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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
179/856

176階 ダン・フォロー

「お、おい・・・組合をって・・・『ダンジョンナイト』はギルド直属だぞ?それにほとんどの冒険者が加入してるし今更別の組合を設立したところで・・・」


「んなのは分かってる。けど村長・・・今は領主か・・・領主の息子の俺が誰かの下について冒険者ってのも格好つかねえだろ?その『ダンジョンナイト』って組合に入っても組合長を奪えるか怪しいからな・・・なら自分で立ち上げた方が手っ取り早い」


「ちょ・・・別にダンが組合を立ち上げるのは反対しないけど私達は無理よ?」


「うむ」


「・・・なんだ?その組合に恩義でもあるのか?」


「恩義っていうか・・・もちろんそれもあるけど、エリンはその『ダンジョンナイト』の副長だもん」


「副長?エリンがか?でも今さっきDランクって・・・」


「残念だけど実力で選ばれた訳じゃないのよね。うちの組合長普段居ないし補佐のサラさんは多忙だからまとめ役が欲しいって事で選ばれただけ・・・まあみんなランク低くても言う事聞いてくれるし今のところは上手くやってる・・・つもり」


ぬはは!残念だったなダン・・・エリンが副長をやってて『ダンジョンナイト』を抜けれないから当然ジケット達も抜けない・・・同期だからって簡単に引き抜き出来ると思ってたようだけど1人で組合ごっこでもしてろ


「チッ・・・村出身の奴を要職に就かせて村人に取り入ろうって魂胆かよ・・・浅知恵だが効果的だな・・・」


そんなつもりでサラさんはエリンを選んだ訳じゃない


まあどういう経緯でエリンになったか詳しく知らないけど・・・


「それにエリンの件がなくても俺達は『ダンジョンナイト』を抜けるつもりはない。サラさんや組合長にはお世話になってるしな」


「あ?この俺が頼んでもかよ?」


凄むダンのせいで家の中がシーンと静まりかえる


てか頼んでないだろ・・・確かに同期の中では頭一つ抜けていたけどいつまでもお山の大将気取りだと痛い目見るぞ?


「・・・わーったよ・・・お前らがその気なら俺にも考えがある。後で泣きついて来ても入れてやらねえからそのつもりでいな」


ばーか、誰も入らねえし入りたくないって・・・沈むと分かってる船に誰が乗るって言うんだよ


「ダン・・・意地張ってねえでお前も『ダンジョンナイト』に入れ。みんないい人だし実力も兼ね備えている・・・入って損はねえし後から独立しても・・・」


「ジケットォ・・・お前の小さな定規で俺を測るんじゃねえよ。いい人?後から独立?平凡な人間が考えそうなこった・・・そんなんだから未だに30階程度なんだよ」


「てめえダン!」


「おぉ?やるか?DランクがBランク様に楯突く気か?見ねえ内に忘れちまったのか?俺とお前の差を」


んー雰囲気最悪


せっかくのお帰りパーティーが台無しだ


にしてもダンってこんなに傲慢だったかな?アケーナで揉まれて傲慢さが加速した?


「いいか?俺は古くからあるダンジョン都市アケーナダンジョンの50階到達者・・・お前らは新しく出来たエモーンズの30階そこらでヒーヒー言ってる単なる冒険者・・・忠告とか身の程を弁えろって話だ。・・・まあいい・・・親父から今日は早く帰って来いって言われてっからもう帰るわ」


「・・・」


そう言うとダンは立ち上がりこの最悪な雰囲気の中玄関まで歩く


そしてドアに手を伸ばすと一瞬止まり、こちらを振り返りこう言った


「ゆくゆくは街となったエモーンズの領主になる俺とどっから来たか知らねえが流れ者の奴ら・・・どっちにつく方が得かよく考えるんだな──────」




ダンが帰った後、悪くなった雰囲気が戻ることなくモヤモヤしたまま解散となった


月に一度の同期会にアイツを呼んだら毎回同じようになるかも・・・せっかく和気あいあいとやってたのに・・・


《なかなか面白いわね。傲慢さが鼻につくけど嫌いじゃないわ》


「・・・男の趣味は最悪だな・・・ダンコ」


『ダンコ』だからダンの女バージョンみたいな性格なのか?まあ名前を付けたのは僕だけど・・・


《男の趣味って・・・そういう好きじゃないのは分かっているでしょ?ああいう人間がダンジョンでより多くのマナを落としてくれるのよ・・・慎重な人間はマナの消費を抑えて身の丈のあった階層にしか行かないけど、ああいう人間は見栄を張って実力以上の階層に行く・・・そして大いに貢献してくれるわ・・・私としては大歓迎よ》


あー・・・忘れてた。相変わらずブレないな・・・


「でも和を乱されたらダンジョン攻略も遅れるかもよ?何やら企んでそうだったし・・・」


《そう?競い合って相乗効果で攻略速度が上がると思うけど・・・》


「まあそれは確かに・・・でもなぁ・・・なんだかなぁ・・・」


《アナタは愛しのペギーちゃんがあの人間に取られないかどうかそっちが気になっているだけでしょ?》


「ち・・・違う!別に・・・それにペギーちゃんはあんな奴を選ば・・・」


《どうだか・・・意外と流されるタイプかもよ?強引に来られて断る間もなく・・・》


「・・・センジュ!」


僕が呼ぶと眷族化したシャドウ・・・センジュが黒い水溜まりのような姿のままススッと僕に近付く


「明日からまた僕の代わりに門番をしてくれ。前に渡した装備も忘れずにな」


「マスター・・・承りました」


《ちょ、ロウ?アナタ何するつもり??》


「何って・・・決まってるだろ・・・ちょっとローグるのさ──────」





サラの朝は早い


冒険者達がギルドに訪れる前に準備してその日の予定をジェファーと打ち合わせし必要な物を買い出しに行く


前日に準備出来ればもう少し遅くまで眠れるのだが大好きな風呂に入ると途端に動く気がしなくなり帰ってそのまま寝てしまう事がほとんどな為に朝の準備となってしまう


朝でも時間を持て余すと風呂に入りたくなるが風呂屋はあいにく朝は開いていない・・・かといって家に風呂がある弟子のロウニールの家に押し掛けるのも気が引ける為、毎回風呂に入りたいが入れないモヤモヤ感に苛まれるのももはや習慣と化していた


王都の屋敷で過ごした4日間はサラにとって夢のような日々だった・・・その日々が更に風呂好きのサラを苦しめていた


「ハア・・・あの至福の時を過ごしてしまうとどうしてもな・・・風呂に入りたい・・・」


そう呟きながら着替える為に服を脱ぎ始めると何者かが部屋に侵入して来た


フリップかケンか・・・咄嗟にドアの方を睨みつけると服を捲し上げ胸を露わにした状態で固まってしまう


侵入して来たのは予想外の人物・・・仮面の男ローグだったからだ


ローグは特に何を言うこともなくスタスタと部屋の中に入り胸を露わにしたサラの前を横切り窓際に置いてある椅子に座る


固まっていたサラは視線だけを何とか動かしローグの姿を追うが、一言も発しない彼に混乱し自分の姿が現在どのような姿なのかも忘れて固まり続けた


「・・・朝早くにすまないな・・・久しぶりに組合に戻ったのだからしばらくは組合に集中しようかと思ってる」


「そ、そう・・・あの・・・今私ね・・・」


着替え中・・・そう伝えようとしたがローグはサラに目もくれず腕を組み話を続けた


「・・・今まで散々サラに任せてたのでいまいち分からない・・・なので教えてくれないか?組合長としてどうするべきかを」


「え、ええ・・・それはもちろん・・・でもその・・・」


サラは特段自分の身体に自信があるわけではない


ただ周りからの声と情報で自分の身体が普通の人よりも魅力的であることを知っている



男は胸が大きい方を好むこと人が多い



独断と偏見の意見だとは思っていたがすれ違う男の視線や何度も襲われそうになった事により確信に近いものがあった


その武器となりうるものが露わになっているにも関わらず目の前の男は平然と会話をしている


もしチラチラと見ているのなら仮面をつけているとはいえ分かるはず・・・しかしその様子は全くない


「至らぬ私に忌憚のない意見を聞かせてくれ・・・・・・サラ?」


返事のないサラを疑問に思ったローグが視線を初めて彼女に向ける


それを察したサラの脳裏では咄嗟に見せたいという気持ちと羞恥心とがせめぎ合い、辛うじて羞恥心が勝利し素早く服を捲し上げていた手を下ろした


「・・・どうした?サラ」


ギリギリ見られていないと安心しつつ自分に無関心なローグに少し腹を立てながらため息をついた


「・・・ハア・・・何でもない。それで組合長としてどうするべきか・・・だっけ?うーん、私もよく分からないな。組合に所属したのも初めてだしましてや組合長など・・・結局ローグがこの組合をどうしたいかによって変わるんじゃない?」


「なるほど・・・方針か」


「うん・・・今更だけどね。でもいくつも組合のある街もあるって事は組合によって方針が違うからだと思う。だから組合長としてどうするべきかよりも先に組合としてどうするかを考えた方が良いんじゃない?」


「そうだな・・・参考までに他の組合はどんな方針を?」


「そうね・・・私もそこまで詳しくないけどダンジョン攻略メインだったりお金儲けメインだったり・・・でもそうね・・・今ふと思ったけどあまりガチガチに方針を固めない方がいいかも・・・」


「そうなのか?」


「ええ・・・例えば方針を固めてしまうとそれに合わないと思う冒険者は加入してくれないでしょ?組合がひとつしかない時は無理に方針を決めない方が加入しやすいんじゃない?」


「確かに・・・となるとやはり方針は必要か・・・」


「え?人の話聞いてた?」


「ん?ああ・・・とりあえず今は現状のままでいいか・・・となると私はどうするべきか・・・」


「・・・そうね・・・やっぱり一番は攻略の手伝いかな?高ランクが少ないからもしローグが手伝ってくれるなら助かるかな」


「ふむ・・・まあそれくらいなら・・・他には何かないか?」


「ええ!?そう言われても・・・どうしたの?急に・・・」


「ちょっと思うところがあってな──────」



それから2人はサラの部屋で組合長としてどうあるべきかを話し合った


しばらく話し合い他の冒険者の意見も聞こうと2人で1階に降りた


もう既に昼前・・・それにしては妙に人が多いと思い見渡すとローグはある男と目が合った


その男とは・・・


「ふーん、アンタらが『ダンジョンナイト』組合長とその補佐か・・・俺はダン・・・アンタらに少し話があって待ってたんだ・・・ちぃとツラ貸してくれや」


ロウニールはローグとしてダンと対峙する──────

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