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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
166/856

163階 本気

「またそれかよ・・・いい加減聞き飽きたぜ」


お前が聞いてきたんだろ!


「へ、へえ・・・だったらお前は何なんだ?」


「俺か?俺は泣く子も黙る『なまくら』センジュ様だ!」


僕のダンジョンマスターとどう違うってんだ・・・


「・・・シャドウ・・・やっておしまい」


「このっ!またコイツかよ!」


シャドウは疲れを知らないから便利だ。でもマナ切れは起こす・・・その前にセンジュを倒すか僕がセンジュを超えないと・・・


未だにセンジュを倒せるイメージが湧かない


ドラゴニュートをあっさりと倒し今もまた鍛えたシャドウのコピーすらも凌駕する・・・僕はまだ鍛えてないシャドウでさえ完全にコピーされるのに・・・


僕とセンジュの差はどれくらいだろう・・・ダンジョンを100階まで拡張したらダンコは人間の中で一番強くなると言っていた。つまりその器は既にある・・・だけどその器はまだ満たされていない・・・半分?いや、それ以下か?


器を満たす為に努力はしている


自らを鍛えて・・・サラさんにも鍛えてもらって・・・でも全然足りない・・・こんなんじゃいつまで経っても満たされない


すぐに満たすことは難しいのは分かっている


でも・・・手っ取り早く満たすには・・・


「おっ!・・・てめえ・・・」


シャドウと斬り合っている隙をつき、渾身の一撃をセンジュにお見舞する


この一撃は防がれたけど・・・いずれ届くはず


「そんなに相手にして欲しけりゃ望み通り相手してやんよ!」


グッ・・・やっぱり強い


片手で軽く振った一撃を両手で持った剣でようやく防げる程度・・・でもこれでいい・・・この経験が糧となる・・・自らを死地に向かわせ生き延びる・・・それが手っ取り早くセンジュとの差を埋める方法!


・・・と言っても本当に死んだら元も子もない


それに僕が死ぬイコールサラさんが危険な目に合うって事になる


それだけは避けないと・・・って事で用意した二体の魔物・・・ドラゴニュートはあっさりと倒され残るはシャドウのみ・・・しかもセンジュの力を完璧にコピー出来てないときたもんだ・・・さて・・・どうしよう


「軽い軽い!お前の命と同じで軽いんだよお前の一撃は!」


軽いって・・・こっちも限界までマナを纏って放った一撃なのに・・・


待て・・・考えろ・・・総マナ量は絶対的に僕の方が多いはず・・・なのになんで・・・


「ダンコ!なんで出せるマナ量が少ないんだ?」


《・・・実力・・・》


辛辣っ!


「・・・じゃあどうやったら1回で使えるマナ量が増えるんだ?」


「何を1人でゴチャゴチャと・・・」


センジュが僕にゆっくりと近付いて来ている・・・すぐ奴の間合い・・・もう時間が無い・・・ダンコ・・・頼む!


《どうして戦闘中に・・・ハア・・・いい?よく聞きなさい?マナを使うのに必要なのは想像力よ。自分の中にあるマナをどのように使うか・・・頭で想像し造り出すの。本来のアナタは誰にも負けない・・・何故なら誰にも負けない程のマナを有しているから》


想像力?想像するだけで?


《周りから見ればアナタは信じられないくらいのスピードで成長している・・・けど実際は違うの・・・アナタの中で自分はこれくらい強くなっていると認識して強くなっているだけ・・・それは成長とは言わない》


強くなっているわけじゃない?つまり・・・どういうこと!?


「死ねやコラッ!!」


「くそっ!ダンコ続きを早く!!」


剣を両手で持ち、何とかセンジュの一撃を受け止める


押されている・・・このままだと・・・


《いい?アナタがどうやって強くなったか思い出して・・・アナタは想像するのが苦手・・・でも立派なダンジョンを作ってきた・・・宝箱の中身を作ってきた・・・どうやって?》


どうやってって・・・そりゃ・・・紙に描いてそれを・・・っ!もしかして・・・


《想像力は皆無・・・でも真似なら得意じゃない?見た事のない・・・目の前にないものを想像する事は出来なくても、見てるものを・・・目の前にあるものを想像するのは得意でしょ?なら・・・》


剣を初めて作った時・・・出来映えは最悪だった


けど・・・絵に描いて作った剣は絵の通りに作ることが出来た


ダンコはダンジョンを拡張すれば僕は強くなる・・・そう言ってた


でも実際はそんな実感はなかった


それもそのはず僕が想像出来てなかったんだ・・・自分が強くなったということを


ダンジョンが拡張され、僕は強くなっている


器は完成しているんだ


後は僕が・・・その器を満たしてやればいい


想像力がなければ・・・相手の力を真似してでも!


「な、なんだぁ?この野郎・・・生意気に押し返して・・・」


「僕は強くなってるんじゃない・・・近付いているんだ・・・本来の僕に!」


「あぁ?なに訳の分かんねえこと言って・・・っ!?」


今まで押され気味だったけどようやく押し返す事が出来た


それもそのはずセンジュは片手・・・僕はセンジュと同等の力を両手で出していたからだ


「このっ!」


センジュは押された瞬間に体を引き、左手に持つもう片方の剣を繰り出して来た


その剣を受け止めようと体を反転させた時、視線の端に嫌なものが映る・・・センジュは口の端を上げ『かかった』と言わんばかりの笑みを浮かべていた


左は陽動・・・気付いた時には遅く僕は迫り来る剣に向け構えていた


本命の右が来る・・・けどもし剣をそちらに向けたら?奴は陽動にしようとしている左手の剣をそのまま振り僕を斬るだろう


躱さなきゃいけなかったんだ


でももう遅い・・・選択は二つ


陽動と分かっていても左手の剣を受けるか、本命の右を受けるか・・・いや・・・


カンッと甲高い音が鳴る


するとセンジュの右腕が一瞬盛り上がり押し返したはずの右手に持つ剣が舞い戻る


「残念だったな!そっちは囮だ!」


「知ってるよ!」


再びダンジョンに響き渡る甲高い音・・・僕は右手に持つ剣でセンジュの陽動である剣を後ろ受け止め、左手に持つ剣で本命の右手の剣を受け止めた


「・・・は?」


「お前が2本の剣を使うなら・・・僕も同じように2本の剣を使うまで・・・どこから出したとか野暮な事は聞くなよ?答える気は・・・ない!」


ゲートを開き取り出したもう一本の剣・・・二刀流は経験ないけどセンジュの二刀流に対抗するにはこれしかない


「・・・あ~めんどうくせえ・・・」


なんだ?センジュの様子がおかしい


両方の剣を受け止めた後、センジュは急に後ろに下がり俯いたままボソッと呟く


そして・・・両手の剣をだらりと持ち肩を落とすと微かに揺れ始める


「・・・すぐに済むと思ってたのによぉ・・・ったく・・・やってらんねえぜ・・・」



ゾクッ



体中の全ての毛が逆立つのが分かる


目の前にいた男がいつの間にか巨大な・・・凶悪な獣に見えてきた


ダンコが何か叫んでいる


でも僕には届かない


僕はいつから勘違いしてた?



僕とセンジュの実力の差は・・・容易に埋められるなんて・・・いつから勘違いしていたのだろう──────





フーリシア王国王都第三騎士団駐屯所


「おい・・・もう終わりか?天下の第三騎士団がこれじゃあ他国に攻められたら滅亡まっしぐらだせ?」


屋外訓練所の中心に大剣を肩に担ぐキース


その足元には何人もの騎士達が無惨な姿を晒していた


「またですか・・人の部下を痛め付けるのはやめてくれませんか?」


「おおディーン!待ってたぜ・・・早速やろうぜ」


補佐官のジャンヌから緊急事態と言われて訓練所を訪れたディーンは予想通りの事態に溜息をつきながらキースへと歩み寄る


「公務中です。貴方とやると無事では済まないので遠慮して下さい・・・それよりもソニアさんの傍に居なくても?」


「俺がいたら無事に産まれるってなら話は別だが・・・居ても何にも出来ねえだろ?」


「まあ・・・そうかもしれませんね」


「お前今・・・居ても邪魔なだけとか思っただろ?」


「・・・いつから心が読めるように?」


「てめえ!・・・まあぶっちゃけそうなんだよな・・・こんな事ならエモーンズに残りゃ良かったぜ」


「珍しいですね。いつもなら帰って来たらしばらく行きたくないと仰るのに・・・」


「そりゃあお前・・・子作り出来ねえしな」


「・・・」


「それにだ・・・向こうに結構暇潰しになる奴がいたからな・・・ケインにタンブラーにゲッセン・・・ファーネは俺から逃げまくってて結局ほとんど遊べなかったけど・・・後はセンジュもいたな」


「センジュ・・・あの『なまくら』センジュがエモーンズに?」


「おうよ・・・アイツはおもしれえ・・・下手したら俺も本気にならなきゃならねえほど・・・おもしれえ」


「本気って・・・キースさんが本気になったらさすがにまずいですよ。センジュはAランクでもSに最も近い人物・・・国王陛下も期待している人物ですよ?」


「大丈夫だ。俺は本気を出しても死なねえ奴にしか本気出さん」


「・・・」


「なんだその目は!俺が暇潰しで人を殺したことあっか?」


「この惨状を見ると何とも・・・第三騎士団立て!!」


ディーンが突然叫んでも誰一人として反応しない状況にディーンは呆れキースは乾いた笑いを浮かべる


「・・・治療費は後で請求するとして・・・少し気になりますね・・・キースさんが本気になっても死なない人物・・・『なまくら』センジュとは如何程か」


「まあこの国で10本・・・は言い過ぎか・・・20本の指には入るんじゃねえか?」


「指で例えるなら10本までですよ?」


「足の指を足しゃ20本だろうが・・・とにかく机に座ってばかりいるといずれ足元すくわれるぜ?」


「肝に銘じておきます・・・そろそろ私も本腰を入れないと負けてしまいそうなのでね」


「お前が?誰に?」


「ダンジョンに・・・です──────」

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