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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
236/856

233階 解散

帰って来た・・・とうとうエモーンズに!


エモーンズに帰ると教会に行った時、セシーヌに薄ら涙を浮かべられた時は心が揺らいだけど・・・やっぱりここが僕のいる場所だ


「私はギルドに行く・・・ロウニールは家に帰って休め。他の者が使っていたから逆に綺麗なはずだ・・・使ってもいいが汚すなと言っておいたからな」


「ありがとうございます!」


家は人が住んでないとダメになるのが早いらしいからな・・・誰かが使って換気とかしてくれた方がずっと留守より断然いいはず


やっと帰って来たのに家が廃墟になってたら泣くに泣けないし・・・さすがサラさん


サラさんと別れて家まで歩く


ゲートで戻っても良かったけど久しぶりの街を堪能したくていつもよりゆっくり歩いた


ちらほらと馴染みのある顔が通り過ぎるが僕には気付いてないみたいだ


街並みは・・・少し変わったかなって程度でそこまで変わってないように見える


誰か知り合いとすれ違ったりしないか期待していたけど真昼間だしみんなダンジョンに行ったり仕事場に居たりするか・・・ちょっと残念


久しぶりの街を懐かしみながら歩きようやく墓地近くにある僕の家に辿り着く


サラさんの言ってたようにとても一年以上家主が居なかったようには見えないくらい綺麗な状態だ


「ただいま・・・なんて・・・ね!?」


誰も居ないはずだった


だけど玄関を開けると部屋の中央に体にバスタオル一枚だけ巻き、頭をタオルで乾かしている女性が立っていた


「・・・」


「・・・」


お互い無言で見つめ合う


タオルで顔が隠れて見えない・・・けどタオルの隙間から僅かに見える目と異様に盛り上がる胸の部分から判断するとこの女性は・・・


「・・・ペギーちゃん?」


「・・・ロウニール君?」


やっぱりエモーンズは・・・最高だ──────




「ごめんね長く休憩時間が取れたからお風呂に入りたいと思って・・・」


「ううん!全然!」


むしろありがとう


どうやらちょくちょくこの家に来てはお風呂に入っていたらしい。家のお風呂より広いし綺麗だからだとか・・・魔法を自由に使えるようになって一番嬉しい事がお風呂をすぐに沸かせられる事らしい・・・以前は魔力が足りなくて多くのお湯を作れなかったんだとか


「それにしても・・・一体今までどこに?みんな心配してたんだよ?」


「それはその・・・色々あって・・・話すと長くなるから休憩時間じゃなくてみんなが集まった時に話すよ」


「それもそうね。もう行かなきゃ・・・みんなに伝えるから今日の夜でいい?」


「僕は平気だけど・・・いきなりでみんなの都合合うかな?」


「合わせるよ!だってロウニール君が帰って来たんだもの・・・予定があってもキャンセルキャンセル!じゃあ私行くね」


休憩時間が迫っていたのかペギーちゃんは慌てたように小走りで玄関に向かった。そのまま出て行くかと思ったけど玄関のノブを掴んだ後、振り向き僕を見つめた


「・・・もうどこにも行かないよね?」


「え?・・・う、うん・・・今日は予定ないし・・・」


「・・・そっか・・・じゃあ夜に」


「うん、夜に」


ペギーちゃんはそのまま玄関を開けると仕事場であるギルドに行ってしまった


僕は1人残されさっきの言葉の意味を考える


「多分・・・出掛ける予定を聞いた訳じゃないよな・・・」


《当たり前でしょ?あの返事をした時はひっくり返りそうになったわよ》


「どうやってひっくり返るんだよ・・・」


《比喩よ比喩・・・それにしても結局誰にするの?絶食の聖女、捜索の師匠、待機の受付・・・選り取りみどりね》


「なんだよその二つ名みたいな呼び方は」


《もう少ししたら忙しくなるわよ?その前にやり残した事ないようにしないと・・・後悔するわよ?》


「・・・まあ、そうだね」


既に魔王を創るマナは溜まった


あとはいつ創るか・・・それだけだ


魔王を創りディーン様を迎える・・・それがダンジョンが完成してからの唯一の目標だった


《あのディーンってのはいつ来るの?》


「多分・・・今年中には・・・」


《そう・・・忙しくなるわね》


「ああ・・・人間同士で争ってる暇などないほどにね」



──────この時の僕は本気で思っていたんだ・・・魔王が出現する事により世界が平和になると・・・本気で思っていたんだ──────



「・・・誰?」


「いやだからそういうのいいから」


お決まりになりつつあるやり取りで再会した僕達・・・夕方になって家を訪ねて来た面々は以前と全く変わってなかった


サラさんを除く全員が集まると各々が買って来たものを並べてまずは僕への質問攻めからスタート


語れるところと語れないところがある為ゆっくりと考えながら話した


「貴族を殴って剣奴?になった・・・アホだな」


「何言ってるのよ、聖女様を助ける為でしょ?・・・バカだけど」


「マヌケ」


「考えなしの行動は相変わらず・・・ゲリよゲリ」


ジケット達め言いたい放題言いやがって・・・てかエリン・・・ゲリはなんかくるからやめろ


「いいじゃねえか・・・俺はいいと思うぜ?」


「確かにケンもやりそう・・・スカットはずっと覗いてそうだけど」


「・・・否定は出来ないな」


「死ねばいいのに・・・ロウニールさんが無事戻って来ましたしいいじゃありませんか」


凄い低い声でなんか聞こえたような・・・


「ヒーラさんの言う通りですよ!今はみんなで無事に帰って来た事をお祝いしましょう!」


ペギーちゃんの一言で乾杯するみんな・・・ヤバいちょっと泣きそう・・・


「しっかし雰囲気変わったわな・・・筋肉がついたからか?」


「それもあるけど髪型?それに服装もいつもと違うし・・・」


「男前」


「今のロウニールならモテるかもね・・・立候補してみようかな」


エリンそのネタは嘘でもやめてくれ・・・


「確かに強そうだ・・・それでこれからどうするんだ?冒険者やるならスカットクビにするからウチに来るか?」


「うおい!」


「いえ・・・やっぱり僕は門番の仕事が好きなので・・・」


ケンが誘ってくれるのはありがたいけど・・・あれ?みんなの雰囲気が・・・


「・・・あんたまさか衛兵に戻れるとでも?」


「え?」


「それとも今までの話は全部嘘だったってこと?」


「いや、本当だけど・・・」


答えると全員が大きなため息をついた


「ねえ?この子天然なの?記念物なの?」


「あまり学生時代は話さなかったので何とも・・・でも天然でもここまで酷かったら分かるはず・・・」


マホとハーニアがヒソヒソ話をしているが丸聞こえだってぇの!なんか変な事言ったかな?


「ロウニール・・・友人としてハッキリと言っておく・・・お前衛兵には戻れねえぞ」


「・・・え?」


「『・・・え?』じゃねえよ!どこの国が元死刑囚を衛兵にすんだよ!」


「あっ!・・・ダメかな?」


「ダメに決まってるだろー!!」


ハモった・・・物の見事にハモリやがった・・・


そうか・・・そりゃあそうだよな・・・全く悪い事したつもりじゃないから気付かなかったけど僕は貴族を殴り死刑宣告を受けた身だ・・・サラさんに身請けしてもらったとはいえ罪が消えるはずもなく・・・


あれ?という事は僕は・・・無職・・・


仕事はお金を稼ぐ為・・・お金を造れる僕はそう考えると働く必要はないのかもしれない。けどなんと言うか・・・世間体が気になるお年頃・・・もし誰かとお付き合いする事になっても・・・


『ねえあの男働いてないらしいわよ?』


『え?じゃあ生活費はどうやって・・・』


『決まってるでしょ?相手に貢がせてるのよ』


『まあ!最低ね・・・なんであんな男を選んだのかしら?』


なんて事を言われかねない・・・何が選り取りみどりだ・・・それどころじゃないぞ!?



落ち込む僕を他所に盛り上がるみんな・・・僕はいたたまれず気配を消してそっと家を出た


外に出ると紅く染っていた空はいつの間にか黒く染っていた


「・・・無職・・・」


空に輝く星々を見上げながらポツリと呟く


考えてみればすぐに分かる事だった・・・元死刑囚の衛兵なんて聞いたこともない


そもそも身請けってどうなんだろう・・・身請け人・・・つまりサラさんの所有物になるとか?でもそれなら奴隷って事に・・・ナークに詳しく聞いておけば良かった


「いい風ね」


突然背後から話し掛けられ振り向くとそこにはペギーちゃんが立っていた


僕を追いかけて?それとも偶然ペギーちゃんも風に当たりに来たのか?


「・・・そうだね・・・」


「もうすぐ街になってから初めての祭りがあるって・・・街の収益も安定してきたみたいで結構大々的にやるらしいの」


祭り・・・か・・・そっか・・・もうそんな時期か・・・


「ギルドにも応援依頼が来ててね・・・前夜祭と祭り当日と後夜祭の3日間の祭りになるらしいんだけど警備だったり店の出店だったりとにかく祭りで何かをやって欲しいらしくて・・・」


「ギルドでお店を?どんな店?」


まさか魔核の直売とかじゃないよな


「ほらギルドで軽い食事とか飲み物出してるでしょ?それをギルドないじゃなくて外に店を構えて出すだけなんだけどね・・・せっかくのお祭りなのに働かなきゃいけないなんて本当残念・・・」


働く・・・無職の僕に重くのしかかる言葉だ・・・


「でもね・・・後夜祭・・・祭り最後の日は休んでいいって・・・それでもし良かったら私と・・・」


「え?」


お祭りのお誘い?ペギーちゃんが僕を?無職なのに?


「・・・イヤだったら別に無理しなくてもいいんだけど・・・」


「イヤなんてそんな・・・僕で良ければ・・・」


「ロウニール!ペギー!」


返事をしている最中にタイミングよく現れたのはサラさんだった


両手に差し入れっぽいものを持ち笑顔で近付いて来る


ふとペギーちゃんの表情を見ると・・・なんだか少し怒っているような・・・


「少し遅くなったな・・・色々と処理しなくてはならない事があって・・・どうした?みんなは家の中か?」


「はい・・・僕達はちょっと夜風に当たって・・・」


「負けません!」


へ?


「聖女様にもサラさんにも・・・負けませんから!」


???何か勝負していたのか?いや、そんな訳はないか。じゃあ負けないって何の事だ?


「・・・なるほど・・・そういう事か」


え!?サラさん分かったの!?どういう事!?


見つめ合いバチバチと火花を散らす2人


固唾を飲んで見守っているとサラさんはペギーちゃんを見つめながらふたつの花火を打ち上げる


「・・・ロウニール・・・明日衛兵所に行け。復帰出来るよう話は通しておいた」


ええ!?だって・・・


「それと『ダンジョンナイト』は解散する。ジェファーを紹介してくれたのに・・・すまなかった」


え・・・ええ!?


組合『ダンジョンナイト』の解散・・・それは僕とローグが居ない間に起きた唯一の大きな変化だった


サラッと告げられた衝撃の事実に言葉を失う


だけどその変化は自然であり必然でもあった──────

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