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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
145/856

142階 ドラゴニュート戦③

「は・・・はぁ!?」


〘・・・他に誰か居るのか?〙


「ああ・・・それよりも教えてくれ・・・生きるか死ぬかの瀬戸際なんだ・・・」


炎に包まれる直前・・・躱せも受けも出来ないと判断した僕は咄嗟にゲートを開いた・・・咄嗟だったので繋ぐ先の場所を思い浮かべる暇はなく、目に入る場所に


するとゲートは偶然ドラゴニュートの背後に繋がっており、しかも奴はブレスを吐いている真っ最中・・・好機と思い飛び上がり渾身の一撃をお見舞いしたが・・・それでも傷一つ付ける事は叶わなかった


マナが多分に含まれている龍鱗・・・それを打ち破れなければ恐らく何も効かない


『流波』を使って内部を直接攻撃したとしてもドラゴンになった奴には効果は雀の涙程だろう


だから・・・倒すとしたらどうしても龍鱗を破る必要がある・・・そして回復する前に・・・


〘生きるか死ぬかの瀬戸際・・・か。いいだろう、教えてやる〙


「優しいな・・・後が怖いくらいだ」


〘死なれては困るからな・・・いずれ仲間となる者に〙


「・・・」


〘ここで条件付きで教えてやるほど野暮ではない・・・単なる好意だ、そう警戒するな。結論から言おう・・・龍鱗を打ち破ることは不可能だ〙


「っ!」


〘慌てるな・・・あくまでも龍鱗()打ち破ることが不可能なだけ・・・他の部位なら可能性はある〙


「他の部位?」


〘ドラゴンの大きさと体勢は?〙


「高さだけでも僕の3倍・・・いや、4倍はあるかな?体勢は四つん這い・・・」


〘ならば腹部は難しいか・・・となれば可動部分だな〙


「可動部分?」


〘ガチガチに龍鱗で覆われていたら身動きが取れまい。可動する部分は龍鱗に覆われていないはず・・・ただドラゴンであれば龍鱗に覆われていない肌の部分もかなり硬い。もし斬り付けるつもりならやめておけ・・・今の君では使えるマナ量もそこまで多くはないだろう?〙


そうなんだよね・・・体内に蓄積されているマナ量は他の人とは違いかなり多い・・・けどそれを全部一気に使えるかと言わらればそうではない・・・一度に使えるマナ量はその人の力量によって変わる・・・今の僕では・・・


〘他の者なら諦めろと言いたいところだが、君なら出来る・・・斬るのではなく突け・・・マナを一点に集中し限りなく小さく、鋭く、強化したマナで貫け〙


斬るのではなく突く・・・一点にマナを集めて・・・


〘それで可動部分を貫けなければ諦めるのだな・・・もはや抗う術はない〙


「・・・やってみる・・・」


〘武運を祈る・・・ロウニール〙


くそっ・・・でかい借りが出来てしまった


けどここを全員で生きて出る為には仕方ない・・・後のことは後で考えよう・・・今は目の前の・・・


「このっ・・・コソコソと・・・」


さすがジルさん


ドラゴニュートの爪を尽く受け流し時間を稼いでくれた


業を煮やした奴が怒り狂いブレスを吐こうと息を吸い込む


「ジルさん!ブレスは防げる?」


「・・・一度なら受け流せる。けど先程までのブレスと違い一点集中されたら盾が保てない・・・保て一回・・・そう何度もは無理」


次で決めないと終わり・・・か


幸い倒れているゲイルさんには目もくれていないからブレスを撒き散らす事はしなさそうだけど、もし次で決められなければ盾のないジルさん達に向けて再びブレスを吐くかもしれない


それに・・・ジーニャさんが回復してくれているが正直体がボロボロだ・・・マナはまだまだ十分あるのに・・・体がついて行かない・・・次が最後の一撃・・・


「何をしようと無駄だ!諦め塵となれ!!」


来る!


僕は右手に持っている剣の・・・剣先に意識を集中する


もっと・・・もっと・・・レオンが言ってたように小さく・・・鋭く・・・強く・・・


「ジル!本当に大丈夫なの!?」


「・・・私は、ね」


「あ〜もう!ストーンウォール!!」


ジーニャさんが地面に手をつくと分厚い石の壁を地面から迫り出した


ジルさんがたとえブレスを受け流したとしても後ろにいる僕達はかなりの熱気に晒されるだろうから直撃は防げなくともこの石の壁はかなり効果があるだろう・・・それにこれで僕達はドラゴニュートから見えなくなった


石の壁がドラゴニュートの視線を遮っている・・・この状況ならもう一度不意打ちが出来るって事だ


「ジーニャさん、治療ありがとう」


「え、ええ・・・って何処に行く気?」


「ちょっとドラゴン退治に・・・行ってきます!」


剣を握り締め反対の手でゲートを開きそのまま飛び込んだ


ゲートの先はドラゴニュートの背後・・・さっきも僕が攻撃するまで気付かなかったから今回も大丈夫なはず


思った通りドラゴニュートはブレスを吐くのに夢中で僕が背後に回り込んだ事に気付いていない・・・さっきは尻尾を斬ってやろうとしてダメだったけど今回は・・・必ず貫いてやる!


《ロウ・・・約束して!これでダメなら逃げるって》


「・・・僕だけ逃げる訳にはいかないだろ?」


《ロウ!》


正直逃げたい・・・まだ死にたくない・・・でも・・・


「大丈夫・・・僕達が勝つ!」


あの時・・・尻尾を斬ろうとしてダメだった時、もうひとつの技を試してみた


『ゲート切断』


体の一部をゲートの向こう側に残したままゲートを閉じれば簡単に切断出来る考えただけでも恐ろしい技だ


けど失敗に終わった・・・ゲートを開き尻尾攻撃を受けて尻尾の一部がゲートの先に行った時に閉じようと試みようとするも尻尾はゲート自体を破壊してしまったんだ


そのまま僕は尻尾攻撃を食らい壁に激突・・・気を失いそうになるほどの衝撃が今も残っている


もう手はない・・・レオンに聞いた方法を試してダメだったら本当に手詰まりになる


でも・・・それでも・・・諦めてたまるか!


「うぉぉおおおお!!」


剣先に更に集中


もっと・・・もっと研ぎ澄ましレオンの言っていた場所・・・可動部分を狙う


その場所は尻尾の付け根


背後から狙える唯一の場所だ


ドラゴニュートの体がピクリと動きゆっくりとこちらに振り向こうと動き始める


僕の存在に気付いたか・・・でももう遅い!


「食らえ!!」


剣先が尻尾の付け根に当たる


これで弾かれたら終わり・・・終わらない・・・終わる訳にはいかない!



ズブリ



剣先が硬い皮膚に食い込む感触


少し・・・ほんの少しだけど皮膚を貫通し剣先がドラゴニュートの内部に侵入する


「おのれちょこまかと・・・だがそれがどうした?僅かな痛みを与えて満足か!」


体を捻り僕の方に振り向こうとするドラゴニュート


少しは痛みを感じたみたいだな


「前のドラゴニュートもそんな事を言ってたよ」


「なに?」


「高い再生能力があるからほんの少しの傷なら物ともしない・・・けどその再生能力を上回る攻撃をずっとされたら?デカい図体だから時間は掛かるだろうけど・・・いずれ朽ち果てて死ぬだろうな・・・たっぷりと注いでやるよ・・・『呪毒』!!」


剣先が再生能力のせいで押し戻されそうになるのを必死で耐え、再生能力とは逆の力である『呪毒』を思いっきり流し込む


剣を突き刺した辺りの皮膚が紫色に変色し、徐々にその色は体全体を覆うように拡がっていく


「ぐぅ!何をした!?」


首をいくら捻ろうが僕は見えない


尻尾を振り回そうが僕には当たらない


『呪毒』のせいで脆くなったのか剣は力を入れてないのにズブズブと入っていき剣先だけだったのが半分近くまで体に侵入していた


体が揺れる度に振り落とされそうになるけど両手で柄を掴み、必死に耐えながら更に『呪毒』を流し込む


このまま続ければ・・・そう思った矢先にドラゴニュートの体が変化し始める


奴のやろうとしている事に気付いたが遅かった・・・奴は剣が刺さったままドラゴンの姿から本来の人型の姿に戻ったのだ


尻尾の付け根に刺さっていた剣は変身を解いた瞬間に行き場を失い、その勢いで体勢を崩した僕の前に人型に戻ったドラゴニュートが僕を見下ろし佇んでいた


「くそっ・・・あの姿のままなら・・・」


剣は抜ける事はなく『呪毒』を流し続けられていただろう・・・けど人型に戻ったドラゴニュートの一部は変色したままだけど動きが取れない程のダメージを与えられた訳じゃなかったみたいだ・・・ドラゴニュートは拳を握り僕に近付くと怒りを込めてその拳を僕に放つ


体がバラバラになるかと思うような衝撃


何とか意識を保つが体は吹き飛ばされ、壁に激突すると一気に力が抜けてくる


「妙な力を使いおって・・・だがもう終わりだ・・・貴様を殺し残りの奴らも・・・」


ダメだ・・・立て・・・立ってもう一撃・・・


再生能力はドラゴンの時より弱いはず・・・今も『呪毒』は体を侵食し続けている・・・今なら僕の一撃は届くはずなのに・・・体が・・・動かない・・・


「褒めてやろう・・・我をここまで追い詰めたのは貴様が初めてだ。いつからか誰も我に挑んで来なくなりこの場に居るのも少々飽き飽きしていたところだ・・・」


へえ・・・魔物も暇するんだな・・・


って、呑気に感心している場合じゃない!動けよ!動いてくれ!


一歩一歩近付くドラゴニュート


必死に体を起こそうとするけど壁に背中をついていても立ち上がる事すら出来ない


握ったままの剣に力を入れるが持ち上げようとしてもまるで地面に張り付いているかのように動かない


「そう言えば門を開けて我を見て逃げる輩も大勢居たな・・・その人間共に比べれば貴様は大したものだ。いや、こうなっては逃げていった人間共の方が正しかったということか?生存能力に優れていれば気付けたはずだからな・・・我には勝てぬと」


・・・よく喋る・・・もう勝った気か・・・


「誇るがいい・・・我に傷をつけたのは貴様が初めてだ。敬意を表し一撃で葬ってやろう」


「・・・まだ・・・勝負は・・・着いちゃいない・・・」


「もう足掻くな・・・所詮人間などその程度・・・決してドラゴンには勝てぬ」


もう打つ手はない・・・・・・っ!?・・・ハハッ・・・


「・・・お前はドラゴンじゃない・・・この中途半端野郎が」


「・・・言いたいことはそれだけか?」


「・・・もう少し人間部分があれば気付いたかもな・・・」


「なに?」


「人間は弱い・・・だから手を取り合って魔物に立ち向かうんだ・・・」


「?何を言って・・・」




「悪かったな・・・生存能力が高くて。でもお前さんの一撃でその生存能力もぶっ壊れちまったよ」


ドラゴニュートは声がしてようやく気配に気付き後ろを振り返るとそこには戦斧にこれでもかってくらい大量のマナを纏ったゲイルさんが立っていた



「貴様っ!」


「少しくらい活躍させてくれよ・・・初撃で気絶して終わりましたなんて事になったら恥ずかしくて目も当てられねえからなっ!」


いつの間にかドラゴニュートの背後に立ち振り向こうとした奴に対して戦斧を一閃・・・ドラゴニュートは動きを止め少しの間静寂が訪れる


そして・・・


「・・・矮小な人間如きが・・・」


「その矮小な人間に敗れたんだよ・・・てめえはな」


ドラゴニュートの首に一筋の線が


その線から血が滲み出てやがてその血が上に乗っていた頭を滑らせる


ゴトッと音がして転がる頭がちょうど僕の方を向いて止まると憎しみがこもった目と合ってしまった


「・・・恨むなら人間を過小評価した自分を恨め・・・ドラゴニュート」


そう言うとドラゴニュートは少し表情を曇らせたような気がした・・・けどもう既に息絶えている・・・つまり・・・


僕達の・・・勝ちだ──────

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