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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
162/856

159階 ローグ再び

フーリシア王国王都フーリシア


大陸の南西にあるフーリシア王国のちょうど中心に位置する王都フーリシア


その更に中心には王族が住まう巨大な城が存在していた


その城の中にある謁見の間でフーリシア王国国王であるウォーグ・フォーレンス・フーリシアと伯爵であるゴーン・へブラム・アクノスが2人っきりで会話をしていた



「・・・それにしてもこの広い謁見の間で国王陛下と2人っきりとは・・・なんだか寂しい気持ちになりますな」


「仕方なかろう・・・こうでもしないと腹を割って話せんからな」


「さすが陛下・・・既に察しておられましたか」


「新しく出来たダンジョン・・・それもディーンめが『面白いダンジョン』と評したダンジョンを訪れたにも関わらずあまりにも早い帰還だったからな」


「私も人の子ですよ?出産に間に合うように帰って来るくらいの人情は持ち合わせております」


「ぬかせ・・・そんな事くらいで戻って来るたまではなかろう。して、何を得た?」


「・・・恐らくは陛下が望むモノを成し得る者」


「ほう・・・余が望むモノはひとつぞ?」


「心得ております」


「仔細話せ」


「はっ!先ずはその者の名を・・・彼の名はローグ・・・エモーンズでダンジョンナイトと呼ばれている者です──────」





──────これは夢だ


ずっと走っているのに追い付けない背中


呼んでいるのに振り向いてさえくれない


それでも私は呼び続ける


きっといつか振り向いてくれると信じて



いつも夢はここで終わっていたはず


でも今日の夢はまだ終わらない


彼は私の呼び掛けに応えてくれたのかゆっくりと振り向く


でも──────



「・・・なんで・・・」


目が覚めると紛れもなく私の部屋・・・いつもと同じだけど目覚めは最悪


「どうした?」


「別に・・・夢見が悪かっただけよ」


「へえ・・・どんな夢だったんだ?」


「どんな夢って・・・・・・・・・おい」


「ん?」


「どうやって部屋の中に?」


「ドアからに決まってるだろ?」


「カギは?」


「んー、なんか力入れたらバキって・・・」


「そうか・・・それで私の許可なく部屋に侵入した、と」


「人聞きが悪いなぁ・・・想い余ってつい入っただけなのに・・・」


「そうか『つい』か」


「そうそう・・・ついねって危ねっ!」


「すまんな・・・『つい』殺そうとしてしまった・・・次は避けるな」


「待て!話せば分かる!さすがの俺でも下半身が荒ぶっている時に本気の攻撃はシャレにならん!」


「・・・死ね・・・」



・・・こんな男に頼らざるを得ない状況なのが腹立たしい


センジュ・・・最もSランクに近い男であり今の組合には欠かせない存在・・・


ローグが姿を消し、私が組合長を引き継ぐ事になった


今は落ち着いたがその頃は聖女の事もあり私に余裕などなかった・・・見回りをし組合員をまとめギルドの手伝いをし・・・今思えばよくこなせたものだ


ただその時の私は本当に余裕がなく、組合員の細かな相談などに応じる事が出来ずにいた


そんな時にセンジュは組合員達の面倒を見てくれ何とか組合を維持するのに貢献してくれて・・・


「グェ・・・少しは手加減しろよ・・・」


「手加減?・・・したから生きているって事がどうやら理解出来ないらしいな」


「ま、待て!これ以上は本気でヤバい!」


「だったらさっさと・・・部屋から出て行け!」


「ぬぁー!せめて数秒待ってくれぇ!」


這う這うの体で部屋を出るセンジュを横目にそれまで溜め込んだ空気を吐き出した


「・・・何もされてないよな?」


体に異変がないかチェックする


もし何かされていたら・・・殺すだけでは済ませない。ありとあらゆる苦痛を与えて『殺して下さい』と懇願された後に殺してやる



・・・とりあえず問題はなさそうだ


後は壊されたカギをどうするかだな・・・またフリップに頼んで・・・


「おうサラ!至急伝えなきゃならん事が・・・」


「・・・ハア・・・ギルド長・・・カギが壊されたので直してくれませんか?」


「いやそれどころじゃ・・・」


「カギが壊れていると・・・貴方みたいな無作法者がノックもせずに開けるから言ってるんです!」


「わ、悪かった・・・後できっちり・・・」


「今すぐ!直すまで一切話など聞きません!──────」





「それで話とは?」


カギを今度は壊されないよう頑丈な物に替えてもらいようやくひと息つくとギルド長室で急ぎの話を聞く準備が出来た


それでもまたノックなしに入って来たフリップへの怒りは収まらないが・・・


「そう睨むな・・・話ってのはローグの事だ」


「え?何かあったのですか!?」


「まあな・・・悪い話じゃない・・・普通の人にとっては、な」



王都からフリップに伝えられた内容は簡単に言えば『ローグを召し抱えたい』という内容だ


爵位を与えるから王都に来い・・・普通なら飛んで喜びそうな話だが・・・


「爵位の話になるとこの前来た伯爵が独断で言っている訳ではない・・・って事ですね?」


「そうなるな。爵位を与えられるのは国王陛下のみ・・・つまりこの話は国王案件って訳だ。断るにしても本人が直接じゃないと無理だろうな。いや、断る事すら難しいかもしれん」


伯爵はローグと話したがっていたが彼はずっと避けていた・・・まさかそんな手段に出るとは・・・


「もしそれでも断ったら?」


「そうだな・・・ローグが断れば──────」




ギルド長室を出てからどれくらい時間が経ったのだろう・・・私の目の前には久しく使っていない通信道具が置かれていた


窓から外を見るともう真っ暗だ・・・部屋にこもりつうしん道具を前にして半日は経過した事を意味する


久しぶりに使うので緊張しているのももちろんある。だがそれ以上になんと声をかけたらいいのか分からないのが問題だ



『久しぶり元気だった?』は在り来りか・・・『ちょっと話したい事があるんだけど』は思わせぶり過ぎる・・・『会いたい』はいくらなんでも・・・


ウダウダ悩んでいても仕方ない・・・出ない場合だってあるんだし気軽に・・・


震える手で通信道具である石に触れ、少し・・・ほんの少しだけマナを流してみた


これで反応がないなら今日は諦めよう


明日もまた少しだけマナを流して・・・


〘久しぶりだな〙


・・・生声・・・


「あっうん久しぶり元気だった?ちょっと話したい事があるんだけど会いたい」


うわっ!思わず考えたセリフを全て言ってしまった!


〘今からか?構わないが夜も遅い・・・サラは平気なのか?〙


「う、うん!もちろん!どこで会う?やっぱり訓練所?」


〘そうだな・・・今部屋にいるのか?〙


「部屋よ!1人で部屋に居るわ!」


〘・・・5分後にそちらに行く〙


ひょわ!?行く!?それって私の部屋にってことよね!?


ど、どうしよう・・・5分?5分って事は着替える時間は・・・あー、別にこのままでも・・・あれっ!?今日の私大丈夫?朝からずっと室内だったし1階にすら降りてないし・・・


「待たせたな」


「ごふーん!ちょ、5分って言わなかった!?まだ1分も・・・てかどうやって部屋に!?」


「・・・魔道具?」


疑問形!でもちょっと可愛いと思ってしまった・・・なんだか・・・少し雰囲気変わった?


「それよりも話したい事があるんじゃないのか?」


と、自然に私のベッドに座るローグ


えっ?誘われてる?もしかして・・・ローグの仮面をかぶったセンジュ??


「あーいやその・・・久しぶりね」


「そうだな。あまりに連絡がないので忘れられたと思っていたよ」


「忘れるなんてそんな!・・・忘れられるわけないじゃない・・・」


少し雰囲気が変わったかもしれないけどローグはローグ・・・やっぱり私は・・・


「それは良かった。で、話とは?」


「あ・・・えっと・・・前にローグがムルタナに居る時に話したじゃない?ギルドで一番偉い人・・・総ギルド長・・・その人からフリップギルド長に連絡が入って言われたらしいの・・・ローグを召し抱えたいって」


「ギルド長にでもしてくれるって言うのか?」


「いえ・・・伝えて来たのは総ギルド長だけど召し抱えたいと言っているのはどうやら国王陛下みたいなの」


「国王が?」


「ええ・・・どうやらゴーン伯爵が国王陛下に色々と吹き込んだっぽいのよね・・・ローグに爵位を授け王都直属の何かにするつもり・・・だと思う」


フリップも細かくは聞いていない


ただ爵位を与えるから王都に来いってだけ・・・


「ふむ・・・私はその辺に関して疎いがそんなに簡単に爵位は与えられるものなのか?」


「まさか!現在の貴族は過去に功績を上げた一族が受け継いでいるだけで新たに爵位を与えられた人なんていないはずよ」


「なら尚更分からないな・・・なぜ私が?」


「多分・・・名目上は『ダンジョンブレイクが起きる原因を突き止めた』功績だと思うけど・・・」


「あくまで考察のひとつと伝えたはず・・・まだムルタナも起きてから日が経っていない。功績と認めるのは早計だと思うが・・・」


「うん・・・名目上はそういう事にしておいてローグに爵位を与える理由は他にある・・・」


「どうやら目を付けられたらしいな」


「多分、ね」


優秀な人材を確保する


だけど何の実績もない人を登用しては周りから反感を買う恐れがある為に用意したのが名目上の功績


ダンジョンブレイクの原因が本当かどうかはどうでもいい・・・とりあえずローグに爵位を与えて抱え込むのが目的だから


「どうする?普通なら爵位を与えられる事は名誉な事だし喉から手が出るほど欲しいという人は五万といるけど・・・」


「当然断る」


「だよね」


答えは分かっていた


何を企んでるとか関係なくローグは断る・・・それは分かっていたけど・・・


「・・・どうやら断ると不都合があるらしいな」


顔に出てた?


でもこれは言わない方が・・・言ってしまえばローグに負い目を感じさせる事になる・・・だけど・・・


「・・・」


「ふむ・・・国のやり方はいまいち分からないが恐らくは・・・ギルド長辺りか」


「え?」


「安く見られたものだ・・・ゴーン・・・それに国王か・・・ギルド長に伝えてくれ・・・明日のこの時間にゴーンと話せる準備をしてくれと」


「伯爵と?一体何を・・・」


「まだ私の価値を理解してないみたいだからな・・・見誤った事を後悔させてやる──────」

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