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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
234/856

231階 極秘任務

ロウニールが出掛けた後、私はとある場所へ向かった


もしかしたら門前払いされるかもしれない・・・けど確かめずには要られなかった


ローグが下賜された屋敷


きっとローグは居ないだろう・・・けど何かしらの情報が得られるかもしれないという一縷の望みにかけて・・・


「サラ・セームン様ですね。()()()()()()()()()()


屋敷の戸を叩くと出て来た執事にそう言われてたじろいでしまう


お待ちしておりました?どういう意味だ?


中に入ると案内され応接間らしき部屋に通される


誰も居ない部屋の中、言われるがままフカフカのソファーに座ると執事が頭を下げ出て行った後、入れ替わりでお盆を持ったメイドが現れる


そして私の前に湯気がたつカップを置くとその奥に白い液体と白い粉が入った小瓶を置いた


これはコーヒーというやつか?液体がミルクで粉が砂糖か・・・


「お好みでお入れ下さい」


そう言うと頭を下げて部屋を出て行くメイド・・・あの子がローグのメイド・・・メイドか・・・噂ではメイドは主人の子を産む機会を狙っている者も多いと聞く・・・もしあの子がローグに迫ったら・・・いやいやいや、ローグはそんなこと・・・


「お待たせ致しました」


「!?」


考え事をしていたらいつの間にか執事が部屋の中に戻って来ていたらしい


にしても『お待たせ致しました』だと?まさかローグが・・・


ちょっと待て心の準備が・・・


「久しぶりだな・・・サラ・セームン」


振り向くと執事の後ろに立つ者が・・・立派なヒゲをたくわえた老紳士・・・ゴーン・・・ゴーン・・・


「・・・」


「なんだその間の抜けた顔は・・・私の顔に何か付いているか?」


「あっ、いえ・・・お久しぶりですゴーン様」


なぜここにローグではなくゴーン様が?キースからローグを探しているとは聞いてたけどまさか見つけた?


「ここはいい。飲み物も要らないから退席しろ」


「はい。ではごゆるりと」


まるでこの屋敷の主人のように振る舞い執事を部屋の外に出すと座る私の正面のソファーに座る


「さて・・・どうしてここに?」


「え?・・・えっと・・・ここはローグの屋敷・・・ですよね?」


実はここはゴーン様の屋敷?間違えた?・・・いや、そんなはずは・・・


「無論ここはローグ殿の屋敷だ」


良かった合ってた・・・じゃあなぜゴーン様がここに?


「ふむ・・・どうやら混乱しているようだな。まあ聞くまでもなくここに来た理由はひとつか・・・ローグ殿を訪ねて来た・・・であろう?」


「は、はい・・・王都に行ってから連絡が途絶えて・・・」


「・・・ふむ・・・」


口ごもるゴーン様・・・もしや何か知っているのか?でもキースはゴーン様も知らない感じだったと言っていたが・・・


「決して口外せぬと約束出来るか?」


「は、はい!」


「もし誰か訪ねて来たら話してくれと言われていたからな・・・仕方ない──────」




ゴーン様から語られたのは私の望む情報だった


ローグの行方


肩透かしを食らうと同時に怒りがふつふつと湧いてくる


それならそうと言ってくれれば・・・


「・・・怒りは分かる。だが先程も言ったようにこれは『極秘任務』だ・・・この話が漏れぬよう細心の注意を払う他なくてな・・・ただもしこの屋敷にまで訪ねて来るものがいた場合に限り内容こそは話さないが連絡が取れない理由を話してくれと言われていた。まさかエモーンズくんだりから訪ねて来るものなどいないであろうと高を括っていたが・・・」


そう・・・ローグが行方知れずとなった理由・・・それはゴーン様から頼まれた任務を受けたからだった


極秘任務・・・どこで何をしているのか全く不明だけどローグに頼むということはダンジョン絡みか?


「ではゴーン様がキースに言っていた『連絡が取れない』とは・・・」


「定期的に連絡を取り合っていたのだがな・・・何日かその連絡が遅れた事があったので少々愚痴ってしまったのだ」


「・・・その・・・しばらく連絡が取れないとかそれくらいの事を伝えるのもダメだったのですか?」


「うむ。どこから情報が漏れるか分からない状況・・・なので一切の連絡は禁止させてもらった。なにせ『極秘任務』だからな」


・・・そう言われてしまうとぐうの音も出ない


恐らくかなり機密に関わる事なのだろう・・・国の上層部しか知り得ない内容とか?


「ではローグは・・・」


「もう間もなく戻って来るだろう。少し前に終わったと連絡が来たのでな」


良かった・・・どうやら無事みたい


でも極秘任務っていう事は帰って来ても問い質せないって事よね?連絡がなかったことを怒れもしないし・・・


「やむを得ない事情があったとはいえ一切の連絡を絶つよう願ったのはこちらの都合・・・せめて心配するなと一言伝えられれば良かったのだが・・・申し訳なかった」


「い、いえ!ゴーン様が悪い訳じゃ・・・貴族ともなればそういった事もあるでしょうし・・・」


伯爵の地位の代わりに・・・って訳じゃないだろうけどローグも断るに断れなかったのだろう


頭を下げるゴーン様を見て慌てて顔を上げてもらうようお願いすると勢い余って目の前のカップを手に取り乾いた口の中を潤わせる・・・苦い・・・


「報告を終えたら近日中にはエモーンズに戻るだろう。このような立派な屋敷があるにも関わらず拠点はあくまでエモーンズであると言っていたからな。なので心配せずエモーンズに戻り帰りを待つといい」


「はい」


ロウニールも見つける事が出来たしローグの行方も分かったし・・・少しモヤモヤが残るけど王都に来て本当に良かった──────





「帰ったか?」


「はい、帰られました」


「ふぅ・・・どうして私がこんな嘘を・・・」


ゴーンは応接間のソファーにもたれ天井を見上げると深くため息をつく


全く連絡がないと思ったら突然今日の早朝に現れたローグ


どこで何をしていたのか質問しても答えずに頼み事をしてきた



『極秘の任務に行っている事にしてくれ』



ゴーンが連絡が取れなかった期間、ローグはゴーンだけではなく誰とも連絡が取れない状況にあったと言う。ただなぜ取れなかったかは秘密にしたいのでゴーンに『誰かが自分を訪ねて来たらそのように伝えて欲しい』と言ってきたのだ


理由も話さない為に承服しかねると断ろうとするが結局は引き受ける事になった


「こんなものを渡されては断るに断れまい・・・」


「それはなんでしょう?」


「お前の主人がくれた物だ。魔道具『探知水晶』・・・周辺を見る事が出来る魔道具だ」


「・・・そうでございますか」


ゴーンがテーブルの上に置いたのは何の変哲もない水晶玉


周辺を見る事が出来ると言っても執事であるサーテンにはその価値が見い出せなかった


「分からぬか?周辺を見る事が出来る・・・それはダンジョン探索において最も重要な役割を持つ。ローグ殿の話では同じ階層なら隅々まで見れるらしい・・・スカウトが使う能力に似ているが私はその能力を持っていない為に見た者の報告を受けるだけ・・・しかしこれを用いれば私自身が見る事が可能になる・・・ローグ殿は私をよく知っている」


「なるほど・・・そういう事ですか」


「いやはやまったく・・・まるで止まった時が動き出したかのような気分だ。これまで停滞していた研究も進むやも・・・となるとこうしちゃおれん!急ぎ帰って次のダンジョンへの準備をせねば!」


勢い良く立ち上がりテーブルに置いてあった水晶玉を懐にしまうと足早に応接間を出て行く


残されたサーテンはテーブルの上にある既に冷めたコーヒーを見つめ微笑むと1人呟く


「・・・お帰りなさいませご主人様・・・」


ここにはいないローグに向けて深々と頭を下げるサーテン


主人不在の屋敷は主人の帰還により日常を取り戻す


ゴーンの言っていたようにまるで止まった時が動き出したかのように──────




「明日帰るですって?また急な話しね」


「用事は全て済んだので・・・あまり留守にすると寂しがる者達もいます・・・ロウニールと話したら特にやる事はないとの事だったので明日になりました」


ローグの屋敷から帰た後、しばらくしてロウニールも帰って来た。そこで話したのがエモーンズにいつ戻るか・・・聖女様との事もあるしロウニールはもう少し残りたいと言うと思ったがあっさりと帰ると言った


デートが上手くいかなかったのか?せっかく正装(武道着)までしたのに・・・


それはともかく帰ると決まれば急ぐに越したことはない。きっと肩身の狭い思いをして待っているはず・・・どうするか決めるべき時が迫っている・・・私も・・・みんなも・・・


「明日帰るだぁ?聞いてねえぞ俺は!」「れは~」


だから言ってるだろうに・・・それと口の中にものを入れながら喋るのは勘弁して欲しい・・・何か飛んで来たぞ


「ソニア殿キース殿・・・突然押しかけて来て宿泊からこのような食事まで・・・本当にありがとうございました。半ば諦めかけていた私がロウニールに会えたのもお二人とラディル様のお陰です」


「気にしなくていいわ。私達は何もしてないし」


「いや・・・数日とはいえ泊めてやったんだ・・・体で支払ってもらおうか」「おうか」


「え?」


「・・・殺すわよ?」


キースってそういう事言う人だったのか?とりあえずソニアからの殺気がテーブルを囲む全ての人の動きを止めた


「待て!そういう意味じゃねえ!」「ねえ!」


「じゃあどういう意味よ」


「そもそもサラに向けた言葉じゃねえし」「えし」


私に向けた言葉じゃない・・・自然とみんなの視線はロウニールへ


「・・・えぇ・・・」


「違う違う!てか引くな小僧!・・・俺が言いたいのはアレだ・・・勝負させろって事だ」「とだ」


勝負・・・確かにロウニールは魔人を倒した。それは紛れもない事実であり実力的にはもしかしたら私をも超えているかもしれない。ただそれは魔力を使えたらの話・・・マナ封じの首輪を外した状態で魔力が使えないのであればさすがにキースとでは勝負にならないだろう


「キース殿・・・口を挟むようで悪いが本人もあの時どのようにして魔力を操ったか覚えてないのです。それに今は首輪の影響かマナも上手く操れない状態なので勝負になるとはとても・・・」


「構わねえよ。マナが上手く操れないなら思い出させてやる・・・男同士腹を割って戦えばいやでも思い出すさ」「すさ」


腹を割って戦うって初めて聞いた言葉だ。普通『話す』では?・・・ともかくキースは何があってもロウニールと戦いたいらしい・・・冒険者にとってSランクの者と勝負するなんて光栄な事だし返事はロウニール次第か・・・


「・・・それで恩が返せるなら・・・」


ロウニールの返事を聞いてキースはニヤリと笑う


それを真似してシシリアちゃんもニヤリと笑うが可愛いけど邪悪な笑みにあまり教育上良くないのではと思ってしまう


ロウニールとキースの勝負・・・弟子とSランク冒険者の勝負に少しばかり興奮してしまう私であった──────

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