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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
286/856

282階 女心

村長に案内されたのは村にある一般的な料理店。村の人達や冒険者相手に商売をしている為か外装にはあまりこだわっていないようで少しボロさが気になるお店だった


中に入ると小さめの円卓テーブルに丸椅子が四つ・・・その組み合わせが五つあるだけのこじんまりとした感じ


メニューはテーブルにはなく壁に貼り付けられており、それを見て各々が食べたい物を注文した


僕は村長オススメの鶏料理・・・この村で育てた鶏を油でサッと揚げた一品だ


外の皮はパリッと中の肉はジュワッと・・・牛や豚の肉も美味しいけど鶏の肉もなかなか・・・いや、かなり美味しい。他の肉に比べて柔らかいのも良い・・・噛むと解けて口の中いっぱいに肉の風味が広がる


これで30ゴールドなのが驚きだ・・・毎日食べても月900ゴールド・・・そりゃ5000ゴールドも渡していたら余るはずだ


「どうでしょうか?」


「美味しいな・・・の割には値段が安過ぎじゃないか?」


「冒険者や商人の方ならともかくこれ以上上げたら村の者は食べれません・・・かと言って人によって値段を変えてはクレームが来ますし・・・」


稼ぎの少ない村人用か・・・でもそうなると店も儲からない・・・となると村にもお金が入って来ず・・・悪循環だな


「その辺も含めて考える必要があるな」


金は作れば幾らでもある・・・が、今回の件でそれだけではダメだという事は学んだ・・・やはり自分で稼いでなんぼだ


急激な発展ではなく村の人が自ら発展するよう仕向ける・・・時間は掛かるがそうしないと金の有難味が薄れてハーキンを増産する事に・・・何かさんぎょでもあればいいけどこのままだと村の中で金を回すだけだ・・・エモーンズにいる商会にアドバイスを求めるか?・・・クリット商会とか・・・でもあまりいい噂は聞かないし・・・



みんなお腹が空いていたのか注文した料理をペロリと食べ、村長の案内で宿屋へと向かう


冒険者や商人などが使う宿屋だが、住み着く冒険者は宿屋暮らしをやめて家を買ったりするのでたまに来る商人向けになっているみたいだ


「このような宿しかなく申し訳ございません」


「いや、気にする事はない。泊めてもらえるだけありがたい」


貴族によってはケチをつけそうだけど僕はベッドがあるだけで十分・・・部屋は空いているみたいで1人1部屋あてがわれた。足りなかったらサラは僕と同じ部屋でも良かったのだが・・・



割り当てられた部屋のベッドに座りひと息つくとそのままベッドに身を預け天井を見つめる


今日一日で色々な事があった・・・ムルタナのダンジョンに始まりラルとの再会にバデット、それにハーキンとの話し合い・・・色んな事を知る事も出来たし学ぶ事も出来た


結局僕は世間知らずだ・・・もっと世間を知らないと・・・


「ご主人様、今よろしいでしょうか?」


この声は・・・サラ!


「あ、ああ・・・大丈夫」


メイドモードの喋り方だから思わず僕もそれに対する返事をしてしまう


もう寝るだけだし・・・それでもサラが僕の部屋を訪ねて来るって事は・・・


「失礼致します。ご主人様に折り入ってお願いがあります」


部屋に入って来たサラはメイド服のまま・・・そうか・・・初めてはメイドと主人って感じで・・・


「ど、どのような願いだ?」


「・・・お風呂に・・・入りたいと思いまして」


「・・・お風呂?」


「はい。この村にはどうやらお風呂屋はないようで・・・なのでゲートを使いお風呂屋のある場所へ連れて行ってもらえないかと」


なんだ風呂か・・・いや、別に期待していた訳じゃ・・・


「屋敷とエモーンズの風呂はマズイな。なるべくゲートの存在は伏せたい・・・となると・・・」


風呂があるのは・・・僕の家か


「エモーンズの私の部屋なら使っても構わない。しばらく誰も使ってなかったから入れるか分からないが・・・」


「それでしたらファーネも連れて行ってよろしいでしょうか?彼女もお風呂が好きなのできっと入りたいと思うはずです」


「構わない・・・ファーネはゲートの存在を知っているしな。連れて来てくれれば私の家にゲートを繋げよう。帰る時は通信道具に連絡をくれれば再びゲートを開く」


「ありがとうございます。では早速ファーネを呼んで参ります」


「ああ。しかし私も風呂は毎日入ろうと思っていたが今日はさすがに疲れた・・・サラは疲れててもやはり入りたい気持ちが上回るのか?」


「ええ・・・いつでも準備をしておきませんと・・・では、呼んで参ります」


そう言って部屋を出たサラ・・・『いつでも準備』・・・それってそういう事だよな・・・いや、絶対そうだ・・・となるとここで?


色々と妄想しながらサラを待つ事数分・・・ファーネを連れて戻って来たのでエモーンズの僕の家にゲートを繋ぐ


風呂場の現状は確認してなかったけど何とか入れるだろう・・・てか王都の屋敷にすれば良かったか?サーテン達はゲートの事知っているし広い風呂もあるし・・・今度からはそうしよう。あそこなら2人で入っても十分な広さだし


通信道具を眺めながらソワソワしているとドアがノックされる


「・・・はい」


こんな時に誰だと思ったら・・・同じ宿に泊まっているハーニアとエリンだった


「あら?1人?」


「1人だけど?」


「ふーん・・・てっきり・・・まあいいわ。サラさん知らない?」


「エモーンズに行って風呂に入っているよ。ファーネさんと一緒に」


「なっ!?なんで誘ってくれないのよ!私も入りたかったのに・・・」


「そうなの?エリンも?」


「当たり前でしょ?女の子は毎日入りたいの!」


そうなのか・・・いや、僕も毎日入りたいと思ってはいるけどなかなか・・・


「あら?エリンはこれから汗かくのだし必要ないんじゃない?」


「ハーニア!」


これから汗をかく?寝汗?


「ここの壁薄そうだから憂鬱だわ・・・声は抑えてよね」


「ハ・ー・ニ・ア」


「何よ・・・もうバレバレだからいいでしょ?それにいい大人なんだしさ」


「だからってロウニールの前で・・・鈍感だし気付いてないかも知れないでしょ!?」


「誰が鈍感だ・・・てか、一体何の話をしているんだ?壁が薄いとか・・・声がどうとか・・・」


「そりゃあほら・・・色々聞かれちゃうじゃない?」


「何を?」


「何をって・・・アレよアレ・・・あの時の声よ」


「・・・なるほど・・・アレだな」


「そうよ・・・アレよ・・・ってアンタ分かってないでしょ?」


「うん、サッパリ」


なんだよアレって!


「ほらやっぱり・・・」


「嘘でしょ?エリンとマグが付き合ってる事は分かっているわよね!?」


「・・・え?聞いてないけど・・・」


マジか・・・そうだったのか・・・


「聞いてないとか・・・見りゃ分かるでしょ?2人の空気っていうか何となく変わったなとか・・・」


「・・・マグが喋るようになったとか?」


「そうそういうの!マグもアレで自信ついたみたいでね・・・エリンももうメロメロで・・・」


「ハーニア・・・いい加減にしないとぶっ飛ばすわよ!」


「ハイハイ・・・ってロウニール・・・アンタ顔真っ赤だけど・・・本当に本気で知らなかったの?」


はい・・・知りませんでした・・・まさかエリンとマグが付き合って・・・突き合っているなんて・・・


「だから言ったのに・・・ハーニア!」


「ご、ごめん・・・だってロウニールもサラさんと・・・だから・・・」


「・・・えっと・・・僕とサラはアレってませんけど・・・」


「はあ!?嘘でしょ?」


「え?本当に?・・・ロウニール不能なの?」


「不能じゃないわい!その・・・タイミングが悪くて・・・ほら、いきなり辺境伯なんてものになって忙しかったしサラもメイドの仕事で忙しかったから・・・」


「うわぁ言い訳してるし・・・どう思います?奥さん」


「奥さん言うな!・・・でもまあ・・・ガッカリね」


「ガッカリ?」


「忙しい忙しいって・・・その合間を縫ってでも会いたいと思うのが普通じゃない?そんな感じだとサラさんは不安になるはず・・・『本当に私の事を好きなのだろうか?』『もしかして私の体は魅力がないのか?』『別に好きな人が出来たのかも』・・・そうやって不安になり別の男に相談していたらその男と・・・」


やめてくれー!!バカな・・・サラに限ってそんな・・・別の男?・・・アダム??・・・いやいやそんな・・・


「女はね・・・待っているのよ・・・ずっと・・・」


「・・・どうすればいい?」


「自分で考え・・・なさいと言いたいところだけど・・・まあいいわ・・・少しだけなら教えてあげる」


「よっ!経験者!」


「ハーニア・・・後で覚えておきなさい・・・とりあえず言えるのは・・・」


「言えるのは?」


「がっつき過ぎない事。ひとつ聞いておきたいのだけど・・・まさかアレ目的でサラさんと付き合った訳じゃないわよね?」


「違います」


「ならいいわ。もしそうならねじ切ってやろうと思ったけど・・・」


何を!?


「なら簡単よ・・・優しく抱き締めるの。心が繋がるまでね」


「心が・・・繋がるまで・・・」


「抱き締められると相手の温もりが伝わってくる・・・その温もりが心まで温めてくれるの・・・すると自然と開いてくる・・・」


「股が?」


「ハーニア!・・・ゴホン・・・色々とよ。まあ、主に気持ち的なものが開放されるの・・・そして自然と・・・」


「股が・・・ちょっ、拳を鉄化しないでよ!冗談よ冗談!」


「・・・とにかく後は成り行きよ・・・『やるぞ!』って感じじゃなくて『いつの間に!?』って感じかな?まあ最初はそんな感じで後は・・・まあ、ね」


「ここからは聞かない方がいいよぉ・・・まともにエリンとマグの事見れなくなっちゃうから」


「・・・」


「無言で鉄化やめて!怖いから!」


初めは優しく抱き締めて・・・後は自然と・・・言われるまで思い付きもしなかった・・・そういうのが大事なんだな・・・


「危なかった・・・ある人に騙されて後ろからパンツ下ろしてそのままの勢いで・・・」


「ちょっとアンタ!シレッと何言ってんの!?」


「最低・・・最低」


「み、未遂だから!いや、その気になった僕が悪いんだけど・・・女性もそれを求めているって聞いて・・・」


「んなわけないじゃんアホじゃん」


「まっ、中にはいるかもしれないけど・・・それって心の繋がりは無視した関係だよね?そんなのでいいの?」


「・・・良くないです・・・」


全くもって・・・良くないです・・・


「アンタも大貴族とやらになったんなら・・・1人の女を目一杯幸せにしてみなよ!そしたら私達も声高々に言うわ・・・『あの大貴族は私の親友よ』って」


「・・・ハーニア・・・」


「そそ、あんまり私達に恥かかせないでよね?他の貴族がどうこうなんて関係ない・・・エモーンズのロウニールとして恥ずかしくない行動するのなら・・・私達はいつでも助けてあげるからさ」


「・・・エリン・・・」


「そろそろサラさん達帰って来る頃かしら?・・・邪魔者は退散しますかねエリンさんや」


「そうね・・・もし音が気になるなら少しマグ達を連れて外に行ってようか?」


「べ、別に・・・」


「そっ・・・まあ、分からない事があったらまた聞いて」


「もうベテランの域ね」


「ハーニア!」


「この宿は今夜大合唱・・・ハア・・・私の春はどこへやら」


「大体アナタもねえ・・・」


突然やって来た2人は言い合い?をしながら部屋を出て行ってしまった・・・残された僕はふと我に返り通常道具を見ると・・・光っている


ドキドキしながら僕の家にゲートを開き愛しの彼女の帰りを待つ



長い夜が・・・始まろうとしていた──────

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