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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
160/856

157階 魔物パーティー

「じゃあ・・・行って来るよ」


「き、気を付けて行ってらっしゃい・・・ロウニール君?」


センジュとダンジョンに行く当日・・・僕はギルドで受付を済ませ外に出た


脳裏には先程のペギーちゃんの笑顔・・・満面とはいかなかったけど、心から無事を祈ってくれているのは感じた・・・大丈夫・・・無事に戻って来て君に告白するよ・・・きっと・・・


《・・・彼女・・・顔が引き攣ってたわね》


「そう?」


《そう?って・・・分からなかったの?大体の人間はアナタを見て引き攣ってるわよ?》


そう言われて視線を動かし周りにいる人達を見た


なんだか注目は浴びているけど別に引き攣ってはないような・・・


とにかくペギーちゃんの話だとセンジュは既にダンジョンに向かったらしいので僕も急いでダンジョンへと向かう


そして入口に辿り着くとセンジュと入口で受付をしているギルド職員が僕を見て首を傾げた


「・・・誰だ?」


「ハアハア・・・誰って・・・僕ですよ・・・」


ギルド職員に尋ねられギルドカードの代わりに受け取った入場許可証を提示する


「・・・いや、入場許可証だけじゃ分からんだろ・・・その頭のやつを取ってくれ」


頭のやつと言われて僕はこめかみの部分にそっと手を当て上に持ち上げた


「・・・お、お前・・・」


「プッ・・・おまっ・・・ロウニールだったのかよ!」


ギルド職員が驚きセンジュが腹を抱えて大笑い・・・なんだよ・・・そんなに笑うことか?


「お、お前・・・重装兵士じゃあるまいし・・・1人で戦争にでも行く気か?」


ムッ・・・これでも考えて装備を選んだのに・・・


ローグの仮面をつけるのはさすがに・・・と思い作ろうかと考えたけどなかなか上手くいかず、結局街の防具屋さんであれこれ見てたらこれなんていいんじゃないかと思って決めた


頭から足の先まで覆う鉄の塊・・・プレートアーマー・・・防具屋の店主に『お前さんこれ本当に買うのか?』と言われたが・・・売り物・・・だよね?


「・・・お前・・・う、動けるのか?」


「え、ええ・・・素早い動きは出来ませんが・・・ほら」


体を捻って動けるアピールするとセンジュは何故か俯き地面に膝をつく


「や、やめろ・・・そのガシャンガシャン鳴るのがツボに入って・・・」


むぅ・・・全身鎧カッコイイと思うのだけど・・・


どうやらセンジュはこのカッコ良さが分からないらしい


《ロウ・・・ハア・・・今回だけだからね》


うん?何が今回だけなんだ?


《本当はやりたくないのだけど・・・一時的に魔物への命令を『侵入者を撃退』から『訓練』に切り替えるわ。そうすれば魔物達はアナタに攻撃出来るようになる・・・訓練としてだけどね》


あーなるほど・・・その手があったか


《ただしさっきも言ったように今回限りよ。魔物達は人間を訓練相手と認識する・・・だからマスターであるロウにも攻撃が出来るわけ。けど人間は普通に魔物を攻撃するでしょうから不平等となる・・・本来ならダンジョンではあってはならない事よ》


ダンジョンは常に平等でなくてはならない、か。もしかしてその掟みたいなのを破ってでも鎧を脱がせたいって事?・・・ダンコも分かってないなぁ


《何を考えているか手に取るように分かるのだけど・・・とりあえず言っておくわ・・・その鎧・・・ダサいわよ──────》




結局鎧は脱ぐ羽目に・・・身軽になったのはいいけどどうせなら実戦で使ってみたかった・・・


後ろ髪を引かれる思いでプレートアーマーをギルド職員に預け、ロウニールとしては初めてダンジョンに足を踏み入れる


「1階からか・・・まあじゃあねえな。とりあえず雑魚は無視して下を目指そうぜ」


そうなんだよな・・・僕はダンジョンが初めてって事になっているからゲートは使えない。本当は誰よりも下に行けるのに・・・というわけでその辺もちゃんと考えてきた


プレートアーマーに認識阻害効果を付与して魔物達にマスターだとバレないようにしようとしたがセンジュは笑うしダンコには止められるしで散々だった・・・けど、もうひとつの策は大丈夫なはず・・・



センジュを先頭に1階を少し進む


すると有り得ない場所でこれみよがしに置いてある宝箱を発見する


「わーこんな所に宝箱が。開けてみようっと」


「は?おい待て!1階に・・・しかも道端に宝箱なんて・・・」


本来なら宝箱は道端に置いているものではなく宝箱部屋と呼ばれる小部屋に置いてある


じゃあこの宝箱は?


そう・・・これこそが僕が仕掛けたもうひとつの策・・・この宝箱を開くと罠が発動する仕組みになっている。その罠とは・・・


「わーしまった!罠だ」


「てめえこのっ・・・」


宝箱を開けると眩い光が辺りを包み込む


分かっていてもその眩しさに目をやられ、目が元通りになった時には僕とセンジュは先程の場所から移動させられていた


「・・・ここは・・・どこだ?」


センジュの視力も回復したみたいで辺りを慎重に見回す


来た事あるかもしれないけどすぐには分からないだろう・・・見た目は1階とほぼ変わらないからね


「ったく!無闇矢鱈に宝箱を開けんじゃねえよ!」


「す、すみません・・・つい・・・」


「・・・まあいい・・・とにかく一旦出るか。多分あの光は強制転移だ・・・ここを1階だとは思わねえ方がいいぞ」


うん、知ってる


ここは1階は1階でも51()階・・・中級魔物が出るそこそこの階層だ


僕はダンジョンに入った事がない事になっている・・・となると僕と行動を共にするとダンジョンの1階から攻めないといけなくなる


それだといつまで経ってもセンジュの実力が見れない・・・そう思った僕はある罠を仕掛けた


それがあの強制転移付きの宝箱だ


今のエモーンズには新規の冒険者はほとんど居ない


つまりほとんどの冒険者が1階は既にクリアしている状態って事になる。なので1階の道端に宝箱を置いたとしても誰の目にも触れる事はなかった


そこに僕達が現れて宝箱を開けると強制転移が働くってわけだ


《だいぶセリフが棒読みだったけどね》


う、うるさい!


さて・・・ここは51階の中心付近


戻るにしても進むにしても魔物と戦うことになる


そしてこの階にいる魔物は少し厄介な奴らだ


「雰囲気は1階に似てるが・・・なるほど・・・コイツがいるって事は50階以上か」


少し進むと姿を現した魔物・・・体長1m50くらいで小さく四足歩行で地面を這うように歩く。特徴的なのは異様に長く出っ張った肘の骨だ。その肘の骨は背中に生えた羽のように伸びている


肘から出ている骨が特徴的で顔が物語に出てくる悪魔そのものだからその名もボーンデビル


「早速呼びやがったな」


センジュもどうやらこの魔物の特性を知っているみたいだ


肘から出て背中まで伸びた骨は武器として使うのではなく両方の骨をカチカチと鳴らして味方を呼び寄せる為に使う


目の前のボーンデビルはセンジュが構える前に骨を鳴らしていた


「チッ・・・まあいい。警戒しろ・・・来るぞ!」


味方がまだ姿を現さない状況でボーンデビルが動き出す


手足を使い壁から壁に飛び回り、僕達との距離を詰めて来た


「フン!」


センジュは刃引きされた剣を抜き向かい来るボーンデビルに向けて振ると呆気なくボーンデビルは真っ二つに・・・だけどすぐにセンジュは向きを変え通路の奥を睨みつけた


「おーおーゾロゾロとまあ・・・少しは活躍を見せられそうだな」


通路の奥から現れたのはリビングアーマーにギガントソード・・・それに2体目のボーンデビル


「それにしてもいやらしい構成だな。タンカーにアタッカー・・・それにスカウトか・・・人間の真似してパーティーでも組んだか?」


さすがAランク冒険者・・・僕の意図にすぐ気付いたみたいだ


センジュの言った通りこの階の魔物は人間のパーティーを意識している


リビングアーマーは別名『歩く鎧』


鎧自体が本体で中身のない不思議な魔物だ


本体だけあってか鎧はかなりの強度があり、傷を付けるのも苦労する。攻撃はさほどだけど守りが堅いさながらタンカーのような魔物


ギガントソードは巨大な体躯にそれに勝るとも劣らない巨大な剣を持つ魔物


単純な力だけならトロールと同じかそれ以下だけど剣の扱いに長けている為トロールよりも厄介な相手だ


で、ボーンデビルは自らの骨を打ち鳴らす事により魔物を呼び寄せたり高い身体能力を駆使してアクロバティックな攻撃をしてくる


この三体の魔物を同じ階に配置したのは魔物がパーティーを組むとしたら・・・と考えての事だった


「後ろに下がっていろ・・・おっと、目は逸らすなよ・・・俺の勇姿をしっかりと目に焼き付けサラに伝えてもらわにゃならねえからな」


センジュはそう言うと腰に差したもう一本の剣を引き抜いた


左右の腰にぶら下げていたから何となく想像はついたけど・・・『なまくら』センジュは二刀流のようだ


背後にいるのに肌がピリピリするほどのプレッシャーを感じるのに・・・もしこれで彼の正面に立ったとしたら・・・僕は逃げ出さずにいられるのだろうか・・・正直自信が無い


「おら来いよ雑魚共!ぶった斬ってやるからよ!」


地面を蹴り群れに突っ込むと先ずは先頭に立つリビングアーマーを撫で斬る


そのまま止まらずに今度はボーンデビルに向けて剣を突き串刺しにすると回転しギガントソードに向けて飛び上がり剣を振り下ろした


咄嗟にギガントソードは持っている剣でセンジュの一撃を受ける・・・が、あまりの重い一撃に巨大な体躯は沈み膝をついた


「その大剣を見るとキースの野郎を思い出す・・・あの野郎人を呼び付けて・・・クソ野郎が!!」


いやそいつはギガントソードだから!


そう言えばサラさんが言ってたな・・・キースが毎日の日課のように色んな人・・・強いと言われる人を呼び付けて手合わせしてるって・・・サラさんも呼ばれたけど体調不良を理由に断り続けたらしい・・・Sランク冒険者の手合わせの誘いを断るなんて・・・さすがサラさん


そんな事を考えている間にセンジュは受け止めていた剣ごとギガントソードを真っ二つにしてしまった


刃引きした剣・・・しかも片手で、だ


硬い鎧のリビングアーマーをあっさりと斬り、素早いボーンデビルを超える素早さで移動し、鋭さの欠けらも無い剣でギガントソードを真っ二つ・・・強さを測るには物足りない相手だったけどセンジュの強さの片鱗は見えたような気がした


「うーん・・・いつもより歯ごたえねえな・・・まあ俺が強過ぎるってだけか」


あっ・・・そうだった・・・今の魔物達は訓練と思ってる・・・訓練だから当然相手を殺そうとしないし本気も出していない・・・なんかちょっと罪悪感・・・


「どっちが行きか帰りか分からねえが・・・まあこの様子ならどっちでも平気だろ。少し話しながら進もうぜ」


「は、はい!・・・えっと・・・何の話をします?」


別に僕はセンジュと話す事なんてないのだけど・・・


「・・・そうだな・・・ひとつ聞きたい事がある」


「聞きたい事?なんでしょう」


多分サラさんの事だろうけど・・・今更僕に聞きたい事ってなんだろ?


「お前・・・サラの事どう思ってる?──────」

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