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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
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門番ロウニール

「はい確認出来ました。ダンジョン都市エモーンズへようこそ」


通行許可証を確認して街に入れる簡単な流れ作業


その繰り返しが僕の仕事だ


初めはただただ門の前に突っ立ってるだけだった。けど今はダンジョンが盛況って事もありひっきりなしに訪れる人を街へと誘う


「手馴れたもんじゃなロウ坊」


「5年もやればね・・・でもヘクト爺さんには負けるよ。なんてったってこの道ん十年のベテランだもんね」


「忙しくなる前は月に一度か二度来るか来ないかの状態じゃったんじゃ。年数で言えばワシの方が上かも知れんが人を招き入れた人数は差程変わらん」


「それでも・・・」


「どうした?また得意の腹痛か?」


「得意って・・・すみません!一旦抜けます!」


「いつもの事じゃ。気にせず行って来い」


お腹を押さえながら足早にその場を立ち去る。1週間に二度ほど起こる()()の腹痛もとい・・・


《また?懲りないわね・・・()()は》


「別に同じ人じゃないから仕方ないよ。一度やらかした人はもう懲りて無茶はしないはず・・・多分」


《そう?懲りてないと思うけどね。どうせ助けてくれる・・・ダンジョンナイトが・・・みたいな事を考えてるから無茶をするのよ》


「その言い方だと・・・まるで僕のせいのような・・・」


《ええ。その通りよ》


ぐっ・・・そんなハッキリと言わなくても・・・


ダンジョンに潜る冒険者は様々だ


石橋を叩いて渡る人もいれば玉砕覚悟で不相応の階層まで下りてしまう人もいる


下に行けば行くほど魔物は強くなりその分魔物から得られる魔核も高値で買い取られるしダンジョン内にあるお宝もレア度の高いモノが置かれている


一攫千金を夢見るのは構わないけど自分の実力を過信しちゃいけない


「ゲート」


人気のない場所に辿り着くとダンジョンへのゲートを開く


ここを通れば自分の力を過信した冒険者の元にひとっ飛びだ


《ちょっと!そのままの姿で行く気?》


「おっとそうだった・・・危ない危ない」


《しっかりしてよね?もうすぐ約束の日よ?まあ向こうは覚えているかどうか分からないけど・・・》


「・・・覚えてるさ・・・きっと・・・」


懐から仮面を出して装着する。そしてもうひとつ小さなゲートを開き手を突っ込むとフード付きのローブを引っ張り出し身に着ける


その小さなゲートの奥から小さな声で「行ってらっしゃいませ」と聞こえた。僕は微笑むと小さなゲートを閉じ改めて冒険者へと通じるゲートに向かって歩き出す


《アナタの行動が人間の慢心を持たせてる・・・キリがないわよ?》


「・・・それでも僕は・・・」


返事の途中でゲートを通過、目の前にはミノタウロスと必死の戦闘を続ける冒険者達がいた


「だからまだ無理だって言ったのよ!このままじゃ・・・」


「うるさい!今はそれどころじゃねえ!喚く暇があったら矢を放て!少しでもダメージを与えて・・・」


言われて弓を構える女性


近接アタッカーの男は辛うじてミノタウロスの斧を躱し女性の矢が攻撃後の隙を付いてミノタウロスへと放たれた


「・・・そんな・・・」


女性の放った矢は無情にもミノタウロスの強靭な肉体には刺さらず床へと落ちる。もしミノタウロスにダメージを与えたいならマナを使い魔技で攻撃しないとダメなのに・・・そんな事も分からないのか?


絶望する女性・・・壁際にはパーティーメンバーと思われる盾を持ったタンカー・・・それにローブを着た魔法使いらしき男性が気絶し倒れていた


()()()()が、ミノタウロスの攻撃から魔法使いを守る為にタンカーが盾で斧を防いだがそのまま魔法使いごと壁まで吹き飛ばされ2人とも気絶した・・・パーティーメンバーは4人でその半分を一撃で失い万事休す。残った2人が必死の応戦中って状況だ


「ギサーヌ!逃げて!!」


ミノタウロスの斧を躱し、近接アタッカーのギサーヌと呼ばれた男は女性の矢でミノタウロスを牽制出来てほっと一息つけると踏んでいたのだろう


・・・だが、ゆっくりと立ち上がる背後には女性の矢をものともせず手に持つ斧を振り上げるミノタウロスの姿があった


「あ?・・・マジかよ・・・クソッタレ・・・」


死を覚悟したのかギサーヌは振り向いた後微動だにせず呟く



振り下ろされる斧



為す術なく立ち尽くすギサーヌ



「ギサーヌ!!いやあああ!!」



耳を(つんざ)く悲鳴



ダンジョンではよくある光景だ



少し背伸びしてしまった冒険者が辿る末路



それでも僕は・・・



「それでも()は・・・拒絶する」



ミノタウロスとギサーヌの間に滑り込み振り下ろされた斧を剣で受け止める


「・・・?・・・あ・・・」


「離れておけ。私がやる」


「ダ・・・ダンジョンナイト!?」


くっ・・・その名で呼ばれるのはあまり好きじゃないが・・・


斧を弾き返しミノタウロスと改めて対峙した


身長3mはあるであろう巨体を震わせ新たに現れた僕を歓迎するかのように咆哮する


「すまんな割り込んで。私と勝負といこうじゃないか」


横入りしたとは言え対等・・・冒険者4人との対決が僕とミノタウロスの一騎打ちに変わっただけ


それを承知してかミノタウロスは僕を真っ直ぐ見据え体に相応の大きな斧を振り回す


「当たれば私とて無事では済まないな・・・当たれば、な」


大振りの斧を難なく躱し距離を詰めて剣を突き立てる


強靭な肉体は鋭い剣先をも弾いた


「さすが中級・・・ならばこれならどうだ?『剣気一閃』」


剣にマナを纏い、横に振るうと初めて肉が切り裂かれ鮮血が噴き出す。それでもミノタウロスは臆することなく僕に向けて一歩踏み出した


「・・・ちっ・・・」


無意識に舌打ちをしてしまう


絶体絶命のピンチだからとかではなく・・・これ程勇敢な魔物を冒険者ではなく僕の手で倒さねばいけない事への舌打ちだ


「・・・またな・・・『剣気乱舞』」


剣にマナを纏わせたまま無差別に切り刻む


斧を持つ手が飛び体中に無数の傷が出来・・・最後は首が飛び勝敗は決した


冒険者として戦ったら達成感でも感じていたのだろうか・・・ミノタウロスの死体を見て今の僕には虚しさだけが残った・・・


「・・・倒した?・・・助かった・・・のか?」


背後で呟くギサーヌ


お前が無理をしなければ・・・このミノタウロスはもっと違う人生・・・魔生を送れたと言うのに・・・


「・・・あ・・・ありがとうございます!ダンジョンナイト様!」


ようやく助かった事を理解した女性が弓を地面に放り投げてギサーヌに駆け寄ると僕に向かって感謝の言葉を口にした


ダンジョンナイト・・・そう呼ばれるようになってもう数年が経つけど一向に慣れない。偽名は全く浸透せずダンジョンに突如現れる騎士・・・ダンジョンナイトという二つ名が浸透してしまった


「・・・身の丈に合った行動をするべきだな。君達にはまだまだこの階層は早い」


小言を言うつもりはなかったけどまた同じ事を繰り返されてもと思いつい口走ってしまった。見た目僕よりも年上っぽいけどダンジョンナイト・・・ではなくてローグは設定的にベテラン冒険者なので問題ないだろう


「・・・行けると思ったんだ・・・ここまで来るのにハッシュはマナを温存出来たし俺達の体力も万全で・・・」


ハッシュというのが魔法使いなのだろう


確かに魔法使いのマナに余裕があればまだ行けると思ってしまうかも・・・これは改善の余地ありってところか


「全員が万全という訳でもなかっただろう?スカウトの彼女はマナが尽きていた・・・違うか?」


この階・・・35階まで下りて来れるって事はそれなりの冒険者なのだろう。魔法使いのハッシュのマナを温存し更に奥へと向かう為に他の者達が魔物を倒して来た。そして彼女のマナが尽きてしまってもリーダーであるギサーヌは強行しミノタウロスと遭遇し不意打ちでハッシュがタンカー諸共ぶっ飛ばされ気絶してしまった


未知の領域に踏み込む際、スカウトの能力は必須


地形を調べたり魔物の位置を確認したり罠を見つけたり・・・全ての行動にマナを使う為に彼女のマナが尽きた時点でダンジョンから出るべきだった・・・単純な判断ミスだ


「くっ・・・そんな事は・・・」


「分かっている・・・か。なるほど・・・間抜けな自殺志願者か」


「んだと!てめえ!!・・・うっ・・・」


「なんだ?人間を助けたつもりが魔物だったか?ここで人間に牙を剥くのは魔物だけ・・・そうだろう?」


ギサーヌが敵意を向けて来たので瞬時に背後に回り込み首に剣を当てる。鋭い刃は浅くだがギサーヌの首にくい込み血が一筋となって流れ出る


スカウトの彼女は真っ先に礼をした。だがギサーヌは放心状態が解けても出てくる言葉は言い訳ばかり・・・こういう奴はまた繰り返す・・・ならばいっそう・・・


「待って下さい!ギサーヌは向こう見ずなところがあって・・・けど・・・私達がここまで来れたのも彼のお陰なんです!だから・・・その・・・」


「・・・アーリン・・・」


「・・・向こう見ず、か。彼の見なかったのは君達の命だ。ダンジョンで得られるものは栄光や富・・・その対価は命である事を忘れてはならない。上手く行けば全てを得られるが失敗すれば全てを失う・・・向こう見ずな性格を治さないといずれ払う事になるぞ?その対価を」


「・・・」


仮面って不思議・・・まるで別の人にでもなったようにスラスラと言葉が出る。言い難い事もスラスラと・・・


悔しがるギサーヌ


その悔しがる彼を慰めるスカウトの彼女・・・アーリン


この構図はまるで僕が悪者みたいな感じだな・・・いたたまれない気持ちになりそれ以上何も言わずに踵を返すとダンジョンの奥へと歩き出した


「・・・いずれ・・・アンタを超えてみせる!・・・それまでこの借りは・・・借りておく!」


立ち去る僕の背に吠えるギサーヌの声は決して強がりではなく本気で超えようと決意した者の声に聞こえた


僕は振り返らず軽く手を上げて応えると角を曲がりゲートを開いてダンジョンの司令室へと戻った


「おかえりなさいませ・・・マスター」


「ただいま・・・他に無茶をしている冒険者はいないかな?」


僕が戻った事に気付いた女性が恭しく頭を下げる。そして僕がいつも座る椅子を引いてくれたので僕はゆっくりとその椅子に腰掛けた


「今は平気なようです。と言っても状況はすぐ二転三転するので気は抜けませんが・・・」


「そうだな。あー、あと34階までの魔物を調整してくれ。まだ35階に下りるのを躊躇うくらいにしないと同じような冒険者が増えそうだ」


「何階から調整しますか?」


「30階のボス部屋後・・・31階からでいい」


「はい、マスター」


ギサーヌ達のように勘違いをさせない為にも難易度を調整しないとな。一応段階的に上げたつもりだったけど・・・ミノタウロスが強過ぎたかその手前が弱過ぎたか・・・その辺の調整はかなり難しい


《本当アナタはダンジョンナイトになると説教臭くなるわね》


「なんでだろうな?自分の事なのに不思議で仕方ないよ・・・てかダンコにまでダンジョンナイトと言われるとは・・・」


仮面を外して背もたれにもたれため息をつく


どう言われようと気にしないけど・・・ダンジョンナイトって・・・


《・・・何黄昏てるのよ・・・それよりいいの?まだ職務中でしょ?》


「職務?・・・・・・ああ!!」


ひと仕事終えたからすっかり勘違いしてしまったけど僕の仕事場は()はここじゃない!


「やばい・・・怒られる・・・」


《呆れた・・・ゲート使うなら人気のない所にしてよね。バレたら終わりよ?》


「分かってる!ゲート!」



門番とダンジョン・・・この二重生活が始まって早5年・・・色々な事があった


そしてとうとう約束の時を迎えようとしていた


相手が覚えているかどうか疑問だけど・・・僕は来てくれると信じてる


来てくれると信じてるから耐えられた


15歳から20歳になるこの年まで・・・耐えられたんだ


目の前に作ったゲートを通り抜ける時、まるで走馬灯のようにこの5年間が頭の中を過ぎる


出会いあり別れあり涙あり笑いありの・・・5年間が──────

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