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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
22/856

19階 ダンジョンマスターダンコ

ダンジョンマスターの戦い方・・・ダンコがそう言うと突然地面が揺れ始める


「チッ!このタイミングでダンジョン変動かよ!?」


先頭の男が舌打ちして言い放った言葉・・・『ダンジョン変動』


時折ダンジョンが激しく揺れる事がある。それは新たな階や大幅な変化があった際に起こる揺れでありそれを人は『ダンジョン変動』と呼んでいる


このダンジョンに変化をもたらす事が出来るのは僕とダンコのみ・・・僕は何もしてないのでつまり・・・


「・・・何したの?」


《それは見てのお楽しみ・・・さあ、次よ》


次?


何をするのか聞く前に目の前で信じられない事が起こる



4人の冒険者が・・・足元に突如として出来た穴に・・・落ちた



《はい、おしまい》


「おしまいって・・・」


《なに?まだどう始末するか決めてないんでしょ?だったらこれが最善・・・まあマナは無駄に消費したけど・・・》


「一体何をしたんだ?落とし穴に落とした?」


《見てみればいいじゃない》


見るって・・・ああ、そうか・・・すっかり忘れてた


僕は目を閉じると彼らの様子を見てみる


ここより下・・・まだ作ってなかった7階を観察すると・・・


「これ・・・今作ったの?」


《そうよ。即席で7階を作ったの。と言っても7階と言うより6.5階かしら》


落とし穴に落ちた彼らの行先は四方が壁に囲まれたただの広間。出口のない・・・ただの空間


しかもご丁寧に4人は別々の空間に落とされていた


「どうするのこれ・・・」


《それはアナタが決めてちょうだい。顔を見られたからには生かしてはおけない・・・だから直接手を下すか、魔物に始末させるか、そのまま放置するか・・・選択枠が増えて選びやすくなったでしょ?》


選べるかい!


《まあじっくり考える事ね。時間はタップリあるわ・・・ただあまり時間をかけ過ぎると結局三択の内のひとつを選んだって事になるけどね》


「うっ・・・分かってる・・・」


出口のない空間・・・そこにひとりぼっちで放置される・・・食料や水もなく・・・僕だったら1時間と耐えられない自信がある


精神的にやられるか自死を選ぶか・・・はたまた餓死するか・・・放置はあまりにも残酷だ



その後、僕は未だに意識が戻らず横たわる彼女を抱き抱えると6階のゲートに向かう。振り返ると物陰から先程の魔物達が寂しそう?にこちらを見つめていたのがひどく印象的だった


《ロウ・・・アナタ何か忘れてない?》


向かってる途中でダンコに言われ、考えてみたけど思い当たる節がない。首を捻り考えていると特大のため息をつかれた


《アナタねえ・・・ゲートの先の人間も殺す気?》


「へ?・・・なんで?」


《今の状況・・・見られたら色々まずいんじゃないの?》


・・・確かに


僕は冒険者ではなく兵士だ


しかもダンジョンに入る許可も得ていない


確か入場料を払わずにダンジョンに入ると罰則があったはず・・・って言うか入口に先輩兵士かギルド職員が立っているはずだからどっから入ったのか問い詰められそう・・・それはまずいな


《まだ分からないの?せっかくプレゼントしたのに・・・》


「あっ!・・・仮面!」


《ハア・・・いい?認識阻害効果は別に魔物だけに効くものじゃないの。人間にも有効よ。それにこれは言ってなかったけどマントにも同じような効果がある・・・阻害する対象は違うけどね》


「え?マントは何を認識させないようになってんの?」


《下に着ている服よ。今までは特に服装は気にしないで良かったけど、その制服?はバレたらまずいでしょ?でもマントを付けていれば下が制服ってバレにくいわ》


「おお・・・ってバレにくい?」


《あくまでも認識を阻害するだけ・・・人間には色々とマナを使った特殊な能力があるでしょ?もし阻害効果を破る事の出来る能力を持った人にはバレる可能性があるわ》


なるほど・・・仮面は顔を見えないようにしてるから効果を破られても問題はないけど服はまずいな・・・これを着てたら兵士ってバレるし・・・


《とにかくダンジョン内では仮面とマントは必須・・・ダンジョンをオープンした今、誰が見てるかも分からないからね。司令室と訓練所それに倉庫は冒険者が入って来れないから外していいけど・・・冒険者を殺したくないのなら忘れない事ね》


もし知り合いに見られたら?例えば・・・例えばだけどペギーちゃんがダンジョンに訪れて僕を見てしまったら・・・僕はペギーちゃんを・・・


ダメだダメだ


悪い方に考えるな・・・僕が仮面とマントを忘れなければいい・・・それだけだ


意識のないサラさんをゆっくりと下ろして司令室へのゲートを開く


そして置いてある仮面とマントを取り出し身に着けた


「これでよし!」


視界は悪くなるけど仕方ない・・・視界?


僕はある事に気付いて目を閉じてみた


やっぱり・・・見える・・・どの角度からも・・・見える!


目を閉じた時にダンジョン内を見れる事をすっかり忘れてた。視界が悪いなんてとんでもない・・・これならどの角度からでも・・・ゴクッ・・・


《・・・変態・・・》


「た、試しに見ていただけだ!別にサラさんの下着を覗いてたとかそんなんじゃ・・・あれ?視界って共有してんの?」


《してないわよ。ただ目を閉じて喉を鳴らしてるから恐らく何かやらしいものでも見てるのかなって・・・どうやら当たってたみたいね変態》


自供してしまった・・・ほんの出来心だったんだ・・・


と、とにかく色々な角度で見れるのは凄いけど慣れるまで時間が掛かりそうだな・・・視点と体の位置が違うから変な動きになってしまう・・・


僕はとりあえず目を開けてサラさんをまた抱き抱えるとゲートへと急いだ


そして・・・



「うぉ!ビックリした・・・って!」


うん?よく見ると『ファーストパーティー』じゃないか


ゲートを使って1階のゲート部屋に辿り着くと冒険者達が居た


そのパーティーはオープン初日に色々と大変な目に合った(合わせた)パーティーだった


ゲートから出て来た僕を見て剣士は剣の柄を、魔法使いは杖を構えた。そんなに警戒しなくてもいいのに・・・


「その女性に何をした!?不審者め!」


不審者??なぜ・・・


「仮面なんて付けて怪しい奴!さっさとその子を離しな!さもないと魔法でぶっ飛ばすよ!」


あーそうか・・・確かに気を失ってる女性を仮面の男が抱えて出て来たら怪しいわな・・・


さて・・・どうしようか・・・仮面を外す訳にはいかないし・・・ん?あれ・・・サラさんの顔色が真っ青に・・・なんかヤバいぞこれ・・・


「ぼ・・・私はたまたま通りかかって倒れている彼女を見つけて・・・それよりも君達の中にヒーラーは居ないか?彼女の様子がおかしいんだ!」


仮面の不審者の訴えに顔を見合わせるファーストパーティー


するとヒーラーである女性が一歩進み出てサラさんの顔色を伺う


「!・・・これは・・・なぜ倒れていたか心当たりはありませんか!?」


「そ、そう言えばうわ言のように毒・・・と」


麻痺毒と言った方が良かっただろうか・・・だが僕の言葉を聞いた瞬間にヒーラーの彼女はサラさんの胸に手を当てる


「毒・・・しかも麻痺毒・・・毒にかかってどれくらいです!?」


「え?いや・・・私が見つけた時には既に・・・それからは数分くらいしか経ってないと思うが・・・」


「彼女を下ろして下さい!すぐに治療を行います!」


どうやら一刻を争うらしい。僕は彼女の剣幕に圧倒されすぐにサラさんを下ろす。すると彼女・・・ヒーラーさんはすぐに治療を開始した



「・・・麻痺毒は即効性と遅効性で効き目が違います・・・即効性の毒はすぐに効くのですけどしばらくすれば動けるようになりますが・・・遅効性の毒はじんわりと効いてきてやがて心臓までも・・・」


なんてものを使いやがったんだ・・・あいつらは・・・


「この方は恐らく毒で気を失ったのではなく別の要因で気を失ったのでしょう・・・抵抗力が少ないのでもしかしたらマナ不足かも知れません。なので遅効性の麻痺毒の進行が早く・・・」


「え!?まさか助から・・・」


「大丈夫です。少しでも手当が遅れていれば危なかったのですが一命は取り留めました」


良かった・・・心臓が止まるかと思ったよ・・・


「・・・それで貴方は何者ですか?6階のゲートから出て来たようですが私達は貴方を見た事はありません。このダンジョンには入れるようになってからずっといるのにです・・・それにその仮面・・・何かの能力付きですよね?なぜそのような仮面を・・・」


ヒーラーさんが尋ねると他の人達はそれぞれの武器を構える。どう見ても怪しい僕を疑っているみたいだ


「ケン・・・武器をしまって。マホも・・・この人は悪い人じゃない・・・その証拠にこの女性が助かると聞いた瞬間に心から安堵してた・・・それでも私達は知る必要があります・・・ダンジョンの中で何が起きたのかを」


さて、どうしたものか・・・ヒーラーさんの意見はもっともだ。何が起きたのか知らないと自分達も同じ目に合うかもしれない・・・罠なのか麻痺毒を持った魔物がいたのかそれとも・・・


話すのはいいが僕にはあまり時間がない・・・それにギルドに報告しなくてはならないとなると入場料を払ってない事がバレる・・・最悪僕の正体も・・・


「うっ・・・うーん・・・」


僕がどう答えようか悩んでいる時、サラさんの意識が戻りかけているのか悩ましげな声を上げた


男性陣はもちろん、サラさんの状態を心配する女性陣の視線がサラさんに向いた瞬間、僕は素早く6階のゲートの前まで移動する


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


「すまない・・・仕事が待っている」


「仕事?何言ってんだ!?」


「何が起きたのかは彼女に聞いてくれ・・・それでは・・・」


「せめて!せめてお名前を!」


「・・・ロウ《ロウ!!》ぐっ!?」


名乗ろうとした瞬間にダンコが叫ぶ。顔を顰めるほどの大声で


《バカじゃないの!?名乗ってどうすんのよ!!殺したいの?ねえ?この人間達を殺したい訳!?》


仰る通りです・・・すみません・・・


「ローグ?」


「へ?」


「だって今・・・ローグって・・・」


「そ、そうだ!私の名はローグ!・・・ではサラバだ!」


ヨシ!何とか誤魔化せた・・・ような気がする!


慌ててゲートに飛び込むと周りを見渡して人が居ないのを確認して司令室へ・・・急いで仮面とマントを外して椅子に座ると大きく息を吐いた


「ぷはぁ・・・セーフ」


《何が『セーフ』よ何が・・・アナタ本気で気を付けないといずれ人間を大量虐殺する事になるわよ?》


それだけは勘弁してくれ


にしても思ったより大変だな・・・門番とダンジョンマスターの両立って・・・ん?・・・門番?・・・


「ああ!!」


《何よ!?》


「忘れてた・・・僕・・・トイレに来ただけだったんだ・・・」


ヘクト爺さんにはお腹が痛いと言って離れただけ・・・なのに・・・



僕は人気のない場所にゲートを繋げ慌てて村の入口に戻ると鬼の形相のヘクト爺さんが仁王立ちしていた


当然その後こってりと怒られる事になる




「大丈夫ですか?」


「・・・ここ・・・は・・・」


「エモーンズダンジョンの1階です。一体何があった・・・いえ、今は安静にしておいた方が良さそうですね・・・」


「・・・大丈夫・・・私はどうやってここに?もしかして・・・貴女達が?」


「いえ・・・6階のゲートを使ってある人が・・・」


「・・・ある人?」


「はい・・・仮面を付けて少し怪しかったのですが貴女を抱えて・・・『ローグ』と名乗ってましたが知り合いですか?」


「・・・ローグ・・・いえ、知らないわ・・・けど・・・」


「けど?」


「私の命の恩人よ・・・多分、ね」

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あまりにも主人公がポンコツすぎて萎える
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