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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
101/856

98階 始まりの地

「呆れた・・・それでおめおめと帰って来たって言うのか?ブル」


「・・・仕方あるまい。あのまま戦い続ければどちらかが・・・」


「どちらかじゃなくて本当はやばかったんじゃないのか?組合の幹部ともあろうお方が単なる冒険者に負けて帰って来る・・・ハア・・・もう終わりだよこの組合」


「オード・・・喧嘩を売ると言うのならば買ってやろう・・・表に出ろ」


「負け犬にゃ興味ねえよ」


『ブラックパンサー』拠点の3階で一触即発の雰囲気になるブルとオードの2人


その2人を呆れた様子で見るヘガンとは違い組合長であるニーニャは黙れと言わんばかりにテーブルを叩いた


「喧嘩はやめろぉ!ニーニャ怒るぞぉ?」


「・・・ニーニャ・・・もう少し怒るなら迫力を出してくれ・・・やる気が失せる」


「それが目的なら大したものだが・・・上に立つ者としてはどうなのだ?」


「うるさーい!・・・それで?そんなに『ダンジョンキラー』は強かったのぉ?」


「強い・・・本気を出していたらどうなってたやら・・・」


「ふぅーん・・・で、そこで見たの?」


「うむ」


ブルは改めてニーニャに聞かれて昨晩の事を思い出し語り始めた



ブルが街中を歩いていたのは組合員の勧誘が目的だった


歓楽街は冒険者が多く酒を飲んでいれば警戒心も薄れ話を聞いてくれやすいと度々訪れていた


入口で何やら騒ぐ者を見つけ声をかけようとしたが既に『ブラックパンサー』の組合員であった事に気付き声をかけず他の冒険者を勧誘しようと歓楽街へ


しばらく外で勧誘をしていると何やら物々しい雰囲気の2人が歓楽街を駆け抜けて行った


「『ダンジョンナイト』のローグとサラ・・・」


「であるな。これまで見かけたことがなかったのが不思議なくらい目立つ格好であったぞ」


「仮面とマントか・・・そうなると中身が違くても分からねえな」


「でもぉ・・・本物だったんでしょぉ?」


ブルは頷き再び語り始める



歓楽街を走り抜けて行く2人が気になったブルは気付かれないよう後をつけた


そして見たのは『ダンジョンキラー』ことシークス達と揉めているローグ達。傍らには『ブラックパンサー』の組合員であるケンとスカットも居た


話し声は離れている為に聞こえないが状況的に2人を助けに来たように見える。だがケンとスカットの2人は違う組合の者・・・しかも『ダンジョンキラー』相手に『ダンジョンナイト』の主要人物2人が出て来る事態・・・



「んじゃまあ、あの2人は黒か」


「2人ではなく4人だな。確かパーティーで加入したはず」


「んーその辺はどうでもいいかな・・・で、ブル・・・続きは?」


「うむ──────」



ひとしきり揉めている様相もローグが何かをスカットに投げた事により一変する


スカットは姿を消し、場にはゲートが出現し3人が次々にそのゲートに入って行き、その場は『ダンジョンキラー』のパーティーのみとなる




「多分『簡易ゲート』ってやつか?」


「だろうな。使った事ねえけど便利らしいじゃん」


「今まで一緒に居た組合員に渡してたからなぁ・・・今度手に入れたら使ってみよっと。で?そっから勧誘に踏み切った、と」


「うむ。シークス・ヤグナー以外は特に何も感じなかったが、彼は使える・・・そう判断したのだが──────」




近付き対峙して更にその強さを認めたブルはシークスを勧誘する・・・が、シークスは話も聞かず蹴りを放ってきた為にやむなく戦うことに


初めは互いに手探り状態


攻めと守りを交互に行い互いの強さを認識するとシークスは徐々にヒートアップしてきた


互いにマナを使い始めた頃にブルはこれ以上は殺し合いになると判断し自ら身を引き戦いの幕を閉じる




「そこは『しっぽ巻いて逃げて来た』だろ?」


「オード・・・お主・・・」


「くだらんケンカはよせ。ブルと互角か・・・是非とも欲しい人材ではあるな」


「うん・・・時を見てニーニャが行ってくるよ。3人はダメ・・・どうせケンカになるし」


「どの口が・・・ニーニャが行ったら余計・・・」


「なぁに?オード・・・ニーニャは組合長だぞぉ!」


「ハイハイご勝手に組合長殿・・・まっ、それよかブルは取るに足らないって言ってけど『ダンジョンキラー』の仲間もAランクだろ?勧誘した方が良くないか?」


「伸び代はないぞ?」


「ここに居る連中よかマシだろ。どこを見てもG、F、E・・・DとCなんてほとんどいねえ・・・鍛えるって言っても限度があるぞ?」


「オード・・・少数精鋭だ。無駄に人数を増やす必要は無い」


「けどよぉヘガン・・・こんなんじゃいつまで経っても一パーティー組めねえぞ?」


「足りなければ他から・・・そうして来ただろう?」


「まっ、そうだけどさ・・・それこそ手間だぜまったく・・・」


「一パーティーかぁ・・・もしかしたらそこまで必要ないかもねぇ」


「ニーニャ?それはどういう意味だ?」


「・・・ここがもしかしたら『始まりの地』になるかも・・・なんてね──────」




ううっ・・・体全体が痛い・・・こんなに早く来るのか筋肉痛って・・・


ドラゴニュートとの戦いの後、少し作業をして昼寝して・・・起きたら全身筋肉痛・・・多分かなり無理したんだろうな


《それで?今日の夜は何をするの?》


「うーん、魔物の補充は終わってるから・・・50階?」


《いいわね!もうすぐオープン2周年だしここはドドーンと拡張するべきね》


「いやいや・・・あんまり拡張すると魔物の補充が追い付かなくなる・・・出来れば50階でしばらく拡張を止めて・・・」


《ダメよ!そんな事したら人間の成長も止まる・・・そしたらマナの供給量も減ってしまうわ》


「2年で50階なら相当早いと思うけど・・・それにそんなに急がなくても・・・」


《あのねえ・・・あの人間が来るまであと何年よ?》


あの人間ってだけで分かってしまう。来ると言ったらあの人・・・


「ディーン様が来るまであと3年だね」


《3年・・・あと3年よ?それまでに出来れば100階・・・うん、100階がいいわね。キリが良いし》


「2年で50階ならあと2年で100階に出来るんじゃ・・・猶予は結構あるけど・・・」


《来る人間があの時のままだったらね。普通に100階まで作って出迎えれば良いと思うわ。でも5年の歳月を与えられたのは私達だけじゃないわ》


「そっか・・・ディーン様も強く・・・あ、なんか不安になってきた・・・取るに足らないダンジョンとか言われたらどうしよう・・・」


《あの若さであれくらいの強さなら・・・5年後は恐らく上級上位をも倒せちゃうかも・・・となると残るは・・・》


「残るは?」


《魔王》


魔王・・・確かダンコはその魔王を創る使命があるとかないとか・・・けど本当に魔王なんて創っても大丈夫なのか?ダンコはダンジョンから出なければって言ってたけど・・・


《至高の騎士だっけ?あの人間がどこまで強くなっているの分からない・・・けど、ドラゴンなら普通に倒せるくらいにはなってると思うわ。なら対抗出来るとしたら魔王くらいじゃない?》


うーん、ディーン様ならドラゴンくらい簡単に倒せそうだし、『至高の騎士VS魔王』っていうのはぶっちゃけ見た過ぎる・・・もし実現すれば色んな角度からその戦いを見れるって考えると・・・ヤバい・・・見るしかない!


「・・・でもまだ50階に到達したばっか・・・先は長いな・・・」


《うーん、そうでも無いわ》


「え?」


《過去に魔王が存在していたダンジョンで言うと複雑だったり魔物が多く出現するのは大体80階くらいまで。そこからは一本道だったり一部屋だったり下に行くほど単純になるの》


「へえ・・・なんで?」


《上級になると魔物は賢くなるって言ったでしょ?賢い魔物って厄介なのよね・・・変に賢いから縄張り意識みたいのが存在してて同じ階に置くとケンカを始めるのよ・・・だから原則同じ階に上級魔物は一体のみ・・・となると中級魔物を置く事になるのだけど、上級魔物を相手に出来る人間に中級魔物を置いても、ねえ?》


あー、確かに・・・使ってくれるマナの量と創造するマナの量が割に合わなければ置かない方がいい・・・ディーン様クラスなら中級でもマナを使わず倒してしまいそうだ


《上級魔物は一体しか置けない、中級魔物を置いても無駄になる・・・だから一本道にしたり一部屋にしたりして無駄を削減するわけ》


「そっか・・・だから管理も楽だし創るのも一体で済むし・・・意外と100階はすぐに出来ちゃうかも」


《そそ・・・ただ上級魔物の上位になるとマナ量は半端ないからね・・・それを溜めるには人間に頑張ってもらわないといけないわけ。なるだけ多くの人間にバンバンマナを使ってもらわないと達成は難しいわ》


「近くて遠い道のりって感じだね・・・ハア・・・先が思いやられる」


《けど今のペースでいけば十分・・・80階辺りで道中は中級上位、最奥に上級中位を置けば後は黙っててもマナが溜まる・・・まっ、その分報酬も上げていかないといけないしここ2年が勝負ね》


「2年って簡単に言うけど結構長いよ?」


《これまでの10数年に比べたらあっという間よ》


そうでもないだろ・・・まあでもやるしかないか


ディーン様と約束したもんな・・・期待に応えなきゃ


《それで・・・節目の50階はやっぱり?》


「うん・・・創り続ければコストも下がるし・・・50階のボスはドラゴニュートだ」


初の上級の配置・・・犠牲者をあまり出さないようになるべく近い階層は強い魔物を配置しないと・・・うん?


通信道具が光ってる


なんだろ?昨日の件かな?


「はい」


〘昨日の今日ですみません。ひとつお願いしたい事がありまして・・・〙


「お願いしたい事?」


〘その・・・お暇な時で良いので・・・私を鍛えてくれませんか?〙


んん!?サラさんを鍛える??


いやいやいや・・・僕はサラさんの弟子なのですが・・・サラさんに教わっている僕がサラさんに教えるって訳が分からなくなるぞ


「君は十分強いと思うが・・・」


〘・・・昨日シークスの前に立ち分かりました・・・まだ私はあの域まで到達していない・・・まだまだ足りないって・・・でも最近色々とありなかなか自らを鍛える時間がなくて・・・〙


うっ・・・何故か心が痛む・・・


〘弟子を育てる事は自分の成長にも繋がります・・・ですが『ブラックパンサー』の事もありギルドの仕事も入ってくるのでなかなかダンジョンにも行けなくて・・・〙


良かった・・・僕が負担になってるかと思った・・・けど、組合の件はサラさんにほとんど丸投げしてるし・・・やっぱり僕のせいも大きいか


〘空いた時間にダンジョンに行こうにもやはり色々と気になってしまい集中出来ず・・・このままではシークスにはとても・・・なのですぐ連絡が取れる訓練所なら気にせず集中出来ると思うのですが1人ですと限界があります・・・出来たら実力者の方と手合わせ出来ればと思いまして・・・〙


そっか・・・サラさんの中じゃやっぱり僕・・・ローグはかなりの実力者なんだな


さて・・・どうしよう


サラさんに時間がないのは半分以上僕のせいだ・・・だから手伝ってあげたいけど如何せん僕はサラさんより弱い


弟子として鍛えてもらっている時は力を抑えているとはいえそれを差し引いてもサラさんには遠く及ばないような・・・


いや、これは逆にチャンスでは?


ドラゴニュートとは命懸けの戦いが出来るけど、サラさんみたいな強者との戦いもまた命懸けじゃないにしろかなりの訓練になる


ロウニールとして戦闘技術を学び、ローグとして模擬戦を繰り返せばかなり強くなれるんじゃ・・・


「分かった。私で良ければ協力しよう」


〘本当ですか!?〙


「ただ素手での戦いはあまり得意ではないので満足してもらえるかどうか分からないがな」


〘ぜ、全然・・・よろしくお願いします!それでもし良ければ明日にでも・・・〙


早っ!早速?


「分かった。では明日の夕方に訓練所のいつもの場所でいいか?」


〘いつものって言うと・・・この前お話した場所で?〙


おおっと・・・つい口走ってしまった。いつも訓練しているのはローグじゃなくてロウニールだった・・・ややこしい


「そうだ。では明日の夕方に」


〘はい!〙



ふぅ・・・勢いで約束してしまったが大丈夫だろうか・・・


《バカロウ》


「なんだよいきなり!」


《アナタ正体がバレたいの?バカなの?まだ上級魔物の方が賢いわ》


「それは言い過ぎじゃない?ほら、得意じゃないって言ってるし弟子としての訓練の時はマナを抑えているし・・・」


《あのねえ・・・彼女はかなりの強さを持っているわ・・・その彼女がアナタの動きを見て気付かないと思う?》


「な、何に?」


《どんな訓練をしてきたか、よ》


「そんなの分かるの?」


《ハア・・・構え、構えてからの初動、攻撃の流れ、さばき方、打撃の当て方・・・素人の私でも全然所作が違うって分かるわ・・・それをアナタは・・・》


「もしかして・・・バレる?」


《バレバレよ。マナを抑えなければローグは『そこそこ強いロウニール』ね・・・多分一瞬で気付くはずよ》


「・・・」


《バレないようにするには今から『素手はやっぱり無理なのでお断りします』って言うしかないわね・・・本当抜けているのだから・・・》


「・・・今更?」


《今更よ!》


ええ・・・凄い連絡しにくいんだけど・・・


何か方法はないかな・・・バレないようにする方法は・・・


《ロウ?早くしないと傷口が広がるわよ?》


ううっ・・・だって・・・でもそうだよな・・・僕はサラさんに習ってるのだから当然サラさんの動きに似て・・・似て?


「いや、大丈夫・・・何とかなる!」


《ならないわよ!》


「僕に秘策があるんだ・・・似ててもおかしいと思われない秘策が」


《・・・知らないからね!どうなっても!》


ダンコは怒っているけど明日になればそれも収まるだろう。ただ上手く出来るか若干の不安はあるけど・・・


まっ、なるようになるさ──────

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