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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
21/856

18階 ラウルという男

ラウルは得意気に語る


私をパーティーに誘うずっと前からこのような事を繰り返していた事を


最初は相手の善意から・・・ラウル達が冒険者となりダンジョンに挑むも上手くいかず悩んでいた時にCランクの冒険者が手伝ってくれたのが始まりだと言う


初めはCランクの冒険者に手ほどきを受けて真面目に強くなろうとした・・・けど、なかなか強くなれない現実とそのCランク冒険者の言動に苛立ち始める


そして──────


「・・・あるダンジョンのボス部屋で中級の魔物と戦ってた時だ。ぶっちゃけ何の魔物か覚えてねえ・・・ずっとそいつの背中ばかり見てただけだからな・・・で、そいつはその魔物をギリギリで倒した訳よ・・・肩で息してさ・・・振り返り言った言葉が『役立たず共が』だってよ・・・そんな事を言われたもんだからプチッてきてな・・・魔核を拾おうと屈んだそいつを後ろから・・・」



刺して殺した──────


そしてCランク冒険者の装備やらお金、そして今回の魔核を盗み取り下の階のゲートでダンジョンの外へ


何食わぬ顔でCランク冒険者は魔物に殺されたと報告後、魔核をギルドで精算するとGランクだったラウル達はFランクに昇格した


ほとんど何もせずにランクが上がりお金も手に入る・・・味をしめたラウル達は受けた善意を悪意に変えてしまう


高ランクの冒険者を見つけてはお願いしてパーティーに誘い、隙を見てその冒険者を殺して全ての報酬をラウル達で分ける・・・当然同じダンジョンでそんな行動をしていれば怪しまれるので別のダンジョンを渡り歩きながら・・・


「俺達はDランクとはいえ実力的にはFランクくらいじゃねえかな?ぶっちゃけ魔物を殺した数より人間を殺した数の方が多いかも・・・まっ、そんな感じで繰り返してた時にサラの噂を聞いてな・・・『風鳴り』・・・固定パーティーに属さず転々とダンジョンを渡り歩きBランクまでのし上がった女冒険者・・・俺達とは違い本物の実力で・・・けどおかしな点があった」


「おかしな・・・点?」


麻痺毒が効いてきたのか舌が上手く回らない・・・壁に手を付き尋ねるとラウルは笑みを深める


「噂を聞くまで全くの無名・・・しかも元々はスカウトだったらしい・・・それが突然アタッカー兼スカウトのレンジャーとなったって聞いた時におかしいと思った・・・そしてこうも思った・・・『コイツ・・・強力な武器でも拾いやがったな』ってな。今日で確信したぜ・・・お前は何か特別な武器を持っている・・・それを使ってBランクまで上り詰めたんだ・・・そうだろ?」


「・・・」


「あー、答えなくていいぜ。どうせお前は今から裸にひん剥かれ隅々まで調べられるんだからな・・・ちなみに遅効性の麻痺毒を使った理由は・・・反応ねえとつまんねえからだ」


「・・・ゲス・・・が・・・」


「何とでも言え。しかし驚いたぜ・・・噂の『風鳴り』がこんな美人だったとはな・・・想像してたら股間が熱くなっちまってバレないかヒヤヒヤもんだったぜ。つーか俺は何度もチャンスをやったんだぜ?仲間になれってよ・・・まっ、それもタップリと稼がせてもらうまでの期間だが・・・もう少し長生き出来たってのによ」


どの道殺す気だったって事か


『風牙扇』には気付いてないようだ・・・マナはもうほとんどない・・・一撃で全員を・・・


「っと、まだマナは空っぽにはなってないんだよな?危ねぇ危ねぇ・・・さて、ここで麻痺毒がある程度効くまで待つとするか。完全に効いちまうとつまらねえから見極めが肝心だな」


ここまでの魔物との戦いで『風牙扇』の射程を知られた?


『風牙扇』は閉じる程に威力は上がるけど射程は短くなる。4人を同時に倒すとしたら半分の開きが必要だ。半分の開きで射程距離はおおよそ5m・・・ラウル達は警戒してか私から5m以上離れて近付いて来なかった


このままだと麻痺毒が効いてきて完全に動けなくなる


その前に私から飛び込んで・・・いや、もう既に動きは遅くなっている・・・私が近付いてもラウル達が下がってしまえば元も子もない


なら・・・


「おいおい・・・どこに行くつもりだ?そっちは・・・」


「・・・お前らに・・・穢されるくらいなら・・・」


私が取った行動にラウルは初めて動揺をみせた


それもそのはず私はダンジョンの奥へと歩き始めたからだ


まだこの階には魔物が残っている・・・奥に行けば魔物と鉢合うだろう


もし本当にラウル達がランクF相当の実力しかないのなら・・・この階の魔物は厳しいはず


かと言って私も今の状態じゃかなり厳しい



けど・・・諦めた訳じゃない



これは賭けだ・・・ラウル達が魔物を警戒し追って来ず、なおかつ私が魔物に遭遇しなければ・・・私の勝ち


ラウル達が追って来る、もしくは魔物と遭遇したら・・・私の負け


かなり割に合わない賭けだがあの場で何もしないで屈辱を受けるよりはマシだ・・・!・・・ハア・・・勝てればもっと良かったんだがな・・・



正面にはスライムにブラッドドッグにバウンドキャットとこの階の魔物勢揃い。背後からはラウル達の足音が聞こえてくる


負けも負け・・・完敗だ


ここでマナを使い切り魔物を倒してラウル達に穢されるくらいなら・・・


「足掻いて地獄を見るよりは・・・マシだな・・・これまで沢山の魔物を葬ってきた私が言うべき言葉じゃないが・・・あまり痛くしないでくれないか?」


魔物に言葉が通じるとは思っていない


でも、もしかしたら・・・少しでも通じるなら・・・何もかも綺麗さっぱり・・・



残さず食べて欲しい



アイツらに死に目を見せないように綺麗さっぱりと



そして願わくば・・・アイツらも・・・いや、それは勘弁かな?同じ胃袋に入るは嫌だし・・・



ああ・・・もう疲れた・・・結局私は利用されるだけ・・・必要となんて・・・されなかっ・・・た・・・



「・・・下がれ!」



・・・誰?・・・あ・・・もう・・・意識が・・・





──────遡ること10分前──────


「ええ!?ダメだ!!」


「ふぉ!?」「え!?」


僕が突然叫ぶと許可証を確認していたヘクト爺さんと商人のオッサンが僕を見る


「なんじゃロウ坊・・・いきなり叫びおって・・・」


「あの・・・何か不備が?」


「いやいや、その・・・エモーンズ村へようこそ!・・・ねえ?ヘクト爺さん」


「う、うむ・・・許可証は確認出来たのでお通り下さい・・・」


僕を睨みながら商人を通すヘクト爺さん・・・仕方ないじゃないか・・・だって・・・


「・・・で?何がダメなんじゃ?それともまさか寝言か?たまに見ると目を瞑ってるように見えるが・・・」


「き、気の所為ですよ!だってほら・・・眩しいから・・・ってそれより・・・あのっ・・・ちょっとトイレに・・・」


「ああ、そのダメ、か。早く行って来い。ここで漏らされたら堪らん」


何故か納得してくれた・・・なんでだ?・・・あっ、漏れそうでダメだって勘違いしたのか・・・


ありがたい・・・どうやってこの場を離れようかと思ったけど案外すんなり離れられた


「ダンコ・・・状況は?」


ヘクト爺さんにお礼を言ってその場を離れると走りながらダンコに尋ねる。何を尋ねたかと言うともちろん今現在6階で起きてる『ダメ』な出来事についてだ


《・・・何しに行くの?ただの人間の小競り合いじゃない》


「小競り合いって・・・声は聞こえないけどあれは明らかにサラさんを陥れようとして・・・そうだろ?ダンコ」


今日エモーンズに来たサラさん達一行は早速ダンジョンに入って来た


僕は仕事をしながら監視(覗き)をしているとなんだが不穏な空気・・・ダンコは声が聞こえるようでボソリと僕にこう言った



《あー殺されるわねあの人間》



それを聞いた瞬間、思わず叫んでしまった訳だが・・・殺されるってどういう事だ?仲間じゃなかったのか?


確かに不穏な空気がしたけどまさか殺されるなんて・・・


《ハア・・・どうやらあの男達が女に毒を盛ったみたい。麻痺毒って言ってたから死に至るのではなく動けなくさせるのが目的・・・で、犯して殺そうって感じ?》


「軽いな!」


《だって人間の命なんて・・・別にどうでもいいじゃない》


ダンコの言葉に背中に冷たいものが走る


そうだ・・・ダンコは人間じゃなくてダンジョンコアなんだ・・・あまりに普通に会話するからすっかり忘れてたけど・・・どちらかと言うと人間側というより魔物側・・・


「・・・僕もどうでもいい?」


《バカね・・・アナタは私じゃない・・・そうでしょ?》


「そう・・・だね・・・」


もし僕とダンコが離れ離れになったら・・・ダンコは・・・


「・・・っし!」


《!?・・・なんでアナタ自分の頬を叩いてるの?》


「雑念を払っただけ・・・今は早く助けないと!」


《だから助ける必要なんて・・・ちょっ!?ロウ!》


僕は物陰に隠れるとゲートを開き彼女の元へ


ダンコが何か言いかけたけど今は時間が無い・・・急がないと手遅れになる!


ゲートを開く時に彼女の位置は確認していた・・・どうやら視野が狭くなっていたみたい・・・彼女は居たが魔物も・・・居た


「・・・去れ!」


咄嗟に命令すると魔物達はピタリと動きを止め、すごすごと奥へ消えた。なんだが悪い事をしたような気分になったが彼女を助けるのに必死だったんだ・・・すまん・・・


去って行く魔物立ちを見送った後に倒れている彼女を見るとどうやら気絶しているみたいだった


毒と聞いたけどちゃんと生きて・・・


「あ?誰だお前・・・」


彼女の無事を確かめようと屈んだ時、曲がり角から奴らが現れた。彼女を辱め殺そうとした奴らが


「・・・」


「・・・ん?お前確か・・・村の入口の・・・どうなってんだ一体・・・」


僕が無言で立ち上がり奴らを睨みつけるとどうやら僕の顔を覚えていたようで驚き呟いた


《さて・・・どうするの?殺すの?殺させるの?》


え?何その選択枠・・・おかしくないか?


《止めようとしたのに聞かないから・・・アナタは顔を見られたのよ?この状況で。少しの綻びが破滅を招く・・・顔を知られて生かしておけばいずれアナタは・・・それにこの女を助けるんでしょ?だったら答えは出てるんじゃない?》


そう・・・僕は彼女を助けに来た・・・でもどうやって助けるつもりだったかと聞かれれば答えられない。毒の影響で動けない彼女をおぶって逃げるつもりだった?それとも・・・


僕を警戒しながら奴らは武器を手に構える。門番である僕がここにいる謎は解けてないみたいだけど・・・僕を殺して彼女も殺す気だ


《早くしないと殺されるわよ?》


分かってる!分かってるけど・・・


《ハア・・・こうなると想像してなかった訳?・・・仕方ないわね・・・今回は私がやるわ》


「やるって・・・何を・・・」


《よく見てなさい・・・ダンジョンマスターの戦い方を──────見せてあげる》

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