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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
144/856

141階 ドラゴニュート戦②

これまでロウニールとして変化と操作だけで戦おうとしていた


けど今は全ての能力をフル活用して戦っている


しかもマントに込めた能力・・・身体強化も駆使して


それでも一進一退・・・いや、経験豊富なドラゴニュートはその僕の更に上をいく


けど・・・さっきまでの絶望的な差って程でもない!


「どうした?さっきまでの威勢は?」


「調子に乗るな・・・半端野郎」


「・・・」


うわぁ・・・怒ってる怒ってる


自分でも思ってるのね・・・半端だって


とまあ怒らせて単純な攻撃を引き出すのはいいけど簡単には踏み込めない


肌は相変わらず硬いから中途半端な攻撃は無駄に隙を作るだけだ


かと言って力を込めて斬ろうとすると動作が一瞬遅れる為に避けられてしまう・・・うーん、困った


ドラゴニュートが振り下ろす拳は硬いダンジョンの床を打ち砕く


飛び退いて躱した後で魔法を使って攻撃してもノーダメージ・・・平然と受けきり躊躇なく飛び込んでくる


「ちょこまかと・・・」


逃げに徹している僕を忌々しそうに睨むドラゴニュート・・・仕方ないだろ?そんな事言うなら隙を見せろってんだ


「見よう見まねで・・・ストーンスピア!」


ジーニャさんが使ってた土属性の魔法・・・地面に手を付きドラゴニュートの足元から石槍を突き出すと奴は腕を振るい破壊して距離を詰めて来る


剣だとどうしても大振りになり隙が生まれる為、鞘に戻すと拳を握り迎え撃つ


ドラゴニュートの凶悪な爪を躱しマナを込めた拳を一撃・・・それでも怯まないドラゴニュートは続けざまに僕の肉を抉り取ろうと何度も爪を繰り出して来た


本気になったサラさんと同じくらい・・・いや、もしかしたらそれ以上か・・・


互いにダメージは受けてはいないがギリギリの攻防・・・体力はまだまだ十分あるけど精神的に辛くなってきた・・・何とかダメージを与えられる術があれば・・・


「あっ!・・・くっ!」


ドラゴニュートは爪での斬撃から切り替え僕の腕を握ると動きを封じ込める


そしてすかさず上段蹴りが飛んできて僕は咄嗟に掴まれていない方の腕で防御する


「ロウニール!!」


腕は折れてはいない・・・けど体の芯まで届くような重たい蹴りにかなり吹き飛ばされてしまった


ジルさんの心配するような声が届くがそちらを見ている暇はない・・・好機と思ったかすぐにドラゴニュートは距離を詰め、また凶悪な爪で僕を切り刻もうと繰り返す


ゲイルさんはまだ回復しない?


いや、回復したところで・・・


隙を見て3人を先に逃がすか?


でもゲイルさんを2人で担げるか?


もしゲイルさんの意識が戻ったとしても素直に逃げるか?


やっぱり何とかして僕がドラゴニュートを倒さなくては・・・でも一体どうやって?


「これが本気か?この程度で我を倒すと?片腹痛い!」


くそっ・・・何か突破口があれば・・・


硬い肌は剣を通さない・・・『石煌』も恐らく効かない・・・『呪毒』ならもしかしたら・・・いや『呪毒』も傷付けないとあまり効果は見込めないか・・・となると・・・


以前ドラゴニュートを倒した時を思い出す


今のドラゴニュートに効くとしたら・・・あの技しかない


でもどうやって懐に潜り込む?


近付けば鋭い爪が・・・離れればブレスが・・・どうやって攻めれば・・・


「ロウニール!下がって!!」


ジルさんの声・・・そしてその声に続いて・・・


「食らっても知らないわよ?『ストーンシャワー』!!」


ジーニャさん!・・・って事はゲイルさんの回復は終わった?いや、それよりも先ずはドラゴニュートが先決!


ジーニャさんのストーンシャワーで怯んでいる隙にドラゴニュートへと駆け出した


ドラゴニュートは煩わしいとでも言いたげな顔で魔法を弾き返しており僕は容易に懐へと潜り込む


「っ!貴様!!」


「皮膚は硬いけど・・・中身はどうだろうな?『流波』!!」


生半可な攻撃では効かないだろう・・・だからありったけのマナをドラゴニュートに流し込む


他人のマナは毒にも等しい・・・これだけ大量にぶち込めばいくら限界まで成長したドラゴニュートだって・・・


「ぐっ!・・・おのれ・・・」


効いてる!けどまだ足りない!


「もう一度食らえ!!『流波』!!」


続けて再度流波を放つ


どうせなら体内にあるマナ全てを一回でぶち込めればいいのに・・・そう思いながらも1回で流せる最大限のマナをドラゴニュートへと注ぎ込んだ


「グハッ!」


いける!


そう確信し一歩下がって剣を抜くと今度は剣にマナを纏わせ一気に勝負に出た・・・が──────



「低俗な人間のくせに!!身の程を知れ!!人間よ!!!」



忘れてた・・・ドラゴニュートは追い詰められたり怒ったりすると()()なる・・・


見る見るうちに体は巨大化しなってしまった・・・ドラゴンに


「な、なによコレ・・・アイツドラゴンだったの!?」


「違う・・・変身・・・昔聞いた事がある・・・ドラゴニュートはドラゴンに変身出来るって・・・」


「ハア!?ちょ・・・まさか強さまで変わらないわよね?」


「・・・そこまでは・・・」


変わるんですよね・・・それが


元の姿で僕と同じくらいの強さで僕より強くなる・・・って事は元の姿で僕より強ければ・・・


ドラゴンになったドラゴニュートは僕を見下ろした後で首を横に向けた


嫌な予感がする・・・もしかしたらアイツ・・・


「くっ・・・ジルさん!ジーニャさん!僕とゲイルさんの間に入って!ブレスが来ます!」


「あ、間?」


「一直線になるように並んで!僕がブレスを防ぎます!」


急いでゲイルさんの位置を確認して対角線上に立つ


2人はようやく意味を理解したのか僕の後ろに一直線に並ぶと思った通りドラゴニュートはその首を振りブレスを広範囲に吐いてきた


これではジルさんでも受け流すことは出来ない


でも僕なら・・・


「ゲート!!」


ゲートを体全体が隠れる程の大きさで作り出すと迫り来るブレスはゲートを通り別の場所へと吸い込まれる


「・・・はっ・・・周りが丸焦げだよ・・・もしあのブレスをまともに食らえば・・・」


「火傷じゃ済まないわね・・・私に防げるかどうか・・・」


広範囲に吐いた分、威力は少し弱かったみたいだ。それでもかなりの威力・・・ジルさんが優れたタンカーであっても防げるかどうかは微妙かも・・・


「小癪な・・・ならば!」


ブレスを防がれたことに腹を立てたドラゴニュートがドスドスと地面を揺らし近付いて来る


ここにいたらみんなまで巻き込まれてしまう・・・急いで離れないと・・・


そう思った矢先にそのまま突進して来ると思っていたドラゴニュートは足を止め巨大な翼をはためかせる


「何を・・・」


何をするつもりか・・・でもすぐにそれは分かった


そこまで高くない天井で巨大なドラゴンの姿で飛んでも意味は無い・・・奴の目的は・・・翼が起こす風・・・


強風と言うより暴風・・・荒れ狂う風が僕達の動きを封じ込めニヤリと笑うように口の端を上げるドラゴニュート


コイツ・・・


「くっ・・・ジルさん!ジーニャさん!すぐに・・・」


「私達の事はいいから倒す事に集中して!ブレスは私が防いでみせる!」


「ジルさん!・・・でも・・・」


「いいから!」


防げるのか?あのブレスを・・・


防げなければみんな・・・気を失っているゲイルさん含めて焼き尽くされてしまう・・・でも・・・倒さなきゃいつまで経ってもこの苦境を乗り越える事は出来ない!


そうだ・・・僕が何とかしなきゃ・・・


風に逆らわずジルさん達から離れるように移動を開始するとドラゴニュートは勝ち誇り更に笑みを深める


笑っていられるのも今のうちだ・・・ジルさんはブレスを防ぎ、僕はお前に一撃を食らわせてやる


その為にももっと速く・・・もっと速く動いて奴の死角に・・・


「バカが・・・仲間を見捨て自らの死地に飛び込むか!」


「ロウニール!!」


ぐるりと首を曲げると見えたその口の奥底に燃えたぎる炎が見えた


まさか・・・


「全員この一撃で葬ってくれるわ!!」


またブレスを広範囲に吐こうと・・・このままじゃ・・・


「死ね!!」


ヤバイ・・・ジルさん達の方を向いてたからてっきり・・・


ドラゴニュートは炎を吐き目の前が真っ赤に染まると同時に耐え難い熱が僕に襲いかかる


逃げる間もない・・・一瞬で僕は炎に包まれた──────




「ロ・・・くっ」


「ちょっ!?ジル!来るわよ!!」


炎に包まれたロウニールを見て思わず駆け出しそうになっていたジルをジーニャは必死になって止める


もう2人にも炎は間近に迫っていた


「分かってる!魔技・破魔の盾!」


ジルは唇を噛み締め足を止め迫り来る炎に向けて盾を構える


すると身を隠す事が出来ない程の小さな盾からマナが溢れ出た


破魔の盾・・・空気中にマナを放ちその強度を上げる空魔陣と盾の強度を上げる能力の合わせ技。その技にマナを最大限注ぎ込み何とかブレスを凌ぐ


「熱っ!ちょっと!もう少し盾を大きく出来ないの!?」


「・・・これが限界・・・もうひとつあれば・・・」


「んもう!このままじゃ・・・あれ?アレってもしかして・・・」


「気が散る!黙ってて!」


「ハイハイ・・・でもアレって・・・炎に包まれたはずのロウニールよね?」


「え?」


ジルが後ろを振り向くとジーニャはロウニールが炎に包まれた場所ではなく、ドラゴニュートの更に上を見つめていた


ジルはジーニャの視線を追い、正面を向き上を見上げるとそこには確かにロウニールらしき姿が見えた


「まさか生きて?」


「・・・のようね。しかもなんちゃってドラゴンは彼の存在に気付いていない・・・完全な不意打ちでもし効かなかったら・・・」


「私達の生涯はここで閉じる事になる・・・ロウニール・・・お願い・・・」


ジルが祈るように見つめる中、ロウニールの姿はそのまま下に落ちドラゴニュートで隠れてしまう


「・・・ちょっとこれは・・・シャレにならないわね・・・」


その後すぐにようやくブレスが消え、何とか耐えたと安堵した矢先にロウニールらしき人影が突然吹っ飛んでいき壁に激突するとズルズルと座り込む


それは2人にとっての唯一の希望が潰えた瞬間であった


「・・・ねえジル・・・私と貴女で倒せると思う?」


「無理ね・・・それとも奥の手でも隠してる?」


「奥の手なんてあったらとっくに使ってるわよ・・・ハア・・・一度くらい結婚してみたかったなぁ・・・」


「・・・待って!まだ生きてる!」


2人が諦めかけたその時、壁まで飛ばされたロウニールがふらつきながらも立ち上がる


それを見て2人は視線を合わせると用意しておいたマナポーションを一気に飲み干した


「分かってるわね?」


「ええ・・・残念だけど今は彼に縋るしかない・・・たとえゲイルを見殺しにしても!」


「ええ・・・望みは薄いけど・・・」


そう言って2人は未だ意識の戻らないゲイルを背に駆け出した



立ち上がろうとするロウニールの元に



ドラゴニュートはいつの間にか背後にいたロウニールにゆっくりと近付く


もはや勝利を確信してか先程までの憤怒の表情はなりを潜めほくそ笑みながら一歩一歩踏み出す


「仲間を見捨てそれでもなお届かぬ今の気持ちはどうだ?」


「・・・最悪だね・・・」


「そうか・・・もし慈悲を乞うなら聞いてやらぬでもない・・・痛みなくあの世に送ってやろう」


「そりゃありがたいね・・・出来るなら少し時間をくれないか?」


「やると思うか?」


「僕を恐れてなければ」


「恐れる?我にほんの僅かな傷さえ付けれぬ貴様を我が?・・・クックック・・・片腹痛いわ・・・もうよい・・・貴様の戯言に付き合うのも終いだ・・・死してあの世で後悔するといい・・・我に楯突いた自分の愚かさを、な!」


壁に寄り掛かりやっとの思いで立ったロウニールにドラゴニュートの巨大な爪が迫り来る


ロウニールは歯を食いしばり動こうとするが体が思うように動かない


もはやこれまでかと目を閉じると次の瞬間肉を切り裂く音ではなく激しい金属音が耳に響いた


「・・・ジル・・・さん?」


「少しの間ジルが防ぐ!アンタは回復に専念して!」


「・・・ジーニャさん・・・」


ロウニールに辿り着いた2人・・・ジルはマナポーションで回復した分と残ったマナを振り絞りドラゴニュートの攻撃を防ぐ


そしてジーニャはロウニールの側に立ち手をかざすとヒールを唱える


「ジルでもそう長くは保てないわ!・・・それで・・・勝てそう?」


「・・・無理です・・・」


「ちょっと!」


「・・・今の僕には無理です・・・後半年くらい死に物狂いで訓練して何とか・・・けど・・・」


「けど?」


「実力不足を経験で補えば何とか・・・」


「経験って!これからどうやって経験を積むって言うのよ!」


「・・・経験不足を補うのは・・・実際に経験するかもしくは・・・()()()()()()()です・・・」


「はあ!?一体誰に聞くって言うの!?私もジルも・・・ゲイルだって経験した事ないわよ!」


「・・・ドラゴニュートじゃなくても・・・ドラゴンやそれと同じような硬い魔物を倒した経験が・・・あの人なら・・・」


ロウニールはジーニャの回復を受けながら懐からひとつの石を取り出す


通信道具・・・ジーニャは一目見てそれだと気付いたがロウニールがこの状況で何をしようとしているのか皆目見当もつかなかった


「・・・これで出なかったら終わりだな・・・」


そう呟きロウニールは石にマナを流す


すると・・・


〘・・・何か用かな?〙


「良かった・・・寝てたらどうしようかと思ったよ」


〘息遣いが荒いな・・・もしかして火急の用事か?〙


「ああ・・・アンタなら答えを知ってるかもと思ってね・・・どうやったらドラゴンの硬い鱗をぶち抜けるか・・・教えてくれないか?・・・レオン──────」

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