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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
139/856

136階 カルオスの夜

「対ドラゴニュートパーティーの門出に乾杯だ!」


上機嫌なゲイルさんの音頭でカルオスのお店での食事が始まった


「にしてもやべえな・・・どんな攻撃もいなすタンカーに回復と攻撃魔法が使える賢者・・・それに加えて三属性使える魔法剣士とくりゃあ俺なんて要らねえんじゃねえか?」


「本当びっくり・・・威力も高いし・・・魔法剣士っていう剣に魔法を纏って戦うだけだと思ったけど違うのね」


「近距離も遠距離も可能・・・ただただ強いな」


ううっ・・・いきなりの褒め殺し・・・ローグの時とは違って仮面がないからどんな顔をすればいいのやら・・・


「とりあえず明日は休んで明後日から本格的に進もうや。必要なもんは明日俺が買っとくから水と食料以外で欲しいもんがあったら先に言っといてくれ」


「そんな・・・悪いですよ。僕も買い物に付き合います」


「気にすんな。今日何もしてねえからな・・・それくらいやらせてくれ」


「でも・・・」


「いいじゃない・・・ゲイル、私は少し大きめのテントが欲しいな」


「・・・私は乾物系を多めに」


ジーニャさんとジルさんは普通に頼んでいるけどいいのか?一応ゲイルさんは一番の年長者だし・・・


「おう!ロウニールは何か要るもんあるか?一応順調に行けば一日で21階まで行けると思うがダンジョンで一夜を過ごす可能性もある。それを考えて欲しいもんあったら言ってくれ」


ダンジョンで一夜か・・・もっと奥に行くと何日もダンジョンで過ごしたりするらしいけど経験ないな・・・何か要る物ってあるのかな?


「日持ちのする食料ってあんまり美味しくないのよね・・・ジルは元々乾物系が好きだから良いけど・・・干し肉とか硬いし独特の匂いするし・・・」


「まっ、その辺は仕方ないわな。前にダンジョンの中で調理しようと調理道具と食材を持ってった事もあるがかさばって仕方ねえ・・・やっぱり調理不要のやつが一番手間がなくていい。慣れりゃ食えねえことはねえし、ダンジョンから帰った時に食う飯の事を考えたら我慢出来るってなもんよ」


ゲートを使えば持って行けなくもないけど・・・そもそもゲートで家に帰ればいいだけだし・・・


「そう言えばロウニールはダンジョンで一晩過ごした事はあるのか?」


「いえ・・・11階まで降りた時も一日でかからなかったですし・・・ないですね」


「そっか・・・じゃあ要るもんも分からねえわな・・・まあ、明後日行ってみて必要に感じたら言ってくれ」


「はい」


そんな話をしている内に注文した料理が次々に運ばれてくる


注文は全部ゲイルさんにお任せしたけど・・・4人で食べるには少し量が多いような・・・


「いっぱい食ってくれ。今日は俺の奢りだ──────」





昼を抜いたせいか多いと思っていた料理はあっという間にたいらげてしまった


その後はお酒を飲みながら今後の事を話したり世間話をしたり・・・みんな酔いのせいか良く口が回るようになっていた



「・・・もったいねえ・・・冒険者になりゃ一財産築けるもんを・・・」


「そうね・・・魔法剣士ならソロでもパーティーでも・・・どこでも引く手数多って感じよね」


「いやぁ・・・門番の仕事が性に合っているっていうか・・・僕なんかよりジーニャさんとジルさんの方が誘いが多いのでは?」


タンカーとヒーラーはなり手が少ないのもありどこのギルドでも数が少ないらしい。特にジーニャさんはヒーラーでありながら魔法も使えるからそれこそ・・・


「んー、確かにねぇ・・・まあ色々あるのよ・・・色々・・・ほら、この美貌じゃない?目立つ上に実力も兼ね備えていたらそりゃあ誘いは多いわ・・・てなわけでしつこい奴らに追われているからここに逃げて来たって感じなの」


び、美貌はともかく・・・そうなのか・・・しつこい勧誘に嫌気がさして2人でカルオスに逃げて来て・・・


「じゃあこのままカルオスに?」


「そうね・・・何も無ければ、ね」


他の街まで追って来るなんて事あるのかな?・・・まあでも2人の実力を目の当たりにしたらそれくらいしてもおかしくないかも・・・


「ま、まあ暗い話はその辺にして今後の為に楽しく飲もうじゃねえか!きっと全て上手く行くさ!ドラゴニュートさえ倒せればな!」


「そうね!今日はゲイルの奢りだしいっぱい飲まないと・・・ほら!ジル!全然お酒が進んでないよ!」


しんみりとした空気を嫌ってゲイルさんが無理矢理盛り上げようとするとジーニャさんもそれに乗っかりジルさんにお酒を注ぐ




なんだかんだでその後は楽しいお酒の時間・・・まあ僕は飲んでないけど・・・を過ごす事が出来た。見た目お酒に強そうなゲイルさんが先に酔い潰れ、ガバガバ飲んでいたジーニャさんとジルさんは酔い潰れたゲイルさんを僕に押し付けて帰ってしまった


店も終わりの時間ということで足がおぼつかないゲイルさんの肩を担いで外に出た


「ゲイルさん・・・家まで送りますけど場所はどこですか?」


「ん・・・あ?・・・とりあえず歩け・・・こっちだ」


そう言って歩き出すゲイルさんを支えるが・・・重い・・・それに本当に合ってるのか?どんどん人気のない方に向かっている気が・・・


「・・・こっちだ・・・ん?・・・いや、こっちか・・・」


不安だ・・・街の中で迷子になるかも・・・


「着いたぞ・・・ここだ」


着いた?良かった・・・ってここは・・・


「ゲイルさん・・・墓地に住んでいるんですか?」


「んな訳ねえだろ!・・・ふぅ・・・ここに来れば酔いが覚めるからな・・・立ち寄っただけだ」


「・・・ゲイルさん・・・」


遺体なき墓標・・・けれどゲイルさんの墓標を見る目はそこに名が書かれている人達が居るように優しく悲しい


「・・・信じられねえかも知れねえけど・・・昔はこの街ももっと活気があったんだ・・・Sランクはさすがにいなかったけどよ・・・Aランク冒険者がゴロゴロいてな・・・毎日冒険者ギルドは大盛り上がり・・・よく親父の後についてってその光景を見たもんだ」


「ドラゴニュートを倒せば・・・戻りますかね?」


「さあな・・・居なくなった連中が何を考えて出て行ったか分からねえ・・・けど、ドラゴニュートがひとつの要因だってのは分かってる・・・倒せば何かが変わるはず・・・その一歩を踏み出す為に絶対勝たなきゃなんねえ・・・たとえここで眠る事になってもな」


「・・・予行練習で寝ておきますか?今から本当の家に送るの面倒なんで」


「はっ、言うじゃねえか・・・本番までとっておくよ・・・とりあえず目が覚めたから1人で帰れる・・・とっとと帰って明日はゆっくり休め」


「ゲイルさんは?」


「俺はしばらく昔話でもしとくよ・・・これから仇討ちに行ってくるって報告もしなきゃならねえしな──────」




ゲイルさんと別れた僕はカルオスの宿屋に向けて歩いていた


歩きながら今回のドラゴニュート討伐に少し違和感を覚えている自分に気付く


不安から来るものなのかそれとも大事な事を忘れているのか・・・違和感の正体が分からずに悩んでいるとあっという間に宿屋に着いてしまった


連泊すると伝えてあるのでそのまま借りている部屋に戻り椅子に座り再び考え始めた


何か見落としている事があるのかなぁ?


ゲイルさんは強いし新しく加わった2人の実力も十分・・・僕もドラゴニュートとは何度も戦ってきたし問題はないはずなのに・・・


《ロウ・・・いいの?》


「ん?何が?」


《アナタが言ったんでしょ?毎日報告しろって》


報告?・・・・・・あっ


「忘れてた・・・もう寝てるかな?」


懐から取り出したのは通信道具である石・・・ラルの父親から毎日連絡が来るのをすっかり忘れてた


石は微かに光っている事から向こうでマナを流したのは少し前だと分かった


直近ならもう少し光ってるはずだし結構時間が経っていれば消えているはず・・・光の加減でどれくらい前か分かるのは便利だけど正確にどれくらい前か分かればもっと良いのに・・・


とりあえず寝ていたら明日謝ろうと石を握りマナを流すと思いの外すぐに返事が返ってきた


〘遅くにすみません!〙


・・・なぜそっちが謝る・・・


「・・・いや、すまない。少し用事があってな・・・まだ寝ていなかったか?」


〘はい!ラルのやつは出ないので心配して今の今まで起きてたのですが・・・あっ、別にローグ様が弱いという訳ではなく・・・〙


「ローグでいいと言っているだろ?それと心配してくれて嬉しく思うことはあっても不快に思うことはない・・・朝起きたらラルに心配してくれてありがとうと伝えておいてくれ」


〘は、はい!〙


「では簡単でいいので今日の報告を聞こうか──────」



どうやらバデットはしっかりやっているらしい


そりゃあそうか・・・もしサボればダンジョンブレイクが起きると分かっているのだから・・・


「報告御苦労。しばらく忙しくなるので報告は私から連絡した時でいい。それと・・・いや、何でもない・・・遅くに悪かった」


〘?・・・いえ、とんでもありません。では連絡が来た時にご報告致します〙


「ああ、よろしく頼む」


セシーヌの事を言おうか迷ったけどやめといた


もしセシーヌが行かなかったらぬか喜びさせるだけだし・・・彼女は多分行こうとしてくれるだろうけどあの侍女が邪魔する可能性があるし・・・


エミリだっけ・・・彼女はなぜ僕を殺そうとしたのだろう・・・聖女の相手に相応しくないから?でもそもそも僕はセシーヌとは・・・


・・・そう言えばサラさんにあれから連絡とってなかったな・・・変わりないと思うけど家の事も気になるしちょっと連絡してみるか・・・


懐からもうひとつ石を取りだしマナを流す


いつもならすぐに出るサラさんなのに今日はえらく時間がかかっている・・・もしかしたら寝ているのかな?


〘・・・ローグ?〙


「すまない、寝ていたか?」


ようやく出たサラさん・・・でも少し様子がおかしい・・・何と言うか・・・声がいつもと違うような・・・


〘い、いえ・・・どうしたの?〙


「そちらは変わりないかと思ってな」


〘・・・まだムルタナに?〙


「いや、ムルタナは離れて今は別の場所に居る。しばらくは戻れそうにない」


〘・・・そう・・・〙


んん?やっぱりおかしいぞ?何かあったのかな?でもムルタナで話した時は普通だったし・・・あれ?そもそも話したっけ?


「もし何かあれば連絡してくれ。すぐには戻れないがなるべく早く戻る」


〘・・・ええ、その時は・・・〙



なんだか拍子抜けと言うか何と言うか・・・いつもなら用事がなくてもあれやこれやで話を続けようとするのにあっさりと通信を終えてしまった


何かしてたのかなぁ?


《・・・男ね》


「は!?男って・・・どういう意味??」


《そのままの意味よ。私だって人間の美醜の区別くらいつくわ・・・アナタの知り合いの中でサラとあの聖女と呼ばれている人間は他の女性より容姿が優れている・・・人間の男は容姿が優れている方が良いのでしょ?なら言い寄って来る男の1人や2人居てもおかしくないでしょ?》


「まあそうだけど・・・でも・・・」


《なに?ローグに惚れているから別の男に惚れる訳ないって言いたいの?正体不明の仮面の男に?》


うっ・・・そう言われると・・・


《まあアナタはペギーと結ばれたいと思ってるのだからサラがどこの誰とくっつこうが問題ないわよね?・・・それともペギーだけじゃなくサラとも結ばれたいと思っているの?》


「違っ・・・そういう訳じゃないけど・・・」


なんだか少しモヤモヤするだけで・・・別にサラさんとなんて考えてないし・・・


《まっ、それならいいけどね。あっちにフラフラこっちにフラフラと目移りしていると誰も残らないわよ?せいぜい気を付ける事ね》


フラフラなんてしてないし・・・そうさ僕はもしサラさんが『ロウニール、この人が私の夫だ』なんて言ってきても大丈夫・・・だよな?──────

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