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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
120/856

117階 懸念

「ごめんなさい!調子に乗りました!」


「申し訳ございません」


目が覚めると脱衣所でタオルを掛けられ寝かされていた


どうやら私はまたのぼせてしまったようだ


「・・・いや・・・大丈夫だ」


起き上がるとタオルがはだけ、まだ裸だった事に気付く


湯船からマホとヒーラで運んでくれたのか


「・・・それで?調子に乗ったと言うのは?」


「あーえっと・・・もういいよね?ヒーラ」


「そうですね・・・多分()()()()()では厳しいかと・・・」


私のやり方?


「どういう意味だ?」


「その・・・前にサラさんが言ってましたよね?求婚するとか・・・その・・・性奴隷とか・・・」


「あ、あの時は・・・その・・・」


「それから何か進展ありましたか?」


・・・ない


いや、厳密に言うとありそうだった・・・ケンが邪魔さえしなければ・・・いや、それも言い訳か・・・あの後私は何をした?2人っきりになる機会があっても特に何もせず・・・


「せっかくお似合いの2人なのですから上手くいって欲しいと思ってます。けどなかなか進展しないので・・・」


「そうか・・・気を遣わせてしまっていたか・・・うん?・・・ヒーラ・・・君はローグを・・・」


「好きでもなんでもありませんよ?」


「え?」


「そう見えるように仕向けていただけです」


なん・・・だと・・・


「恋敵が出来ると焦り出せなかった一歩が出せるようになります・・・私はその一歩を期待してローグさんに気があるようなフリをしていただけです」


「・・・そうだったのか・・・」


「だから私は濡れてません」


「濡れっ・・・あー、少し聞いてもいいか?その濡れるとはどういう事なのだ?」


「そうですね・・・長くなりそうなので場所を変えませんか?さすがに脱衣所で裸のまま話す内容でもないので・・・」


「あ、ああ・・・分かった──────」




その後、すぐに着替え外に出る


ちょうど昼時なのでご飯でもと誘うが店の中で話す内容でもないと言われ、露店で軽く飲み物と軽食を買い人気のない空き地に向かった


そこで食べながら衝撃的な言葉を耳にする


「・・・準備・・・だと?」


「ええ・・・男性を受け入れる準備です。本来なら直接刺激したりするのですがサラさんは久しぶりにローグさんに会い、そしてあの戦いを見て準備が完了したのです・・・ローグさんを受け入れる準備が」


「・・・」


「もうそうなれば後はローグさんの・・・」


「いや、それ以上はもういい!・・・そうか・・・そういうものなのか・・・」


止めなくてはヒーラはどこまで話していたか分からないな・・・一応()()()()()は知識として知ってはいる・・・男のアレを・・・


「サラさん・・・見られましたよね?」


「・・・な、何をだ!?」


「牢屋に閉じ込められていた時・・・拘束されてその後・・・」


うっ・・・ヒーラが何を言わんとしているのか理解して顔が熱くなる


そう・・・あの時私は拘束され全裸で醜態を晒していた。牢屋の中から見たらもう・・・丸出しだ


あの幹部候補と言われていた男達に見られたのは別に構わない・・・だがあの時・・・オードに扮していたローグに・・・


「・・・多分、な」


「まあ見たと思います。ローグさんも男性・・・そこに女性の・・・」


「皆まで言うな!見られたから何だと言うのだ!」


「チャンスなんですよ」


「なに?」


「普段は仮面に隠れて何をお考えになっているかイマイチ分からないローグさん・・・ですが今!サラさんのあられもない姿を見て少なからず意識しているはずです!それをチャンスと呼ばず何がチャンスでしょうか!?」


「・・・そうなのか?」


「そうなのです!今が攻勢に出るチャンス・・・この機を逃せばまたいつもの組合長と組合長補佐に戻ってしまいます!」


「・・・」


熱く語るヒーラに気圧されたのか何も言い返せない


組合長と組合長補佐・・・これまで通り事務的な関係・・・私が望むローグとの関係とは程遠い・・・


「それで更に私を追い込み関係を進展させようとした・・・か。悪いな気を遣わせてしまって」


「いえ・・・趣味の一環ですので」


「趣味?」


「アハハハハッ、す、すみませんこの子ちょっと変わってて・・・『くっつきそうでくっつかないカップルをくっつけて喜びを感じる』病気なんです」


なんだその病気は


「病気とはなんですマホ・・・幸せそうなカップルを見るとこちらまで幸せになれるじゃないですか・・・2人の周りがキラキラと輝いていて見るだけで・・・そう眼福とはあの事を言うのでしょう」


「まあ言いたい事は分かるけど・・・ハア・・・」


「本当はもう少し暖かい目で見ておくつもりでした。ジワジワと自然にくっつくように仕向けて・・・でも少し事情があって今回のような強引な手段を取ってしまいました・・・申し訳ありません」


「・・・なんだか悪巧みにしか聞こえないのだが・・・まあいい。で?その事情とはなんだ?」


「・・・『タートル』・・・」


「!・・・『タートル』がどうした?」


「もしかしたら・・・私達は今回の件より以前に関わっていたのかも知れないのです・・・その『タートル』と──────」





「・・・事情は把握した・・・まあかなり回りくどい説明だったが・・・」


ケン達のパーティーに居たシルというタンカー・・・彼女がもしかしたら『タートル』のメンバーかもしれないという話・・・その話をするのにケンとシルの馴れ初めまで聞かされるとは・・・


だが私がガゾスも『タートル』が関わっていたのではと疑っているのと同じでヒーラ達もそれを疑っている


確かに『タートル』は強き者を求めている・・・今回はローグ・・・なのでケン達の時にシルを求めたとしてもおかしくは無い・・・もしかしたらシルは脅されてケン達の元から去ったのかも知れないな・・・例えば



『こちら側に付かなければ今居るパーティーメンバーを殺す』



そう脅されれば私でも黙って抜けるかも知れない


相手はあの『タートル』・・・パーティーメンバーに話せば全滅もありえる・・・最善策・・・いや、選択肢はひとつしかないだろうな


「それで・・・まだ確証はないのだろう?どうするつもりだ?」


「ケンが気付けば恐らくシルを探し始めます・・・自ら去って行ったのではなく別の理由なら・・・ケンは躊躇しないでしょう」


「それと私の件がどう関係しているのだ?」


「はい・・・その・・・さっさと次のターゲットに移行したくて・・・」


「次のターゲット?」


「はい。マホとケン・・・2人をくっつくようかと」


「なに?」


「はあ!?アンタそんなつもりだったの!?私にはサラさんの件を早く片付けないとってだけ言ってたのに・・・」


「マホはケンの事が好きでしょ?ケンも少なからずマホの事を・・・それならくっついた方がいい・・・ケンが暴走しない為にも」


「んぐっ・・・アンタねえ・・・」


「これはシルの為にも言っています。まだ想像の範疇でしかありませんが、もしシルが私達の為を思ってした行動なら・・・探す事はその行為を無駄にする事になりますので・・・」


「けど・・・それってシルを犠牲に・・・」


「なら探しますか?見つけられたとして取り戻せますか?あの『タートル』から」


「・・・」


まず無理だろうな


私とローグが協力したとしても


まだ『タートル』の全貌も分かっていない・・・少なくとも今の戦力で『タートル』に挑むのは無謀・・・死に急ぐ行為でしかない


「全て仮の話・・・ですが『タートル』のやり方を知ったケンはいずれ私達と同じ考えに辿り着く可能性があります・・・その時に止められるのは・・・マホ・・・貴女だけです」


「あのねえ・・・」


「私だって辛いのです・・・シルも友達ですし出来ればまた・・・ですがもし本当に『タートル』の仕業だったら・・・そう考えると・・・」


「ヒーラ・・・」


感情的にならずに冷静に判断する者とは損な役割だな・・・正しい選択が時には冷徹に見える



『タートル』とはパンドラの箱


たとえ奥底に希望があったとしても開ければ破滅が待っている


それでもケンの性格からして開けてしまうだろう・・・私もケンと同じ立場なら・・・開けてしまうかもしれない


ヒーラはそれを必死に食い止めようとしている・・・やり方は・・・まあ褒められたものではないが・・・


「状況は理解した。なのでケンがもし『タートル』を疑って動こうとするなら全力で止めよう・・・だから妙な事はするな。私は・・・しばらくこのままでいい」


「準備万端なのにですか?」


「準備万端言うな。・・・確かに恋仲になりたいとは常々思っている・・・だがこの距離感もなかなかどうして心地良いと思う事もある。君の術中にハマり焦った時もあったが、な」


「・・・チッ」


えっ!?今舌打ちした!?・・・あのヒーラが!?


「す、すみませんすみません!この子こと恋愛の事になるとかなり毒を吐くので・・・」


必死に頭を下げるマホを見て今の舌打ちが聞き間違えではなかったことを知る・・・変わり過ぎだろ・・・



ふぅ・・・それにしてもヒーラはローグの事を・・・そうか・・・なんだか少し安心したというか・・・


しばらくは心休まる日が来るような気がする・・・多分──────




この時、私は知らなかった


ある嵐が迫っている事に・・・



「おう!ディーン!今日もやるぞ!」


「・・・またですか・・・昨日も・・・」


「ごちゃごちゃうるせえ!ダンジョンも飽きたしおめぇくらいしか遊べる奴はいねえんだよ!」


「まさか旅立つまで続ける気では・・・」


「仕方ねえだろ?1年先まで予約が埋まっててそれまで動けねえって言うんだからよ・・・まあジジイのしょぼくれ具合は痛快だったが・・・そこから準備やら何やらで・・・気が遠くなりそうだぜ」


「何も合わせて行く必要ないのでは?向こうにはケインも居ますし・・・」


「道中の心配してるんだろうよ・・・何せ国の宝・・・だからな」


「その宝と呼ばれるような方が行く必要・・・ありますか?」


「知らねえよ・・・よっぽど大事なんだろ・・・その布教活動ってやつが、よ──────」

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