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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
266/856

262階 ペギーデート

「っ!・・・これは・・・」


タクー・・・美味いじゃないか!


名前から勝手に豚を想像していたがどうやら牛みたいだ・・・一口大に切った肉を赤みが少し残るくらいに焼いて特製のソースがかけてあった。そのソースが絶品で口に広がる肉の味を邪魔することなくそれでいて薄くもない・・・肉の味のいい引き立て役になっている


三切れしかないのが残念だが・・・それでも十分お裾分けしてもらった気分だ・・・タクー・・・ありがとう


「この『キョロちゃんの絶叫油地獄』も美味しいよ」


ネーミング!


鶏肉・・・なのか?まさか生きたまま油の海に・・・いや考えるのはよそう・・・あまり考えると食べれなくなりそうだ


しばらく無言で頼んだ料理を口に運ぶ時間が続いた


どれも美味しくて食が進む・・・この店は流行りそうだな・・・店内も綺麗だし値段もそこまで高くないし・・・まあネーミングセンスがアレだけど


「・・・そう言えば聞いた?ジケット達が『エモーンズシールダー』に入ったって」


「え?そうなの?」


日中ダンに会った時はそんな事一言も・・・


「うん。サラさんが勧めたんだって・・・ほら、『ダンジョンナイト』が解散しちゃったし組合は他にないから・・・」


「サラが・・・」


まあそうか・・・同期の組合だからやりづらい事もあるだろうけど組合に加入していた方が冒険者としてはメリット大きいし・・・うん?


「どうしたの?ペギーちゃん」


「・・・サラさんはサラで私はペギー()()()なんだ・・・なんか壁を感じるなーって」


最近色んな人からそのような事を言われるのですが・・・なかなか難しいんだよなぁ・・・呼び方を変えるのって


「それにその服・・・サラさんから貰った服だよね?」


普段着はほとんどないから制服の時以外は武道服を着ているのだけど・・・あれ?なんかマズった?


「う、うん・・・着心地良いし動きやすいし・・・」


「そう・・・今度一緒に服買いに行こう」


「え、あ、はい・・・」


顔は笑顔なのになんだか怖い・・・有無も言わさぬ迫力があるぞ


「とにかく!・・・今度から私の事は『ペギー』って呼んで。それと私と会う時はその服じゃなくて今度買う服を着てきてね」


「・・・はい・・・」


それから食事をしながら会話を続けていると今日ダンと話した内容になった


「へぇーダン君って意外とパーティー想いなんだね」


「うん・・・だけどなかなか思い付かないんだよね・・・相手を近寄らせないかもしくは近付いても引き離せるか・・・」


「うーん・・・魔法ならいくつかあるけどね・・・ファイヤーウォールとかその辺は防ぐと言うより近付けさせないって意味合いが強いし」


ファイヤーウォール・・・炎の壁か・・・確かに防ぐって感じじゃないな。炎の壁に飛び込んで来る魔物は少ないだろうし、目の前で出せば熱くて離れたりするだろうし・・・そっか、そっち方面で考えればいいのか


「さすがペギーちゃ・・・ん、んん!・・・ペギー」


「ふふっ・・・少しずつでいいよ・・・少しずつ・・・ね」


「ハ、ハハッ・・・ところで欲しい武器とかある?みんなにもあげてるしペギー・・・だけにあげないのも・・・」


この店のテーブル同士は結構離れているから聞こえないとは思うけど少し小声で言うとペギー・・・も察したのか僕に顔を近付けて小声で話す


「うーん・・・マグの持っている杖は私には使いこなせそうにないかな・・・理想は魔法を連発出来る道具があればいいけど・・・無理よね?」


魔法を連発か・・・マホの杖みたいにストックすれば出来なくはないけど・・・


「考えてみるよ」


「ありがとう・・・ところでロウは作らないの?自分の武器」


ペギー・・・にロウと呼ばれて少しドキッとした。そう呼ぶのは両親の他にダンコ、サキ、サラだけだ・・・なんだか距離が近付いた気がするな・・・


「一応仮面とマントがあるけど・・・」


そう言えば武器はなかったな・・・試しに色々な武器は作ったけど自分専用の能力を持った武器はまだ作ってない


作るとしたらどんな能力だろ・・・魔王を斬った剣・・・あのスライム剣は一度しか使えないしな


魔力とマナをぶつけて反発させる・・・その反発する力は大きければ大きいほど強くなる。スライムの魔核を使った剣はスライムの特性と同じように空っぽだ・・・その空っぽの剣に上手くふたつの力をぶつけ反発させた時に出る強力な力の塊で魔王を斬った・・・けどスライム剣はその反動で粉々に・・・手でやったとしたら僕の手がスライム剣みたいになってたと思うとゾッとする


恐らくどんなに強度を上げても無駄だろうな・・・あの力は強力過ぎる・・・まあ勇者しか倒せないはずの魔王を斬れるのだから当然か


「ロウ?」


うぉ!可愛い!


って、僕が考え込んでいるとペギーが僕の顔を覗き込んで首を傾げていた・・・危なく口に出して可愛いと叫びそうに・・・ん?危なく??


「い、いや、自分に武器を作るならどんなのがいいか考えちゃって・・・」


「考えるのはあとあと・・・せっかく2人っきりなんだし黙ってたらつまらないでしょ?」


「そうそう・・・考えるのは1人の時・・・2人の時は口に出さないと・・・何事も、ね」


・・・なんだろう・・・随分と含みのある言い方を・・・


「そ、そうだね・・・1人でいる事が多くて色々考え込んじゃうのが癖になってるのかな?」


「そういう癖は直していかないとね・・・私を練習台にしてもいいよ?例えば心に秘めた言葉を言う練習とか」


心に秘めた?これはもしや告白!?・・・いやいや、それは・・・


「ん?」


「・・・あー、えっと・・・お、美味しいねこのタクー・・・」


「それキョロちゃん」


「え?・・・ははっ・・・はははっ・・・」


ペギーの何か言いたげな視線に乾いた笑いを浮かべる事しか出来なかった



その後も微妙な空気のまま食事会は終了・・・今度ペギーの休みの日に服を買いに行く約束はしたけど・・・どうも上手くいかない


〘告白しないの?〙


ダンジョンの司令室に来て黄昏ているとダンコからド直球な質問が来た


〘そんなに焦る必要ないだろ?〙


〘・・・そうね・・・選ぶ時間はまだあるしね〙


くっ!そういうつもりじゃないんだけど・・・


〘初恋の人間、ローグにベタ惚れの人間、ロウにベタ惚れの人間・・・果たして誰を選ぶんだか。もしかして3人とも・・・〙


〘んなわけあるか!・・・分からなくなったんだよ・・・僕が本当に誰が好きなのか・・・〙


いくら鈍感な僕でも分かる・・・3人が僕に好意を寄せてくれていることは


でもそう思ったら途端に・・・贅沢な悩みだって思われるかもしれないけどじっくり考えて結論を出したい


〘まっ、ロウがそう言うなら別にいいけど・・・ウダウダしてると取られちゃうかもよ?〙


うっ・・・そうなんだよな・・・3人とも綺麗だし・・・ペギーは冒険者達に言い寄られサラは色んな人が狙っててセシーヌは親衛隊までいる始末・・・こうしている間にも誰かに・・・


「ダメだ!」


《んにゃぁ!!?いきなりにゃんなの!?》


思わず叫ぶと僕の膝の上が定位置となったサキが驚き毛を逆立てる・・・てか、日に日に猫に近付いていくな・・・


「変な虫が付かないように対策しないとと思って・・・」


《はあ?虫?》


「い、いや・・・ほら・・・これから何が起こるか分からないだろ?だからセシーヌに贈ったようにペギーとサラにもペットを贈ろうかと・・・」


《ああ、あの白いのね。突然何を言うかと思ったら・・・ははーん、さては・・・きもっ》


「きもっ言うな!・・・別に監視する訳じゃ・・・」


《変な虫とか言って恋敵でも現れたら排除するつもりでしょ?何を考えてたか知らないけど独占欲が強いこと強いこと・・・さっさと選べばいいのに・・・にゃん》


「にゃんを取ってつけるな。そうじゃなくて危ないだろ?魔王がいなくなって何が起きるか分からないのだから・・・いざという時の為に・・・そういう思いでセシーヌに猫を贈ったんだし・・・」


《はいはい・・・どうせそっちの私に言われたんでしょ?『早く選べ』って・・・優柔不断は傍から見てるとイライラするのよね・・・にゃん》


くっ・・・やはり元々は同じ核・・・考える事は一緒か


「・・・とりあえずダンの武器にペギーの武器・・・それとペギーとサラに贈るペットを創る・・・時間が余ったら僕専用の武器も作ってみるか・・・」


《ロウ専用?・・・それは面白そうね。どんな武器を作る予定?》


「・・・まだ考え中・・・」


《ふーん・・・魔物もしばらく創らなくてよさそうだし・・・暇だから見物しようかしら》


「・・・邪魔」


《にゃんだとぉ・・・魔物の知識もないくせにぃ・・・》


「それならダンコに聞けば・・・」


〘私は知らないわよ?その辺の知識は全部サキが持ってちゃったから〙


「・・・」


《あら?もしかしてダンコに『私は知らない』とか言われちゃった?そうよね・・・私とダンコは離れた時点で知識の共有が出来ないし私に知識があるって事は・・・》


「サキ」


《にゃあに?別に土下座して新鮮な魚を何匹か用意してくれさえすれば手伝ってもよろしくてよ?》


「主人として命令する。{手伝え}」


《ぐっ!汚いにゃ!マスター権限を使うにゃんて・・・》


ダンコは僕と同化しているので同格だ。けどサキはダンコと離れ、一体の魔族として僕の名付けを受け入れた。それによりスラミやシャドウセンジュと同じように眷族となった・・・言わば主人と従者のような関係だ


魔王が使ってた言霊のように魔力を込めて命令すると逆らえない・・・まあ普段は命令なんてしないけどね


サキの言っていた『マスター権限』とはその命令の事だ


他にも攻撃出来ないとかダンジョンにいる魔物のような制約があるらしい


「マスター・・・私も命令されたいのですが・・・」


スラミが今のやり取りを見て羨ましそうにしている


別に権限を使うまでもなく聞いてくれるから必要ないのだけど・・・


「なら少しは{休め}・・・働き過ぎだスラミは」


「はい!休みます!」


権限使わなくても聞いてたろ?・・・まあ嬉しそうだからいっか


「けどマスター・・・見ていない間に人間が死んだら・・・」


「その時はその時だ・・・だって『ダンジョンは常に平等』・・・だろ?」


エモーンズの冒険者は恵まれている・・・と思う


各階にゲートはあるし魔物の配置にも気を配られてるし・・・だから時々は死ぬかもしれないって時があってもいいと思う・・・まあ、時々僕も見るし・・・


「さて・・・久々の工作の時間だ・・・少し頑張るか!──────」

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