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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
277/856

273階 屋敷にて

「むふふふ・・・」


〘気持ち悪いわね・・・いつになったらその不気味な笑いは収まるの?〙


〘一生このままかも〙


〘なるほど・・・さすが()境伯だわ〙


〘・・・なんだか字が違うような気がするけど気のせいか?・・・〙


まあいい・・・周りから何を言われようともサラのお陰で元気百倍アソコも百倍だ


〘うわぁ・・・〙


ダンコ・・・心を読むな心を



それはそうとあまり浮かれてばかりもいられないな・・・公式な発表はまだみたいだけどエモーンズ、ムルタナ、ケセナの管理をしなきゃいけないんだ・・・右も左も分からないから発表される前に準備だけでもしておかないと・・・


「ご主人様、お客様が参られました」


執事のアダムがドアの外から来客があると告げる


誰だろう・・・まだ国から正式に発表は行ってないから僕がここにいることを知る人は少ないはずなのに・・・


「誰が来た?」


「存じ上げません。ただ『セシス・フェイが来た』と伝えて欲しいと・・・」


セシス・フェイ?あのパーティーの時の貴族の1人か?・・・いや、貴族なら爵位名も名乗るはずか・・・


「分かった。通せ」


「はい。どちらでお会いになられますか?」


「ここでいい。この部屋に通せ」


「畏まりました」


ふぅ・・・アダムやメイド達に命令口調で話すのはしばらく慣れそうにないな。最初普通に話していたら注意されてしまった・・・面と向かっては言われないが後から叱責されるらしい・・・誰にだよ


まあ、是非命令口調でお願いしますと言われて断る事も出来ず頑張ってはいるけど・・・ハア・・・


「ご主人様、お連れ致しました」


「!・・・アダム・・・お客様と僕に飲み物を」


「畏まりました」


アダムがセシス・フェイと名乗る男を連れて部屋に入って来た。そして全てを察するとアダムを退室させセシスと2人っきりとなる


「何しに来た?・・・レオン」


「ご挨拶だな。街を守るのに少しは貢献したと思うが?」


「なら国に言ってみれば?報酬が貰えるかもしれないよ?捕縛と引き換えにね」


「とうとう心も国の犬に成り下がったのか?」


「どうだろうな・・・ただこれだけは言える・・・国が与えるような餌で僕は決して尻尾を振らない、と」


「それを聞いて安心したよ・・・座っても?」


「お好きなように」


ようやく思い出した


セシス・フェイってレオンが前に冒険者ギルドで使っていた偽名だ


まるで駆け出しの冒険者みたいな姿の彼はソファーに座ると僕もその対面に腰を下ろす


本気であの時の報酬目当てで来た訳じゃないはず・・・だとしたら一体・・・


「それで・・・『タートル』に入る気になったかな?」


「どうしてそうなる・・・ハッキリと断ったはずだろ?」


「貴族になり少しは国の闇に触れたのでは?それとも闇に堕ちたか?」


「・・・闇には触れた・・・けど内側から変えれる程度だ」


「ほう?どの闇に触れた?」


「メイドという名の奴隷・・・」


「なるほど・・・深淵には程遠いな」


結構それでも衝撃的だったんだけどな・・・剣奴とメイド・・・この制度を変えないと国は腐っていくと感じた。けど国に喧嘩を売って変える程じゃない・・・考えれば色々と方法はあるしね


レオンは何を見たんだ?何を知ったんだ?聞いても答えてくれないけど余程の事を見て知ったのだろう・・・国に反旗を翻す程の深淵とは一体・・・


「・・・やめる気はないのか?今の僕は敵となるぞ?」


「やめる気はない。これまで失った命もまた原動力となっているからな」


「失った?奪ったの間違いだろ?」


「一方的なら奪った事になるだろうけど私は機会は与えた・・・怠慢も罪であり敵となりうるなら減らすべきだろ?味方になれば戦力になったかもしれない・・・だから私にとっても損失だから『失った』だ」


「・・・なぜそんなに事を急ぐ?」


「命は限りがある・・・それに邪魔が入る可能性も・・・」


「失礼します。お飲み物をお持ちしました」


レオンの言葉を遮るように飲み物を持って来たメイドは・・・サラだった


「?・・・サラ・セームン?」


「はい?・・・っ!あなたは・・・」


サラが顔を上げた時に2人は目が合い一瞬で互いの正体に気付いた


「Aランク冒険者の君がメイド?面白いな・・・そうなったか」


「セシス・・・いえ、レオン・ジャクス・・・あなたがなぜここに・・・」


膠着状態の2人・・・レオンの『そうなった』って言葉は気になるけどとりあえず・・・


「サラ・・・飲み物を置いてここに・・・一緒に聞こう・・・犯罪者の言い分をね」



レオンと僕の前にコーヒーが入ったカップを置くとサラは僕の隣に座りレオンを睨みつける


闇組合『タートル』の組合長レオンが目の前にいるのだ・・・睨んでも仕方ないと思うけどここで戦い始めるのは勘弁して欲しい


「・・・そう見つめられると飲みにくいのだが・・・」


「そう思うなら帰ったらどうだ?それとも私に殺されに来たか?」


「物騒だな・・・私が君に何かしたか?」


「何かしたかだと?私を攫い人質にして・・・ケン達も・・・それに組合員を何人も殺したくせに!」


「あの時は失礼した。私も余裕がなくてね・・・是非とも手に入れたい人材を前に形振り構っていられなかったのだよ」


「随分と惚れられたみたいだな」


「今でもぞっこんだよ・・・ロウニール君」


ぞっこんって・・・女性ならまだしも男からは聞きたくない台詞だな


「・・・彼をどうするつもりだ」


「何もしない・・・仲間に引き入れるのは難しいみたいだからせめて大人しくしておいてくれと頼みに来た」


そういう内容だったっけ?


「・・・何をするつもりだ」


「答える義務もなければ義理もない」


「・・・」


「サラに義務も義理もないなら・・・僕にはどうだ?」


「君には貸しはあっても借りはない。仲間になってくれるなら別だがな」


だから仲間になんてならないって・・・しかしやはり謎だ・・・なぜそうまでして僕を仲間に入れたがる?今の僕なら何となく分かるけど最初に会った時の僕は・・・


〘ねえロウ・・・もしかしたらこの人間も国も求めている力は同じかも・・・〙


〘ダンコ?・・・って言うと?〙


〘一度聞いてみて・・・求めているのは──────〙


「魔物を?」


ダンコの話を聞いていて思わず口走るとレオンが僅かに反応した


ダンコの話では過去に人間に味方をした魔族がいた


その時代の魔王が復活する前・・・ダンジョンで暇を持て余していた魔族が気まぐれで特定の人間に味方したという・・・その時にその魔族は自らが先頭に立って戦うのではなく魔物を使っていたらしい


もしかしてレオンも国も・・・僕が魔族と思って?でもなぜ魔物を使いたがる?


〘人間にとってはこれ以上ない戦力でしょ?人間から見たら無限に湧き育てる必要のない魔物は味方になったらどれほど心強いか敵になったらどれほど脅威か・・・〙


確かにそうだな・・・兵士は育てるのに時間がかかるし数に限りがある・・・それに比べて魔物は無限とまではいかないけど数を揃えるのも簡単だし何より育てる必要がない・・・それに休憩も食事も要らないし・・・小規模なダンジョンブレイクでも国の一大事扱いなんだ・・・もし魔族が味方して魔物を操れたら・・・相手の国はたまったもんじゃないはず


国は魔族が味方した時代の文献を見つけて魔族を探していた?じゃあゴーンがダンジョンを研究しているのは魔族を探す為なのか?


レオンはそれを知って止めようとしている?でも僕を魔族と思っていたのなら殺せばいいだけ・・・仲間にする必要はない・・・なぜだ?


「ロウ?魔物って・・・」


「・・・とりあえずレオン・・・これだけは言っておく。僕は魔物を戦争の道具にする事はない」


「え?ちょっと戦争!?・・・突然何を・・・」


「それだけ聞けたら十分だ・・・今はね」


「え?え?・・・一体何の話をしているの?」


やはりレオンは僕が国からの要請で魔物を使う事を懸念していたらしい。もしかしたら仲間にしようとしているのもより確実に魔物を使わせないようにしようとして?


聞いてもどうせ答えてくれないだろうから聞かなかったが・・・何となくそんな気がした


レオンは満足したのかカップに入ったコーヒーを飲み干しソファーから立つと部屋を出て行った


見送りもせずレオンが座っていた場所を見つめていると横から視線を感じた


「で?どういう事?」


「・・・レオンはどうか知らないけど国は僕を魔族と勘違いしていた可能性がある。過去・・・どれくらい前か知らないけど魔族が人間の味方をした記録があるらしい・・・国はそれを信じて魔族を探し僕を見つけた・・・正確にはローグを」


「ローグが魔族と勘違いして・・・それで抱え込もうと?でもどうして魔族と勘違いしたの?」


「過去の魔族の特徴と一致したのかもしれないし魔族しか知り得ない情報を持っていたから判断したのかもしれない・・・恐らくゴーンの目的はダンジョンを研究するのではなく魔族を探す事だったのかも・・・」


魔族の特徴は分からないけど知り得ない情報については心当たりがある


『ダンジョンブレイク』


長年各国が原因を突き止めようとしていたにも関わらず不明だった原因を僕がアッサリと突き止めたから・・・ダンジョンに聞いたっていう荒唐無稽な話よりも魔族だから知っていたって考えた方がしっくり来たのかもしれない。それで僕を魔族と思って・・・


「魔族を探して国は何をするつもり?さっき戦争がどうとか言ってたけどもしかして・・・」


「うん・・・フーリシア王国は戦争を仕掛けようとしているのかもしれない。その為に僕を利用しようとしているかも・・・全ては憶測だけどね」


「・・・まさかレオンってそれを止めようとしているとか?」


「いや、それは違うと思う。それなら『戦争を止める為に力を貸してくれ』と言って人を集めた方が効率がいい・・・彼は目的も動機も決して言わないし、仲間を集めるやり方も強引で時に残酷だ・・・恐らくだけど『戦争を止める』という大義名分などではなく個人的恨みが理由・・・だと思う」


ただ無差別に人を殺そうとしているようには思えないけど・・・目的の為には手段は選ばないだけで・・・


「ロウは・・・戦争に魔物を使わないのよね?」


「うん・・・使うつもりはないよ。王様に頼まれてもね・・・もしそれで国を追われる事になったら出て行くだけだ・・・そんな国に未練はない」


「その時は私も一緒・・・よね?」


「当然」


そうはならない事を願うけど・・・ね──────

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