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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
288/856

284階 貴族ロウニール

「では私達四名はラル穣をエモーンズに連れて行ってから合流致します」


「ああ、頼んだゲッセン」


ラルは王都に連れて行かず、早くメイドの仕事に慣れてもらおうとファーネを除いたゲッセン達4人に屋敷へと送り届けてもらうことになった


本当はラルも女の子だから女性を1人付けた方が良かったかも知れないけど、まあ一日掛からずに着くだろうし問題ないだろう・・・何かあれば血の雨が降ることは全員分かっているだろうしな


衛兵5人が全員エモーンズに戻ってしまうと僕とサラが馬車から抜け出した後は馬車を守るのはジケット達4人になってしまう・・・それだと心許ないので誰が1人を衛兵からと選んだ時にファーネしかいなかった


ゲッセンは唯一頼れるから別行動しても大丈夫そうだったからエモーンズ行きは外せない。タンブラーはジケット達とコミュニケーション取れなさそうだし、デクトとファムズは言わずもがな・・・って事でファーネに残ってもらった


「お兄ちゃん!・・・じゃなくてご主人様!しっかりメイドの仕事を覚えてお出迎えするね!」


「ああ。それとグレアって人にこの手紙を渡してくれ・・・これを読んだら悪いようにはしないはずだから」


「うん!分かった・・・じゃなくて分かりました!」


グレアへの手紙には今回の経緯とラルへの対応について書いてある。一応妹のように思っていると書いてあるから厳しくしたりはしないはず・・・


「しゃあよろしく頼む。途中で合流出来なければカルオスで落ち合おう」


「はっ!」


貴族を乗せた馬車は通常1時間に1回休憩を挟むらしい


貴族と馬の休憩の為だ


けど僕達は休憩は不要と伝えているのでかなり進む速度は速い。1ヶ月を見ていた王都への道のりも恐らくは半分とはいかないまでもそれ以下で終わるだろう


なのでエモーンズに一度戻って一泊した後に僕達に追いつこうとしたら大変だ・・・そのまま進めばもしかしたら追い付く前に王都に着いてしまうかも・・・なので合流する為に落ち合わせ場所を決めておいた・・・それが人喰いダンジョンのあるカルオスだ


カルオスなら行き慣れているし知り合いもいるし知らない街に留まるより気が楽だ



ラル達を見送った後に僕達も村長と冒険者ギルド長に見送られ王都に向けて出発・・・ようやくサラと2人っきりに・・・


「ねえ・・・私も馬車に乗って・・・」


「却下」


「なあ、実際問題昨日はどう・・・」


「黙れ」


「ね、ねえ・・・ちょっと腰が痛いから馬車の中に・・・」


「自業自得だ!」


ファーネもジケットもエリンまで・・・次から次へと小窓を開けてきやがって・・・


「エリンは入れてあげたら?腰が痛いみたいだし・・・」


「ダメダメ・・・どうせ昨日の夜ヤリまくって腰が痛いだけだし・・・」


「ヤ・・・え?」


「あ・・・筋トレ?をヤリまくったんじゃないかな?多分・・・恐らく・・・何となく・・・」


ハア・・・なんで僕がエリンのフォローをしなくちゃならないんだ・・・


それにしても昨日はあまり・・・と言うか全然寝てないから眠気が・・・サラとダンジョンに行かないと・・・でも・・・




・・・・・・・・・心地いい揺れ・・・いい匂い・・・柔らかい枕・・・枕?・・・ここどこだっけ?・・・家・・・じゃなくて馬車の中・・・どうやらいつの間にか寝てしまったようだ


となるとこの柔らかいものは・・・


「ちょっと・・・起きたのなら顔を上げてよね・・・そこで動かられるとくすぐったいんだから」


くすぐったい?


目の焦点が合ってくるとどういう状況か理解出来た


膝枕・・・僕はサラの膝を枕に寝てたみたいだ


とすると・・・


「ちょ!顔をこっちに向けない!」


おお・・・これは・・・なんと言うか・・・絶景・・・


サラのお腹が目の前に・・・ちょっと悪戯心に火がついて思わずそのお腹に顔をグリグリと押し付ける


「こら!ロウ!・・・こら・・・あっ・・・」


これはお胸とはまた違った堪らなさがある・・・サラの匂いも満喫出来るし柔らかさも・・・ん?これって胸でやったら・・・い゛っ!?


「覗かれたらどうするの?」


耳が・・・引きちぎれる・・・


「ねえ!御者が馬を・・・プレイ中?」


「違う!」「違う!」


小窓から顔を覗かせたファーネに2人でハモって否定する


今日はゲッセンが居ないから覗かれ放題だな・・・干渉するなと伝えてたのに・・・まあ、今いるメンバーはゲートの事を知っている人達だから別に良いけどさ・・・


「・・・ふーん・・・とりあえず馬を休憩させたいみたいだけど止まって大丈夫?」


「そうですね・・・適当な場所で休憩しましょう」


「了解!・・・続きやってもいいわよ?」


「ファーネ!」


「昨日お風呂場で教えた絶技・・・覚える為には実践あるのみよ」


「~~~!余計なお世話だ!」


絶技・・・絶技!?


「その・・・」


「ロウ・・・今喋ると肘が落ちてくるわよ?」


「・・・はい」


この状態で肘を落とされたら顔面潰れるわ!


それにしても絶技、か・・・いつか味わえる日が来るのだろうか・・・




馬は体力があると言ってもずっと走れる訳ではない。特に馬車を引く馬はかなりの重量を背負っている・・・こまめに休ませないと怪我をしてしまう


「貴族様によっては換えの馬を用意して潰す覚悟で走らせる方もいらっしゃるのですが・・・私共はそんな事したくないのです・・・私共にとって馬は道具じゃなく仕事仲間ですから・・・」


現在、馬を休ませる為に簡易的な柵を作り放牧している


水もあるし餌もある・・・これで疲れが取れれば良いけど・・・何故か走り回る馬・・・休憩になるのか?これ


御者の話では馬のペースで走らせてくれる貴族の方が珍しいらしい。早く目的地に行きたいからか馬車の中が暇なのか・・・とにかく早く行けとせっつかれ結局馬に負担がかかり故障して時間が余計に掛かることもしばしば・・・


「馬も生き物だってのに・・・それに馬が怪我したのも御者のせいだと言い出して処罰したりとか・・・もうとんでもねえですよ」


「・・・すまんな」


「いえ!辺境伯様が悪いなんて・・・仲間内では辺境伯様のお付になった私共に同情の目を向ける奴らもいたんですがね・・・来て良かったですよ・・・馬も私共も大事にして下さる」


「なぜ同情の目を向けられたんだ?」


「辺境と呼ばれる地は大概道が悪いので馬も馬車も痛みやすいんですよ。でも貴族様には関係なくて・・・やれ揺らすなとか壊れたら整備不良だとか言われて首を切られる・・・それだけならまだしも投獄されたり命を取られたりも・・・」


道か・・・商人がよく通る道などは整備されているみたいだが通らない場所はそのまま放置だからな・・・やはり道の整備は最優先事項だな


「それにしても貴族は理不尽の塊だな・・・責任なんて下に押し付けるものではなく上が取るものなのに・・・」


「お前が言うなよロウニール・・・一応貴族だろ?」


「一応、な。貴族が何たるかを座学で習ったが実際にその通りの貴族なんていやしない・・・偉いから貴族なのか貴族だから偉いのか分かりゃしない」


「??・・・どう違うんだ?」


「バカね・・・何かを成し遂げたり何かをしようとしている者を人は尊び偉いと思う・・・それが貴族と呼ばれているか貴族ってだけで偉そうにするか・・・今の貴族はほぼ後者・・・でしょ?ロウニール」


「そういう事。ただ、じゃあ能力で決めるかって言っても難しいけどね・・・判断基準を設定するのも難しいしそもそも誰が選ぶんだって話だ・・・結局功績に対して末代まで自然に継承するやり方の方が楽だからな・・・変えるのは難しいだろう」


「功績もほぼ過去の戦争で得たものでしょ?脳筋ばっかが貴族になったのならその家系も脳筋ばっかなんじゃない?」


「そうでもないわよ。軍を率いて功績を上げた者は知略や統率力に優れている可能性が高いし・・・その家系なら賢いかも知れないでしょ?」


「・・・それもそうね。まっ、私達一般人からしてみれば賢かろうがなかろうが関係ないけどね・・・権力振りかざして迷惑さえかけてこなけりゃバカでもいいわ」


「そこで僕を見るなハーニア」


「バカでは困るわ。暮らしやすさは領主にかかっているからね・・・何でもかんでもやればいいってもんじゃない・・・お金を使い込めば貧窮するのは一般人だからね」


そうなんだよな・・・エリンの言う通りで何か大きな事をするにはお金が掛かる・・・そのお金は税収で行う事になるけど足りなければ税率を上げなくてはならなくなる・・・そうなると生活は苦しくなるし・・・でも長い目で見れば・・・


「エモーンズみたいにいきなり収益が上がるようなキッカケがないと厳しいよな・・・ダンジョンが出来て冒険者が押し寄せて・・・みたいな」


うんうん・・・エモーンズの場合とは違うよな実際・・・ダンジョンが出来て発展せざるを得なかった村と一緒にするのも・・・うん?


ふと気付くと共に休憩をしている御者の4人が僕達の事を見て微笑んでいた


「あ、申し訳ありません・・・つい皆様を見ていて口許がが緩んでしまいました。貴族様を多く知っている訳ではありませんが、微笑ましいと思ってしまい・・・こんな風に考えて下さる貴族様もいらっしゃるのだなと・・・」


「そうなのか?普通だと思うけど・・・」


「それが普通ならどんなに良いか・・・考えるのは先ずは御自身に得かどうか・・・それが『貴族』というのが一般認識となっております」


一般認識と思われるほど圧倒的多数って訳か・・・たまたまそういう貴族に出会ったのではなく


「差し出がましいと思いますが出来れば辺境伯様にはそのお気持ちのままでいて頂けたら・・・皆はたとえ痛みを伴おうとついてくると・・・」


みんなの事を考えてやる事ならたとえ失敗しても・・・か。そうだな・・・悩んでいたって答えが必ずしも出る訳じゃない・・・やってみないと分からない事の方が多いだろう・・・あっ・・・


その時サラの言葉を思い出す


『やりたいようにやるといい』


それは独りよがりな事ではなく、みんなの事を考える僕だからこそ向けられた言葉・・・僕ならやりたいようにやる事がみんなの為になると信じてくれてるからこそ・・・


それに気付いて振り向くと後ろに立つサラは目が合った瞬間に微笑んだ



サラは僕が思っている以上に僕を信頼してくれている・・・その信頼に応える為に・・・



僕はやりたいようにやる・・・みんなが幸せになるよう全力で──────

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