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第3話 城砦の戦乙女 イアナ

酒場のマスターから依頼された品の持ち主は、勇者パーティの最前衛、イアナ様だ。

彼女は例えるなら鋼鉄の人だった。

それは着こむ鎧のスキのなさや肉体労働者にも負けず劣らずの筋肉といった物理的な話に留まらない。

いかなる恐怖や攻撃を前にしても、決して思考が止まらず、常に揺るがずに前列で仲間を守る姿を、いつか誰かが「城砦」と称えたことを思い出す。

そんな彼女は下手な男よりもよほど女性にもてていた。

本人は色恋沙汰などまるで関心もないように見えたけども。

そんな思い出にふけるうちに、目的の城が見えてきた。

城の入り口に黒い傘を差した吸血鬼の女性がこちらに手を振っている。

彼女が今回の依頼主だろう。


「我が最愛の許嫁、イアナの訃報は聞いていますわ……ええ、これを届けてくださったことには感謝しますわ。さあ、どうぞおあがりになって」

依頼の品は聖銀製で、吸血鬼には触れない。

なので指定を受けた場所に展示して、依頼完了。

仕事が済むころには夕暮れ時。

今から人里に戻るのも遅くなりすぎるだろうということで、一泊させていただくことになった。


夕食をいただきながらの話題は、勇者の育成の話になった。

「ダン様は後進の育成をイアナ達から託されたとお聞きしましたが……神の選任がなくても勇者にはなれるのですか?」

神の選任が無くても勇者にはなれるのか。

それは確かに重要なことだ。

僕としては当然、次に復活した魔王を封印で終わらせるつもりは無い。

そのためには神の選任を待っている余裕がないのも事実。

「もしも勇者に神の選任が不要だというのなら、私とて勇者となり、イアナの仇を取りたいものですが……」

勇者の技として神から授かる技や魔法は、選ばれたものにしか扱えないのだろうか。

一つ、試してみたいことが出来た。

勇者の技の一つとして僕が神から授かった魔法のうち、最も基礎とされる魔法。

形なきもの、実体化していない霊や悪魔を斬る魔法だ。

選任を受けていない者にも扱えるものなのだろうか。

そうであればこの技は魔法としては至極単純なので、魔力を扱える存在ならだれでも使えるはずだ。

僕はさっそく羊皮紙とインクをお借りして、件の魔法を制御する方法を書き記す。

そして壊れては困るものがない城の外で、実験をすることになった。

的は僕の魔力で路傍の石を包み込んで生み出した、仮初のゴーストである。

「ふむふむ、この魔法が扱えれば、わたくしも次代の勇者になりうるということですのね?」

そういうなり早速、吸血鬼の女性は詠唱を始める。

僕が詠唱した時と同じように、魔力は虹色のナイフのように変化する。

「切り裂け!」

ナイフは綺麗な光を放ち、的となるゴーストの霊体部分を切り裂く。

実験は成功だった。

「ええ、そういうことですのね。これで私もイアナの敵に一矢を報いることが出来るんですのね……いいでしょう。この勇者アルカ。吸血鬼の身なれど戦列に加わらせていただきますわ。」

満天の星空のもと、アルカさんは誇らしげに胸を張った。


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