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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
304/856

300階 ハーベス家の日常

ファゼン達の来訪により慌ただしくなってしまったその日の夜、僕とサラは一緒の布団に包まりながら真面目な話をしていた


「魔族の子か・・・確かに強そうだね」


「うん・・・僕と同じように魔力とマナを使えるかも・・・そうなると必然的にあの技も使えるって事に・・・」


魔力とマナは反発する・・・その反発する力を利用して僕は魔王を倒した。その力は諸刃の剣で使用者すら傷付ける扱いづらい・・・でももし使いこなせれば・・・


「それよりも・・・今日は私で良かったの?」


「今日は?ずっとサラだけでいい」


「ふーん・・・今日のお風呂の時のマーノとクリナったら凄かったのよ?あなたを褒めて褒めて褒めちぎって・・・あれは惚れているというより心酔していると言った方がいいのかしら・・・もう何しても拒否されないようなそんな感じね」


「あのねえ・・・てか、サラは嫌じゃないの?僕が別の女性と・・・その・・・」


「嫌に決まってるじゃない。でも・・・あの4人を見てるとね・・・好きな人と結ばれる喜びを知った後だとどうしても・・・ね」


「・・・今は環境が彼女達をそうさせているだけだよ。メイドになった時点で選択肢は少ない・・・誰かの庇護下に入らないと生きていく事すら困難だ・・・僕がいい主人に映るから必死にそれを繋ぎ止めようとしているだけ。恋慕ではなく本能に近いんじゃないかな?生きる為に本能的に僕に・・・」


「そうかもね・・・アメとムチならロウがアメでヤヌークがムチ・・・どっちを選べと言われたら普通はアメでしょうしね」


「彼女達には主従関係ではない恋人を早く見つけて欲しいな・・・そうだ、この前の店に4人を連れて行ってよ。僕がいるとなかなか選びにくいだろうし・・・」


「ただ待っているのが嫌なだけでしょ?」


「・・・」


「まあいいわ。色々見たけど楽しかったし・・・どこかの誰かさんはドレスに並々ならない程興味持ってたから汚れてもいいように何着か買うのもありかもね」


「是非!」


「・・・変態」


「でも結局裸になるから要らないかも・・・いやでも何となくこうくるものが・・・」


「・・・ドスケベ」


「破いてもいいように少し安めのも買ってもらえると・・・」


「・・・バカ」


「むっ・・・主人に対してバカとはなんだバカとは・・・そんな事言うメイドにはおしおきだ!」


「ちょっ!いきなり立場を利用しないで・・・そっ・・・だっ・・・あっ──────」




次の日の朝、目覚めると一緒に寝ていたはずのサラは既にいなかった


メイドは主人より遅く寝て早く起きる・・・サラは立場的にはメイドだけど全員事情を知っているので寝ていても文句は言われないはずなのにメイドとして早く起きて朝の支度を他のメイドと共にやっているらしい


僕も同じように朝早く起きた方がいいのだろうか・・・でもそれだとメイドはもっと早く起きなきゃいけなくなるし・・・


「ご主人様、おはようございます。セイム様が来られましたがどう致しましょうか?」


「おはようサーテン・・・朝飯がまだなら共に食べようと伝えてくれ・・・食べ終えているのならどこか適当な部屋をセイムに与えてくれ」


「畏まりました」


さて・・・今回の旅の目的は達成したし後はエモーンズに帰るだけか・・・ファゼンとヤヌークの件が気掛かりではあるけど僕が居ない間に何かを仕掛けて来る事はない・・・かどうかは分からないか・・・何か対策を練っておく必要があるな


とにかくその前に朝飯か・・・僕が食べないとみんなも食べれないしさっさと起きて・・・


「ご主人様、お食事の用意が・・・」


ベッドから飛び降りていざ着替えようとした時にチルが部屋のドアを開けてしまう


素っ裸で着地した僕と目が合うとチルは顔を赤らめ手で顔を覆う


「も、申し訳ありません!」


「・・・いや、気にするな・・・」


「み、見ておりませんので!見ておりませんので!」


と言いながら指の隙間からめっちゃ視線を感じるのは気のせいだろうか・・・


「分かったからドアを閉めてもらえないかな?さすがに恥ずかしいのだが・・・」


「は、はい!」


と、ドアを閉めるチル


しかし・・・なぜ部屋に残る?


「チル?着替えるまで部屋の外で待っててもらえるかな?」


「え?あっ・・・もしよろしければお召し物の替えをお手伝い致しましょうか?・・・そ、それにお望みならその・・・」


視線はそそり立つアレに集中している


「・・・自然現象だ・・・すぐに収まる」


「そ、そうなのですね・・・あの・・・お近くで見てもよろしいでしょうか?」


「よろしくない!頼むから部屋から出てってくれ!」


「・・・畏まりました・・・」


なぜ残念そうにする!?・・・これは早くエモーンズに帰らないと貞操の危機かもしれん・・・本気であわよくばって感じで・・・


部屋へ入るのはサラだけとかにしておくか・・・とにかくノックは徹底させないと危険なのがよく分かった


チルのやつ・・・サラに言わないよな?──────




「おはようございますご主人様」


着替えて下に降りると総勢5名のメイドがお出迎え・・・これはかなり壮観だな。他の貴族なんかはもっとメイドを侍らせてこの挨拶を受けているのだからそりゃあ勘違いもするわ


「・・・朝から元気でよろしいこと・・・」


僕が前を通り過ぎる時、ボソッとサラが一言


その瞬間チルを見るが目を逸らしやがる・・・早速チクリやがったな?


「・・・ゴホン・・・そういう日もある・・・」


訳の分からない言い訳をして食堂に向かうとサーテンそれにセイムが待っていた


「あ、おはようございます!その・・・御朝食にお招き頂き・・・」


「おはよう。堅苦しい挨拶は抜きにして座ってくれ」


「は、はい・・・え?」


僕が座ると同時に各席に朝食が配られる


今日の朝食は目玉焼きにベーコン、そしてコーンスープにパンだ。パンは各席に配るのではなく大きめの籠に入れて好きなだけ食べれるように各席近くに置いてある。前にチルがまだ食べたそうにしていたから気兼ねなく食べれるように考えたのだがこの置き方はかなり好評みたいだ


「ん?セイムどうした?」


「あ、いえ・・・みなさんで食べられるのですね・・・」


「王都ではね。エモーンズでも同じように一緒に食べようと言ったら断られた・・・まあ向こうはひっきりなしに来客があるから一緒に食べる姿を見られると都合が悪いのだろう」


向こうの執事であるアダムは少し頭が固い。妙に格式ばった事にこだわるし・・・その点サーテンはその辺が緩いよな・・・たまに冗談か本気か分からない言葉も発するし・・・


2人とも有能だけどタイプが違うって感じだな


「どうした?早く座って食べてくれ・・・じゃないと全部食べられてしまうぞ?チルに」


「んふーふ!ふふんーふ!」


「チル・・・せめて口の中のものがなくなってから喋れ」


「っん・・・ご主人様!酷いです!初対面の方にそのような事を仰るなんて・・・まるで私が食い意地の張った者みたいじゃないですか!」


「・・・違うのか?」


「違います!ねえ?ヒース」


「私に話を振るって事は昨日の晩につまみ食いをしていた事を話せって事?」


「なっ!?あれは・・・味見よ味見!ねえ?マーノ」


「・・・味見にしては量が多かったような・・・」


「マーノまで!・・・クリナ・・・貴女は私の味方よね?」


「味見の後で食べ過ぎた事に気付いて『出す?』と私に聞くのはやめてください。出しても元に戻りません」


「くっ!クリナまで・・・てか人によってはご褒美になのに・・・」


「チル・・・出したとしたら誰に食べさせるつもりだったの?返答次第じゃ血の雨が降るわよ?」


「・・・ご主人様に?」


おい!


てか出すってどっちだ?上か下か・・・もちろん上だよな?いや、上でも勘弁して欲しいけど


「・・・サーテン様、チルを調理当番から外した方がよろしいのでは?」


「そうですね。寛容なご主人様とはいえさすがに吐瀉物を出されてはお怒りになりそうですし」


吐瀉物言うな!てか『なりそう』じゃなくて怒るわそんなもん出された日には!


「そんなぁ・・・」


凄い残念そうにするチル・・・そんなにつまみ食いしたかったのか・・・


エモーンズではメイドの仕事内容に料理は入っていない。料理人を雇って作ってもらっているからだ。けどここではメイドの仕事になってしまっている・・・僕がほとんど不在だからって理由でサーテン、チル、ヒースに任せていたが・・・


「・・・いっそうのこと料理人を雇うか?」


「その場合は短期雇用に致しますか?ご主人様が滞在の時だけなど・・・」


「いや、常駐で構わない。私が不在でも人数が増えたから調理の負担も増えるだろ?なら何人か雇用しておいた方がチル達も楽だろうし・・・」


この場では言わないけどいい案が浮かんだ・・・後でサーテンだけにこっそり伝えておこう


「畏まりました。では早速手配致します。常駐として雇用条件はどう致しますか?」


「相場よりも少し多めに出してくれ。細かい事は後ほど話す」


「畏まりました」


給金はどうでもいい・・・僕が出す条件は『若くて未婚の男』だ。メイド達はなかなか出会いの場がない・・・だから主人として機会を作ってあげないとな


まあサラに手を出したり強引に何かするようなら地獄の苦しみを与えてやると釘は刺すつもりだけど


てか料理人だけじゃなくて他の職業も色々入れた方がいいかな?庭師とか掃除屋とか・・・あっ、でもあまり入れ過ぎるとメイドの仕事がなくなっちゃうか・・・それはそれでマズイ気がするな・・・後でサーテンに相談しよう


「・・・」


ん?見るとセイムの手は止まっており呆然と僕達を見ていた


「どうした?もしかして口に合わなかったか?」


「あ!いえ・・・貴族様とお食事するのは初めてだったのですが想像と違ったもので・・・」


「そうか・・・まあ私も他の貴族がどのように食事するかは知らないけど・・・ここでは毎日こんな感じだ。食べながら喋るのも含めてな」


「ご主人様!」


チルは顔を真っ赤にして悲鳴にも似た声を上げる


僕とサーテン以外の男が・・・セイムがいるから恥じらいも生まれたのだろう・・・やはり料理人は男を何人か入れて・・・


その時玄関から扉を叩く音が聞こえた


サーテンはすぐにハンカチで口元を拭くと立ち上がり玄関へ


朝っぱらから来客?まさかファゼン達じゃないよな?


「ご主人様、お客様が来られましたがどう致しますか?」


来客を告げるサーテンだが今までと違う・・・今の言い方だとまるで断っても良いような言い方だ


「誰が来たんだ?」


「お客様はナージ・カベイン様と名乗られました。お約束はありません」


まあ約束は誰ともしてないからそりゃあそうだろうな・・・ナージ・カベイン・・・知らないな・・・サーテンも貴族じゃないから追い返しても構わないってスタンスなのかな?


「ちょうど食べ終わったところだ。何の用事か知らないが会おう・・・応接間に案内してくれ」


「畏まりました」


「みんなは食事を続けてくれ。あ、チル・・・客用と私に飲み物を頼む」


「はひほまりまひた」


「・・・口の中のものを飲み込んだ後にな」


まあ食べながら運んで来るメイドも斬新ではあるけど・・・


さて・・・ナージ・カベインか・・・一体何者なのやら──────

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