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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
158/856

155階 聖女は知識も豊富

「聖女がこの街に来ているのは知っているな?」


「知ってます」


「聖女がこの街に滞在する期間を延長した事は?」


「何となく・・・聞きました」


「その理由は?」


「・・・知りません」


いきなり衛兵所に呼び出されたと思ったらケインから尋問のような質問攻め・・・ケインの副官であるジェイズには凄い睨まれるし・・・僕が何をしたと言うんだ!?


「俺達も・・・いや、街全体が困った事になりそうなのだ」


「困り事・・・ですか?」



ケインに代わりジェイズが説明してくれた・・・その困り事とは聖女セシーヌの滞在期間が延びる程に深刻化する財政難の事らしい


街に出来た教会は歓楽街と近く、聖女であるセシーヌにはあまり良くない環境と考えた領主が歓楽街の一時的閉鎖を実行・・・そこまではケン達に聞いたけど、問題はお金・・・街の税収がかなり減るって事だ


歓楽街は飲み屋だけではなく色々な店が立ち並んでいる・・・その中には目が飛び出でる程の高額な請求をしてくる店もあるらしい


当然そうなると売上もかなり高く納める税額も高い・・・もしかしたら街の税収の半分くらいは歓楽街から・・・と言っても過言ではないかもしれない


で、だ・・・売上に対して税を課して街で徴収し、その一部を国に納める・・・その額によって街の評価が変わるのだとか・・・いや、街の評価と言うより領主の手腕かな?


なので歓楽街を閉鎖していると税収は下がり自ずと国へ納める額も下がる・・・今回はその額がかなり大きく領主の手腕が問われる可能性があるって訳だ


それに既に予算が決められているものへの支払いや歓楽街にある店への休業補償・・・それら全てを支払い続ければやがて街は破綻する・・・


「・・・随分と脆いのですね・・・この街は」


「ほんの数年で発展した場所などそんなものだ。地盤固めなどする暇もなく発展してしまったからな」


「・・・それで私にどうしろと?」


「理由は明白・・・ならばどうするべきかは分かるだろ?」


「聖女・・・様を王都に帰す・・・しかしなぜ私に?」


「公言はしていないが行動はあからさまだ。目撃者も多数いる・・・ロウニール・・・お前は聖女と親しい。だから街を・・・救え──────」





ケインの野郎・・・何が『街を救え』だ


命令してきた割には具体的な事は一切言わない・・・ダンコ曰く『失敗した時にロウが単独でやった事にするつもりね』だそうだ・・・奴ならやりかねないな


一応上司の命令には従うしかない


って事で教会に向かってはいるけど足取りは重い


何せ自分に好意を持ってくれている人を追い返そうとしているのだ・・・どんな言葉をかけていいのか皆目見当もつかないからだ


「・・・ハア・・・どうしよう・・・」


出るのはため息ばかり


いい案なんて全く浮かばない


それでも足は教会を目指して動いており、既に目と鼻の先まで来てしまっていた


なんて言おう・・・王都に帰れなんて言えるはずないしいっそうのこと理由を説明するか?でもなんて?


『歓楽街を再開したいので帰ってくれ』


・・・そんな事言えるわけない・・・


でもじゃあどうすれば・・・うーん・・・



「てめえコラ!やんのかコラ!!」


「うっせえオラ!かかってこんかいオラ!!」



・・・なんだこの低俗な言い合いは・・・


見ると冒険者っぽい男2人が胸倉を掴み睨み合っていた


今にも殴り合いに発展しそうな勢い・・・白昼堂々街中で


と、とりあえず兵士を呼ばなきゃ!・・・ってぼくも兵士だった!


とにかく止めないと・・・教会近くで殴り合いの喧嘩なんて始まったら問題だし、近くに兵士である僕がいたなんてバレたらケインに何言われるか分かったもんじゃない


勇気を振り絞り2人の元に駆け寄ろうとしたその時、ダン!という大きな音と共に地面が軽く揺れたように感じ僕はその足を止めて音がした方向を見た


「そんなに殴り合いをしたければダンジョンでしろ。ダンジョンなら殴り合おうが殺し合おうが誰も止めはしない・・・そうだろ?」


足で地面を踏みつけ轟音と揺れを起こしたその人物は僕のよく知る人だった


「く、組合長・・・」「サラさん・・・」


男達が顔を引き攣らせながらその名を口にする


『ダンジョンナイト』の新組合長にして僕の師匠・・・サラさんは呆れた様子で2人に近付くと頭にゲンコツを落とした


「イデッ!」「グァッ!」


「牢屋かダンジョン・・・同じ地下だ好きな方を選べ」


「・・・ダンジョンに行ってきます!」「お、俺も!」


2人はサラさんの迫力に後退り、そのまま仲良くダンジョンに向かって走って行ってしまった


集まりかけていた野次馬達もサラさんの活躍を目の当たりにし去って行く


さすがサラさん・・・カッコイイ


「・・・フゥ・・・」


「いやぁ惚れ直しちゃうね!さっ、ひと仕事終えたことだし飯でも行こうぜ?サラ」


「誰がお前と・・・ロウニール?」


背後からひょこっと出て来たセンジュに振り返ろうとしたサラさんがようやく僕の存在に気付いた


「師匠・・・すみません兵士の僕が止めるべきだったのに・・・」


「いや、構わない。私の仕事でもあるしな」


「え?」


私の仕事って・・・組合長の仕事って事だよな?そんな仕事あったっけ?──────



道端で話すと目立つので3人で近くの店に入った


聞けばセシーヌ滞在中限定の協力依頼がケインからあったらしい


冒険者の管理・・・それは普段からしているのだけど特に厳しく管理して欲しいって依頼だ


その依頼を受けている状態で冒険者の中から逮捕者を出す訳にはいかないとサラさんは昼夜問わず街で見回りをしているらしい


「そんな・・・それだと自分の時間が取れないんじゃ・・・」


「なーに、他の者達にも協力してもらってるし十分休む時間はある・・・まっ、あまり長い期間続けたくはないが・・・」


「だよな!俺とのデートの時間が少なくなっちまう」


「黙れセンジュ」


サラさんとセンジュの関係はともかく・・・サラさんにも悪影響が・・・


決してセシーヌのせいじゃないけど、これじゃあ聖女が毒と言われるのも分かる気がする。本当の意味は違うのだろうけどこのままだとセシーヌの滞在はエモーンズにとって毒になる


「ロウニール?どうしたのだ?」


「いえ・・・聖女様はどれくらい滞在されるのかなぁっと・・・」


「・・・どうだろうな・・・」


サラさんは知っている


僕・・・じゃなくてローグとサラさんの前でセシーヌは数年滞在すると言っていたのだから


でも公言した訳じゃないから言えないだけ


「ところでロウニール・・・お前仕事はどうした?今日は休みか?」


「一応仕事中です・・・ケイン衛兵長から言われましてね・・・聖女様とお話しして来い、と」


「話?何の話だ?」


「さあ?・・・でもえらい前置きの長い命令でした。犯罪率がどうだの財政難がどうだのと・・・具体的な命令はせず・・・」


「・・・なるほど、な」


「あん?何がなるほどなんだ?」


サラさんは察してくれたけどセンジュは理解出来なかったらしい。僕が説明しようと口を開こうとするとそれを制してサラさんが説明してくれた


「衛兵長が聖女様の滞在期間に言及すれば角が立つ・・・かと言ってこのままでは・・・というわけでロウニールが自らの行動で聖女様を・・・という事にしたいって事だ」


「歯切れ悪い言い方だな・・・要は大変だから聖女を追い出したい・・・けどそれを言ったら相手を怒らすからロウニールが言ったことにして知らんぷりするってことか?」


「コイツ・・・まあそういう事だ」


言い難い事をズバズバと・・・サラさんが気を使って直接的な表現を避けてたのに・・・


「いけ好かねえな・・・人に責任を押し付ける奴も・・・それを実行しようとしているロウニールも」


「・・・」


「センジュ!事情が事情なのだ・・・お前が口を挟むような・・・」


「事情?勝手に気を使って勝手に自分の首を絞めてるだけじゃねえのか?それを聖女のせいにして・・・しかもロウニール・・・お前は噂に聞けば聖女に惚れられてるんだろ?自分に惚れてる女を追い出す気か?あん?」


「っ!・・・それは・・・」


「だらしねえ・・・あの時のガッツはどこに行った?そこそこやる奴だと思ったが勘違いだったようだな」


センジュの言う通りだ


ギルド長の話を聞いてセシーヌを毒扱いするのは酷いと思ったのに僕もセシーヌをいつの間にか・・・


「あの時?あの時とはなんだ?」


「あっ!・・・いや、それは・・・なあ?ロウニール」


セシーヌが影響しているのは確かだ。けどそれはセシーヌが望んでいるのではなく周りの人が勝手にやってる事・・・それなのにセシーヌのせいにして良いのだろうか・・・もっと他に方法は・・・


「偉そうな事を言っておいて自分の事になるとやけに歯切れが悪いじゃないか・・・あの時とはどの時だ?センジュ」


「いやそれはその・・・ロウニールお前からもサラに言ってやってくれ・・・おい!ロウニール?」


「ありがとうございます!どうするべきか分かった気がします!僕・・・セシーヌ様に話して来ます!」


「・・・そうか・・・なら早く行け・・・聖女様はきっとお前の言葉を待っているぞ」


「はい!」


「いやちょっと待て・・・こっちの問題は解決してねえ・・・ってロウニール!待ってくれ!」


「では聞こうか・・・時間はたっぷりある」


「ロウニール!!──────」




店を後にした僕は教会に向かって歩き出す


そして教会に着くと僕に気付いた1人の侍女がセシーヌの所まで案内してくれてすんなり会うことが出来た


僕を見て喜んでくれる彼女にこんな事を言うのは酷かも知れない・・・多分領主が歓楽街を閉鎖したように周りが気を使い聖女であるセシーヌに触れさせないようにしていたであろう部分を伝えるのだから・・・



「ロウニール様!私に会いに来て下さったのですか?」


「え、ええ・・・その・・・実はですね・・・この教会の近くにある店が集まってる区画・・・歓楽街の事でちょっと・・・」


「ああ・・・何故か今はほとんどの店が閉まっているみたいですね。王都にもあるみたいですが一度も行ったことがなくて少し興味あったので残念に思ってました。あっ、奥には興味ありませんよ?だって奥の方に行くと確か・・・殿方がおセッ○スされる所と聞いてますので」


おい聖女──────

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