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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
217/856

214階 あーん

「上級魔法!?」


ジケット達は家が揺れるくらい大きくハモリ、驚きの声を上げた


ペギーちゃんがあの時の事を話していいと言ったので話したのだが・・・まあそれは驚くわな


上級魔法と言えば魔法使いなら誰もが憧れ、他の冒険者にとって上級魔法を使える魔法使いは是非とも欲しい存在であり、仲間内だとマグもマホさえも未だ使えない魔法なのだから


「天才魔法少女復活か・・・」


「何だかまだ信じられない・・・確かに昔は当然なるだろうと思ってたけどまさかこのタイミングで・・・」


「うむ」


「でも急になんでだろうね。伸び悩んでいた時期を見ていた分不思議に思う気持ちも大きい・・・当然喜ばしい事なんだけど・・・ねえ」


みんなが混乱するのも無理はない


ペギーちゃんがダン以上に将来を有望視されていたのは当然知っているし、その後の事も・・・



さて・・・問題はマナ量が少なかったペギーちゃんがなぜいきなりマナ量が増加したかって事だ


これは誰にも話せないけど・・・その理由は僕にある


おかしいと思ったんだ・・・平凡な家庭に生まれた僕とシーリス。僕はまあイレギュラー的な存在だからいいとして、シーリスは宮廷魔術師候補になれるような才能を本来持ってなかったと思う


しかも宮廷魔術師候補に選ばれた原因が『マナ量』・・・少し引っかかっていたけどまあ偶然マナ量が多い子が平凡な両親から生まれた、とあまり深く考えていなかった


でも前にチラッと聞いたのだけどサラさんもマナ量がかなり増加したらしい。エモーンズに来てから


マナ量・・・つまり核の保有量は成人になるまでにほぼ決まるらしい


シーリスはともかくサラさんはもう決まっていたに違いない・・・なのにマナ量は増えた


そして今回のペギーちゃん・・・幼い頃にマナ量の成長が止まり魔法使いになる事を断念しギルドに就職したはずのペギーちゃんが上級魔法を使って見せたのだ・・・初級魔法でも数発でマナ切れしていたペギーちゃんでは決してマナが足りるはずのない上級魔法を、だ


つまり止まったと思っていたマナ量が増えていると言うことになる・・・で、だ・・・本来起こり得ない事が起こっているとなると原因は他の起こり得ない事が関係しているに違いないと考えた僕はダンコに聞いてみた


すると・・・


『まあ私達が原因でしょうね』


とあっさり目の返事が返ってきた


実は思い当たる節が以前からあったみたいだけど確証が持てずに黙っていたらしい


その思い当たる節というのがなんと・・・眷族化


スラミやシャドウセンジュのような完全な眷族ではなく若干眷族寄り・・・そんな微妙な関係なのだとか


でもそうなると僕の両親は?と聞いてみたら『上流から下流に水は流れないように眷族も同じ』なのだとか


つまり両親は僕の影響はさほど受けず、年下であるシーリスがモロに影響を受けた・・・でもそうなるとサラさんは年上・・・と思ったのだが・・・


『サラはローグに首ったけ・・・年齢差関係なく崇めているから上流か下流かで言ったら下流でしょうね』


だとさ


つまりシーリスは血縁関係から眷族化し、サラさんは信仰心?から眷族化・・・でも分からないのがペギーちゃんだ・・・間違いなく眷族化しているはずなのに僕との関係がよく分からない



「ロウニール?どうしたんだ?」


「え?いや・・・あの時は凄かったなぁって・・・ほら、上級魔法なんて見る機会なかったから・・・」


「だよな!・・・でもお前もその時にやろうとしてた事が出来たんだろ?えっとなんだっけ?マナを探る?」


「うん・・・まあ・・・」


あの時は本当に必死だった・・・必死でどうにかしないといけないって思ってたらボンヤリと見えた・・・ペギーちゃんとフェニックスの繋がりが


知り、理解するところまで出来た・・・あとは支配だけど・・・さすがに支配はちょっと難しそう・・・自分のマナならともかく他人のマナを操るなんて想像もつかない


「ハア・・・ペギーもロウニールも・・・なのに俺達はダンの野郎に負けっぱなしだ。あの野郎どんどん下に行きやがって・・・」


「それは仕方ないでしょ?ダンは元々Bランクだし根本が違うのよ」


「でもなぁ・・・」


そう言ってチラチラと僕とペギーちゃんを見るジケット


彼の言う負けっぱなしと言うのは直接戦って負けたとかではなくどちらがダンジョンの奥深くまで潜れたかの勝負だ


僕とペギーちゃんを見ている理由は単純に手伝って欲しいのだろう・・・でも・・・


「私は無理だよ?受付の仕事があるし」


「僕も無理だね。門番の仕事があるし」


「・・・ペギーはともかくロウニール・・・お前はしょっちゅう仕事サボってんじゃねえか!少しは友達を助けようとか思わねえのか?」


「パーティーを組んでるだろ?それにローグさんから武具を貰ったんじゃないの?」


せっかく作ってあげたのに・・・


「あー・・・いや確かに凄い装備何だけど・・・俺らにゃまだ早いって言うか・・・なあ?」


ジケット達の表情を見てすぐに察した


言葉にはしないけど使い勝手が悪く苦労しているのだろう


確かに最初は使いづらいと思うけどジケット達に合った武具を作ったつもりなんだけどな・・・無難にケン達にあげたような武具にすれば良かったかな?


ダン達『エモーンズシールダー』の台頭による焦りなんかもあるのだろうけど・・・うーん、もう少し扱いやすい武具にするべきだったか・・・


「なあロウニール・・・お前ローグさんと仲良いだろ?もう少し使い易い・・・いや、この靴は気に入ってるけどなんて言うかその・・・手っ取り早く強くなる装備くれないか頼んでみてくれない?」


物に頼ろうとしやがって・・・頼りたい気持ちは分からなくもないけど・・・ここはあえてジケット達の成長を願って心を鬼にしようっと




それから平穏な日々が続いた


サラさんとペギーちゃんのお陰でマナはある程度見えるようになったし、門番の仕事は他人のマナを探るには最適の仕事だった


理由は簡単・・・相手のマナを見るには波長を合わせるって作業が必要になるからだ


マナの動きが激しければ波長は単調になり合わせるのが簡単だけど静かだと難しい・・・つまり戦っている時とそうでない時を比べると難易度は跳ね上がる


で、戦ってない時にマナを探ろうとした時、かなり集中しないといけない訳だけど何もない時に他人をジロジロと見る訳にもいかない・・・普通なら


でも門番の仕事は街に来た人をよく観察するのが仕事のようなもの・・・マナを探る訓練には打って付けだった


「・・・最近仕事熱心だのう」


「そうですか?いつもと変わらないのですが・・・」


「熱心というか見過ぎと言うか・・・」


「どんな人が街に入ろうとしているか見極めないといけませんからね!街を守る為です!」


「・・・そうか・・・それならいいのじゃが・・・」


・・・セーフ


あまりジロジロ見るのも良くないな。自然と見てマナを探れるようにならないと・・・


「ロウニール君!」


「うわっ!?・・・ペギーちゃん!」


突然背後から声を掛けられ驚いて振り向くとペギーちゃんが立っていた


最近やたらと会ってるような気が・・・嬉しいけど理由が分からないからちょっと不気味


サラさんとの訓練を欠かさず見に来たりこうやって昼時に現れる事が多々・・・そんな時は決まって・・・


「お昼ご飯作って来たんだ!一緒に食べよ」


と言ってくる


どういう風の吹き回しだろ・・・憐れみ?


「あ、うん・・・ヘクト爺さん・・・」


「ふぉっふおっふおっ・・・構わないよ行って来なさい・・・少し長めに休憩をとってもワシはなーんも言わんから」


何が『ふぉっふぉっふぉ』だ


目を細めて何を考えてんだか・・・エロジジイ


「大丈夫みたい・・・行こうか」


「うん!」



門から少し離れた場所で汚れないようにシートを引いてペギーちゃんお手製のお弁当を広げる


もう何度目だろ・・・三度目か?


学校の時からしてみれば夢のような時間が僕に訪れていた


仕事の合間にこうして憧れの人と食事をする・・・それは体験するものではなく見るものだと思ってたのに・・・


「・・・どうかな?今日は前と違って新しく習った料理だから自信なくて・・・」


「美味い・・・美味いよ!これなら店で出してもおかしくないくらいだよ!」


最初にご馳走になった時、料理も上手な事に驚いた


セシーヌやサラさんとは違うけど誰もが恋するような美貌に加えて立派なおっ・・・しかも上級魔法が使えて料理上手って完璧超人かよ


「ありがとう!・・・んー、でも少し塩が足りないかな?今度は失敗しないように気を付けるね」


こんなに美味しいのに失敗扱いなのか・・・凄い向上心だな


《もっと喜んだら?愛しの『ペギーちゅわん』がわざわざロウの為に作って来てくれたのに》


お黙りダンコ!


正直嬉しい・・・嬉しいさ・・・でも・・・


「あの・・・なんで・・・その・・・」


「ん?もしかして迷惑だった?」


「いや!違くて・・・どうしてわざわざ・・・その・・・」


「ふふっ・・・何となく・・・何となくだよロウニール君」


ああ、笑顔が眩しい


でも何となく・・・か。前に聞いた時もはぐらかされてしまったけどやっぱり答えてくれないか


僕の背中が哀愁漂ってたとか、他の誰かの為に作るお弁当の実験台とか・・・明確な答えがあれば僕も安心して食べれるけど・・・


憧れの人の手料理を食べて安心してとか言っているのはおかしな話に思えるけど・・・きっとこの性格は直らない


確かに話をしたいとかずっと見ていたいとかお付き合いしたいとか思っていた・・・けどそれは間違いだった事に気付く


僕は憧れている人に憧れる日々が好きなんだ


こっちを見向きもしない彼女を見て憧れを抱く・・・こうなったらいいなぁ、ああなったらいいなぁって感じで・・・その憧れの人との距離が縮まると途端に怖くなってしまう・・・見ていたらいきなり振り向かられ目が合った瞬間に『キモッ』とか言われないだろうかとか『ごめん好きな人がいるの』とか言われたら死にたくなるからだ


それなら初めから近くに寄らなきゃいい・・・少し離れた場所から眺めているだけで・・・


「あっ!これ上手く出来てるかも!ロウニール君ちょっとこれ食べてみて!」


なぬ!?これは究極の『あーん』では!?しかもペギーちゃんが使ってた箸で!?


「え、でもその箸・・・」


「はい、あーん・・・どう?」


どう?って緊張し過ぎて匂いも味も感じない・・・どうしてこうなったか聞いても答えてくれないし・・・僕は 一体どうすればいいんだ!?──────

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