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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
190/856

187階 ムルタナにて

「お兄ちゃん!!」


僕を見つけて笑顔で駆け寄って来るラル


両手を広げて待っていると華麗にスルーされ、後ろにいた僕に扮したシャドウセンジュに抱きついた


うおおぉ・・・めっちゃ恥ずかしい・・・この広げた両手はどうすれば・・・


「・・・私が行きましょうか?」


「・・・大丈夫だ」


セシーヌの気遣いは嬉しいが彼女を抱き締めたらそれはそれで問題が・・・とりあえず困惑するシャドウセンジュを助けねば・・・


「ラル・・・こっちだ」


広げた両手を戻して振り返ると手招きしてラルを呼ぶ


えっとラルとの出会いは・・・ロウニールとして初めて会ってその後ラルの前で仮面をつけて『実はロウニールのフリをしたローグでした』みたいな感じだったっけ?うーん、なんだかややこしいぞ?


「?・・・あ・・・??」


ラルは振り返り僕を見て何かを思い出すと僕とセンジュを交互に見て首を傾げる。混乱するのは凄い分かる・・・僕も絶賛混乱中だ


「ラル・・・お母様の容態を見たいのですけど案内してもらえますか?」


「あっ!聖女様!・・・はいっ!」


た、助かった


セシーヌが助け舟を出してくれたおかげでとりあえず難は逃れた・・・けどどうやって説明しよう・・・ありのまま説明しても頭がこんがらがるだけだし・・・もういっそうのこと実は双子だったって事にするしか・・・


「ローグ様・・・一緒に来て下さいませんか?色々とお話もあるので・・・」


事情を知っているセシーヌがまた助けようとしてくれてる・・・これに全力で乗るべきと僕は頷きあとをついて行く事にした


「これは聖女様!それに・・・ローグ様!」


おお・・・ラルのお父さんとは通信でたまにやり取りするけど会うのは久しぶりだな・・・って、なんか・・・いや、別に良いんだけどね・・・外から見たら前と変わらなかったけど家の中が随分と変わっていた。妙に小洒落ているって言うか・・・


テーブルは木を組み立てただけだったのが純白のクロスがかけられ花瓶が置かれている。椅子も木ではなく革張りになっており、床一面には絨毯が・・・服装もツギハギだけの服から洗濯したてのような綺麗なものを着ているし・・・


「あなたどうしたの?・・・あっ!」


ラルのお母さん!魔蝕が治って元気になったんだ・・・良かった良かった


「聖女様ローグ様・・・この度はなんと御礼を申し上げたら良いか・・・」


僕とセシーヌに気付き頭を下げるラルのお母さん・・・まだまだ若いし頭を下げた時に揺れた巨大なふたつの果実が視線を奪う


ラルも大人になったら育つのか?将来が楽し・・・


「ローグ様?」


あれ?顔は笑顔だけどなんか怖いぞ?もしかして僕の視線に気付いた・・・とか?


仮面をつけていても全てお見通しよ!って事か・・・『真実の眼』・・・恐るべし



「ムルさん調子はいかがですか?」


「それはもう・・・病にかかる前より調子が良いように感じるくらいです。夫の仕事も順調ですし・・・御二方には足を向けて眠れません」


膝には乗るけどね


ようやく事情が飲み込めた?ラルは椅子に座った僕の膝の上でご機嫌な様子・・・代わりにセシーヌから度々氷の微笑を浴びせられる羽目に・・・


「ローグ様・・・最近は報告することもなくただお金を貰っているだけで・・・」


「構わない。便りがないのは良い便りと言うだろ?私もそのおかげで気にすることなく自分の仕事が出来る・・・十分に対価にあった働きだ」


まあ単なるお金を送る名目だけどね・・・あまり贅沢な暮らしをしていると打ち切りたくなるのはどうしてだろう


「そ、そうですか・・・いやー、ムルが治った勢いで二人目も・・・なんて言うから仕事なくなったらどうしようかと・・・」


決定・・・打ち切り


「ローグお兄ちゃんありがとー!ラルはねえ・・・弟が欲しいの!」


うっ・・・ラルの笑顔が眩しい・・・せめてラルが自分で稼げるようになるまで送金してやるか・・・


夜も更けてきたので早々にラルの家から退散し侍女達が用意した宿屋へ向かった


聖女セシーヌが泊まるという事で村に来て宿をとっていた商人達は追い出され貸切状態に・・・そして護衛であるはずのジェイズ達も同じ宿に泊まる訳にはいかず宿屋の近くにテントを構え外から護衛しつつ寝るらしい


ローグは一応客人扱いの為に宿で寝れるのだが・・・


「2階の客室の端と端・・・別にいいけどさ」


《あの人間なら夜這いも望むところでしょ?試してみれば?》


「首と胴体がバイバイしたくないし遠慮しとくよ・・・てか夜這いなんてしないし」


エミリが鬼の形相で追いかけて来るのが浮かぶ・・・怖い怖い・・・


《そっ・・・ところで王都まで一体どれくらいかかるのよ?いい加減飽きてきたわ》


「さあね・・・このペースだと一週間以上・・・下手したら二週間くらいかかるかも・・・」


《ハア・・・魔物の配置はスラミが管理してるからいいとしても魔物の創造やダンジョンの修繕はアナタしか出来ないのよ?それを二週間も・・・》


「何かあったらゲートで戻ればいいだろ?」


《それでもあんまりダンジョンから離れるのは・・・》


〘マスター・・・コイツら殺していい?〙


んん!?部屋でダンコと話していると変な言葉が混じって聞こえたぞ?


殺していい?って・・・


「ちょ・・・どういう状況??」


《何よいきなり・・・》


「いや、いきなり通信で・・・・・・眷族?・・・センジュか?」


《??》


眷族とは離れていても会話が出来る。ダンコと違って口に出さなくても会話出来る便利な機能だが・・・その眷族であるセンジュから何やら物騒な質問・・・何が起きているんだ?


「どうやらセンジュが何者かに襲われている?らしい・・・今『殺していい?』て念話が・・・」


《・・・まずいわね・・・今のセンジュはロウの姿をしているし相手が誰なのかも分からないし・・・》


うん、かなりまずい


コイツらって言ってたから相手は複数・・・特にシャドウセンジュに指示は出てないからてっきりテントで休んでいるかと思ったけど・・・一体どこで何やってんだ?


場所を聞いても正確に答えられないだろうし見つけるのも一苦労・・・さて・・・どうしよう・・・


「せめて居場所が分かれば・・・」


《眷族の居場所ならある程度特定出来るわ。眷族とは繋がっているから他の人間や魔物と質が違って見えるの》


便利だな・・・眷族


《ダンジョンみたいに『見る』事は出来なくてもマナを薄く拡げたら感知出来るはず・・・人間が言うスカウトの能力のように・・・》


スカウトの探索か


僕は目を閉じダンコの言われた通りマナを薄く広範囲に拡げていく


すると体の中からマナが外に向かって放出されるのが分かる・・・マナが薄い膜となり徐々に拡がりやがて村全体を包み込む


ポツンポツンと点が見えて、中心・・・つまり僕の居る場所は他の点より色濃く見えた。そして少し離れた場所でも色濃く見える点があり・・・


「・・・そこか。でも・・・どこだ?」


点の場所は分かったけどそれが村のどこになるのかまでは分からない。点の方角を頼りに実際に行くしかなさそうだ


窓から見える屋根にゲートを繋げ移動すると再び色濃く見えた点の方向にある建物の屋根にゲートを繋げる


ローグの姿は目立つから咄嗟に考えた移動方法だけど夜なので目立たなくてかなり移動も速い


あっという間に点の場所まで移動を終えて見ると僕に扮したシャドウセンジュと・・・デクトとファムズが対峙していた


なんだか拍子抜けしたと同時に殺してしまえという気持ちが湧き上がるがさすがに護衛が死んだとあればセシーヌ達に迷惑がかかる・・・どういう経緯で対峙しているか知らないけど止めておこう


「・・・ん?あれは・・・」


いざ3人の近くにゲートを繋げようとした時、3人の頭の上から大量の水が降り注ぐ


見ると3人を見つめるふたつの人影・・・あの2人は・・・


とりあえず会話を聞こうと小さいゲートを3人の近くに繋げて耳を傾けた


「っ!?・・・何しやがる!!」


「ヒィ~すみませんすみません!でも・・・おやめ下さいぃ~」


「うっ・・・サマンサ殿・・・それにシーリス殿・・・」


「か、勘違いされているようですが別に揉め事などでは・・・」


〘マスター・・・殺していい?〙


誰をだ誰を!


宮廷魔術師候補のサマンサが止める為に3人に水をぶっかけたみたいだな・・・びしょ濡れのセンジュがサマンサを睨んでいるのがここからでも分かる・・・この好戦的な性格は本当にシャドウのものなのか??


〘よしなさい・・・それよりもその場を上手く離れて・・・厄介な奴がいる・・・〙


シーリス・・・まともに話した事もないが一応は血を分けた妹・・・もしあそこにいるロウニールが偽物と分かったら面倒な事になる


かと言って逃げ場のない路地裏・・・上手く離れろと言っても無理か・・・


「あっ!ロウニールてめえ!」


「待てコラ!」


・・・頷いたセンジュは突然飛び上がると壁を蹴って遥か上空に飛び上がり屋根の上に・・・そしてこちらを見てこくりと頷き闇夜に消えて行った


もっといい離れ方はなかったのか・・・まあいいか


「・・・助けてもらったのに礼のひとつもないなんて・・・相変わらずね」


「シーリスさんあの方はお知り合いです?凄い身体能力ですね・・・まさかピョンピョン飛んで屋根の上に行っちゃうとは思いませんでした」


「さあ・・・知らないわ。ところでどうする?埋めとく?」


「ちょ・・・本当に何でもなかったんだ!ロウニールの野郎が・・・」


「野郎が?」


「護衛の任務そっちのけで聖女様とぺちゃくちゃ喋ってたんで・・・先輩として指導してただけです・・・」


嘘つけ・・・それだけでセンジュが殺していいか聞いてくるわけ・・・ないよな?


「そっ・・・ならいいわ。サマンサ行きましょ」


そう言ってサマンサと共に去ろうとするシーリス・・・だがそれを制止する声が路地裏に響いた


「待てよ!確かに俺達は聖女様の護衛って身分だが・・・お宅らも宮廷魔術師候補とはいえ同じ聖女様の護衛なんじゃないのか?だとしたら勘違いで水をぶっかけといて一言も謝罪がねえのはおかしいでしょ?」


やめとけばいいのに・・・今の声はデクト?それともファムズ?どっちでもいいけどアホだろ・・・相手は街の衛兵と違って宮廷魔術師候補だぞ?


「あ、すみ」「謝らなくていいサマンサ・・・顔を見れば分かるわ・・・指導と言いながらストレス発散してたんでしょ?小物がよくやる事よ」


我が妹ながら口悪いな・・・その通りだけど


「小物・・・そりゃあねえんじゃねえですか?それに間違えたら謝る・・・基本でしょ?あー、そうか・・・宮廷魔術師候補の1人にあの村・・・街の出身者がいると聞いたけど・・・アンタか・・・道理で・・・」


「・・・どういう意味?」


「最近まで汚ねえ村だったんだ・・・礼儀なんて知らなくても仕方ないと・・・」


「埋める」


聞いてて途中からまずいと思い、急がゲートを開くとシーリスと2人の間に割って入る


シーリスめ・・・殺す気か?地面が盛り上がり2人を包み込もうとするのをシーリスより強いマナを流しギリギリの所で止めた


2人は・・・無様にビビってしゃがみこんでいる・・・うーん、やっぱりこのまま生き埋めになるべきじゃ・・・


「・・・お、お前は・・・ローグ・・・」


「・・・」


「何があったか知らないが滞在先の村で問題を起こすのは良くないな・・・やるなら村の外でやるんだな」


うん、村の外なら存分にやってくれ


生き埋めにしたのなら場所さえ抑えてくれれば毎日水くらいかけてやろう


「くっ・・・別に何でもねえよ!」


捨て台詞を吐いて2人はそそくさと去って行く。残ったのは僕とシーリスとサマンサ・・・シーリスは魔法が止められたのが気に食わないのか僕を睨んで・・・いや、睨んではないか・・・じっと見つめていた


「どうやって・・・アタシの魔法を?」


止めたか聞きたいのか?もしかして自尊心が傷付けられた?そりゃあ宮廷魔術師候補だからな・・・さて、どう返事するべきか・・・


「・・・私も土魔法が得意でな・・・同じくらいのマナを地面に流し制御した」


「・・・もしかしてマナが見える?」


「いや・・・何となく・・・だ」


本当に何となくなんだよなぁ・・・一応自尊心を傷付けないように同じくらいと言ったけど・・・だめか?


「凄い・・・咄嗟に相手の魔法の制御を奪うなんて・・・もしかしてラディル先生クラス?いやそれ以上?」


ラディル?先生って事は宮廷魔術師の事か?


「す、凄いですぅローグさん・・・まさかシーリスさんの魔法を止めちゃうなんて~」


「い、いや・・・彼女も本気ではなかったから・・・」


「それにどこから?まさか瞬間移動?」


なんだかやばい雰囲気だ・・・この2人・・・特にシーリスに興味を持たれていい事などひとつもない。ここは・・・


「よ、用事を思い出した・・・早く宿屋に戻って寝るのだな・・・明日も早いぞ?」


ゲートを開いて逃げようとしたけどあまり知られるのは良くないとすぐ判断してセンジュと同じように飛び上がって壁を蹴りその場を離れる


その時後ろからサマンサの声が聞こえた


「あの帰り方・・・流行ってるのかしら?」


流行ってないわ!


さて・・・明日からなるべくあの2人には関わらないようにしないと・・・先は長い・・・いずれボロが出るぞ──────

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