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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
306/856

302階 指名依頼

随分と印象が変わった


強くなったのかな?話しているとそう感じる


声は以前より大きく、表情も豊かだ。微笑む事が多かった印象だが明るく笑顔も多い


冗談なんて言わない印象だったので時折混ぜられる冗談は思わず本気にしてしまいそうになる


「あら?そこに居たの?おいで()()


いつの間にかシロニールからシロと名前が変わっていた事に少し驚くと共に胸が痛んだ


シロは首輪につけた鈴を鳴らしながらセシーヌの元に駆け寄ると飛び上がり肩に着地する。そしてセシーヌの頬に自らの頬を擦り寄せ甘えた声で一声鳴いた


「随分懐いたみたいだね・・・創造主がいるのに挨拶もなしとは」


もちろんセシーヌを主人と思うように創ってはいる。けど懐くか懐かないかは本物のペットのようになるように創っていた。つまりぞんざいに扱えばそれなりの対応をするように・・・まああげた3人はそんな事しないとは分かっていたけどこの様子を見るとかなり可愛がってくれているみたいだ


「ふふっ・・・シロ、ロウニール様にご挨拶は?」


セシーヌが顎を撫でながら言うとあろう事かシロは僕をチラッと見たと思ったらプイッと顔を背けた


「・・・」


「あらあら・・・私の感情が移ったかしら?」


「え?」


「冗談です」


分かりにくい!いや、冗談というのが冗談という可能性も・・・


「あっ!そんな事よりロウニール様にまだお伝えしていなかった事がありました」


「な、なに?」


「魔王討伐の報奨の件です」


あれ?3人・・・ディーン、シーリス、セシーヌは僕とサラ、それにダンとは扱いが違うと聞いたけど・・・


その違いが国に所属しているかしていないか


冒険者はともかく貴族は所属していると言えるのではないかと思ったがそうではないのだとか。貴族はあくまで国が功績に見合った権利を与えたって事らしい


なのでぶっちゃけ命令されても拒否する事も出来る・・・従う義務はないからだ


でも3人は国に所属している


第三騎士団のディーン、宮廷魔術師のシーリス、聖女のセシーヌは国の為に働きその対価として給金を貰っている立場だ


なので命令されて魔王を討伐したとしても仕事の範疇とされてしまう・・・はずだったのに・・・


「恐らく口止め料と言ったところでしょうか・・・『魔王』ではなく『魔族』だったと公表したのに実際討伐した者が公の場で『魔王』だったと言ってしまえば混乱を招くと・・・なので報奨を与えて黙らせようとしている・・・そんな風に受け取りました」


「・・・なるほど・・・それでその報奨とは?」


「次代の聖者聖女の権利です」


ん?どういう事だ?


次代の・・・あっ!つまりそれって・・・


「もう競う必要はありません。元々私は競うものではないと思っていましたので関心はなかったのですが、お父様とお母様はかなり喜ばれていました。ですので結婚を急かす事もなくなり結果的には私にとっても良い結果になったと言えます」


現聖者聖女の子供の能力で次のフーリシア王国の聖者聖女を決めるしきたり・・・その為聖者聖女が決まった瞬間から始まるのは意図しない子作り合戦だ。他の聖者聖女達を出し抜くには早く子供を作る事が最も有効な手段らしい


けど次代の聖者聖女はセシーヌの子に決定した時点でその不毛の争いは無意味となる。人によってはそれが魔王討伐の報奨になるのかと疑問に思うかもしれないが実際に争っている人達にとっては何より価値のある報奨なのかもしれない。特に望んでいなかったセシーヌにとっては・・・


「これで急ぐ必要はなくなりました。なので焦らず待つ事にします」


「・・・何をかな?」


「ご想像にお任せします」


まさか僕とサラが別れるのを・・・いやいや、それはない・・・よな?



それから他愛もない話をして教会を後にしたが、セシーヌの最後の言葉『ではまたお会いしましょう』とその言葉を発した際の含み笑いが妙に気になった


屋敷に戻ってからもその事を考えていたら気付いた時には夜になっていた


「さて・・・詳しく聞きましょうか」


メイドモードから彼女モードになったサラは早速セシーヌと何を話したか聞いてきた


もちろん隠すつもりは一切なく、僕が受けた印象も含めて話すと彼女は唸った


「まさかそう来るとは・・・強いわね」


「強い?」


「『まだ勝負はついていない』ってところかしらね。結婚か子供か・・・どちらかか両方か・・・とにかくセシーヌの中で決着はまだって事よ。普通なら諦めると思うけど・・・セシーヌもセシーヌの想いも、思ったより強い・・・強敵だわ・・・」


強敵って・・・でもサラの言う通りかもな。もしかしたら聖者聖女の選考方法が影響しているかも・・・セシーヌの中で『決着は子供が出来たら』と考えている可能性が・・・


「・・・作る?」


「ぶっ・・・サラ?」


「冗談よ・・・まあ全部が冗談って訳じゃないけど・・・母としてのスキルを身に付けてからと思っているからもう少し時間が欲しい・・・そりゃあ欲しいけど・・・ね」


母としてのスキルか・・・ぶっちゃけ今の環境なら必要ないのだけどサラのプライドが許さないのだろう。自分が育てる自信を持ててから欲しいって言ってたし・・・てか、そもそも母としてのスキルって何だろ?


「何が出来るようになったらって考えているの?」


「本当一般的な事よ?私が作るご飯を食べさせてあげたいし汚れたら洗濯してあげたい・・・着替えも最初はさせてあげないといけないし寝かしつけもしないといけないだろうし・・・」


「料理とか洗濯はまあ分かるとして着替えとか寝かしつけとかはメイドしてても覚えないんじゃ・・・」


「え?」


「え?」


「・・・そうね・・・そうよね・・・大人と子供じゃ違うもんね・・・」


「そりゃあそうでしょ・・・ってもしかして・・・」


そう言えばやたらと着替える時に手伝おうとしてきたり2人で寝ている時に布団をポンポンしてきたり・・・


「サラ~・・・僕を子供として扱ってたのか?」


「ち、違う・・・違くないけど・・・ほら、他の人には出来ないし・・・」


「ほほう・・・ならば子供じゃないって事を身体に叩き込んでやろう・・・二度と子供扱い出来ないように」


「ちょ、手の動きが怪しい・・・て言うかもう十分分かって・・・」


「いーや、まだまだ分かってないね。もう僕を見た瞬間に濡れるくらいにしないと気が済まない・・・覚悟しろ」


「それ日常生活に支障をきたすレベルじゃない・・・そんなのべつまくなしに発情したくないから抵抗させてもらうわ・・・ファーネに教わった絶技・・・まだ出していないのもあるんだからね」


「望むところだ・・・勝負!」


「かかって来なさい!」




負けた




次の日の朝、精も根も尽き果てた僕は朝を通り越して昼間に起きた


鏡を見ると痩せこけた自分を見て驚く・・・実はサラってサキュバスなんじゃないのか?


〘やめてくれる?サキュバスへの風評被害だわ〙


〘人間の中じゃ未だに『淫魔』って呼ばれているくらいだ・・・そうそう覆せないレベルで根付いているから僕が何を言ったところで変わらないよ〙


〘・・・そう・・・けど根付いているからと言って事実無根である事を言うのは良くないわ。それは私がアナタに『早漏野郎』って言うのと同じくらいにね〙


〘ダンコさん?あのね・・・昨日のアレは絶技の影響で・・・〙


〘『あっちょっとまっ・・・待って!待ってうあああぁぁぁ』・・・なんて叫ばれたらおちおち本も読めやしない・・・静かな夜の雰囲気が台無しよ〙


〘その場所に昼も夜と関係ないだろうが・・・てか覗くな変態!〙


〘何度言えば分かるの?私とアナタは一心同体・・・私の体ならもっとしっかりしてよね・・・早漏〙


・・・口では勝てない・・・ダンコに楯突くのはやめておこう・・・傷口が広がるだけだ・・・


昨日はそれまで連勝続きで油断していただけ・・・次こそは勝つ!


「おはようございますご主人様・・・良く眠れたようですね」


僕が起きた事を察知したサラが部屋に入って一礼する


頭を上げた時の勝ち誇った顔・・・まさに勝者の顔だ


「お陰様で・・・いつもと逆になったな」


「そうでしょうか?私は寝坊などした事ありませんが?」


「くっ!・・・」


こうなったら昼でも関係ない・・・今から快楽の底へ落としてやる!


「ご主人様・・・冒険者ギルドからの使者が参られました」


「へ?冒険者ギルド?」


襲おうとした瞬間に出鼻をくじかれる


冒険者ギルドが僕に何の用だ?


「今来ているのか?」


「いえ、先程帰られました」


「・・・ああ、()()()()()()か・・・今来た事を告げに来たのかと思ったよ。来た時に起こしてくれれば良かったのに」


「死んだように眠られていたので起こすのを躊躇ってしまいました。それに・・・用事の相手はご主人様ではなかったので」


「僕に用事じゃない?じゃあ一体誰に何の用事で?」


「私指名の護衛依頼が入ったとの事です」


「サラを指名だと?」


「はい」


「最近物騒とはいえSランク冒険者をたかだか護衛で使おうとするとはどこのボンボンだよ・・・まさか受けないよな?」


任務を受ければ離れ離れになってしまうし今は僕のメイドだ・・・国からの依頼ならともかく護衛なんて・・・


「受けようと思っています」


「なに?・・・本気で?」


「はい・・・ダメでしょうか?」


「ダメ・・・じゃないけど・・・」


もしかしてメイドに飽きた?いや、それはないな・・・となると断れない相手だったとかか?それとも報酬がべらぼうに高いとか・・・


「お相手がお相手でしたので断るべきではないと判断しました」


「陛下?それとも王族の誰か?」


それくらいしかサラが断れない相手が思い浮かばない


どちらにしても強引に言う事を聞かせようとしたなら・・・


「そういう意味での断れないではありません。共に戦った仲間として・・・そしてライバルとして断るべきではないかと」


「共に戦った仲間?・・・ライバル??」


共に戦ったって魔王討伐の事?・・・ライバル・・・まさか・・・


「セシーヌ??でも護衛って・・・一体どこに・・・」


セシーヌにはエミリがいるし侍女達もそれなりに強かったような・・・それに聖女親衛隊もいるはずなのに・・・


「その通りです。私を指名したのは聖女セシーヌ様・・・そして行先は・・・エモーンズです──────」

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