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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
289/856

285階 遭遇

王都を目指す旅は順調に進んでいた


日中は馬車を抜け出してダンジョンに行き、夜はみんなと共に野営する


気候も良く野盗も出て来ない・・・ひとつ不満を挙げるとしたらサラとの仲が一向に進まない事だ


ダンジョンに出掛けている時はもちろん、野営中は誰かしらが邪魔をする


風呂は王都の屋敷へ女子全員で行って2日に1回は男同士でも行ったりする・・・さすがにゲートを知らない御者は連れて行けないが・・・その風呂から帰ったら寝るだけなのだが二つある天幕を男女で分けやがった


普通貴族とその他じゃないんかい!


とは言えず仕方なくジケット達と寝る事に・・・最初は御者は遠慮していたが何日か経つと普通にみんなで雑魚寝状態・・・ハア・・・いつになったらサラと2人っきりで夜を過ごせるのやら・・・



ムルタナを出て数日が経った夜


「ロウニール・・・見張りの番だぞ」


「うん・・・ああ、もうそんな時間か・・・ってバカ!」


「おや?貴族様は見張りもしないと?」


「くっ・・・分かったよ・・・」


貴族が見張り番って前代未聞だろ・・・まあジケット達も日中馬に乗って疲れているだろうし・・・たまにはいっか


夜は火を絶やさないように薪をくべながら周囲を警戒する見張り番を交代で行っている


基本は2時間の交代制なのだがゲッセン達がエモーンズに行ってからジケットとマグが4時間交代で見張り番をしていた


本当なら女性だろうと関係なく見張り番をやるのだがどうやらジケットが男だけでやると言ったらしい・・・イイカッコしいめ


「ううっ・・・さぶっ」


日中はポカポカ陽気だがさすがに夜は肌寒い


焚き火で若干は寒さは緩和されるけど夜風が吹くと体が冷えてしまう


もう少し厚着をした方が良かったかな?


そう言えば変身した時に服装も想像通りに変わるけど厚着を想像したら変わる?・・・なんか深く考えるとどういう原理だって話だよな・・・うおっ!


夜空を見上げながらそんな事を考えていると突然視界を顔がニュっと現れた


「何を考えているの?」


「サラか・・・ビックリした・・・」


「ふふっ・・・どうやら嵌められたわね」


「嵌めれた?」


「ジケット達が2人で見張りをしているのが大変そうだったから手伝うと言ったらこの時間を頼まれたの・・・で、時間になって来てみたら・・・」


「僕がいた・・・って事か」


「そそ・・・隣いい?」


「もちろん」


ジケットの奴・・・大儀である


僕の隣に座ったサラは寒いのか体をくっつけて座る。触れ合う腕から温もりが伝わってきて寒さがどこかに吹き飛んでしまった


「で?何を考えてたの?」


「んーと・・・ほら、仮面で今変装してるでしょ?ちょっと寒かったから仮面を使って厚着の服に変装したら暖かくなるかなって・・・そしたらそもそもなんでそんな事が出来るのか疑問に思っちゃって・・・」


「確かにね・・・まあ厚着になるのは出来ると思うわ。だって仮面に使ってる魔核ってドラゴニュートの魔核でしょ?ドラゴニュートなんて人型からドラゴンの姿になってしかも巨大化するんだよ?それに比べたら服を増やすなんて簡単そうじゃない?」


「うん・・・言われてみれば・・・」


「私も『サラート』になった時に色々疑問に思ったけど性別まで変えちゃうんだもん・・・もう何でもありだし考えても分からないから、これはこういうものなんだって思うようにしたの」


「ははっ・・・そうだね。分かったところでっていうのもあるしね」


「そそ・・・ただ理解出来たらもっと別の使い道も浮かぶかも知れないし考えるのが無駄って訳じゃないのかもね。ほら、ロウが言ってたように厚着になれるとか気分転換で服を変えるとか・・・」


「マナは消費するけどね」


「それが問題・・・私達みたいにマナが多ければ問題ないけど他の人にとってはね・・・マナポーションも安くないし」


「変装の度合いによって消費するマナ量が違うみたいだから服くらいなら少ないかも・・・」


「それでも他の人にとっては多いと思うよ?けど・・・全ての人がロウの眷族になったら・・・それも解決するかもね」


全ての人が僕の眷族?・・・ゾッとしないな


「でも不思議よね・・・なんでマナが増えたのって3人だけなんだろう・・・ほら、他の3人以外でも仲の良い人はいるでしょ?ジケットだったりマグだったり・・・女性で言うとエリンやハーニアも・・・」


「・・・友情じゃダメとか?あ、愛情じゃないと・・・」


「うーん・・・そうかもね。それくらいしか当てはまらないか・・・」


へ、平然と言うんだな・・・結構緊張した僕がバカみたいだ


友情はダメで愛情なら眷族・・・つまりそれって僕を・・・いや、まあ分かっている事だけど・・・


「・・・そう言えば以前『眷族は家族』みたいな事を聞いた事があったな・・・」


「家族か・・・ふふっ・・・」


「?どうしたの?」


「いや、私には家族がいなかったから・・・」


『いなかった』・・・言葉が過去形になっているのが妙に嬉しい・・・


「そう言えば昨日ダンジョンで──────」




2人で焚き火の前で会話を続けた


過去の事、現在の事、未来の事・・・とりあえず過去の事の件については後でサキに文句を言おう・・・根掘り葉掘り話やがって・・・でもまあいいや・・・何となくだけどエリンが言っていた言葉が理解出来た


これが心の繋がり・・・


そんなこんなで夜が明けそうになり、サラは立ち上がると大きな欠伸をした


「・・・ちょっとでも寝ようかな・・・ロウはまた私の膝で寝れるでしょ?」


「え?・・・うん・・・」


「残念・・・てっきりやらしい事すると思ったけど・・・」


残念!?・・・それって・・・


「じゃ、朝まで見張り頑張ってね・・・ご主人様」


そう言って女子専用の天幕に戻って行くサラ


僕はその後ろ姿を眺めながらガックリと膝を落とす


「なんだよ・・・なんでなんだよ──────」




「おはよう・・・ってロウニール!?お前・・・何かあったのか?」


消えかけた焚き火をツンツンしている僕を見てジケットが驚きの声を上げる


何かあったからじゃない・・・何もなかったから悲しんでいるんだ・・・


タイミングが悪いと言うか空気が読めないと言うか・・・ハア・・・



朝食を済ませ片付けが終わると再び王都へ向けて出発する


僕は馬車に乗り込むとすぐに横になり先に乗って微笑んで迎えてくれたサラの膝の上に無言で頭を乗せた


「ふふっ・・・ご機嫌ななめのようですねご主人様」


「・・・別に・・・」


待ってたのなら一言言ってくれればいいのに・・・いや、そこは空気を読むべきか・・・とにかくチャンスはいくらでもある・・・目標は王都に着くまで・・・そう決めて今日はダンジョンに行かずに馬車の中で寝る事に決めた──────




「・・・ロウ・・・ロウ・・・」


遠くから声が聞こえる・・・もう少しこのままで・・・


「ロウ!」


「はい!」


勢い良く起き上がり周りを見ると馬車の中・・・振り返るとサラが少し緊張した面持ちで僕を見ていた


「・・・どうしたの?」


「ジケットが妙な気配を感じたみたいで・・・私の探索は風を使うから外だと効果が薄いの。だからロウに見てもらおうかと」


「野盗?」


「分からない・・・気のせいだといいのだけど・・・」


まあ野盗でもここにいるメンバーなら問題ないだろう・・・いや、野盗ってそもそもどれくらい強いんだ?Aランク冒険者並の奴がいっぱいいたらヤバいか・・・


「ちょっと外で確認して来る」


「うん、気を付けて・・・野盗の中にはたまに実力者も混じっているって話だから」


「分かった」


馬車はゆっくりと進んでいる・・・そのまま止める事なく扉を開けると『暗歩』を使って馬車の上に


「ロウニール?お前馬車の上に上って何してんだ?」


「ジケット・・・気配を感じたのはどの辺だ?」


「え?・・・ああ、獣かも知れないけど・・・ちょうど今通っている所の右側の奥にある林から・・・」


右の奥・・・探索関連はあまりやった事がないから不慣れだけど・・・やってみるか


意識を集中させ感覚を研ぎ澄ます


全体ではなくジケットの言う林に向けてマナを薄く広く・・・・・・・・・居た・・・って!?


「馬車を止めろ!ジケット達は周囲を警戒!」


「お、おう・・・って何が居たんだ?」


「居てはならないモノ・・・だな。一応確認に行く・・・ここは頼んだ」


「・・・分かった」


「ロウ!」


サラが馬車から乗り出し僕を見つめる


「サラはここで待っててくれ・・・行ってくる」


見える範囲だからゲートを繋げればすぐだけど・・・馬車の上から飛び立つと暗歩を使い宙を走る


あっという間に林へと到着するとさっき見つけた気配へと近付いて行く


何かの間違いであって欲しいけど、感じたあの気配は・・・


「・・・だよな・・・どうしてお前がここに居るんだ?・・・ゴブリン」


ダンジョンにのみ棲息する魔物・・・外で見掛ける事などあるはずがない。もし見掛けたとしたらそれは・・・


「どこかでダンジョンブレイクが?まさかそんな・・・ダンジョンブレイクの原因はマナ不足だ・・・それは国内だけに留まらず他国にも配信されているはず・・・だから起こる可能性はかなり低いはずなのに・・・」


マナ不足を解消するには冒険者を送ればいい・・・そうすればダンジョンはマナ不足に陥らずダンジョンブレイクも起きない・・・なのに起きた?どこで?


「ギッ!・・・ギッ!!」


僕に見つかって警戒するゴブリン・・・他には・・・見当たらない・・・一体だけはぐれて来たのかそれとも・・・


「話を聞きたいところだけど通じないしな・・・とりあえず・・・死ね」


あれこれ考えてても仕方ない・・・ゲートを開き剣を取り出すと間合いを詰め首を切り落とす


特に代わり映えのないただのゴブリン・・・だがその存在が不安を掻き立てる


念の為に魔核を取り出し死体は火魔法で灰にする・・・そして馬車に戻ると御者を遠ざけみんなに今あったことを説明した


「魔物が・・・嘘だろ?」


「どこかでダンジョンブレイクが?でも一体っておかしくない?」


「噂に聞けばダンジョンブレイクが起きると魔物がまとまって村を襲う・・・確かに一体は不自然だな」


「その一体がはぐれた?この付近の村は・・・メナスが一番近いかも・・・」


「そうなると隊長の元に一報入っているかも・・・でも報告する前に全滅していたら・・・」


「・・・あまり騒ぎ立てるとパニックになるかもしれない・・・僕が王都に行って確認してこよう。ジケット達はこのままカルオスを目指してくれ」


「分かった。合流したゲッセンさん達には?」


「伝えないでくれ・・・一応すぐに戻るつもりだけど・・・」


王都に行きギルドで確認して・・・話はそっからだな


「・・・私も行く」


「サラ?・・・え?」


振り向くとサラが何故か怒っていた


何故か分からないが断るともっと怒られそうなので・・・


「わ、分かった・・・じゃあ馬車に戻ってから僕とサラで王都に行く・・・みんなはさっき言った通りに」


「ああ、任せとけ」


ゴブリン一体でここまで慎重にならざるを得ないとは・・・それにサラの怒りは・・・どこから湧き上がって来たんだ!?──────

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