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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
31/856

28階 乱入

みんなの驚いた顔を見るのは何度目だろう・・・だが今回の表情はいつもと違う・・・怒りなのか疑念なのか・・・複雑な気持ちが入り交じった表情だった


いずれ別れの時は来ると思っていたがまさかこんなに早く来るとは・・・もし組合の事が解決したらまた戻って・・・いや、やめておこう・・・これから同じような事が何度起きるか分からない・・・その度に抜けるなんて都合が良すぎるしケン達に迷惑だ



私は連中が何の目的でこの村に来たのか調査する為に動き出す


この格好は目立つので長めのフード付きのローブを買いひとまずギルドでそれらしき連中が来るのを待った


隅っこで死角になるように壁にもたれ掛かり見ていると7人組のこれまで見たことのない連中がギルドに訪れダンジョンへの入場申請を・・・フリップが言っていたのはこの連中で間違いないだろう・・・確かに怪しい


受付を済ませギルドを出ると思いきや何故か真っ直ぐ私の前に向かって来た


そして目の前で立ち止まるとフードで隠した私の顔を覗き込むようにして話し掛けてきた


「1人か?もしパーティーメンバーを探しているなら一緒に行くか?」


「・・・間に合っている」


「てめえなんだその態度・・・」


私に聞いて来た男の後ろにいた男が私に掴みかかろうとする・・・が、聞いて来た男がそれを止めた


「よせ・・・そいつは残念だ。じゃあダンジョンで待ってるぜ?()()()


気付かれていたか


その男はニヤリと笑うとギルドから出て行った。それに続くように他の6人も・・・


私は全員が出て行ったのを確認するとカウンターに向かいダンジョンの入場申請をする。そして・・・


「・・・あの連中のランクは?」


「え?・・・その・・・」


「ギルド長から聞いているだろ?」


「あ、はい・・・Eランク2名にFランク4名・・・それにGランク1名です」


「・・・あの先頭の男の名前とランクは?」


「えっと・・・ハズン・モーシスさんで・・・Gです」


「・・・分かった」


Gランク?あの男が?


目の前に立った瞬間に感じた強さとランクが全く違う・・・もし実力とランクが伴っているのなら奴は・・・Bはある


ギルドカードの偽造・・・は難しいだろう。となるとなりすまし?もしくはギルドカードを作ったけどダンジョンに潜らずに実績を上げずにいるか・・・



『待っているぜ』・・・か。何を企んでいるか知らないがまさか直接接触してくるとは・・・



「サラ姐さん!」


「・・・ケン・・・」


早速奴らを追いダンジョンに向かおうとした時、運悪くケン達と鉢合わせしてしまった


「その格好・・・やっぱり何か事情があったんスね・・・どうして・・・」


「すまんなケン・・・先を急いでる・・・」


「ちょ・・・サラ姐さん!」


すれ違いざまに見たみんなの悲しそうな顔が心を締め付ける・・・それでも私は足を止めずにギルドを出てダンジョンを目指した・・・





ダンジョンに入りすぐに1階を探査すると連中はいた。どうやら1階の宝箱部屋に居るみたいだ


あの宝箱はいつ入っても空というハズレ部屋なのだがそこに居るのは宝箱が目的と言うより私を待ち構える為なのだろう。その証拠に部屋の中には7人いて、扉の外に1人・・・ん?合計8人?1人増えたか・・・


とりあえずその部屋を目指し奥に進むと私を見つけた部屋の前に立っていた男がニヤリと笑い7人が待ち構える部屋へと誘う


「素直に来てくれて助かるぜ。時間は貴重だ・・・その辺を分かってない奴がこの世にゃ多過ぎる」


「この時間が無駄にならないといいな」


「それはお前次第だよ・・・サラ・セームン。単刀直入に言おう・・・この村から去れ」


「随分一方的だな・・・ハズン・モーシス」


「ん?自己紹介したか?・・・まあいい。で?返答は?」


「理由なく人を追い出す気か?私が納得するような理由を言えば考えなくもないが・・・」


「理由?それは・・・」


ハズンが言いかけた時、部屋の外で争う声が・・・この声は・・・


「か、頭ぁ!コイツらが・・・」


「サラ姐さん!大丈夫スか!?」


部屋の前にいた男が扉を開けると男の後ろからなだれ込んでくるケン達・・・まさか私を追って・・・


「風鳴りぃ・・・なんだコイツらは?」


「・・・知らない連中だ。さっさと追い出せ」


「サラ姐さん!!」


「だってよ。とっとと出て行け・・・俺の貴重な時間を無駄にすると・・・」


「俺達はサラ姐さんの仲間だ!何をしようとしてるか知らないけど聞く権利がある!!」


「そうよ!追い出す権利なんてないんだから!」


「穏便な話なら居てもいいのでは?それとも何かいかがわしい企みでもあるのです?」


「ちょっとお腹痛くなってきたかも・・・」


「・・・風鳴りぃ~・・・」


1人を除いて争う事も辞さない勢い・・・まだ私すら相手の出方が分かってないのになぜいきなり喧嘩腰に・・・


「ハア・・・私の仲間だ。丁重に扱え」


こうなったら仕方ない。下手に遠ざけて何かされるよりはマシだろう


「チッ・・・まあいい。それで?理由を話せだったか?」


「ああ・・・なぜ私をこの村から追い出そうとする?」


「え?追い出す!?」


「ケン・・・少し黙ってろ・・・」


「は、はい・・・」


「・・・簡単な話だ。お前の名前が邪魔なんだよ。俺達はこれからこの村に組合を作る・・・その時に高ランクのお前が障害になるのは目に見えてるからな」


「なぜ?別に私は邪魔するつもりはない」


「そうか?そう言いつつ口を出してくるんじゃないか?決まって高ランクの奴らは自分の意にそぐわないとしゃしゃり出てきて邪魔しやがる・・・そういうのは時間の無駄なんだよ・・・」


「やりもしない内から口を出されると考えてるのか?何をするつもりだか・・・別に普通に組合を作り運営していく分には口を出す気はないぞ?」


「お前の普通を知らねえからな・・・俺達の普通と違えば衝突が起こるだろ?それを事前に排除するのはそれこそ普通だと思うがな」


「確かにお前達と私の普通は違うようだな・・・私の中の普通は誰かを排除して成り立つものではない」


「ほら見ろ・・・こうなるだろ?」


「そうだな。だから私に立ち去れと言うのはおかしいのではないか?」


「そうでもない。俺としては穏便に済ませようと最大限気を使ってるつもりだぜ?お前ならここじゃなくても十分稼げるだろ?怪我とかしてなけりゃあ、な」


「脅しのつもりか?」


「さあな。どう受け取ろうがお前の勝手だ・・・で?返答は?」


「今の流れで頷くとでも?」


「・・・だよな。時間の無駄だった・・・さて、本題に入ろう。サラ・セームン・・・お前には三つの選択肢がある」


「三つ?」


「ひとつは()()()()()この村から去る・・・もうひとつは強制的に出て行く・・・最後のひとつは俺達の仲間になる・・・さあどれを選ぶ?」


最初と最後は論外・・・気になるのは・・・


「強制的に?どうやって?」


「選んだら教えてやるよ」


「そうか・・・さて・・・」


どうしたもんか・・・相手の出方で対応しようと思ってたが・・・


チラリとケン達を見る


もしここで戦闘になればケン達を巻き込む事に・・・それだけは避けなくては・・・


しかしこの村を去るつもりも仲間になるつもりもないとなると・・・


「悩ましいな。返答は後日でも?」


「ダメだ」


やはりそうだよな


「全て拒否した場合は?」


「・・・自分で考えな」


いっそ『殺す』とか言ってくれた方がやりやすい・・・幸いケン達は扉の近く・・・戦闘が始まったら外に出るように言って・・・


「チッ・・・冒険者は即断即決が基本だぜ?」


「なかなか選び難い三択なのでな」


「なら俺が選んでやる。おすすめの二つ目だ・・・おい」


ハズンが背後にいる者の1人を呼ぶとその男が前に出た


コイツは・・・


「見覚えがあるだろ?ギルドで会ったはずだ」


ケン達を見ていた男・・・そうか・・・8人に増えたのはコイツがいたからか


「組合のスカウトで俺達の前にこの村に来てたんだがある奴に邪魔されてな・・・泣きながら帰ってきやがった」


「か・・・ハズンさん・・・」


「邪魔をしたつもりはないが・・・パーティーに加わりたそうな顔をしてたので声を掛けただけだ」


「お前はそう思ってるかもしれねえが、コイツは邪魔されたと感じたんだよ。で、最近はスカウトに失敗した事で全てが上手くいかなくなって泣きながら酒を浴びる毎日・・・可哀想だろ?」


「どうも思わないな・・・それで?何が言いたい」


「コイツは思った・・・上手くいかなくなったのは何が原因だ?誰のせいだ?・・・そうだ『風鳴り』サラ・セームンのせいだ!ってな」


「だからそれが・・・!?」


鮮血が舞う


ハズンは目にも留まらぬ速さで剣を抜くと前に立たせた男の首を・・・刎ねた


「お前!!」


「悔しさのあまり無謀にもBランクの『風鳴り』サラ・セームンに挑み・・・呆気なく殺された・・・相当思い詰めてたんだろうな・・・心中察するぜ」


首から上がなくなり倒れる男を無視してハズンは淡々と妄想を垂れ流す。まさかコイツは・・・


「気にするな。仕方ないさ・・・正当防衛だ。しかし俺達も仲間を殺った奴をそのままにしておくのも・・・どうだ?お前が村から出て行ってくれればなかったことにするぜ?」


「お、お前・・・何言ってんだ??サラ姐さんじゃなくて・・・お前が・・・」


「黙ってろ小僧・・・誰がそれを証明するんだ?」


「はあ?俺達が見てるだろ!!」


「そうか?俺達も見たぜ?サラがコイツの首を刎ねる姿を・・・止められなくて心苦しいぜ・・・後悔の気持ちでいっぱいだ」


「あ、頭おかしいんじゃないのか・・・」


ケンの言う通り目の前の男は頭がおかしい


自らの仲間を殺して罪をなすりつけようとしている・・・しかし・・・


「もしかして至る所で私とその男が揉めていると言いふらしていたのか?」


「どうだろうな・・・俺達より先に村に戻ってからの行動は知らねえけど・・・もしかしたら店でクダ巻いてたかもしれねえな・・・『風鳴り許せねえ!』みたいに、な」


やられた・・・そういう事か・・・


「用意周到だな」


「なんの事だ?・・・それでどうする?俺達は別に弔い合戦と洒落込んでもいいんだぜ?」


自分で殺っておいて弔い合戦ときたか・・・フリップとガゾスが関わるなと言っていた意味がようやく分かった・・・コイツらに常識など通じない・・・か


「訳分からない事言ってんじゃねえよ!俺達が証人としてギルドに言えばお前らなんて!」


「・・・いい加減その小僧の口を閉じさせろ風鳴り・・・時間の無駄だ。それとも現実ってやつを教えてやろうか?」


「よせ・・・ふぅ・・・ケン・・・私の負けなんだ」


「へ!?サラ姐さん??」


「負けという表現が正しいかどうかは分からないが・・・この場に来た時点で詰んでいた。ギルドでこの斬られた男と私が何かあったと知る者は少ない・・・けど、その後でわざとらしく他の店で私への恨みを吐露する・・・すると周囲は思うだろう・・・この男が私に挑み無惨にも首を刎ねられ死んだのだと」


「だからそれは違うと俺達が・・・」


「・・・ダメよ・・・ケン・・・私達の証言は・・・」


「なんでだよ!」


「仲間・・・だからですよ。仲間なら庇うのは当たり前・・・事実を捻じ曲げてでも庇おうとしている・・・そう思われてしまいます・・・たとえそれが事実だとしても」


「被害者と加害者・・・どっちの言い分を聞くかと言ったら・・・被害者でしょうね。私達がいくらサラさんを擁護しても火に油を注ぐ事になりかねないわ」


「ケン・・・女湯を覗いてたのが俺かケンかってなったら真っ先に俺が疑われるだろ?そういうこった」


「スカットは黙ってて!」


女性陣2人に怒られてしょぼんとしているスカットはさておき・・・


「まだ納得しないか?ケン」


「・・・だって・・・やってないのに・・・」


「なら戦うか?部屋の外の奴を入れて7人・・・全てを殺せば身の潔白を証明するなど面倒な事はしないで済む。まあ簡単にはいかないだろうからこの中の誰かは死ぬかも知れないが・・・」


「・・・」


「追い出されたとて私は死ぬわけではないしいずれ戻っても来れる・・・そうだろ?」


「ああ・・・地盤固めが終わりゃいつでも戻って来い・・・歓迎するぜ?」


地盤固めが終わった頃にはコイツら・・・『タートル』の巣窟となっているだろう。しかし私にはもう打つ手など・・・ない


フリップには謝罪しないとな・・・あれだけ関わるなと言われたのに・・・


私より落ち込むケンの肩に手を乗せ、出ようと言いかけたその時、また部屋の外から争うような声が聞こえた


そして扉が勢いよく開き、現れたのは全く予想だにしなかった人物だった


「またかよ・・・今度は誰だ!」


「・・・」


「おい!ジジイ!キョロキョロしてないで俺の質問に答えろ!」


「・・・ハズン・モーシス・・・Gランクの冒険者なりたてのひよっこのクセに随分偉そうじゃねえか・・・FランクとEランクを従えて()()ギルドで何するつもりだ?ええ?」


()()・・・ギルドだと?」


「そうだよ・・・俺の名はフリップ・レノス・サムス・・・この村の冒険者ギルドの・・・ギルド長だ」

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