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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
225/856

222階 ロウニールの行方

宮廷魔術師って国内で最も優秀な魔術師に与えられる称号だったはず・・・あくまで国に仕えている魔術師の中でだけど・・・


それでも国内でトップクラスなのは間違いない・・・その人がソニアの母親だなんて・・・


「アンタは候補から真っ先に外すからね」


「別になりたくないからいいって何度も言ってるでしょ?私はファーネを推したのに勝手に私を候補にして・・・」


「ファーネかい?あの子はそこそこだけどそれ止まりさね。アンタを師と仰ぐのは勝手だけど超えようとする気概がない・・・それじゃ宮廷魔術師は務まらないさね」


「偉そうに・・・たかだか宮廷魔術師ごときで『務まらないさね』じゃないわよ」


「なに?」


「なによ」


あ、やばい・・・宮廷魔術師と現役最強とも言われている魔法使いの争いが起きればこの屋敷どころかこの一帯が消滅する・・・


「ふぉーい・・・何やってんだ2人して」


そこにSランク冒険者キース・・・が、愛娘を抱き抱え両頬をつねられながらやって来た


もうイヤこの家族──────




「なるほど、そりゃ怪しいな」


「アンタは黙ってな!愚義息ごときが口を挟む問題じゃないよ!」


「お義母さん・・・その『グギソク』ってやめてもらっていいか?気持ち悪いんだけど・・・」


「ならさっさとソニアと別れてどっかに行っちまいな!いっつもフラフラして家に帰ったと思ったら酒飲んでグースカ・・・なんでこんな脳筋を選んだのやら・・・」


「ちょっ!言い過ぎじゃねえか?ソニアも何か言ってやってくれよ!」


「・・・私もまだまだいけるしそれもありかしら・・・」


「なしだから!」「らぁー」


ああ・・・結構シリアスな話をしていたつもりなのにこの家族に崩されていく・・・でもソニアの娘のシシリアちゃん可愛い・・・キースの真似して小さな口を大きく開けて・・・『らぁー』って・・・癒される・・・はっ!?いかんいかん・・・このペースに流されていたら一生話しが進まなさそうだ


「あの・・・それで・・・」


「ああ、それなら明日にでも調べて来るから安心しな。どうせ記録室で調べればすぐに・・・」


「今すぐ行って来て」


「ソニア・・・あたしゃこれからシシリアちゃんと・・・」


「行って来て」


「いやだから・・・ううっ・・・分かったよ・・・この子は本当に敬老の精神ってものがないのかね・・・」


「ブツブツ言ってないで早く行く!ほら!待ってるでしょ!さあ早く!」


いや確かに早いに越したことはないけど今すぐなんて・・・しかもラディル様涙目だし、腰の辺りでシシリアちゃんに小さくバイバイしたら満面の笑みでバイバイされて更にへこんでるし・・・ちょっといたたまれなくなってきた


「サラ、今夜の宿は取ったの?」


「え?いえ・・・王都に着いてすぐに教会に向かってその足でここに来たのでまだ・・・」


「なら今日はウチに泊まればいい。夜には帰って来るだろうし早く聞きたいでしょ?」


「それはそうですが・・・ご迷惑では?」


「迷惑なんて思わないわよ・・・ただし・・・タダで泊めるつもりはないけどね──────」




・・・本当に1歳児か?シシリアちゃんは


泊めてもらう条件はシシリアちゃんと遊ぶ事・・・そんな事かと安易に引き受けたが・・・これなら宿を探すべきだった・・・


ようやく眠ってくれたシシリアちゃんの顔は天使そのものだけど先程までの傍若無人ぶりときたらもう・・・


「寝たようね。お疲れさん」


「ダンジョンで上級魔物を相手にしてた方がどれだけ楽か・・・」


「でしょ?同じ遊びを飽きるまでずっと続けるわかと思ったら突然走り出すわ突然泣き出すわ洩らすわ・・・最高よね?」


「・・・どこがですか・・・」


「全部よ・・・今に貴女も分かるわ。他のクソガキがやらかしたら燃やしてやろうかと思う行動も全て愛おしくなる・・・」


「ならソニアさんが見て下さいよ」


「それはそれこれはこれよ・・・ほらいいタイミングで帰って来たじゃない?」


誤魔化しながら玄関を指差すと先程の寝巻きと違い高級そうなローブに身を包んだラディル様が玄関の扉を開けこちらを見ていた


その表情は険しい・・・まさか・・・


「ラ、ラディル様・・・」


私が話し掛けようとすると彼女は険しい表情のままツカツカとこちらに向かって歩いて来て寝ているシシリアちゃんを見るなり膝をつく


「やっぱり・・・寝てしまったか・・・こうなると分かっていたから行きたくなかったのに・・・でも寝顔可愛い」


・・・このババア・・・


「あのねぇ・・・シシリアにはいつでも会えるでしょ?それよりどうだったのよ」


「フン!子の成長を甘く見おって・・・結果なんぞ見るまでもなかった・・・予想通り過ぎてな」


「え?それはどういう意味ですか?」


予想通り?死刑が即日執行されたのが?


「剣奴・・・という制度を知っているか?」


「剣奴?いえ・・・初めて聞きました」


剣奴とはなんだ?聞いたこともない・・・ただソニアはラディル様の言葉に思い当たる節があるようで『なるほどね』と呟いた


「知らないかい・・・まあ王都にいる者でも知らない者は知らないし仕方ないか・・・」


そう言ってものを知らない私にラディル様は丁寧に教えてくれた


剣奴・・・簡単に言えば闘技場で闘う戦士・・・しかし同じように闘う剣闘士と違い決着は相手の死のみ・・・つまり殺し合い専門の剣闘士だ


「それをなぜ今・・・」


「察しが悪いな・・・剣奴になるのは奴隷と・・・活きのいい囚人だ。しかも囚人の中でも死刑が決まっている囚人・・・死刑囚に限る」


「っ!・・・死刑囚・・・そんな・・・」


「国は止めさせるべきなのだが戦争のない時代にも血を求める者はいる・・・自分ではなく他人の血が流れるのをな」


「・・・そんな事はどうでもいい・・・ロウニールがその・・・剣奴になったと?」


「なったか()()()()かは分からないが、な」


「何を・・・」


「サラ、抑えて・・・そんなに殺気を放つとこの子が起きる」


「・・・あたしの心配はなしかい・・・」


・・・冷静になれ・・・ここでラディル様を殺しても無意味・・・それに彼女がロウニールを剣奴にした訳じゃない・・・


「ふぁー・・・んだよ騒がしいな人がせっかく心地好く寝てたのに・・・やるなら外でやれよ・・・ん?バ・・・お義母さん帰ってらしたの?」


「バ・・・の続きが気になるのだが」


「細かい事は気にすんなって・・・で?小僧は生きてたのか死んでたのか?」


寝起きなのかキースが眠たそうに腹を掻きながら歩いて来た


そのキースの言葉で私はすぐに殺気を抑える


そうだ・・・死刑執行が剣奴送りなら生きている可能性は十分に・・・いやきっと生きている!ロウニールなら・・・


「何!?剣奴??確か一年以上も前なんだろ?こりゃ死んでんな」


「・・・ハア・・・キース・・・」


「だから言うたであろう?こんな愚義息とは別れよと」


再び殺気を放つが対象はラディル様ではなくキースにだ


敵わないまでも一撃お見舞いしないと気が済まない!


「殴てもいいわよサラ」


「うむ、それで少しでも賢くなれば僥倖・・・いや、少しでは無理か・・・」


「ちょ・・・お前ら・・・サラ本気にしてないよな?なぐるなよ?俺は家の中では暴れないって誓って・・・待てってオイ!──────」




昨日の晩はキースを殴ってある程度スッキリしたのでよく寝れた


そして偶然にも今日・・・闘技場・・・コロッセオでは剣奴の闘いが繰り広げられているらしい


週に一度開催される殺し合い・・・必ずしも毎週それに出る訳ではないので仮に二週間に一回出場したとしてロウニールがいなくなってから500日余り・・・35回は出場している事になる


勝者のみが生き残る過酷な闘いを35回・・・35連勝していなければならないのだ


「何が楽しいんだか・・・他人の殺し合いを観るのがそんなに楽しいのかね?」


「そうね貴方はどちかと言うと出場する側よね」


「一度剣奴になってみたらどうだ?いつでも推薦状は書いてやるぞ?」


「お前ら・・・」


やはりソニアとラディル様は母娘だな・・・息ぴったりにキースをからかう


それにしてもここが・・・コロッセオ・・・遠くからでもその巨大さは見て取れたが近くに行くと更に・・・


「しっかし暇人が多いな・・・初めて来るがいつもこんな感じなのか?」


「いんや・・・以前強引に連れて来られた時はここまで・・・しかも最近は人気も下火になっていると聞く・・・でもこれではまるで・・・」


コロッセオの収容人数は知らないがとても人気が下火になっているようには見えない大盛況ぶりだ


「剣闘士の試合は一般開放して剣奴の試合は貴族のみ・・・だったはずだよな?」


「どうやら一般開放されているようだな。並んでいるのはどう見ても貴族ではない・・・とすると方針を変えたかもしくは・・・今日が特別なのか・・・」


確かに並んでいる人達は貴族には見えない


それに並んでいる先とは別の入口があり、私達はその入口に案内され並ばずすんなり入る事が出来た


その理由はラディル様・・・どうやらある一定の身分の人はその入口から入れるようになっているらしい・・・そして私達はラディル様の付き人として一緒に入る事が出来た


中に入ると目の前には大きな掲示板があり、数字の横に✕‬何倍みたいな事が書いてあった


「おっ!賭けれるのか?それを早く言ってくれよ」


「何言ってんの?目的が違うでしょ?燃やすわよ」


「闘技場内は私闘禁止・・・やるなら外でやりな」


「ケチ・・・てか外ならいいのかよ・・・」


そんな会話をしながら闘技場内を進むとどこから聞き付けたのかこの闘技場のお偉いさん風の男がやって来てラディル様に話し掛ける


「お久しぶりですククルス卿。あまり来られないので興味がないかと思っておりました」


「興味はないな。・・・それよりもダッツ所長、死刑囚に会う事は出来ないか?」


「残念ながら・・・たとえ公爵様であれ会う事は出来ません」


「やはりそうか」


事前にラディル様からは会えない可能性が高いと聞いていたけどやはり無理か・・・


恐らくは八百長防止の為だろう。もし試合前の剣奴と会えば勝敗を左右しかねない


例えば『負ければ家族に多額の支援を約束する』と一言言えばわざと負ける剣奴などいくらでも見つかる・・・支援の金など勝つ方が分かっていればいくらでも算出出来るしやる奴は必ず出てくるはずだ


その為に一切禁止している。まあ一度でも八百長が?明るみに出れば賭ける者などかなり減るだろうし死活問題になりかねないから当然だろうな


「もしかして誰かをお探しで?それでしたら試合を見て頂くしか・・・気になる者がいましたら身請けは可能です・・・ただし金額はかなり高額となりますがね」


「分かっている・・・それにしても今日は一般開放しているのか?いつもはしていないと思ったが・・・」


「今日は特別な試合がありますので・・・あまり興味がないと仰られていたククルス卿でも楽しめると思いますよ?きっと、ね──────」

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