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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
150/856

147階 ローグサイド

ここは・・・どこだ・・・


見渡す限り真っ白な・・・部屋?


光っている訳でもないのに眩しく感じて思わず目を細める


確か寝ずにダンジョンの補修を・・・もしかして夢?


目を細めて辺りを見回しても何も無い・・・ダンジョンに居たはずだからそんな場所はあるはずないし・・・夢確定だな



──────ロウニール──────



「誰?」


微かに聞こえた・・・聞き覚えのあるようなないような・・・女の子?の声がした



──────ロウニール──────



また・・・一体どこから・・・


「うわぁ!」


いつの間に・・・いつの間にか目の前に少女っぽい何かがいた


形は少女だけど・・・なんだろう・・・スライムみたいな・・・そこに実体があるようでないような・・・ユラユラと揺れている不確かな物体・・・


「・・・君は?」



──────そういうアナタは何?──────



反応した!って、名前呼んでたのに知らないのかよ!


「僕はロウニール・・・僕の名前を呼んでたろ?」



──────アナタはロウニール・・・でも・・・何?──────



「何って・・・人間?」



──────そう・・・ただの人間・・・アナタじゃない──────



???何を言っているのかさっぱりだ


「僕じゃないってどういう事?意味が分からないんだけど・・・」



──────まだ()()・・・アナタでは・・・──────



「早い?何が?・・・君は僕の事を知ってるの?君は・・・誰?」



──────私は──────



《ロ・・・ウ・・・ロウ・・・ロウ!!》


「んなっ!?」


《静かだと思ったら寝てるんじゃないわよ!》


夢・・・だよな?


あまりにもリアルで・・・ん?そうでもないか・・・


あんな真っ白な部屋は存在しないし、あの女の子も・・・けどどこかで会ったような会ってないような・・・


《ロ・ウ!寝惚けてないで手を動かす!本当に朝になるわよ!》


「なあダンコ・・・これくらいの小さくて顔が見えない女の子に会った事あったっけ?」


《・・・は?》


「表現が難しいな・・・うーんと何か体がブヨブヨ?いや実際はブヨブヨしてないけどそんな感じ?で、顔の部分に目とか鼻とかついてなくて・・・もちろん口も・・・でも喋れるんだ。あっ、でも喋るって言うよりダンコみたいに直接頭の中に語りかけてくるような・・・」


《ロウ・・・アナタまさか・・・》


「まさか?」


《思いっきり寝てた?うたた寝とかじゃなくてガッツリ訳の分からない夢を見るほど?》


「・・・さあ!朝になっちゃうから頑張っていこー!」


《ハア・・・もうすぐ悲願の100階というのに・・・》


「っ!・・・」


悲願の100階・・・その100階に座するは魔王・・・あの夢が単なる夢だといいけど・・・


もし夢ではなく啓示みたいなものだったら・・・恐らく『早い』というのは・・・


《ん?どうかした?・・・まさかまた寝てたなんて・・・》


「寝てない寝てない!・・・そう言うダンコは魔物どれくらい創ったんだ?」


《フン、聞いて驚きなさい!各魔物100体はストックしたわ・・・これでしばらくは安泰よ!》


「うへぇ・・・確かにそれだけあれば安泰だな」


魔物100体じゃなくて()魔物100体・・・これは今頃ストックしている場所はギュウギュウ詰めになってんじゃ・・・


「魔物同士で喧嘩したりしないよね?」


《する訳ないでしょ?》


する訳ない・・・か?


「けど人喰いダンジョンのドラゴニュートは暇してたとか何とか言ってたよ?」


《ドラゴニュートは腐っても上級・・・上級魔物ならそれくらいの感情は出るでしょうね》


「・・・各階の魔物って言ったよね?それって上級魔物も含まれてるんじゃ・・・」


《上級魔物を100体も創れる訳ないでしょ?基本的に上級魔物は一体のみ・・・ストックはしないのが常識よ》


そんな常識初めて聞きますが・・・


《まっ、上級魔物についてはおいおいね・・・早くしないと冒険者が来ちゃうわよ!後残り少しでしょ?さっさと補修しちゃって》


「ハイハイ・・・そう言えばさ、カルオスに向かう前に結構補充したはずなのになんで魔物がスッカラカンになっちゃったんだろう。今までのペースなら十分足りてたはずなのに・・・」


《知らないわよ。気になるならギルドに行って聞いてみれば?》


「ギルドに?」


《ペースが上がったのならその理由は把握しているはずでしょ?何の為の冒険者ギルドよ》


それもそうだな・・・補修が終わって一眠りしたらギルドに顔出しに行くか・・・ん??


「ダンコ」


《なによ!まだ何かあるって言うの?》


「8階の宝箱部屋で罠にかかってる間抜けが居るんだが・・・」


《ほっときなさいよそんな人間!8階なんて遊びみたいな罠しかないでしょ!かかる方が悪いのよ!》


「・・・でもそいつ・・・泣いてるんだけど・・・」


《・・・泣いてる?》


「うん・・・わんわんと子供みたいに・・・泣いてるんだよね──────」





その後、結局いたたまれなくなり救助に向かった


僕が部屋に入ると宝箱に仕掛けた罠・・・ブービースライムに捕まっていた男は涙を撒き散らしながら振り返り助けを求めてきた


彼の名前はアスタ・・・Cランク冒険者で近接アタッカー・・・本来なら別の街でパーティーを組んでいるが何を思ったかエモーンズにやって来てソロとして頑張っていたらしい


んで、何とか8階まで到達しそろそろ帰ろうとした時にこの宝箱のある部屋を見つけ、どうせ帰るなら・・・と宝箱を開けたらあら大変、スライムが襲いかかって来てやむなく拘束されてしまった・・・っていうのが事の顛末だ


ブービースライムは宝箱の中にスライムを入れる罠で余程の事がない限り引っかからない・・・かかるのはブービー・・・つまりマヌケだけ・・・けど帰る間際だった事もありマナも底をつきかけ、疲労もかなり溜まっているところにいきなりスライムに襲われ為す術なく拘束されてしまったのだとか・・・まあ罠に使っているスライムは少し成長したやつだし仕方ないか・・・


一応万が一の事を考えて攻撃せず拘束しろと命令していたが・・・まさか丸一日ずっと拘束しているとは・・・スライムの忠義心侮りがたし


とまあ、間抜けな冒険者を助けたはいいもののなんでソロやっているの聞いても答えを濁すばかり・・・これ以上は聞いても答えてくれなさそうだと判断して安全な所まで送り届けるとその足でギルドに向かった


なんだかんだでもう朝・・・結局一睡もしていないな


でもアスタを救助した事をギルドに伝えないと・・・もしかしたらアスタは組合員で他の組合員が探そうとしているかも知れないし・・・


報告ついでにペギーちゃんにも久しぶりに会えるし一石二鳥・・・眠いなんて言ってられない


ふらつく足をギルドに向けてようやく辿り着く


ギルドの中に入ると何かの催し物があるのかと思うくらい人がマジすかごった返していた


その大勢の冒険者の中、僕は気にせず受付にいるペギーちゃんの元へ


冒険者達がザワついているのは僕を久しぶりに見たからか?


「すまないが・・・」


「なんです?」


あれ?怒ってる?


話し掛けた瞬間に顔を上げギロリと睨まれてしまった


「あ、いや・・・・・・ダンジョンで罠にかかっていた者を助けてな・・・その報告に・・・」


「その人もしかして・・・アスタって名前ですか?」


「あ、ああ・・・そう名乗っていたが・・・」


「やっぱり!ハア~良かった・・・これからアスタさんを知ってる方を探したり捜索隊を編成したり・・・こっちはやる事が山ほどあるのにギルド長ったら・・・」


「そ、そうか。ギルド長は不在なのか?」


「います。けど現在来客中でして・・・」


「来客?」


「はい・・・とても高い身分の方なのでその方が帰られるまではお会いになれないかと・・・」


「高い身分?この街に?」


「はい・・・聖女様です」


・・・あっ!そうだった・・・セシーヌの目的地はここエモーンズ・・・ムルタナで治療した後で向かえばもうとっくに着いててもおかしくない・・・すっかり忘れてた


まあもう助けたのだし今すぐ報告する必要もないし後にするか・・・あっ、そう言えばローグとしてラルの母親の治療のお礼を言ってなかったな・・・ギルド長と何を話しているか知らないがここは顔を出して行った方がいいか・・・


「少しギルド長と話せないか?その高い身分の方にも用事があるのだが・・・」


「今は難しいかもしれません・・・けど一応聞いてみますか?ギルド長もローグさんを待ちわびていたみたいですしもしかしたら・・・」


セシーヌがギルド長に何の用か分からないけど、そんなに差し迫ってたり重要だったりしないはず・・・それなら挨拶とお礼くらいしても問題ない・・・よね?


とりあえず聞いてみるって事になり、ペギーちゃんと共に2階に・・・そしてノックをしてギルド長に尋ねると『待たせておけ』と返答が返ってきた


「ギルド長が待ちかねた方ですが・・・」


なおも食い下がるペギーちゃん


別に無理に今会わなくてもいいし、一旦退散した方が良さそうだ


「立て込んでいるなら後にしよう」


「ロー・・・」


「ロウニール様!!」


完全に虚をつかれた


またの機会にと思っていたが急にセシーヌが立ち上がり僕に抱きつく・・・しかもロウニールと呼んで・・・


なんで?・・・なんでセシーヌは今の僕をロウニールと??


「・・・どこの誰だか知らないが人違いだ」


「え?・・・あれ?・・・すみません、てっきりロウニール様かと・・・」


良かった・・・バレた訳じゃなさそうだ


「ローグ!どこに行って・・・いや、ともかくよく戻った!」


随分とギルド長は嬉しそう・・・って事はそれだけ大変だったって事かな?


もしかして1階に大勢の冒険者がいた事と何か関係が?


「長い間留守にしてすまんな。ムルタナの後も少しゴタゴタしていて・・・それでギルド長、少しいいか?」


「おう!・・・と言いたいところだが・・・」


ギルド長は口ごもっていると一人の女性が歩み寄る


そうか・・・この人もいたのか・・・


「ローグ殿でいらっしゃいますね?少しお話をしてもよろしいですか?」


エミリ・・・カルオスの教会で僕を本気で殺そうとした女性・・・


「よろしくないな。こっちの報告が終わってからにしてくれ」


どうもこの人は苦手だ


本人は自覚がないのかもしれないけど常に上から目線でものを言ってくる


「・・・聖女様のお話より優先する事があると?」


「聖女?君が?」


わざととぼけてみるとエミリは苛立つ様子を隠そうともせず僕に抱きつくセシーヌを見る


「私ではなく・・・そちらのセシーヌ様です」


知ってるわ!それくらい!


「初めましてローグ様。私は・・・」


「聖女か・・・後にしてくれ。至急伝えるべき事があるのでな」


本当は既に助けた後なので至急ではないのだけどこの抱きつかれた状態は色々マズイ・・・


華奢に見えていた体は意外と・・・何と言うか柔らかくて・・・しかもいい匂いがするし・・・


「無礼な!聖女様の言葉を遮りあまつさえ後回しにするなど・・・」


後回しにする理由があるんだって!・・・言えないけど・・・


「どんな大層なお話があるか知らないが優先順位はこちらの話の方が上だと思うぞ?」


話じゃなくて状況だけどね


「組合長ごときの話が聖女様のお話より?」


ごとき・・・寝不足で更に美少女に抱きつかれて絶賛混乱中だけど・・・さすがにごときと言われるとイラッとくるな


「上だな」


「・・・こちらはそちらの願い通りムルタナに寄り治療をした・・・それなのに恩を感じてはないと?」


「治療をしてくれた事は聞いている。それについては感謝しているよ。だが、こちらも寄付という名の治療費は払っているはずだが?つまり持ちつ持たれつの関係・・・その上で何かを求めるなら少々恩着せがましいと言わざるを得んな」


「貴様っ!」


「エミリ!・・・申し訳ありません、フリップ様とのお話が終わりましたら少しお時間を頂いても?」


「構いませんよ、聖女様」


ようやく離れてくれた・・・常に冷静沈着なローグなのに危うくしどろもどろになるとこだった・・・危ない危ない


とりあえずさっさとギルド長に伝えることを伝えておこう・・・じっと見つめてくるサラさんの視線が気になる・・・


「ダンジョンでアスタという冒険者を保護した」


「なに!?それは本当か!」


「8階の部屋でトラップに引っかかっていてな・・・恐らく宝箱をろくに調べずに開けようとしたのだろう・・・ソロだったらしく抜け出せないと嘆いていたので助けてゲートまで送っておいた」


「・・・はっ、さすがローグだ。助かったぜ」


「ギルドに見ない顔が多くいたが・・・またどこぞの組合でも引っ越してきたか?」


「いんや・・・まあその話はまた後にしよう・・・それだけか?」


僕が頷くとギルド長は黙って待っていてくれたセシーヌを見た


「お待たせしました。込み入った話なら応接室が空いているのでそこを使ってもらって構いません」


「ありがとうございます。それではローグ様、少しお時間よろしいでしょうか?」


「ああ」


セシーヌと2人っきり・・・まあどうせエミリもついて来るだろうけど、この2人と僕だけじゃ不安だ・・・ここはサラさんに同席願おう


僕が視線を送るとサラさんはその意図に気付き同席してくれる事になった


先に3人がギルド長室を出て、残った僕にギルド長は釘を刺す


『聖女を怒らすな』


理由は後で話すと言っていたが、どうやら地位が高いだけが理由ではなさそうだな



その後僕もギルド長室を出て応接室に場所を移し話をするが・・・まさかセシーヌが何年かエモーンズに残ると言い出すとは・・・これは少し厄介な事になりそうだぞ


てかそれよりもセシーヌ・・・ペギーちゃんの前でなんちゅーこと言ってくれてんだー!──────

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