表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
161/856

158階 共に歩む者

「へ?・・・師匠と思ってますが・・・」


突然の質問に咄嗟に答えた内容はセンジュを今まで見た事もない呆れ顔にさせるものだった


「・・・こういう時の質問は『女として』に決まってんだろ!誰がありのままの事実を言えって言った!?」


えぇ・・・こちとらぼっち生活長いからそんな決まり事知らないよ・・・


にしてもつまりセンジュが聞きたいのは『女性としてのサラさんをどう思うか』か・・・女性としてのサラさん・・・女性としての・・・


「おいおい、そんな悩むこっちゃねえだろ?思ったままを答えりゃいいんだよ・・・もちろん周りの事は考えずに自分の本当の気持ちをな」


本当の気持ちか・・・とてつもなく美人な女性・・・って言うのは違うよな・・・そういう事じゃない・・・センジュが聞いてるのは好きか嫌いか・・・そういう感情の部分のはずだ


実際どうなんだろ


ローグとサラさんはパートナーって言葉がピッタリな関係だった。でも僕とサラさんは師弟関係・・・他の人達とは違いローグと僕の2人と一番関係が深いかも知れない


でも立場が違う


ローグとは同僚みたいなもの・・・僕とは師弟関係・・・ローグとしてのサラさんと僕としてのサラさんは全くの別物・・・なのでぶっちゃけ何とも言えない感情だ


好きか嫌いかで言うと断然好きだ


でもそれが恋愛感情かと聞かれたら・・・うーん・・・


「・・・分かりません」


「分からないってお前・・・」


再び呆れ顔のセンジュ


でも仕方ないじゃないか・・・サラさんをそういった目で見た事は・・・ないから・・・


「ったく・・・サラの方は満更でもなさそうなのにお前がそれじゃあな・・・」


「え?・・・いやいや、サラさんは僕を・・・」


「どう思ってるか分かるのか?お前に。俺は十分脈アリだと思うぜ?時間があればサラと居た俺が言うんだから間違いねえ」


そんなわけ・・・ない・・・だってサラさんはローグを・・・


「疑いが確信に変わったのはお前が戻って来た時だ。ギルドで会った時のサラの表情・・・正直嫉妬したぜ・・・で、お前が勘違いして俺に喧嘩を売ってきた時は相思相愛かと諦めかけたけど・・・その様子だとまだまだ俺にもチャンスはあるみてえだな」


戻って来た時?カルオスから戻って来た時にギルドでサラさんに会った時?そう言えばその時センジュはサラさんといたけど・・・どんな表情だったっけ・・・


でも・・・


「も、もし仮にそうだったとしても・・・言わない方がセンジュさんにとっては良いのでは?」


センジュの勘違いだと思うけど、今の話を聞いて僕がサラさんを意識してしまったら無駄にライバルを増やす羽目になるような・・・


「そうか?サラがお前に恋心を抱いていたとしたらそれを無視してサラと付き合ってもしこりが残るだろ?どうせなら正々堂々挑んで心の底から惚れさせてえ・・・何の憂いも残さず、な」


「・・・センジュさん・・・」


この人は・・・なんて人なんだ


僕だったらそんな余裕はない・・・ダンがいない間にペギーちゃんに告白すれば可能性が少しでも上がると思ってしまう小心者だ


けどセンジュはそんな事はせず真っ向から・・・組合の人達がこの人を慕う意味が分かった気がする・・・


「って、わけでよ・・・これからは俺達はライバルだ。まっ、サラの事を全然全く思ってないなら話は別だけどな」


そう言って横を向き後ろにいる僕に微笑むセンジュ


僕がもしサラさんの事が好きでも真っ向から勝負して勝つ自信があるのか余裕の表情にも見えた



その後51階を順調に進み、階段を見つけて下に降りる


僕が仕掛けた事だけどセンジュにとっては予想外の出来事だった為、時間にはまだ余裕があったけどひとまず地上に戻ることになった


これで僕は公然と52階のゲートを使用出来る事になる・・・でも魔物達の行動を『訓練』に変えないといけないしダンコも今回限りと言っていたし冒険者として入るのはこれで最後・・・


「また行こうぜ!まだ俺のカッコイイ所を見せてないからな」


「いや僕は・・・」


「ロウニール!」


ゲートを出て振り返り言ってきたセンジュに僕は断りを入れようとしたその時、僕の名を呼ぶ声が聞こえた


見るとそこには僕を見てホッとした感じで笑顔を見せるサラさんが・・・もしかして僕達をゲート部屋で待ってたのか?


「心配したぞ!ペギーに尋ねたら既に出発してると聞いて・・・渡そうとした物を渡しそびれてしまった」


「師匠・・・渡そうとした物って?」


「ん?ああ・・・今後も同じような事があるかもしれないから渡しておくか。ほれ、ダンジョンに入る際には持っておけ」


サラさんが投げて寄こしたのは簡易ゲートだった


そっか・・・何かあった時の為の緊急脱出道具として・・・


「使わないに越したことはないが御守りとして持っておけ。どっかの誰かさんが調子に乗って危機に瀕した時など有効的だぞ?その時は迷わずお前だけでも戻って来い」


「・・・」


「おいおい・・・どっかの誰かさんって誰の事だ?てか、俺にはくれねえのか?」


「やらん・・・どっかの誰かさんにはな」


「ひ、ひどい・・・」


サラさんとセンジュのやり取りは続いてる


僕は・・・サラさんが『お前だけでも戻って来い』と言った時の表情を見て固まってしまっていた


今まで綺麗だとは思っていたけど、どこか他人事だった


それがセンジュの話を聞いたからか妙に意識してしまい自分の心臓の高鳴りに驚く


「ロウ?ボーッとしてどうした?センジュがドジって怪我でもしたのか?」


「い、いえ!・・・なんでもありま・・・せん」


「なんで俺がドジるって決めつけてんだよ!てかドジったのはロウニールだぞ!?1階の通路に落ちてた宝箱を開けて強制転移されたんだからな!しかも51階だ・・・俺と一緒じゃなきゃ今頃・・・」


「なに?そんな罠は聞いた事がないぞ?しかも1階だと?」


罠の話に食い付いたサラさんはそれからセンジュに根掘り葉掘り聞いていた


このダンジョンでは1階に挑戦するのは各階にゲートがあるから初心者や新参者がほとんどだ。なのでサラさんは誰かが引っかからないように詳細を聞いているのだろう


ローグがいなくなりなし崩し的に組合長となってしまったはずなのに、必死で組合員を守ろうとしている・・・そんな真剣な横顔を僕は黙って見ていた



しばらくしてダンジョンの外に出てギルドに行き、ギルドカードを受け取ると解散となった


僕は家に戻り誰もいないのをいい事に昼間から布団にダイブする


《ペギーに告白するって言ってなかった?》


「・・・そんな事言ったっけ?」


《言ってたわよ。無事に帰って来たら想いを伝えるって》


「そっか・・・忘れてた」


《忘れてたってアナタねえ・・・》


「よく分からなくなったんだ・・・僕は誰が好きなんだろうって・・・もちろんペギーちゃんの事は好きだ・・・学校もペギーちゃんがいるから通ってたようなもの・・・辛いことがあってもペギーちゃんを眺めてれば何とか耐えられた・・・けど・・・」


《けど?》


「・・・人って同時に複数の人を好きになったりするのかな?」


《それを人間ではない私に聞く?》


「恋愛マスターだろ?」


《そんな変な称号要らないわよ・・・てか、今まで1人しか好きにならないと思ってたわけ?》


「え?」


《ハア・・・ひとつ聞くけどアナタの好みは?》


「・・・好み・・・なんだろ・・・」


好みなんていきなり聞かれても・・・好きになった人が好きなだけでこうだから好きとかないような・・・


《・・・いいわ。仮にアナタの好みが『巨乳』としましょう》


「・・・仮にでそれはないだろ・・・」


《好みにピッタリだからアナタはペギーに惚れた》


無視かよ!


《さて、この世には『巨乳』と呼ばれる人間が何人いると思う?》


「巨乳好きでもないし、そんなの星の数ほどいるだろ!」


《そういう事よ》


「どういう事よ!」


《真似しないでよ気持ち悪い・・・『巨乳』好きだからペギーに惚れた。で、同じく『巨乳』好きだからサラに惚れた・・・ただそれだけよ》


どんだけ巨乳好きだよ!


《セシーヌだってそうでしょ?マナ量が多いからアナタに惚れた。もしアナタよりもマナ量が多い人間に会えばその人間にも惚れるかもしれない。要はキッカケがあるかないか・・・そのキッカケは『巨乳』だったり『マナ量』だったりするだけ。そこから意識し始め好きになる・・・だからキッカケさえあれば何人にも惚れる可能性はあるわけ》


キッカケがあり意識し始める・・・か


ペギーちゃんは優しかった・・・マナが使えず落ちこぼれまっしぐらだった僕にもなんの隔たりもなく接してくれた


サラさんも同じだ


ローグに対して好意を持っているのは僕ですら分かる。でもだからといって他の人を邪険に扱うかと言われればそうでもない。ローグに対する感じかそれ以上・・・


そっか・・・僕はもしかしたら優しさに飢えていたのかも・・・つまり相手の優しさに触れる事により意識し好きになってしまう・・・断じて『巨乳』が好きだからではない!


《心の中で何を熱弁しているか知らないけどアナタがペギーとサラを好きになるのは正常よ。ただ後は選択の連続・・・どっちを選ぶか2人を選ぶか・・・相手はアナタを選ぶか他の人間を選ぶか・・・互いの選択が合致した時に人間は共に歩むことになる・・・ただそれだけ》


ううっ・・・ダンコの中では僕がサラさんを好きなことは確定なのか・・・いや、否定はしないけど・・・


この感情が付き合いたいの好きなのか尊敬の好きなのか分からない・・・けどペギーちゃんに告白しなかったのは紛れもなくサラさんの存在が影響している


「もう少し・・・その選択をしないでおくよ」


《そっ・・・でも人間にとって時間は無限じゃないことを忘れないようにね。それに選択の中には時間も含まれているわ・・・タイミングって言った方がいいかしら・・・誰が誰を好きになるなんて分からない・・・この先3人の前に3人が好きになる人間が現れないとも限らないからね》


それはそうだ


時期を逃すと告白どころの騒ぎじゃない・・・下手すれば誰に告白するか決めた頃には他の誰かと既に付き合っている可能性は十分ある


告白しても断られるかもしれないけど可能性はゼロじゃない・・・でも他の誰かと付き合ってたらその可能性はゼロになってしまう・・・それだけは避けなくては・・・



誰に告白するか・・・すぐに自分の気持ちは定まりそうにないけど・・・出来る限り早くする事に越したことはない


僕なんかがって気持ちは一旦捨てて真剣に考えよう・・・僕は誰と共に歩みたいのかを──────

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ