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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
292/856

288階 風呂場にて

きっとこれは夢に違いない


そうだ・・・夢・・・だってありえないだろ・・・これまで散々邪魔が入ったり間が悪かったりしていたのにいきなりこんな・・・サラと一緒にお風呂に入るなんて──────




ダンコと話をしているといつの間にか日は暮れていた


屋敷に泊まると決めていた僕はサラ達が用意した食事をみんなで食べる


やっぱりみんなで食事した方が断然美味しい・・・アダムは頑なに駄目と言うだろうな・・・サーテンは良いって言うのに・・・執事としての矜恃みたいなものがそれぞれあるのだろうか・・・


「ご主人様、お風呂が出来ておりますのでいつでも入れます」


そんな言葉に頷いて僕は食事を終えた後、すぐに風呂場へ


僕が入り終えないとサラ達が入れない・・・そう思って入ったらすぐに上がろうと思っていたのだが・・・


「ご主人様、お背中お流しします」


そんな声が風呂場に隣接されている脱衣所から聞こえた


そういうのはやめろと言ったのに・・・


後でサーテンにもう一度キツく言っとかないと思い断ろうとしたが・・・扉は開け放たれ一糸まとわぬ女性が姿を現した


「サ、サラ!?」


一糸まとわぬと言っても手ぬぐいで大事な部分は隠している・・・けど、その手ぬぐいだけ・・・それを外せばサラは・・・


「サーテン様に『ご主人様はそのような事は望まない』と言われたのですが『私には望んでいます』と答えると入れてくれました。よろしかったでしょうか?」


「あ・・・え・・・」


食い入るように見つめる僕に微笑むサラ・・・こ、これは断ったらサラが嘘をついた事になるしな!うん・・・それなら仕方ない!


僕が頷くと浴槽の近くまで来て桶でお湯を汲み体を流す


すると手ぬぐいが透けて・・・


見たいけど何故か見てはダメだと思ってしまい思わず首を捻って視線を逸らした


すると浴槽に入る音だけが生々しく聞こえ・・・僕とサラは今度こそ本当に一糸まとわぬ姿で風呂に浸かった状態となる


そして現在──────




手ぬぐいはサラの頭の上に・・・という事は丸見えのはず・・・なのに・・・お湯は透明なはずなのに・・・微妙に見えない!


「・・・そんなに見られると恥ずかしいのですが・・・」


「あ、ああ・・・その・・・どうして一緒に入ろうと?」


「お背中を流すのは1人では困難かと思いまして・・・それに少々お話が・・・」


「話?」


「はい・・・ご主人様が魔王復活の際に牢屋に捕らわれていた時・・・私が面会に訪れた際にお話した事を覚えてられるでしょうか?」


サラが面会に・・・もちろん覚えている


あの時告白されて・・・唇を・・・


「あ、ああ・・・」


「その時『私はローグに見合う女になる・・・君は私に見合う男になってね』と伝えた事も?」


「もちろん・・・僕は今でもその言葉のお陰で頑張れていると思っている」


付き合ってはいるけど・・・サラはメイドを続けている。それはその時に言った言葉を実行しているんだ・・・そして僕もサラに見合う男になる為に・・・


「あの言葉は・・・半分嘘です」


「え?」


「ご主人様がローグと分かった時、頭が真っ白になって混乱して・・・初めて心から好きになった人と失いたくない人・・・その2人が同一人物だったので・・・あの時はまだ気持ちの整理がついておらずただ恥ずかしかったので・・・ああ言ってしまいました」


「・・・」


「ご主人様が王都に行ったっきり連絡が取れなくなった時、そして同時にローグと連絡が取れなくなった時、2人が同一人物だと気付いたのです」


「・・・」


「それまでも何度か疑った事はあります・・・けど、確証には至らず・・・でも、その時気付いたのです・・・2人は同じ人物だと・・・そして安心しました」


「安心?」


「2人の人を同時に愛したのではなく・・・1人の人を愛していたのだと」


「・・・サラ・・・」


「私の中で膨らみ続ける二つの想い・・・その想いが一つとなった・・・ですが溢れ出そうな想いに蓋がされていました」


「蓋?」


「ご主人様の口からローグの正体を・・・自分であるという言葉を聞いていない、と・・・それが溢れ出そうになる想いの蓋となっていたのです。調べようとする気持ちと自ら告白して欲しいという気持ち・・・出来れば告白して欲しいという気持ちが募り始め・・・以前にこの屋敷を訪ねた時、ゴーン様が『ローグは極秘任務に当たっている』と聞いた時、ホッとしました。ああ、まだ自らの口から聞けるチャンスがあると・・・」


「・・・」


「溢れる想いは留まる事を知らず、ペギーやセシーヌの存在もあり焦りも・・・そんな時に魔王が復活し図らずしもローグの正体を知ってしまった・・・結局自らの口から聞く機会を・・・永遠に失ってしまったのです」


「・・・」


「知ってしまった以上は後戻りは出来ません・・・完全に外れずズレただけの蓋から溢れる想い・・・その中途半端に開きそこから出て来た想いがあんな事を口走らせたのです・・・全ての想いを告げられなくしてしまったのです」


「・・・」


「告白された時は天にも昇るほど嬉しかった・・・これで想いが遂げられこの方と共に歩める・・・そう思うと中途半端に開いていた蓋が再び動きまた溢れ出たのです」


「サラ・・・僕も・・・」


「ですが」


吸い寄せられるように近付こうとしたその時、サラが僕を睨みつける。僕の体はその視線の迫力に負け動きを止めた


「今日・・・馬車の上から林に向かおうとされた時、ご主人様は私に待つように言いました。何があるか分からないのに・・・何も仰らずに1人で私を置いて・・・」


「それは・・・」


相手はゴブリンだったし逃げられたらと思って・・・


「その背中を見た瞬間、私の中の蓋は再び閉じ始めました」


「え!?それって僕の事を嫌いに・・・」


「違います・・・もうこの気持ちは後戻り出来ない・・・もし貴方を失ってしまったら・・・耐え切れない・・・だから私が私を守る為に・・・本能的に想いを閉ざしたの・・・貴方を失ったらもう・・・生きられないから・・・」


だから怒ってたのか・・・僕は無意識にサラを不安にさせて・・・


「・・・僕も同じだ・・・サラが居ないと・・・」


「なら私を想ってくれるように自分を大事にして!貴方が死ねば私も死ぬ・・・私を死なせなさたくないなら・・・死なないで!」


「僕は死なない・・・サラを死なせない為に・・・」


これ程想ってくれているのに僕は・・・情けない・・・・・・・・・ん?


「もしかして今日キースと戦ってた時に『保たない』って言ったのは僕が死ぬかと思ったから?」


「いや、あれは・・・」


違うのか?じゃあどういう意味で・・・


「あれは・・・ひ、引かないでよ?・・・その・・・キース殿と戦っている姿を見てたら・・・何と言うか・・・」


さっきまでと打って変わって顔を赤らめモジモジするサラ・・・つまり・・・僕の戦いを見て欲情した?『保たない』ってこれ以上続けたら理性を保てないって事!?


「サ、サラ・・・」


ダメだ・・・そう考えたら理性が・・・


「ロ、ロウ?ちょっと顔が怖いけど・・・」


サラの真摯な告白に僕の理性の蓋は閉じかけていた・・・けどそんなのあんな表情見たら普通にぶっ飛ぶわ!


「ちょ・・・ね?ほら・・・待って・・・手の動きがなんか・・・」


ジャナもいない、邪魔する者もいない、服も着てない・・・こんなシュチュエーションで・・・最高のシュチュエーションで止まるほど人間出来ていない!


僕とサラはここで・・・あれ・・・嘘だろ・・・ちょっと・・・待て・・・僕は──────




・・・目が覚めると部屋の天井・・・うん、分かってた・・・どうせこんな事だろうと思ってた


この感じは屋敷の僕の部屋だな・・・のぼせて意識を失ってサーテン辺りに運ばれて来たって感じか?もうぶっちゃけ予想通り


これでもうしばらくしたらメイド服に身を包んだサラが『おはようございますご主人様』と言ってくるんだろ?分かってる分かってる


「ん・・・んん・・・」


ハッ!幻聴まで聞こえてきやがった・・・一体どうなってんだ?もしかしたら理は生きてて僕とサラは一生結ばれないって筋書きが・・・


「・・・ロ・・・ウ・・・」


ハイハイ、幻聴幻聴・・・まだ来ないのかな?そろそろ朝になっているはずだけど・・・


よく見ると部屋の中は真っ暗・・・窓の外も暗い・・・って事はまだ夜か


いつものパターンと違うなと思いつつ、もう一眠りしてサラが起こしに来るのを待とうとして横になり振り返ると・・・何やら人の気配が


「え?・・・サラ?」


サ、サラが横で寝てる!?


え、嘘・・・まさか・・・


ふ、服は着てる・・・僕もサラも・・・サラが着させてくれたのか?え?マジ?超恥ずかしい!


てか、どうしてこうなっている?まさか無意識に・・・いや、服を着ているからそれはない!ないはずだ!もしそうなら嬉しいような悲しいような・・・とにかく布団を見ても汚れてないしそれはないだろう・・・多分


てか、これってかなりチャンスなんじゃ・・・このままサラと初めてを・・・


「・・・」


完全に爆睡してますね・・・起こして・・・とも考えたけど今日は一緒に寝られるだけで満足しておこう


焦らなくても2人の気持ちは繋がっているんだ・・・そう焦らなくても・・・・・・・・・




「おはようございますご主人様」


・・・どうやらあれからすぐに寝てしまったみたいだ・・・目が覚めたら横にサラが・・・っていう憧れのシュチュエーションはなく、メイド服姿のサラが僕を起こす


もしかして夢だった?実は横にサラは寝ていなくて・・・


「ぐっすり寝られましたか?」


「・・・ああ・・・」


夢だったのかもしれない・・・結局僕はのぼせて気を失ってそのまま朝を迎えて・・・


「・・・一度起きられた時に襲われるかとドキドキしてしまいました・・・」


そっと顔を近付け耳元で囁くサラ・・・やっぱり夢じゃなかった・・・てかあの時起きて・・・ぬあああー!!


激しい後悔


あの時少しでもサラに触れていれば目を開けたサラと・・・


馬車が王都に着くまで後半月か?・・・それまでの間に絶対・・・絶対結ばれてみせる!


ロウニール・ローグ・ハーベスの名にかけて!──────

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