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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
104/856

101階 タートル

「『タートル』?」


朝から何度も通信道具が光ってたけど仕事中なので取れずにいた


仕事が終わり司令室に戻ってからサラさんに連絡すると闇組合として名高い『タートル』という組合がエモーンズに来てるかも知れないと言う


〘ええ。闇組合の代表格みたいな組合。他の街で色々と悪事を働いては別の街に・・・〙


「悪事とはどんな?」


〘色々・・・冒険者を殺したりするのは当たり前・・・その家族にすら手を掛けているという噂も・・・〙


「捕まえられないのか?」


〘手口が巧妙なの。わざとらしく『タートル』って名前は周りに知らしめるのに構成員は分からずじまい・・・移動を繰り返しているから人数はそんなに多くはないと思うけど・・・〙


「ふむ・・・しかし冒険者を殺すのも理解出来ないがその家族となるともっと理解出来ない・・・今の話だとその理由すら不明ってところか」


〘ええ・・・動機も分からないから防げずじまい・・・お金目当てだったりすればその線で追えるだろうけど・・・でももしかしたら・・・それが判明するかもしれない〙


「と言うと?」


〘他の街に『タートル』が現れる前にこの街で起きている現象が起きていたらしいの。新しい組合が設立されて冒険者の死者が増えるという現象が〙


「死者が増えている?エモーンズで?」


そんなはずは・・・助けられる冒険者は助けてるはずだけど・・・


〘ギルド長によると1日に1人もしくは1パーティーは亡くなっている計算とか・・・〙


はあ!?それならとっくに僕の耳に・・・もしかして・・・


「死んだ冒険者はボスに挑んで?」


〘そこまでは・・・〙


ボスに挑んで死んでいったのならありえる・・・ボス部屋は基本入ったらボスかパーティーが全滅するまで出られない。そしてそれは外部からも・・・だからボス部屋でピンチになっても僕は助けに行けないから気付いていたとしてもダンコやスラミは僕に言わないはず


ましてやそこで死んだとしても言う必要があるかっていったら・・・ないよな


言ったところでどうなるって話だし、そもそもダンコもスラミも魔物側・・・人間がいくら死のうが気にする訳もない。まあダンコはマナが減ると思うかもしれないがその程度


「じゃあ組合の人数もかなり減っているのか?」


〘・・・『ダンジョンナイト』は特に・・・でも『ブラックパンサー』は・・・〙


「つまり『ブラックパンサー』が原因って訳か。それで『タートル』というのとどう繋がる?」


〘もし・・・死者が増えたのが・・・『ブラックパンサー』が組合員をふるいにかけた結果だとしたら?〙


ふるいにかける・・・必要な冒険者だけを残し、他を・・・


〘正直疑わしいだけで何の確証もないの。ケン達はそんな話は知らなかったし、ただ無謀な冒険者が増えただけの可能性もある。それに仮に組合が指示したところで違法ではないから・・・でも『タートル』が現れた街の話だと、新しく出来た組合が冒険者を募り、そして死者が増え、その後で『タートル』が現れて忽然と消えた・・・街の実力者と共にね〙


「『ブラックパンサー』が冒険者をふるいにかけ、実力ある者を『タートル』に加入させる?そんな事をして何がしたいのだ?」


〘それも不明よ。意味が分からない・・・だから予防が出来ないの〙


確かにそうだな


それにしても・・・強い冒険者だけを集める・・・か


「まずは『ブラックパンサー』の目的を知るってところか・・・だがもし『タートル』と関わってても違法性がないのなら止めることも出来ないのでは?」


〘そうなの・・・だから少しでも違法性がある事をしていないか突き止めないと・・・外から来た人は自分の命だけで済むかも知れない・・・けど・・・〙


ジケット達このエモーンズの出身者は家族すらも狙われる可能性がある!


〘家族だけじゃないかもしれない・・・この街に来て知り合った仲の良い人も巻き込まれるかも・・・それは何としても避けないと・・・〙


「そうだな・・・それで私は何をすればいい?」


〘ローグはダンジョンで無茶をしてそうな冒険者に話を聞いて欲しいの。どうしてそんなに無茶をしようとしているのか・・・私はダンジョンの外で色々聞いて回ってみるわ〙


なるほど・・・僕にはうってつけの仕事だな


「分かった。恐らくボス部屋で死んでいる冒険者が多いと思われるからボスに挑もうとしている冒険者に聞いてみよう」


〘?・・・そう。ありがとう〙



その後少し会話した後で通信を切った


サラさんはボス部屋に拘る意味が理解出来ないようだったけど僕は確信している


「ダンコ?」


《なに?》


「今の話を聞いてたろ?」


《ええ。無茶をするっていうのは素晴らしいことだわ。マナをふんだんに使ってくれるし》


「最近ボスに挑んで死んでる冒険者は?」


《確かに多いかも・・・まっ、それが言われて挑んだのか無謀なだけか知らないけどね》


ですよね・・・ハア・・・


「今度からコイツら無茶してんなって冒険者を見つけたら教えてくれ。スラミも」


《ええ?知らないわよそんなの》「はいマスター・・・ですがその無茶というのが分かりません」


ダンコはやる気ないしスラミには少し難しいか・・・かと言って僕も仕事中ずっと見ている訳には・・・


「・・・ダンコ、死んでしまった冒険者はどこの階が多いか分かる?」


《まっ、10階ね。トロールの厚き壁ってところかしら。本来なら倒せる人間でもたまたま鍛えられたトロールに当たってっていうのもあるし》


ああ、そうか・・・冒険者が負けるってことは勝ったトロールは経験を積んで強くなってるって事だもんな・・・ギリギリ勝てるはずだった冒険者も運悪く負けた時もあったかも・・・そう考えると1度冒険者に勝ったボスは引っ込めるべきか・・・前は僕が倒したりしてたけど最近忙しくてそういうことやってなかったな・・・


「サボりが招いた結果だな・・・でも死者の数からしてそれだけが原因ではないはず・・・ダンコ、10階と言わず各階の待機部屋に冒険者が到達したら教えてくれ。スラミはもしボスが冒険者を倒したら新しいボスと配置換えしてくれ。一応何体かストックしておく」


《はーい》「はいマスター」


さて・・・これで被害はだいぶ抑えられるはず・・・でも門番しながらだと冒険者を助けるのは難しいな・・・しばらく休みをもらうか


ちょうどダンジョンも拡張させたかったし良い機会だ・・・いっそうのことまた他の街のダンジョンに行きたくなったとでも言うかな・・・いや、ダメだ・・・それをジケット達が聞いたら何と言うか・・・となると休む理由・・・うーん・・・


とりあえず休ませてくれと頼んでみよう!


ケインはどうせ僕の事なんて気にしてないし給金分が浮くと喜ぶかも・・・まあ多分『そのまま辞めろ』と言われるのがオチだけど・・・


よし、善は急げだ


明日にも誰かが死ぬかもしれない・・・だからすぐに動こう



「構わない。いつまでも休め」


少しの間休ませてくれと言ったらこれだ・・・本当に元騎士か?この男は・・・


「ありがとうございます・・・では()()の間休みを頂きます」


「代わりなどいくらでもいるから気にするな」


こんのぉ・・・僕に全く興味無いのか話は終わったとばかりに机に置いてある書類に目を通し始めるケイン


門番してたらあまり会う機会はないけど、相変わらずって感じだな


「・・・それでは失礼します」


まあいいや・・・別にコイツに好かれようなんて・・・ん?なんだ?


ケインを横目に見ながら執務室を出ようとドアノブに手を伸ばそうとしたら何やら柔らかいものを・・・


「・・・可愛い顔してやる事が大胆ね。兵士長の部屋でセクハラ?」


「へ?」


前を見ると綺麗なお姉さん・・・僕の手はその綺麗なお姉さんの胸を鷲掴みにしていた


「うわあああ!す、すみませんすみません!余所見していて・・・」


「逮捕だな。真っ二つの刑か?」


「タンブラー・・・そんな事していたらこの世から人が居なくなるよ。たかだかファーネの胸を揉んだくらいで・・・」


「ちょっとゲッセン!たかだかはないんじゃない?たかだかは!」


この3人・・・確か入れ替わりで入って来た元第三騎士団の・・・


「・・・騒がしいな。殺すなら表でやれ」


止めなはれ!このクソケイン!


「おっ、ケイン見回り終わったぜ」


「収穫はいつもの如くなしだね」


「アタシなんて勧誘されたわよ・・・ここより給金良いみたいだから転職しようかしら」


大柄で大剣を背負っているのがタンブラー


長身イケメン片方で顔半分が髪で隠れてるのがゲッセン


サラさんと・・・いや、ペギーちゃんにも匹敵するものを持つ綺麗なお姉さんのファーネ


入れ替わりで来た中で異色を放つこの3人は特に目立っていた


門番の仕事してて兵舎にはほとんど顔を出さないから話した事はないけど、噂によるとかなりの実力者らしい


「すみません・・・し、失礼しました!」


あまり関わりたくないので頭を下げてそそくさと逃げるように部屋を出る


元騎士だけど関わっちゃダメな雰囲気をヒシヒシと感じさせる人達だ・・・


「ねえ」


今・・・僕が声を掛けられた?


部屋を出て安心してたら背後から声が・・・振り向くとゲッセンが壁に寄りかかり僕を見ていた


「な、なんでしょう?」


「君・・・なんで力を隠してるの?──────」





「なんでゲッセンはあの小僧を追いかけたのだ?真っ二つか?」


「んなわけないでしょ?・・・何か光るものでもあったとか?ほら、ゲッセンてば・・・」


「そんな訳ないだろう。奴は村出身だぞ?こんな片田舎で才能ある者など・・・」


「あらケイン知らないの?その片田舎の出身者が今や次期宮廷魔法使い筆頭候補よ?確か名前は・・・」


「興味無いな。そいつもたまたま才能があっただけ・・・この小さな村に偶然2人もいる訳がない」


「相変わらずね・・・けどこのままだとその小さな村に一生留まる事になるわよ?クリット商会はそう簡単にシッポを掴ませる気はないみたいだし・・・」


「・・・しばらく歓楽街の見回りはいい」


「諦めたの?」


「いや・・・冒険者ギルドのギルド長から依頼があった。当分はそちらを優先する」


「へえ・・・冒険者ギルドが?珍しい・・・同じ公的機関だけどあんまり関わらないイメージだったけど・・・」


「・・・全ては全員揃った時に話すが、この件が片付けば王都に帰れるやもしれん」


「って言うとそこそこの案件って事よね?なになに?気になるんだけど」


「極上の案件だ。解決すれば騎士団がひとつ増えてもおかしくないくらいな」


「勿体ぶらずに教えなさいよ・・・触りだけでも。このままじゃ良く寝付けないわ」


「・・・クリット商会など霞むくらい大物だ。何せ相手は・・・あの『タートル』だからな──────」

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