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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
183/856

180階 不快な視線

「お疲れ様、ローグ」


ジケット達は訓練所でしばらく新装備の扱いを試した後でケン達と共にダンジョンへ潜って行った


さすがにいきなり扱うのは難しいと思うけどケン達がいるなら何とか大丈夫・・・かな?


残ったサラさんと僕はそのまま訓練所で今後について話し合う事にした


「思ったよりも扱いづらそうだったな・・・もう少し使い易い装備にした方が良かったか?」


「いや・・・初めはそうかもしれないけど使いこなせればかなり強力な装備だと思う。街でも最高級・・・ううん、王都の一番大きい武器屋でもそうそうお目にかかれないくらいの・・・」


「それは良かった・・・それで最近の『エモーンズシールダー』は?」


「どうやら人数は落ち着いたみたい・・・『ダンジョンナイト』から引っ張った冒険者とアケーナから来た冒険者を合わせて半々ってところかしら・・・競い合うにはちょうどいいわね」


アケーナからの冒険者か・・・確か全員Bランク・・・5人とそう数は多くないがダンを入れてBランク6人はデカイな


「まああまりムキになると良くないからな・・・ほどほどに刺激し合う関係を保ちたいものだ」


「そうね・・・ところでローグ・・・いつの間にジケット達の戦い方を?前にトロールと戦った時、一緒について行ったのは知ってるけど・・・それにしても理解度が深いというか・・・まるで永年共に過ごしたような・・・」


あうっ・・・装備を考えている時に学校の時の事を思い出していたのが仇に・・・


「な、何となくだ・・・トロールとの戦いを見て、その後どう成長したのか想像して・・・それよりも他に変わった事はないか?」


何とか誤魔化さねば・・・でも装備を作ってたのは1週間くらいだしそんな短期間で変わった事なんてある訳・・・


「変わった事?そうね・・・最近聖女様に困った事が起きてるらしいの」


「聖女?」


セシーヌに困った事?


「うん・・・何でも不快な視線を感じるとか何とか・・・視線を感じるけど振り向いても誰も居ない・・・まあ聖女様の勘違いだとは思うが・・・」


不快な視線か・・・視線だけなら分かるけど・・・セシーヌは目立つからな。でも不快となると話は別・・・てか、不快な視線ってどんな感じなんだ?


「一応ギルド長の方にも衛兵から冒険者の中で変な真似をする奴がいないか取り締まりを強化してくれと打診があったそうだ。衛兵もかなりピリピリしているようでな・・・そういえば明日からか・・・」


「明日から?」


「明日から日中の警護を衛兵がするらしいの。夜は侍女が警護しているが昼ともなると徹夜になってしまうからそうなると交代制を強いることになって手薄になってしまうから・・・」


そこまで深刻なの?たかが不快な視線なのに?


「ロウニールが日中の警護担当になったらしいが・・・上手くやれるのか心配だ・・・」


「・・・え?」


「ち、違うわよ!?師匠として上手くやれるか心配してただけ・・・ほ、ほら!ロウニールがやらかしたら師匠の私まで笑われるじゃない?・・・ローグ?」


何故だ・・・何故僕の予定をサラさんから聞く事になる??僕は聞いてないぞ?そんな話・・・


「ローグ聞いてる?」


「あ、ああ・・・そう言えば用事があったのをすっかり忘れてた。しばらく顔を出せそうにないから組合をよろしく頼む」


「え?ちょっと・・・装備を作っている間って話だったのに・・・」


「予定が変わった・・・苦労をかける。ゲート」


「まっ・・・ローグ!」


なぜ僕が知らないか・・・まだ内部で決定されただけの情報なのかそれとも・・・()が既に聞いてるかだ


家に戻った僕は門番をしているシャドウセンジュに話し掛ける


〘センジュ・・・ヘクト爺さんに言って早上がりさせてもらえ〙


〘・・・へい〙


〘返事は『はい』だ〙


眷族は便利だ・・・ダンコと話す時と違って声に出さなくても頭の中で念じるだけで会話する事が可能だから・・・でもアイツ・・・本当に眷族だよな?最近たまに言葉遣いが横柄になったり投げやりだったりするし・・・コピー元があのセンジュだからか?スラミは長く眷族としているが慎ましく真面目で大人しいのに・・・



しばらくして僕の姿をしたセンジュが帰って来た


自分の姿を傍から見ると違和感半端ないな


「センジュ・・・お前僕に言う事はないか?」


「マスターに?・・・別に・・・」


「聖女の護衛」


「あー、明日からやってくれって言われてたようななかったような・・・」


このっ・・・ズボラか!


そう言えばヘクト爺さんからも『寡黙で大人しく仕事に真面目なロウ坊と普段通りのロウ坊・・・それに粗暴なロウ坊・・・お主はいくつの顔を持っておるんじゃ?』とか言われたけど・・・2番目は僕・・・1番目と3番目はこのシャドウセンジュだ


元々上級の魔物の為か成長著しいのは頼もしいが変な方向に成長している気がしてならない


「そういう事は報告するように・・・分かったか?」


「ヘイマスター!」


ヘイじゃないだろヘイじゃ・・・


「ねえダンコ・・・コピー元の性格がシャドウに宿るって事あるの?」


《ない・・・とは言い切れないけど・・・コピーするのは能力だけだし・・・まあ眷族化したら自我が生まれるし上級魔物は少し傲慢なところがあるからそのせいじゃない?》


うむむ・・・そうなのか・・・今の姿形は僕だけどセンジュに変身したらセンジュそのもののような気が・・・ん?待てよ・・・


「眷族って・・・裏切ったりしないよね?」


《する訳ないでしょ?眷族とは単純な繋がりじゃないのよ?言わば魂の繋がり・・・しかも主従のね。だから裏切ることなんてありえない》


「それなら安心した。なんかさ・・・あっさり眷族化しちゃうもんだから解消もあっさりなんじゃないかと思って・・・」


センジュに似ているからとは言えない・・・まるでそれを言ったらセンジュにビビっているみたいだし


《あのねぇ・・・誰も彼もが名前を付けたら魔物が眷族になると思ったら大間違いよ?名前を付けただけで眷族化出来るのはアナタだから・・・もし人間が魔物を眷族化するとしたら・・・それこそ悠久の時が必要になるんだからね!》


それからダンコによる『眷族について』の講義が始まった


まず僕が簡単に眷族化出来るのはなんのことはない()()()()だからだ


エモーンズダンジョンに存在する魔物は僕が創ったもの・・・なので名前を付けただけであっさりと眷族化してしまう


じゃあ逆に他のダンジョンだったら?


それはかなりの時を要するし時間をかけても失敗することがほとんどなんだとか


なぜなら眷族化するにはまず認められ、信頼され、誓わせなければならないからだ


認められるのは簡単・・・倒せればいい


けど信頼されるのはかなりハードルが高い・・・ダンジョンにいる魔物はダンジョンコアから『ダンジョンを守れ』や『侵入者を排除しろ』など命令を受けている。だから人間と一緒にいることはダンジョンコアの命令に反する行為になるんだ


それでも何とか共に行動し、信頼を勝ち得ても次のハードルがまた高い


誓わせる・・・それは服従を意味する


信頼し『コイツに背中を預けても安心だぜ!』状態になった後で眷族化しようとしたら大概は『お前・・・仲間だと思ってたのにぃ!』と叫ばれること受け合い・・・魔物としては複雑な気持ちになってしまうだろう


《中には眷族化を仲間として見るものもいるけど・・・それも互いに気持ちが通じ合ってないと不可能だし・・・人間でもし魔物を眷族化出来るとしたらそういう能力を持って生まれたか・・・勇者だけね》


「勇者か・・・なんで勇者は眷族化出来るの?」


《出来るとしたら、ね。過去に勇者は魔物を眷族化している・・・どういう方法かまでは知らないけどね》


眷族化出来る能力も気になるけど勇者の方も気になるな


魔王を倒す勇者・・・いや、倒せる勇者か


あの空間が夢ではなく実際の空間だとしたら・・・輪廻の本も実在してその中に綴られている内容も本物ってことになる


勇者の誕生から魔王の復活・・・そして勇者と魔王の戦い・・・勝つ事もあれば負ける事もある2人の戦い・・・その物語の中で勇者は魔物を眷族化したって事か


「もしかして魔王に対抗する為に勇者は凄い数の魔物を眷族化してたりして・・・」


《そんな訳ないでしょ?眷族化するにもマナは必要だし得られるマナも眷族に取られるし・・・一部とはいえ大量に眷族化したらマナが枯れちゃうわよ》


そっか・・・なら気に入った魔物だけを眷族化して仲間として連れてたのかな?


「てかエモーンズダンジョンに勇者が来たら僕の魔物も眷族化されちゃうかも?」


《うーん、どうだろう・・・人間の中で眷族化出来る能力を持った人間を『テイマー』と呼んでいるらしいけど、テイマーなら支配力の差で眷族化されないと思う・・・けど勇者なら・・・されちゃうかもね》


「支配力?」


《影響力とも言うけど、まあアナタがいいマスターなら支配力が高く、ダメなマスターなら支配力は低いって事。ダンジョンブレイクが起きる大きな要因の一つが支配力の低さよ》


ダンジョンブレイクは家出だっけ?魔物に好き勝手やられたり言う事聞かないんだから相当支配力は低いんだろうな・・・ダンジョンブレイクが起きるダンジョンは


「テイマーはともかく勇者は支配力が高いの?」


《選ばれし者だからね・・・だから勇者には私達の常識は通じない・・・ダンジョンのマスターだろうと関係なく支配力は超えてくるでしょうね》


選ばれし者か・・・カッコイイ


ん?となると魔王も選ばれし者って事か・・・物語の主人公はいいね・・・どんなに頑張っても更にそれの上を行くのだろうな・・・


せっかく育てた魔物を眷族化されたら悔しいから勇者が来たと分かったら魔物を全部引き上げるか・・・どうせ一番下まで行かれたとしてもコアは破壊されないし・・・


「さて・・・勇者と魔王の話でやる気は削がれたけど今日はやる事もないしダンジョン作りに専念するか・・・」


《そうね・・・シャドウを眷族化したせいでマナも大量に消費したしね》


うっ・・・まだ根に持ってる・・・ちょっとセンジュと言っただけでそれが名付けになる方がおかしいのに・・・


「・・・頑張るよ・・・あと2年で物語の主役の1人を創れるように、ね──────」

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