分は特別だ、何とかなるとか考えてやがる」


男達の目の色が変わる


せっかく打ち解けたように見えたのに結局こうなるか・・・


「仕方ねえ・・・いいもの見せてやる・・・お前のメイドが目の前で犯サベッ!」


立ち上がった男の顔面に綺麗にサラの上段蹴りがヒットする


「てめえ!!」


「ご主人様?」


「家を壊さない程度に頼む」


「畏まりました」


今の蹴りで1人減ったから残りは4人か・・・加勢する必要はなさそうだな



酒を注がされて相当鬱憤が溜まっていたのか予想通り加勢する必要は全くなくあっさり4人の男を制圧してしまうサラ・・・メイド姿で動きにくいはずなのに・・・僕もメイド姿で戦う凛々しい姿が見れて眼福だったしこれこそ取引成立だな


「ご主人様、どうしますか?このゴミ」


「処分に困るな・・・隣が墓地だし埋めとく?」


「グッ・・・メ・・・メイドじゃなくて護衛だったのかよ・・・汚ぇぞ!」


最初にサラに蹴りを食らって気絶していた男が起き上がり他の奴らが倒されているのを目にして叫んだ


「いやメイドだけど?たまたまメイドがお前らより強かった・・・よくある話だろ?」


「ねえよ!・・・クソッ・・・組合がどうとか聞いてたのも後ろ盾があるかないか確認する為か・・・」


「別に組合に入ってたとしても結果は変わらないと思うけど・・・」


「・・・ふん・・・ほざきやがれ・・・こちとらパーティーは組んじゃいないがこの街や他の街で仲良くしている冒険者はいるんだよ・・・そいつらと共にてめえの商会を襲って・・・」


「あー、すまん。僕は商人じゃないんだ」


「なに?」


「勝手に決めつけるから否定しなかっただけ・・・さて、今の話はかなり興味をそそるな・・・仲良くしている冒険者か・・・そいつらと何をして()()()?」


もしコイツらの『遊び』というのが健全なものなら構わないが今日やろうとしていたような事なら・・・


「・・・てめえ・・・何もんだ?」


「そう言えば互いに自己紹介がまだだったな。僕の名はロウニール・ローグ・ハーベス。この付近の領主をやっている。それと彼女はサラ・セームン・・・今は僕のメイドだがこの度Sランクに上がった冒険者だ」


「・・・・・・・・・は?」


「さて・・・思わぬ情報が聞き出せたな・・・洗いざらい話してもらおうか・・・街の正常化に協力してくれ──────」




「あのぉ・・・ダンナ・・・つかぬ事をお聞きしますがこの穴は何の為に・・・」


「いいから黙って掘れ。人がすっぽり1人入れるくらいまで、な」


5人全員目覚めてから隣の墓地に穴を掘らせる


5人で1人分の穴・・・コイツらの頭の中では誰か1人死ぬ・・・そう思っている事だろう


「よし、それくらいでいいぞ」


ピタッと動きを止めて緊張した面持ちでこちらを伺う5人。チラチラと見張るサラを見たりと大変そうだな


「これからお前達にはこれまで犯した罪を洗いざらい吐いてもらう。一番細かく話してくれた奴は助けてやろう。あとは・・・まあそういう事だ」


「ちょ!話が・・・」


「話?僕が何か言ったか?・・・ああ、1人分の穴だから勘違いさせてしまったか・・・」


さて、・・・こういう奴らを脅すには僕では迫力不足だしサラではSランクだけどメイドの格好しているから舐められるかもしれない・・・って事で迫力ある方にご登場頂こう


目を閉じてダンジョンの中にある部屋を覗く。そして一体の魔物に目をつけその足元にゲートを開いた


「なっ!?」


登場したのは身の丈3メートルを超えるゴリラの魔物ことビッグアーム


「{動くな}」


突然の魔物の出現に腰を抜かし慌てふためく5人に対して言霊を使い身動きを封じるとじっと動かないでいるビッグアームに近付いた


「こいつの名前は『ビッグアーム』・・・エモーンズのダンジョンの28階で出没する魔物だ。ギリギリ28階に到達出来るレベルではとても敵わない強さで冒険者を苦しめる・・・が、見つからなければ襲って来ないから出会したら息を潜めて立ち去るのを待てばいい」


「・・・そ、その魔物がなんでここに・・・」


「知らないのか?ここのダンジョンは僕が作った。ダンジョンもダンジョン内にいる魔物も全て僕が、ね」


「・・・」


「で、だ。この魔物をここに喚んだ理由はひとつ・・・1人分の穴に4人入るのはキツイだろ?だからコイツに入るサイズにしてもらおうと考えている。穴を4つ掘るよりはそっちの方が時間の短縮になるしわざわざ4人弔うのも面倒だし・・・」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺らは・・・」


「ビッグアーム・・・地面を叩け」


命令するとビッグアームは自慢の太い腕を振り上げ地面に叩きつける


付近は大きく揺れ叩いた場所は見事に凹んだ。これを食らえば・・・まあぺっちゃんこだろうな


「無駄口を叩くな・・・お前達は僕に聞かれた事を喋ればいい・・・二度は言わないぞ?これまで犯した犯罪とお前達の言う『仲間』・・・より細かく話した奴が生き残る。おっと嘘はつくなよ?嘘をついて生き延びたとしても後に嘘と分かれば生き延びた事を後悔するような痛みを与えて殺してやる・・・例えば『スライム風呂』とかな」


「ス、スライム風呂?」


「ああ、想像するとなかなかメルヘンチックだろ?けどスライムってのは可愛い見た目とは違って物を溶かす性質を持つんだ。それも強力なものではなく徐々に溶かすような・・・だからスライムを大量に集めた場所に人間が浸かると徐々に・・・少しずつ溶けていく・・・最初は皮が熔け肉が溶け最後には骨すら溶かす・・・一気に溶けるならまだしも少しずつだから案外面白いものが見れるかもしれないぞ?例えば自分の臓器とか・・・まあそれまでの間に気を失わないで耐えれたらの話だがな」


「・・・」


「では端から話を聞いていこうか・・・あー、黙ったらすぐ潰すからそのつもりで・・・口がひとつ減っても4つあるしな・・・さあ、お前からだ──────」

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