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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
102/856

99階 ローグVSサラ

・・・最近ダンジョンに行けてない・・・ギルドと組合の仕事にロウニールの訓練・・・さすがに行く暇がない


しかもシークス達の件と新しい組合の台頭・・・問題は山積みだ


そう・・・数分前までは考えるだけで憂鬱だった


でも・・・今は違う


なんとダメ元で聞いてみたらOKがもらえた


ローグと2人っきり・・・もう羽が生えて飛べそうな気分



・・・まあ・・・訓練だけどね



私は何を考えているのだろう。最近彼に求め過ぎているような気がする


無理矢理お願いした形なのに組合長だからって昨日はすぐに駆け付けてくれたし、装備だってくれた。シークスのせいで冒険者を止めなくてはないないかもという瀬戸際で彼は治るまで共に居ると言ってくれた


貴重な簡易ゲートを惜しげも無く使ってくれて、ダンジョンでは困った人を助け見返りを求めない・・・彼はどうやって生計を立てているのだろう・・・魔道具を作って売ってる?それとも元からお金持ち?


もしくは・・・仮面の下はエモーンズの冒険者?


ギルドからの調査依頼としてローグの正体を探ろうとした時はあった・・・前は知りたいと思っていた・・・けどいつしか・・・正体を知ってしまった時、彼がここには居られないとなったら・・・そう考えると知るのが怖くなった


正体への興味より一緒に居たいと思う気持ちの方が強くなった


顔を見た事も素性も知れないのに・・・どんどん深みにはまっていく


「貴方は何を見ているの?・・・私はどうしたいの?」


問題は山積みだ


解決する前に次から次へと降り積もる


ひとつずつ解決していかないと・・・ひとつずつ・・・





次の日の夕方


私は待ちに待った時を迎えた


久しぶりに袖を通すローグがくれた服


風牙龍扇を持つといつもより重く感じる


1階に降りると私を見た冒険者達が遠巻きに何かをヒソヒソと呟いている


それを気にすることなくギルドを出ると真っ直ぐにダンジョンへ


入口を通り訓練所に辿り着くと意を決して扉を開けた



彼は部屋の中央に立ち、私が来た事を知ると振り返る


仮面の下はどんな表情をしているの?


それすらも私には分からない


「お待たせしました」


「・・・いや、私も今来たところだ」


「では早速始めましょうか」


「そうだな」


挨拶もそこそこにローグの前に立ち構える


けどローグは構えも取らず立ったまま


私なんて構えも取る必要がない?


「行きます!」


様子見の蹴りは簡単に躱される


さばくのでなく受け止めるのでもなく、一歩後ろに下がって躱した


普段の力の半分も出てないので躱せて当然だろう・・・ローグなら


ローグ()()


私はローグの何を知っていると言うのだ?


私は彼のどこに惹かれたと言うのだ?


私は彼を知らない


けど、それ以上に私は私を知らない


一体私は何をしたいのだ?


私は──────




あっぶな・・・なんだなんだ?サラさんもしかして機嫌悪い?少し何かを話すかと思ったらいきなり手合わせ開始してるし・・・しかも蹴り速っ!


予備動作なしの蹴りを何とか後ろに下がって躱したけど相変わらずキレが凄い・・・気を抜くとすぐにやられてしまいそうだ


でもまずは受けに徹しないと──────




ローグは自然体で私の攻撃を躱し続ける


ギアを上げてもそれは変わらない


隙を窺っている?それとも──────




だぁー!速い速いって!


仮面のお陰でバレてないだろうけど、冷や汗が止まらない


一瞬でも判断を間違えば喰らっておしまいだ


神経を研ぎ澄ませ


普段からサラさんの動きを見ている僕なら出来るはず!──────




初見でここまで躱されるとは・・・もう少しギアを上げるか?


いや、もしかしたらそれこそローグの狙いかも・・・まるで弄ばれているような感覚・・・ここまで手を合わせて相手の意図が理解出来ないのは初めてだ


ローグ・・・戦いすらも理解出来ないのか!私は!──────




もう限界!


ここまで躱せたのは奇跡に近い!


攻めるなんてとても無理!でもこの辺で手を打っておかないとヤバいかも──────




ローグが一旦大きく離れた


これが何を意味するのか・・・ん!?その構えは・・・私の真似?


まさか今の一連の動きで私の動きを覚えたとでも言うのか?まさかローグでもそんな事は・・・いや、ローグなら出来るのかも知れない


胸が高鳴る


これは恋のせいではなく純粋に強者と会った時の昂り──────




よし、これで予定通り


ローグはサラさんの攻撃を受け続け、なんとその動きを真似してしまう!・・・ってなればサラさんに教えてもらって染み付いた動きを披露してもバレないはず


我ながら惚れ惚れするような完璧な作戦・・・ってサラさん笑ってるよ・・・何その笑い・・・怖いんですけど!──────




ここからが本番ってわけか


私の攻撃を受け続け、私の真似をする・・・そんな事は数段上の実力者でしか無理なこと


体の震えが止まらない


全身が叫んでいる


早く彼の元に飛び込め、と


戦いに身を投じろ、と──────




うわぁ!来たー!


マナで身体能力を強化し、今度は躱すのではなく打ち合う


受け止める際にはその部分の強度を上げ、痛めば回復魔法ですぐに回復する


苦痛に顔を歪めても、仮面のお陰でバレやしない


サラさんはいくら攻撃しても効かないって思うだろう


でもね・・・その右のハイキックはやめてくれないかな?受ける腕の強度を上げても芯に響くんだよぅ──────




くっ!これも受け止めるのか!?


普通なら受け流すか躱す以外は悪手になるはず・・・それだけの力を込めて蹴っているのに・・・まるで鉄でも蹴っているような感触だ


まさかマナで強度を?


狙いが分かっているならともかくそんなに素早く強度を上げることが出来るのか?


いや、これまで組んで来たタンカーでも無理だろう


しかも彼はタンカーではない・・・そうだ・・・彼は魔道具技師・・・もしかしたら装備のどこかにマナを流すと強度が上がるという能力を仕込んで・・・


また体が震える


私は今まで装備に()()という考え方だった・・・でも彼は・・・装備を使いこなしている・・・頼るのではなく使いこなす・・・自分の力として──────




また笑ってるし!


こっちは必死なのになぜ笑える!?


余裕か?余裕なのか!?


くっ・・・さすが師匠・・・高い戦闘技術に加えて必殺の蹴りを防がれても余裕の笑みを浮かべられる精神力・・・強いはずだ


こっちは何となくサラさんのクセを知っているから防げているだけなのに・・・


右のハイキックを放つ時に若干左手を下げるクセ・・・それが分かっててもなおギリギリ・・・もし知らなければ一撃目で沈んでいた


そしてもうひとつの強力無比な技を出す際にサラさんはフッと体を1回沈める・・・まだその技は出ていない・・・もしそのクセが出たら・・・ん!?


サラさんの体が沈む


来る


そう確信して体を捻り回転させる──────





何度も何度も繰り返し練習してきた技


極限まで体を捻り回転力を加えた上段後ろ回し蹴り


受け止められたら相手に背を向けることになる・・・けど迷いはない


渾身の一撃をローグに・・・ぶつける!──────




やっぱりそうだ!


回転してのハイキック!


決まれば踵が頭に突き刺さる危険な技!


初めて喰らった時は何が起きたのかまったく分からなかった・・・後で実演して見せてくれたけど・・・凄い強力で・・・尚且つ綺麗な技だった


いつか僕もこの技を使いたい・・・そう思って何度も練習してきた・・・それを今・・・師匠であるサラさんに──────




ローグも上段後ろ回し蹴り!?


まさか同時に・・・でも負けない!──────




同時に放った回転ハイキック


互いの足が空中で交差し、時が・・・止まる──────




やっぱりローグは──────

やっぱりサラさんは──────




──────凄い!──────





空中で互いの足がぶつかり合い静止する


私がローグを見ると彼も私を見つめていた


そしてどちらからというわけでもなく互いに足を引くと飛び退き距離をとる


「・・・魔技を使います・・・」


言葉は無粋と思っていたし、魔技を使わずに戦おうと思ってた。けど無性に魔技を使いたくなってしまった・・・彼に何もかもぶつけたくなったのだ


彼は無言で頷き構える



私の全力に・・・応えてローグ!!──────




マジか・・・一難去ってまた一難・・・魔技・・・どの技だろう?


習っているのは二つ・・・多分他にもサラさんは使えるはず・・・って事は僕の知らない技である可能性もあるわけか


習ったのは『流波』と『射吹』


だから選択肢はこのふたつのどちらかの技か習ってない技かの三つ


外れたら僕の負け


当たれば──────




「行きます!」


最高の一撃を貴方に──────




来る!


ええい!ままよ!


僕はひとつの技に絞りサラさんに突っ込んで行く




──────訓練所に静寂が訪れる



「カッ・・・ハッ・・・」



賭けに・・・勝った


右拳を突き出して来たサラさんに対して僕は体を捻りそれを躱すと体を彼女の懐に滑り込ませ掌底を放つ


彼女が出した技は僕の知る技『射吹』


マナを体内で高速で動かし、そのマナを拳に送り突き出す技


弱点という訳ではないけど、『射吹』はマナの移動に合わせて突きを出さなければ発動しない為、突っ込んで来られるとタイミングが合わなくて不発に終わる・・・だから僕は彼女が出す技を『射吹』だと仮定して突っ込んで行ったから何とか躱せた


タイミングを外され一瞬戸惑ったその隙をついたような形だ・・・もし違う技だったら完全に僕の負け・・・『射吹』で良かった・・・


彼女はまるで糸が切れた操り人形のように倒れそうになったので咄嗟に受け止める


すると彼女は僕を見上げ絞り出すように声を出す


「な・・・ぜ?・・・」


なぜ『射吹』を使うと分かったか・・・そう聞きたいみたいだけど答えられるわけがない


実際は『ロウニールとして習ってて、しかも『射吹』が来ると分かってたわけじゃなくたまたま運良く当たっただけ』なんだけど口が裂けてもそんな事は言えない


さて・・・どう答えるか・・・うーん・・・


「マナの流れが・・・見えたのだ」


うん、という事にしておこう


『射吹』は体内でマナを動かし最終的に打ち出す先に移動させて攻撃する技・・・その移動しているマナがもし見えていれば打ち出すタイミングとか丸分かりだし僕の動きの説明にもなるだろう


「マナが・・・やっぱりローグは・・・凄い・・・」


そう言って彼女は僕の腕の中で気を失った──────

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