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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
185/856

182階 名探偵ダンコ

「教主様、聖女セシーヌ様よりお手紙が届きました」


「・・・そうか。あの近隣は栄えている街が少ない・・・商人は信心深い者は少なく信者が増える見込みは無いに等しいだろうしよくやったと褒めるべきか・・・それでいつ帰ると?」


「いえ・・・それが・・・追加で100体の像を送って欲しいと・・・」


「・・・なに?」


「信者の数もあれから1000を超え未だ増え続けているらしく・・・追加の像が欲しいと・・・」


「待て・・・1000だと?持っていた像は100・・・なのに信者の数が1000では合わないではないか・・・それに追加だと?」


「はい・・・像の対価は冒険者ギルドに依頼しこちらに送って来るそうです・・・」


「・・・一体どうなっているんだ・・・女神像100体に信者1000人・・・しかも追加で100体の女神像・・・」


「分かりません・・・この手紙にはそれしか・・・」


「となるとまだエモーンズに残る気か・・・」


「・・・心配ですか?」


「訪ねて来る信者は少なからず聖女であるセシーヌ目当てもいるからな・・・私が出て行った時のガッカリした顔は今でも慣れない」


「教主様・・・私は『心配ですか?』と尋ねたのですが・・・」


「・・・心配はしていない。エミリ率いる侍女隊もいるし宮廷魔術師であるククルス卿の秘蔵っ子も2人滞在しているし・・・ただ悪い虫がつかないか若干ではあるが・・・心配・・・だな──────」





「クチュン!」


「ふふっ・・・ローグ様は見た目によらず可愛らしいクシャミをされるのですね」


「・・・」


ロウニールとして身辺警護を終えてからローグとしてセシーヌの部屋を訪れていた


その理由はどうしてもお礼が言いたいとの事だったが・・・どうやら像1000体は残らず売れたらしい


にしても10分の1になったとはいえ1週間で完売か・・・聖女人気恐るべしだな


「でも本当によろしかったのですか?本来なら寄付の一部を差し上げるべきなのですが・・・」


「必要ない。金には困っていないし元々あるものをコピーしただけだしな」


そう・・・1体1万ゴールドの像・・・それをそのまま売る事はまず不可能だった。なのでロウニールからローグを紹介するといった形で協力を申し出て1体をコピーして10体に増やし合計1000体の像を用意した


元々100体の像を売れば100万ゴールドになった計算だから、像が増えれば価格も下げられる・・・つまり1体1000ゴールドで売っても100万ゴールドは手に入るって訳・・・更に信者も1000人増えていい事づくめ・・・と考えるかは微妙だけど文句は言えないだろうな・・・何せ目的は信者の獲得なのだから


「それにしても素晴らしい能力ですね。まさか1体を10体に出来るなんて・・・」


本当はもっと・・・それこそ際限なく増やす事も出来る。でもそうなると像の価値は下落して有難みは全くなくなるだろう


1体1000ゴールド・・・この辺が妥協点かなと思ってたんだけど・・・もう少し高くしても売れたかも


「それで・・・他に何か頼み事でも?」


「え?どうしてそう思われたのですか?」


「像をコピーした時に礼も金も要らないと告げていたのに呼ばれたからな・・・しかも像が無くなったタイミングでだ・・・となると・・・」


「さすがローグ様・・・お察しの通りです。ご厚意に甘えるようで大変申し訳ないのですが・・・」


「またコピーしてくれ、と」


「はい・・・王都にいるお父様には追加の像を頼みました・・・けどわたしが世間とズレていたのが今回の件でハッキリと分かったのです・・・」


セシーヌにとっての1万ゴールドの価値と庶民の1万ゴールドの価値の違い・・・セシーヌにとっては端金とは言わないまでも『信心があれば出せるよね』って金額だったんだろうな・・・でも実際は『数ヶ月飲み食いするなと言いたいのか』ってレベル・・・まあ1000ゴールドでも十分高いのにそれが1週間で売れるなんて思いもしなかった


「ちなみに購入は1人1体のみと聞いたが・・・」


「はい。あくまでも信者の方にお売りするのが目的・・・複数体売る事はありません・・・ただ代理者が買いに来られる事もあるので、その場合は信者の方のお名前を頂いております」


となると商人が大量に買って他で売りさばくような事もないだろうね。もしかしたら何人かはいるかも知れないけど・・・


王都でも売っているセーレン様の像・・・価格は1体1万ゴールドだ。もしそれを1000ゴールドで買って他で売れば定価以下で売ったとしても十分儲けが出る


ただ大量に買うのは難しいし教会に睨まれたら国も動くかも知れないしリスクが高過ぎる・・・となると購入者イコール信者の数でほぼ間違いないだろう


1000ゴールドになってエモーンズの人も購入していると聞いたがそれでも近隣の村や街を合わせて1000人の信者を短期間で得た事になる・・・これは聖女効果なのか隠れ信者が元々いたのか・・・それにしても凄い


「また100体を1000体にするのか?」


「いえ・・・実は1000ゴールドでお売りするのは期間限定とさせて頂いてます。そうしないと王都でご購入頂いた方から不満が出るでしょうし・・・ただ思いの外お求めになる方が多く足りなかったので・・・」


「追加で100体頼んだがそれを1000ゴールドで売ってしまうと売上としては合わなくなる・・・か」


「はい・・・あくまでも100体に対して100万ゴールドは確保しないといけません。なのでその辺を帳尻合わせしないと・・・段階的に上げていき、例えば期間が過ぎた場合はしばらく1体5000ゴールドで売るとか・・・」


それに合わせてコピーする数も減らすというわけか・・・まあいつまでも1000ゴールドで売る訳にはいかないもんな・・・なら


「期間ではなく数量にすればどうだ?数量限定1000体までは1000ゴールドとかな」


「!・・・それはいいですね。それなら不満も起きにくいはず・・・」


「全て売れなければ100万ゴールドにはならないから難しいかもしれないが・・・」


「いえ、そうさせてもらいます。売れ残ってしまえばそれはそれで考えますし・・・何から何までありがとうございます」


こんな怪しい人物に頭を下げて礼を言う聖女・・・性格も凄く良いんだよな・・・なんで僕なんかを・・・まあマナ量が多いからって理由は分かってはいるのだけど・・・


「それと・・・ローグ様は魔道具技師・・・なのですよね?」


「ああ、そうだが・・・」


「おひとつ聞いてもよろしいでしょうか?」


「構わないが」


「人の姿を消す事が出来る道具・・・そのような物が存在するでしょうか?」


人の姿を消す・・・なるほど・・・視線の奴か


「私は見た事ないが調べれば分かると思う・・・後日ロウニールにでも伝えておこう」


ダンコなら知ってるだろうけどセシーヌの前だと隠れているから聞くに聞けない


多分ありそうだよな・・・自分の姿を消せる道具・・・帰ったら聞いてみよう──────





《あるわよ・・・インビジブルデビルの魔核を使えば簡単に作れるわ》


家に帰って早速ダンコに聞いたら即答だった


インビジブルデビル・・・なんだか強そうな魔物だな


《何考えているか知らないけど、インビジブルデビルはただのイタズラ好きの魔物よ?中級ではあるけど下位だし戦闘力は皆無・・・貴重なマナを使ってまで創る必要性は全くないわ》


「辛辣だね・・・姿を消せるだけでも十分強そうなのに中級下位か・・・」


《忘れたの?魔物は何の為に存在するか・・・》


あー、そういう事か


「人間にマナを使わせる為・・・確かに姿を消せてしかも強かったら冒険者はマナを使う前に殺されてしまう・・・本末転倒って訳だね」


《そういうこと。だからどのダンジョンでも創るのを渋るはずよ。創るとしたら・・・そうね・・・イタズラ好きを利用して人間を惑わせ罠に嵌める為にとかかしらね》


「なるほど・・・でも人間がそのインビジブルデビルの魔核で透明になれるとしたら・・・」


《うーん・・・多分そんなに役に立たないわよ?》


「なんで?」


《昔のアナタは無理だったけど今のアナタなら出来るんじゃない?姿は見えなくても気配で察知する事が》


うん?そう言えばそうだな・・・突然攻撃されたりしても見えた訳じゃないのに避ける事が出来る・・・それに誰かが近付いて来るのも分かるし・・・


《見えてないだけでそこに存在する・・・つまり気配はそのままよ。だから意味はないのよね・・・実際は》


姿を消しても意味はない?


・・・そうだよな・・・もし気配まで消せるとしたらその能力だけで無双出来るし・・・って事はもしかして・・・


「視線は感じるけどそこには居ない・・・だから透明になって見てるって考えてたけど・・・」


《逆にその考えに至る事に驚きよ・・・普通はもっと別の方法で見ていると考えるでしょうに》


別の方法で見ている?


例えばアレか・・・僕が覗き見するように離れた場所で目の大きさくらいのゲートを開いて見るみたいな・・・あっ!


「もしかして・・・スカウトの魔技?」


《普通そっちの方を思い浮かべるでしょ・・・視線を感じるのにそこには居ないとくれば》


だよね・・・すっかり頭から抜けてた


そうだ・・・スカウトなら離れた場所からでもセシーヌを見る事が出来る・・・視線を感じて振り向くけどセシーヌの見える範囲には誰も居ない・・・当然だ・・・そいつは遠く離れた場所から見てるのだから・・・


「でもそうなると見つけようがないよね・・・実害がある訳じゃないし放っておくしか・・・」


《そうでもないわよ?ある程度犯人を絞り込めれば捕まえるのは可能・・・ただ協力者は必要ね》


「協力者?」


《聖女は視線を不快な視線と言っていたのでしょう?ならその視線を向けている人間は虫けら同然・・・不快な虫を潰すには手や足が必要なのよ──────》

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