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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
294/856

290階 勝利

雰囲気が変わった?


まるで仮面を被っていないのに被っているような・・・


『ロウニール・ローグ・ハーベス』か・・・今までは『ロウニール・ハーベス』であったと言わんばかりだな


『流水』を止めてしまったのは私のミス・・・勝ちを焦った私の・・・


けど流れに逆らえなかったロウはまた流されるはず・・・流れをせき止めるには・・・まだ実力は足りていない!


まだダメージの抜けていないロウ・・・立ち上がろうとするが離れていても震えているのが分かる


もはや強い言葉も虚勢にしか聞こえず私の勝ちは揺るぎない・・・そう思っていた


再び『流水』を放つ為に間合いを詰めるとロウは身構え攻撃を待つ


受けに回ればまた流されるというのに・・・まだその時ではないようだな


わざと受けられるように回し蹴りを放ち、それを受けられたら死角から蹴りを放つ


ロウは左腕で回し蹴りを受けるが下側が疎かになり隙が出来た。左足を浮かしそのまま蹴り上げると彼の顎にヒットして頭は跳ね上がる。そして体を捻り回転させ着地するとがら空きになった腹部へ再び前蹴りを放った


次は仰け反った彼の懐に飛び込み『流波』を放つ・・・そう頭の中で描いていたが前蹴りを放った足を彼は両手で掴み固定する


「流れが・・・止まったね」


「・・・また流せばいい」


流れを変更し掴まれた足を支点にし反対の足で飛び上がると顔面に蹴りを・・・っ!


両手は足を掴んでいる為に頭はがら空きだった・・・そこに回し蹴りを放てば彼はダメージを食らい両手を離すだろう・・・そう思っていた


が、彼は自ら蹴りに向かって行き、額で私の蹴りを受け止める


「くっ!」


ダメージは・・・私の方が上か!・・・鈍い痛みが足首に走る


「蹴りに向かって来るとは・・・恐怖心をどこかに忘れて来たか?」


「軽い蹴りに・・・恐怖なんて感じね!」


チッ!・・・『流水』の弱点を・・・


『流水』は次に繋げる為に全力を出さずにいる・・・余力を残さないと次の行動が遅れてしまうからだ


それでも普通ならば向かい来る蹴りになど自ら向かう事など出来はしない・・・舐めていたのは・・・私の方か


「ならば!」


痛む足で床を蹴り、体を回転させ彼の手から足を抜く


着地し構えるが彼は一歩も動いていなかった・・・ここで間合いを詰めて攻撃すればチャンスだったのに・・・もしかして先程のダメージで動けなかった?・・・いや!



風が鳴る──────



咄嗟に両手を上げて防ごうとするが無数の風の刃は私を切り刻む


まさかここで『風鳴り』とは・・・


「舐めるなロウニール!」


「舐めてないよ・・・サラ」


防ぎ切ったと思った矢先に彼の声がすぐ近くで聞こえた


しまったと警戒するも時すでに遅く懐に入った彼は私の体に手のひらを当てた


『風鳴り』は私にダメージを負わせる為ではない・・・距離を詰める為!本命は・・・


『流波』


「このっ!」


流波は私が編み出した技・・・破り方も知っている


マナを流し込まれたらそれ以上のマナで押し返してやればいい・・・マナの扱いなら・・・まだ私が上だ!


「残念・・・それが狙いだ」


え?


マナを押し返そうとしたが彼の狙いは『流波』ではなく私の・・・マナ


手のひらから流し込まれると思ったマナはやって来ず、押し返そうと集中させたマナがどんどんと手のひらから吸われていく


「なに・・・を・・・」


「弟子が師匠を超えるにはもう少しかかりそうでね・・・武道家としてはまだ勝てない・・・けど、ロウニール・ローグ・ハーベスは・・・魔核を飲み込んだある意味魔人・・・そして飲み込んだ魔核は・・・マナを操るサキュバスのものだ」


サキュバス・・・サキの・・・魔核・・・


「まだ慣れてないからかサキとダンコに分かれてしまったからか触れただけだとなかなかマナは吸い取れないけど自らマナを当てた手に向けてくれるなら・・・簡単に吸い取れる」


ダンの盾と同じ能力・・・マズイ・・・離れないと・・・


両手を突き出し離れようと試みるがロウはもう片方の手を私の背中に回し抱き寄せる


そして・・・


「この方法ならマナを向けられなくても吸い取れる・・・サキュバスが精を搾取する魔族と言われる由縁かもね」


そう言って彼は私の唇を奪いマナを吸い取り始めた


ズルい・・・こんなの・・・逃げられない・・・


両手で押し返そうとするけど力が入らない


私は負けを覚悟しゆっくりと目を閉じ身を委ねた


すると彼は唇を離し私を抱き抱えるとボソッと一言『ゲート』と呟く


どこに連れて行かれるのか・・・そう思った矢先に固い地面に置か・・・え?ベッド?


場所は訓練所のまま・・・そうか・・・ベッドをゲートで運んで来たのか・・・


「・・・用意周到ね・・・」


「必ず・・・そう決めていたからね」


そう言って微笑む彼は無抵抗な私の服を剥ぎ取る


何度かこういう場面に遭遇してきた・・・けど・・・恥ずかしいけど嫌じゃない・・・


「その・・・初めてだから上手く出来ないかも知れ・・・んぐ?」


「・・・私もだから・・・ね?」


彼の口を塞いだ後、額と額をくっつける


もう言葉はいらない・・・後は全て流されるままに・・・



彼が触れるとその部分全てが熱を帯びる


彼は口や手で私の全てを熱くさせた


胸や足・・・腕からお腹から髪さえも・・・いつの間にか結んでいた髪は解け、その一本一本の髪の毛すら敏感に反応する


「ロ・・・ウ・・・来て」


誰かに触られるのがあれだけ嫌悪を感じていたのに・・・身体の全てが彼を求めている私がいた


両手を広げ彼を迎えると彼はコクリと頷き私の中へ


「・・・ん!」


「サラ?」


「・・・大丈夫・・・・・・多分・・・」


想像していたより・・・痛くはない・・・かな?


「動くよ?」


「・・・うん」


優しく上下する彼の優しさが中から身体全体を包み込む


もっと深く彼を感じたいと私は彼の背中に手を回し引き寄せた


彼はそれに合わせて動きを速め、徐々に感じた事のない感覚が大きな波となり押し寄せて来た


「・・・っ!・・・あっ・・・」


声を我慢していたのに洩れ出てしまう・・・唇を噛み締め出さないよう試みるもそれに気付いた彼は耳元で囁く


「聞かせて」


頭の先から足の先までまるでマナを流されたような衝撃が・・・その途端せき止めていた声は溢れ出し部屋全体に響き渡る


これまで出した事のないような声・・・以前の私はそんな声など出すものかと思っていた・・・他人に身を預け甘えるような声など・・・出すものかと・・・


「アッ・・・ハア・・・ア・・・ン・・・ロウ・・・ロウ・・・」


全身が彼を求める


快感が支配する


何も考える事が出来なくなり、本能が解放される



全てが繋がり



ふたつが・・・ひとつとなった瞬間だった──────




重なり終えた2人はベッドの中で見つめ合う


不思議とこれまでよりも深い繋がりを感じる


目を見るだけで彼が何を考えているか・・・分かってしまう


「まだ・・・足りない?」


彼は照れくさそうに微笑むと頷き私の上に覆いかぶさった


今度は両手を繋ぐ


これまで以上に密着し溶けてしまいそうな感覚に陥った


そして頭の中が真っ白になり全身が痙攣し浮き上がるような感覚に変わり必死に彼にしがみついた


触れ合っているのにも関わらず離れてしまうような・・・彼はそれを理解してかぎゅっと抱きしめてくれた


「イッ!・・・アアッ!」


「くっ・・・サラ!」


再び彼は私の中で果て力尽きる


互いの乱れた呼吸の音だけが部屋に響いた


「くっ・・・はぁ」


彼は私の上から転がり仰向けになる


髪がボサボサだ・・・確かベッドに置かれる前は結んでいたはずだから頭の上辺りに紐があるはず・・・


起き上がり四つん這いになり紐を探していると背後から視線が・・・そう言えば何も着ていなかったと思って隠そうとするが時すでに遅くお尻をがっちりと掴まれ・・・


「アグッ・・・アアッ!」


こ、この体勢はまるで・・・獣・・・


しかもさっきよりも更に奥へと・・・


「・・・ダ・・・」


ダメと言おうとするも快楽に支配されてしまう


自らも彼のリズムに合わせて動いてしまっていた


3回目ともなれば彼が果てる瞬間が分かるように・・・それに合わせるかのように私もまたあの感覚を迎えた


肩で息をしながら終えた後の熱い口付け・・・もはや何も考えられずただひたすら全てで彼を求める


本能の赴くままに──────





王都にある彼の屋敷にあるお風呂は4人で入っても余裕があるほど広かった


恒例になった旅の途中の癒しの時間・・・だが、今日は癒しの時間が尋問の時間に変わる



「サラ・・・やったわね?」



ファーネのその一言でハーニアとエリンの目付きが変わる


「本当ですか!?」「ついに・・・」


なぜ分かったの?いつも通りを心掛けていたつもりだったのに・・・()()()何食わぬ顔で馬車に戻りまるでダンジョンでひと汗かいてきましたという感じでいたのに・・・


「なぜ分かったか不思議に思っている顔ね・・・見ればすぐに分かるわ」


「・・・」


「別に隠す事じゃないでしょ?ぶっちゃけ遅かったくらいだし・・・それで・・・どうだったの?」


広い湯船に各々浸かっていたはずなのにいつの間にか3人に取り囲まれる


「どうって・・・」


「まっ、初めて同士だし気にする事はないわ。次第に良くなっていくと思うわよ?」


え?


「その辺私も聞きたかったんです・・・どうも上手くいかなくて・・・き、気持ちいいのはいいのですがなかなか・・・」


「そんなもんよ?特に慣れてない男なんて自分がイクことしか考えてないしね。やってく内に気付くはずよ・・・独りよがりはダメなんだってね」


「うーん、考えてはくれているみたいなんですけどね・・・どうしても・・・」


「まあテクも必要になるしね。私だって数える程しか・・・しかも特定の男でしかイッてないし・・・その域まで育てるのは時間かかると思うから長い目で見た方がいいわよ?」


「そうですか・・・ちなみにどんな感じなんですか?その・・・イクって・・・」


「そうね・・・個人差はあるかもしれないけど、頭の中が真っ白になって身体中に快感が走り天に昇るような感覚・・・かな?痙攣しちゃう時もあるわ」


・・・


「いいなぁ・・・経験してみたいなぁ・・・」


「ちょっとエリン!アンタの事はどうでもいいのよ・・・今はサラさんとロウニールの話でしょ?」


「それもそうね・・・で、実際どうでした?私は初めての時は痛いだけでしたけど・・・」


「あ、ああ・・・そうだな・・・確かに・・・えっと・・・」


「サラ・・・イッたわね?」


なぜ分かる!?


「全て吐くまで上がらせないわよ・・・洗いざらい全て話しなさい・・・事の顛末を」


「私も聞きたいです!今後の為に!」


「ぜひぜひ・・・私達の未来の為に!」



3人の勢いに気圧され全て話してしまった


まさかあの感覚が噂に聞くイクというものだったとは・・・道理で・・・


「・・・話だけじゃ相性が良いのか辺境伯様が凄いのか分からないわね・・・ちょっと試させてもらっていい?」


「いい訳あるか!何シレッと抱かれようとしている・・・ダメだ・・・ダメだぞ?」


「いいじゃない・・・減るもんじゃないし」


「減る・・・何か減るから!」


「・・・ケチ・・・」


ケチって・・・とにかく絶対にダメ・・・彼は・・・ロウは私のものなんだから──────

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