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第11話 安心安全な魔王討伐計画

学生時代の恩師、メイ先生との対談から数日、僕は久しぶりに自宅に戻り考え事をしていた。

勇者のパーティに加入して以来戻っていなかったため、掃除も手間だったが、何にも遠慮せずに過ごせる時間は僕にとって貴重だった。


魔王対策の話し合いの中で、魔術学校からの支援を得るための条件として「討伐作戦参加者の安全性を高める」という話が出てきた。

確かに、魔王との決戦で死者を出せば、少数でも作戦成功を遠ざけることになる。

多数出てしまうようであれば、「1000人を動員した勇者」の失敗と同じ轍を踏むことになる。これは絶対に避けなければならない。


神の選任を受け前衛職として戦えるような傑物でもなければ、建造物さえただでは済まない魔王の一撃を防御するなどという芸当は不可能だろう。

ましてや今回は魔王の大穴の周囲を大軍で包囲し、出てきたところを数に任せて叩き伏せることを作戦の根幹に置いている。

各員に回避行動をとってもらうということもできない。

少なくとも、魔王の攻撃が参加者たちに飛ばない必要がある。

次に考えるべきは、「魔王の攻撃を防御する手段」ということになる。

魔道士集団で防御魔法を限界まで重ねたところで、人間の体で受けるには不安が残る。


ふと、思い出したのがアルカさんの住まう古城だ。

古城と魔王復活地点までは目と鼻の先。

つまり、魔王復活の際に毎度のように地震をもらい、勇者の到着が遅ければ最初の獲物として目を付けられる位置にある。


それでも古城は平然とあの場所に立っていて、魔王の攻撃で破壊された痕跡はない。

建材か組み方に秘密があるのだろうか?


僕はアルカさんに連絡を取り、古城に向かうことにした。

吸血鬼の城主として長年城に住み続けているアルカさんなら、古城がなぜ長きにわたり魔王の攻撃から生き残り続けているのかの秘密を知っているのではないかと考えたからだ。


「ダン様、本日はこの城がなぜ魔王からの攻撃に強いのか知りたいとのことでしたわね。さあ、どうぞお上がりくださいまし。」


アルカさんから通された城の内部は、「築城当時としては画期的な手法が用いられてこそいるが、特筆すべき強靭さを生む構造はない」という様子だ。

「魔王の攻撃を『受け止めたうえで防御する』以外の防ぎ方をしている……ということですね。」

僕がひとまず見て回った城内の様子から出した結論がこれだった。

「ええ、この城は魔王の攻撃が『通用しない』のではありませんわ。魔王から『攻撃対象だと思われない』ことで身を守っているんですのよ。より正確に言うならば、『魔王の捕食対象から外す』というべきでしょうか。」

攻撃対象から外す。確かに「傷つかない」という目的を果たすうえで多くの場合費用対効果に優れた方法だ。


では次に問題になるのは、「どのようにして魔王の認識を外しているか」の部分だ。

この城の守りの仕組みに感心して終わりではなく、魔王との決戦において参加者を守る仕組みとして再現できないといけない。

それならば、とアルカさんは蔵書庫から建築当時の設計者の記録を持ってきてくださった。

「魔王は万物を屠り、取り込むことで食欲を満たす。しかし、魔王は闇の力で覆われたものに関しては自己の体の一部とみなすのか、捕食しない傾向にある。」


闇の力による防壁、確かに選択肢としては有用なのだけど、困ったことがある。

闇に対する防御を別途用意しないと、人間に悪影響が出る。

防御を全員に張るのも魔力量が持たない。

さあ、どう対応しようか。

一難去ってまた一難。

魔王の対策は、まだまだ完全とはいいがたい状況だった。

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