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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
115/856

112階 副長

「・・・んで、処分は『ブラックパンサー』の解散のみだ・・・捜査中だから今のところって話だがどうだか・・・って聞いてるのかサラ?」


「・・・聞いています。証拠がないので・・・なんでしたっけ?」


「おい・・・ハア・・・しっかりしろよ。『ブラックパンサー』が解散になったら宙ぶらりの冒険者が増える・・・その中には『ダンジョンナイト』を抜けて戻って来づらい連中も居るだろう・・・全部取り込むんだろ?」


「無理に増やさなくてもいいかと・・・面倒なので」


「うおい!」


そもそも私はローグの補佐・・・つまりローグが居なければただの補佐・・・組合に関して何かをする義理はない


ギルド長執務室で兵士の調査結果を聞いていたが正直どうでもいい・・・私には関係の無い事だ


「・・・サラ・・・そんなに腑抜けてて良いのか?ローグが戻って来た時にそんな姿を見たら・・・」


「腑抜けてません!今回痛感したのは組合の管理がしっかり出来ていなかったこと!もし管理出来ていれば防げていたかもしれません・・・なので闇雲に組合員を増やすのはどうかと思っていただけです!」


「今さっき面倒って言ってたじゃねえか・・・まあいい・・・もしサラが手一杯なら組合の副長でも選んで管理させたらどうだ?お前さんはあくまでローグの補佐なんだろ?」


副長・・・それもそうだな。私はあくまでローグとの連絡役・・・ギルドの仕事もあるし今以上の働きは難しい。誰か副長に選出して手伝ってもらえば・・・


「ケンなんてどうだ?お前さんに懐いていらし組合の創設時から居るだろ?」


「いえ・・・彼には少し思慮不足な所があるので・・・ただ他の冒険者と仲良くなる能力には長けているのでそちらで手伝ってもらえればと思っています」


「そうか・・・ケンのパーティーメンバーは?」


・・・マホはしっかりしているがケンの手綱を握ってもらいたいしヒーラはたまに何を考えているか分からないし・・・スカットは・・・


「少し副長の立場は厳しいかと・・・」


「そう簡単には見つからんか・・・サラの理想の副長像はどんなタイプだ?」


「そうですね・・・ローグや私不在の時に代わりが出来る冷静な判断が出来るタイプ・・・計算高く全体を見渡せて私達が気付かない事に気付くような人が理想ですね」


「理想高いな・・・そんなんじゃ見つからんぞ?お前さん・・・まさか彼氏にもそんな理想を・・・」


「お黙り」


「おだっ・・・す、すまん・・・とりあえず副長の事は考えといてくれ。ローグが不在の今、それが急務だろう」


「・・・そうですね・・・少し考えてみます」



部屋を出てその足で1階へと向かう


それなりに組合員と接して来たが該当する者など皆無・・・ならばとりあえず誰かにやらせてみるのも手か?


立場が人を育てるとも言うし今は未熟でもいずれは成長し・・・


「あ、サラさんおはようございます!」


「ジケット・・・おはよう。ロウニールは見つかったか?」


1階に降りるとジケット達が居た


行方知れずのロウニールを探していると聞いているがどうやら状況は芳しくないようだな・・・尋ねると首を振り肩をすくめる


「どこに行ったんだか・・・サラさんも何も聞いてないのですよね?」


「ああ・・・私はたまに訓練に連れて行くくらいだったからな。ペギーに言われて初めて居ない事に気付いたくらいだ。住んでいる家も知らないし・・・」


「実家には数年戻ってないらしいですからね・・・あまり仲が良くないのか『そうなの?知らないわ』で終わりですよ」


「そうか・・・」


ロウニールも困った奴だ。友に心配かけさせて・・・そうだ・・・ジケット達はこの街の出身だったな・・・


「お前達今時間はあるか?」


「え?まあ特に予定は・・・」


「少し話さないか?悪い話ではないから安心しろ」




ギルド内のテーブルに落ち着くと4人に組合の副長になる人材を探している事を告げた


まだまだ駆け出しの冒険者感は拭えないがケン達よりは適しているように見える・・・あの4人ももう少し落ち着いてくれたら・・・


「俺らじゃ荷が重くないですか?組合の中にはベテランとは言えないまでも中堅の冒険者が居るでしょう?」


「中堅どころはほとんど『ブラックパンサー』に一度加入していてな・・・もちろん戻って来た者もいるがさすがに一度抜けた者をはいそうですかと副長につかせるのは躊躇われる。組合に残っていたのはお前達のような冒険者になってまだ日が浅い者が多い・・・その中で比較的マシなのはジケット達と思ってな」


「比較的マシ・・・嬉しいやら何やら・・・微妙な評価ですね」


「仕方あるまい・・・本来は最低でもCランク以上の冒険者が望ましいからな。たまにランクが下の者の意見を聞かん輩も居る・・・それを考えると高ランクがどうしても必要となる」


「まあそうですね・・・俺もGランクにあれこれ言われたら少しムカッて来ますもん」


「そう考えるとジケットは無理よね・・・結構すぐ頭に血が上るし」


「うむ」


「それを言ったらハーニアもじゃない?似た者夫婦って感じで・・・」


「誰が似た者夫婦だ!」「何よ似た者夫婦って!」


図星を突かれたのか2人は顔を真っ赤にしてエリンに抗議する


エリンの言う通り確かに『似た者夫婦』だな・・・うん、面白いかもしれない


「エリン・・・副長をやってみる気はないか?」


「えっ・・・私・・・ですか?」


このパーティーの要はエリンのような気がする


リーダーはジケットだがケンと似て少し直情的な気がする。ハーニアも


マグは口数が少なくよく分からないが少々消極的なイメージだ


その3人が上手く機能しているのは冷静に状況判断が出来るエリンがいるからだろう


「嫌になったら辞めても構わない。やるだけやってみないか?」


「・・・それって何だかんだ言って続けさせられるパターンでは・・・」


「そんな事はない。それにもし引き受けてくれたらランクを上げる手伝いもしよう・・・試しに引き受けるにはかなり好条件だと思うが?」


Dランクまではギルド長決済で何とかなるしな。もちろんそれなりの実績は上げてもらう事になるがDランクに上がる為の魔核なら私がついて行けばすぐにでも溜まるだろう


それに実戦を積めば実力も上がるしジケット達にはかなりのメリットなはず・・・その分エリンには働いてもらうことになるが・・・


「やりましょう!こんな娘で良ければ是非!」


「うおい!ジケット!」


「エリン・・・貴女の無駄な頭脳が役に立つ時が来たわ!」


「無駄って・・・無駄って・・・」


「うむ」


「マグまで・・・何よアンタ達の期待を込めた目は・・・まるで断ったら私が悪者みたいじゃん・・・・・・あーもう分かったよ!出来ないと分かったらすぐに辞めるからね!」




こうして半ばやけくそ気味にエリンは副長の座を引き受けてくれようやく私の肩の荷がひとつ下りた


元々副長という立場が性に合っているのか思った以上に活躍してくれた


それにケン達・・・積極的に『ブラックパンサー』に加入した者達を再び『ダンジョンナイト』に戻って来るよう説得し、戻って来てくれた冒険者と残ってくれていた冒険者達との仲も取り持ってくれてスムーズに『ダンジョンナイト』は元の組合へと戻る事が出来た


副長に組合員・・・全てが順調に進んでいる


後は・・・ローグ・・・貴方が戻って来たら・・・



「・・・サラ姐さん?おーい!聞こえてるッスか?」


「・・・ハア・・・なんだ?」


以前に戻ったギルドの雰囲気を眺めながら物思いにふけているとケンが私に話しかけてきた


「『なんだ?』じゃないッスよ・・・さっきから話しかけてるのに上の空で・・・。っとそれどころじゃなかったッス!ダンジョンで遭遇したんッスよ!」


「・・・誰と?」


「シークス達ッス」


「・・・そうか。無事だということは約束は守っているみたいだな」


「はい・・・けどダンジョンは・・・」


そう・・・ダンジョンで死んでしまった者は目撃者が居ない限り魔物に殺されたとされる。たとえそれが明らかに人為的であったとしてもだ。シークスがケン達を見逃したのはローグの知り合いだから・・・と言う見方もある。しかし・・・


「奴ら・・・『ダンジョンキラー』はパーティー名から分かる通りダンジョンの破壊を目的とした奴らだ。本来ならダンジョンブレイカーと呼ばれるはずだが何故かキラーと呼ばれているが・・・まあそこはどうでもいい。つまり奴らは快楽殺人者ではなく目的を持ったパーティー・・・約束を破ってまで冒険者を攻撃する事はないだろう」


「・・・そうならいいんッスけど・・・俺らが大丈夫でもサラ姐さんは・・・」


「私はいつからダンジョンになった?」


「あ、いえ・・・もしかしたらローグさんだけじゃなくてサラ姐さんも狙って・・・」


「私もケン達と同じだよ・・・奴らにとって私はローグを誘き寄せるエサになりうるからこそ価値がある・・・既にローグと交える事は確定しているのだ・・・それを不意にするような真似はすまい」


奴ら・・・いや、シークスの中で私はいつでも御せると思われているだろうからな。現に私は手も足も出なかった・・・あれから私も鍛えたとはいえシークスも同じように鍛えていれば差は縮まってはないだろう・・・だが


「それに私にはローグから貰った武具がある・・・万が一襲って来てもそう簡単に遅れは取らんよ」


風牙龍扇にこの服・・・差を縮めるには十分な武具がある。後は実際に対峙した時に私が戦えるかどうかだが・・・


トラウマは消えた・・・そう思うが1体1で会った時に果たしてあの記憶が蘇る事がないのか定かではない。あの時はローグが居たから・・・そう考えられなくもないしな


「後1週間ッスよね・・・勝てるんッスかね・・・あのシークスに」


「勝てる・・・と断言出来るほどシークスは弱くない。が、ローグが負ける姿など想像がつかない・・・きっと勝つ・・・負ける訳がない」


そう言葉にするが実際シークスは強い


不安要素があるとすれば私は2人の強さを正確に読めてないこと・・・ローグの強さの底は私などでは測れるはずもないがシークスもまた・・・



けれど私は何故かローグが勝つと確信している


彼が負けるかも知れないのに挑むとは思えないから


そして私が彼を・・・信じているから──────





《後1週間よ?どこまで拡張する気?》


「このまま100階まで・・・は時間的に無理か・・・そうだね・・・80階まで行ってみようか」


《少しくらい寝ないと戦う前に死ぬわよ?》


「・・・え?何か言った?」


《どんだけ自分を追い込んでるのよ・・・これ公開すれば誰にも抜けないスピードね・・・ダンジョン拡張最短記録樹立よ》


「後は魔物を・・・上級を何体か・・・僕の相手をするのは・・・」


《ハア・・・相手が不憫ね・・・どこまで強くなるか私にも見当がつかないわ・・・今ならあの人間にも・・・》


「ダンコ・・・人型で今の僕と同じくらいの強さの魔物って何になる?」


《今のロウと?・・・あまりオススメしないけど・・・今のアナタを超えたいならうってつけの魔物がいるわ。・・・強くもあり弱くもある魔物・・・》


「え?強くもあり弱くもって・・・」


《自分の目で確かめてみるといいわ。今のアナタなら創る事が出来るのだし・・・ただしドラゴニュートと戦った時みたいにいつでも逃げれるようにしといてね。上級魔物でもかなり特殊な魔物で中位だけど下手したら全ての魔物を凌駕する可能性すらあるから》


「意味が分からない・・・何だよその魔物・・・」


《まっ百聞は一見にしかずって言うじゃない?言葉で説明するより実際経験してみるといいわ。もう一度言うけど決して無茶はしない事・・・敵わないと思ったら必ず逃げる事・・・いいわね?》


「わ、分かった・・・で、その魔物っていうのは?」


《その魔物の名は『シャドウ』よ──────》

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