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第2話 大地の聖女 ノース

別れの日から数日後、町は祝祭に沸いていた。

魔王は地の底に還り、地上は平和を取り戻したと沸き立っている。

しかし、勇者パーティにいた僕から言わせれば、この平穏は長くは続かないはずだ。


ドロテアが言った「魔王を止める魔法」は魔王を封印する魔法だ。

そして封印の強度は、生贄になる勇者の人数で決まる。

当然多いほど強い封印となるのだが、僕を置いていった勇者たちは4人だった。

あれではせいぜいもって5年といったところだろう。

きっとドロテアではなく僕が発動役として残ったならば、この半分も持たせられれば上等といったところだ。



今の僕には、祭りの熱気に乗る気にはなれなかった。

路地のはずれの酒場でもう何杯目かのシードルを仰ぐ。


「なあ、ダン坊、気持ちはわかるがそう泣いてばかりもいられんだろう?」


酒場の旦那が、そういって一つの手紙をよこしてきた。


「これは勇者様の一人、白魔道士のノース様からお前宛だとさ。読んでみろよ。」


手紙にはノース様の丁寧ながらに温かみを感じる文字が連なっていた。


「ダン君、この手紙を読んでいるということは、おそらく私たちは魔王封印の儀を行ったのでしょう。誰よりも皆と一緒にいたいと思う気持ちの強い貴方を置いて行ってしまったこと、申し訳なく思います。

私達は世界を守るため、あなたを種として残すことに決めたのです。

ドロテアちゃんは何度も私に『ダンが友達になってくれたから私は強くなれた』と語っていました。

貴方ならきっと、ドロテアちゃんのように才能ある人に芽を出す機会を与えてくれると信じています。

きっと遠からず、私たちの魔王封印は破れます。


その時に、あなたが見出した新たな勇者たちが新しい時代を拓いてください。」

手紙を読み終えたところで、封筒に何か固いものが入っていることに気が付いた。

指輪だった。


「追伸:あなたが勇者パーティに加入して初めて手に入れた宝物を渡します。

この指輪があなたの心を絶望から守ってくれますように。」


そうだ、泣いている場合ではない。

ドロテアも言っていたんだ、「後は任せたよ」って。

「ダン坊もやる気でたか、じゃあ一つ頼まれてくれ。魔王封印地近くの古城の仕事だ。」

そういうとマスターは依頼書をよこしてきた。


古城の依頼主に、勇者パーティーの遺品を届ける仕事だ。

依頼の品は、魔王を穿つ力を秘めた聖銀製の大槍。

箒にこの随分重い荷物を括り付けると、僕は飛び立った。

託されたもののためには、とにかく動き始めなければいけない。


祭囃子のアコーディオンの音を背に、かつて勇者達を見送った方角に急ぐ。

ドロテアに「後を託したのが僕で失敗だった」と思われたくない。

そんなことばかりを考えていた。

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