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  Ch.4.18:落陽の夢

 南方平原の要衝にしてアミュング国の首都は落ちた。

 王宮魔導師ディリアの魔法の威力を前に、事実上の全面降伏である。

 ただし、魔王の支配から解放するという大義があるため、降伏条件で妥協を強いられた。

 交渉窓口が必要という事情もあるが、主立った政府機関の執行権は停止したが、解体はできなかった。

 同様に軍隊も武装解除せず、市壁の外に出るという条件で合意したのである。

 代わりに、行政府の半分と執政官公邸の明け渡してもらったのだった。


 占拠したシャビア・シティーの執政官公邸の一室である。

 イムスタは一人、祝杯をあげていた。

 アミュング国は共和制国家である。

 国王などの君主は不在で、議会とその代表者となる執政官によって統治されてきた。

 執政官公邸は王宮ほど豪奢ではないが、一国の最高位である執政官の公邸は他と比べて十分に豪華である。


「少し気が早いか?」


 偵察部隊から、大公がカシーシ市に向かったとの報告があった。

 アカッシャならば、密命を実行に移しただろう。

 性格は少し変だが、信頼は置ける人物だった。

 だから、アカッシャが動いたのなら、完遂するだろうとの確信はあった。


「これで邪魔者は消えた。すべてはニンナ、お前が招いた結末だ」

 イムスタ王子は、魔王軍の虜囚状態から救出され、大公別邸での一夜を思い出していた。



 あの日――、

 イギャカ山の砦から救出され、イシャイルク町の大公家別邸に泊まった。


 その翌未明――



 一人で休んでいた部屋に、急にニンナが訪ねて来た。

 いつの間にか、明かりが揺らぐランプがベッド脇のテーブルに置かれていた。

 ベッド脇に立つニンナが纏う薄衣は、なまめかしい。


「なにも言わずに、わたしを抱いてください」


 するするとネグリジェを脱ぎ捨てたニンナが、イムスタが寝ていたベッドに入ってくる。

 イムスタは思わず逃げるようにベッドから飛び出てしまった。

 触れたくない汚らわしいと思う意識が、先走ってしまったのだ。

 川港で出迎えてくれたニンナと熱い抱擁をした事実を霞ませる。


「なぜわたしを拒むのでしょう」

「と、突然のことで驚いただけだ」

「でしたら、抱いてください――」


 ニンナが上掛けを持ち上げると、裸体が薄ぼんやりと見える。

 無数の知らぬ男がその肌を撫で舌を沿わせ体を重ねていたのだと思うと、腐敗した汚泥よりも汚らしいようにイムスタには見えた。


「どうなさいました?」


 ニンナの氷のような声に、イムスタは背筋に冷や汗が流れ落ちる。

 ここで抱けば、過去を不問して、妻として娶る宣言となる。

 だが例え事実を闇に葬っても、ニンナの男遍歴を諸侯は裏で囁き続けるのだ。

 王としての権威は損なわれ、産まれた子は誰の子かといらぬ噂を招くことにもなる。


「婚約しているのですから、何ら疚しいことも、おかしなことでもございませんのよ」

「だがお前は、私以外の男を知りすぎている――」


 しまったと思ったが遅かった。ニンナの目が冷徹で無機質な人形に変わったように見えた。

 有無を言わさぬ強迫の刃が喉元に突きつけられるように感じた。

 だがもう、引き返せなかった。


「もう一度言います。わたしを抱いてくださいませ」

「断る」

「そうですか――」


 ニンナはベッドから滑るように出ると、ネグリジェを着て振り返る。

 その手にはナイフがあり、殺されるのかとイムスタは身構えたが、ニンナは自分の首にナイフを突きつけた。


「――ここでわたしが死ねば、どうなるでしょう」


 ニンナの自害を大公は信じない。

 イムスタが殺したことにされ、大公は王に処刑せよと迫るだろう。

 ニンナの死、すなわち自分の死だった。


「すまないニンナ。どうやら私はまだ、昨夜の酒が抜けてないらしい」

「――では、酔い覚ましに庭を歩きませんか?」


 ニンナはナイフを下ろして鞘にしまったが、顔に表情は見えない。

 ニンナがテラスへ出る窓を開けた。


「さあ、殿下――」


 微笑むニンナを不気味に感じるが、進むしかない道筋は既に整えられていた。

 イムスタはそっと、ナイトガウンの下に付けている首飾りに触れた。

 分岐の見えない一本道を行かずに済ませる方法はひとつしか思い浮かばなかった。


「あちらに、良い物がございますのよ」


 ニンナが中庭の奥にある林を指さす。

 言葉少なく、イムスタはニンナと共に中庭の先に広がる林の中へと進み入る。

 遊歩道として道が作られているが、幅は狭い。


「あれです。どうぞ、中をごらんください」


 ニンナが指さしたのは、厩舎にしては大きすぎる小屋だった。

 イムスタはゆっくりと近付く。

 薄暗い小屋の中を覗くと、奥で何かが動いている。

 一つ目の巨人だった。驚いて振り返ると、ニンナは先程より離れた場所に立っていた。


「な、なんなんだあれは?」

「逃亡した殿下を、魔王が取り戻しに来たようですわ」


 ニンナが何かを投げた。

 地面を転がりイムスタの足に当たったのは、赤い魔石だった。

 魔石が輝く。


 グオオオッ!


 小屋で一つ目の巨人が声を上げ、窓に突進してくる。

 イムスタは慌てて離れたが、バキバキバキと音を立てて小屋の板壁を壊し、巨人が外に出てきた。身の丈は五メートル以上ある。

 壁を壊した衝撃で魔石がイムスタの方に転がってくる。


 巨人の大きな目が、イムスタの方を向いた。

 駆け出そうとして足がもつれて転ぶ。

 巨人が迫り来てイムスタは死を予感したが、狙いは魔石だった。

 一つ目の巨人は魔石をつまみ上げると、口に入れ飲み込んだ。


 ア゙゙ア゙゙ア゙゙ア゙゙ア゙゙ア゙゙。


 巨人が不気味なうなり声を上げると、体が一回り大きくなったように見える。

 次は自分が喰われるのかと、イムスタは恐れた。

 巨人の腕が目の前に伸びてくる。


「ア、アカッシャ!」

「【煌めく火箭(ファイヤアロー)】!」

 イムスタの叫びと、魔術による火箭が飛来するのが同時だった。


「殿下! ご無事ですか」


 一つ目の巨人が降り注ぐ火箭にうずくまる中、林の奥から黄色の風が駆けてくる。

 アカッシャである。

 縋るように見上げるイムスタに、手が差し出される。

 いつになく頼もしく見えたその手を握ると、力強く引き起こされた。

 降り注いだ魔術火箭が、一つ目の巨人の肌を焼いている。

 それでも頭を両手で抱え、地に突っ伏している。

 分厚い皮膚のためか、熱さを感じていないらしい。


「殿下の暗殺とは、醜いのは心だけではないようですね」


 アカッシャの怒りに燃えた目が、ニンナを睨む。

 ニンナの顔が怪しく歪むのをイムスタは見た。


「殿下も隅に置けませんね。そのような女をはべらせておられたとは」

「ただの身辺警護だ」

「そうです。私には殿下の操を守るお役目があるのです」

「はあ?」


 首を傾げたニンナがアカッシャに向けた視線は、侮蔑に満ちていた。


「下賤の魔術師が、殿下の下の世話ですか」

「ニンナ様と一緒にしないでください。私は殿下に操を立てておりますが捧げてはおりません」

「ふぅ。どうもこうも、困りましたわね」

「そうだろう。もはや言い逃れなどできない事態になったのだからな」

「ニンナ様! ご無事ですか!」


 声と共に二人の騎士が走り来た。

 ニンナが護衛として側に置く騎士である。

 魔術火箭の光に気づいたのだ。

 二人の騎士は一つ目の巨人を見ても動じる様子はなく、ニンナの左右に立つ。

 一つ目の巨人の存在を知っているのだ。

 周到な準備により暗殺されようとしているのだとイムスタは悟った。


「王子に、心がズタズタに傷つけられましたわ」

「ならば大公家の名誉に懸けて、罰しましょう」

「そなたたちは、証人です」

 応じる騎士を尻目に、ニンナが火箭の炎に包まれてうずくまる巨人へと視線を転じた。


「ネトゥイス、わたしを愛するなら、立ってわたしを貶めるその男を殺しなさい」


 そのひと言が効いたのか、一つ目の巨人が勢いよく立ち上がった。

 体を揺すって魔術の火箭を払い落とすと、歪んだ大きな目が向けられた。


「ゴガガ、ア゙゙ア゙゙、ゴゴズ」


 言葉のようだったが、ただのうなり声にしか聞こえない。

 それでもニンナの言葉を理解したらしい。

 一つ目の巨人がイムスタとアカッシャに迫る。


「やむを得ん」

 イムスタはナイトガウンの襟元を広げ、首飾りに触れる。

「跪け、異形の魔物よ!」


 首飾りに嵌め込まれていた魔石が光を放ち、一つ目の巨人の目を射る。

 王宮魔導師ディリアからもらった魔道具で、魔物を呼び寄せ操る力がある。魔石ひとつに込められた魔力が尽きるまで、魔物を支配下に置けるので、お守りにと与えられたものだった。


 ウゴォォォ。


 苦しむように唸りながら、一つ目の巨人は両手で目を覆い、両膝を突いた。


「ど、どうした。お前の想いはその程度なの? さあ、早く王子を殺しなさい」

 動揺したニンナが叫ぶ。

 唐突に一つ目の巨人が振り向き、ニンナに向かって突進した。


「な、なにを――」


 ニンナは竦んで動けずにいる。

 一つ目の巨人の大きな左手が、かっさらうようにその体を掴み取る。

 両腕ごと胴を握り締められたニンナの表情が苦痛に歪む。


「ガアア」

「わたしを恨むのか? だが力を求めたのはお前。なのに役立たずとは、無様で愚かな男」

「ニンナ様を放せ」


 護衛の騎士二人が剣を抜いて一つ目の巨人の前に立ったが、腰が引けている。


「なにをためらっている。早く私を助けなさい!」

「た、直ちに!」


 覚悟を決めた騎士が一つ目の巨人に斬りかかるが、剣は巨人の固い腕に弾かれる。

 一つ目の巨人が右腕を左右に振り払うと、二人の騎士が振り飛ばされる。

 七メートル離れた木の幹にぶつかり、二人の騎士が地面にずり落ちる。

 それでも気絶しないのは立派で、剣を杖にしてよろよろと立ち上がる。

 だが、命を賭してニンナを守ろうという意志は消えていた。

 二人はジリジリと後ずさりしている。


「だ、だらしない」

「ゴグガァァ」

 ニンナの嘆息に、一つ目の巨人が呼応するように声を発した。


「もうよい、魔物よ、ニンナを放してやれ」


 イムスタが命令を口にした瞬間、一つ目の巨人が怒りの形相を向けてくる。

 思わず恐怖した。

 一歩踏み込んでくると、大きな右手の手刀が襲ってくる。

 イムスタは動けなかった。


「殿下!」


 アカッシャに抱きつかれ押し倒される。

 地面に倒れたその真上を、一つ目の巨人の手刀が風を唸らせて過ぎ去る。


「ご無事ですか?」

「ああ。――だがなぜ服従の魔石の力が通じぬのだ」

「魔石の力などなくとも私は殿下にぞっこんです!」

「そのようなこと、分かっている!」

「なんという嬉しいお言葉。ようやく私は殿下に受け入れられました」

「いや、アカッシャ、待て待て」

「待ちません。このまま愛のハネムーンに参りましょう」


 アカッシャに手を引かれ、巨人に背を向けて走った。

 イムスタが振り返るとニンナはぐったりとしていいて、巨人の指の間から血が滴っている。

 巨人が手刀を振るう際に、力んで左手を握り締めてしまったのだ。


「いやいやいや、そうではない――」


 イムスタは足を止めて踏ん張り、アカッシャの手を引き留める。

 止まった反動でアカッシャがくるりと腕を巻き込むように抱きついてきた。


「ああ、嬉しい。ようやく殿下は私を求めてくださいました」

「お前の魔術が必要だ」

「ならば殿下、愛の共同作業を致しましょう」

「――アカッシャよ、あの一つ目を倒せ」


 誤解を解くのを面倒に思い、イムスタは頷くと逆の手で一つ目の巨人を指した。


「分かりました。殿下のご要望とあらば、私の必殺の魔術をお見せしましょう」


 アカッシャの手がイムスタの手からすり抜ける。

 巨人に正対して顔の前で両手を交差した。

 左右にある四つの腕輪に嵌め込まれた魔石が光り輝く。


「魔力展開!」


 アカッシャが両腕を左右に広げると、腕輪だけではなく、ベルトに嵌め込まれた魔石も光を放つ。


「我が全力にして必殺の魔術。

 【深青の爆炎(プーガトリーフレイム)】!」


 アカッシャが両手を前に突き出すと空間が歪み、青き炎が噴き出した。

 強烈な火炎が一つ目の巨人を包み込む。


「ア、アカッシャ――」

「どうですか殿下。私の必殺魔術の威力は」

「――ああ、すごいな」


 止めようとイムスタは声を発したが、手遅れだと悟って言葉を変えた。

 火が燃え移り、ニンナさえも、魔術の炎が燃やしてしまう。

 魔術の炎でニンナまで焼いてしまっては、殺したのがアカッシャにされてしまうのだ。

 そうなれば、大公家と全面戦争になるだろう。


 もはや後には戻れない。

 アカッシャの魔術の青白い炎は燃え続ける。

 一つ目の巨人は業火から逃れるように暴れ、ニンナの頭を右手で掴み、引き裂く。

 より激しく燃え上がるニンナを巨人は投げ捨てる。

 ニンナのちぎれた体は、元の姿が分からない黒炭となってゆく。

 巨人も熱さを感じたのか、燃える体の火を消そうと地面を転がる。

 それでも火は消えない。


 ドドドド、バキバキバキ。


 不意に遠くから激しい音が響いた。

 地響きと激しい破壊音が迫ってくる。

 林の向こうが揺れ、木々が押し倒されてくる。

 魔獣の群れだった。

 大きく黒い、四方に角が生えた獣のようだった。

 魔獣は黒焦げとなった巨人を蹴散らし、イムスタとアカッシャの前を駆け抜け、館へと突進していく。

 その時、低く虚空を震わせる声が聞こえた。


「世界を包みし大いなる根源たる力、我は今それを欲する。

 無辺の彼方より我が元に集りて我が力となれ。

 我は命じる。

 まばゆき閃光を放ち、悪しき魂を浄化せよ。

 【輝く光弾(クレイジーボム)】」


 閃光が走った。


 ドッガーン!


 激しい爆発音と爆風が吹き荒れる。

 イムスタは無意識にアカッシャを庇うように爆風に背を向け、抱きしめていた。

 耳が聞こえなくなり、土臭く焼け焦げた匂いが漂う。


 ヒュウ。


 一陣の風が吹き、目を開けると、土煙が吹き払われていた。

 館の半分と中庭の林へと一筋の地面を削る傷痕残し、魔獣は消滅していた。

 土煙の向こうから歩いてくる人影があった。


「殿下ご無事ですかな」

「ディリア殿、なぜ?」

「殿下が救出されたと耳にし、お迎えに参ったのですよ」

「準備のいい。だか、助かった」


 イムスタはよろよろと歩いてくる二人の護衛騎士に気づいた。

 その近くには、焼け焦げた一つ目の巨人と引き裂かれ黒焦げの遺体が転がっている。


「そなたらは、何を見た?」


 真実を語るならば、先に一つ目の巨人を使って殺そうとしてきたのは、ニンナである。

 だが大公の側に立ち、アカッシャの魔術がニンナを殺したと証言するならば、彼等の末路は一つしかないとイムスタは心を定めた表情を向ける。

 想像し理性的に要領よく振る舞う機転をイムスタは期待していた。


「ま、魔獣が唐突に現れ、ニンナ様を襲い殺害したのです」


 イムスタは頷き、同僚の発言に驚くもう一人の騎士に視線を移した。

 視線が定まっていないようだった。

 この騎士は共謀していたのだろう。


「そなた、名は?」

「ヤニン・ワッキと申します」

「ではヤニン・ワッキに問う。そなたはどう見た?」

「は、はい、そのう、一つ目の魔獣が突如現れ、ニンナ様を掴みました。我々と殿下、そして黄の魔術師殿はニンナ様を助けようと戦いましたが、果たせず、ニンナ様は引き裂かれました。そこに魔物が現れ、襲われそうになったところを、王宮魔導師殿に助けられました」

「ほう。だが、長いな」

「は?」

「私はニンナと朝の散歩に出たのだ」

「はい」

 事実であり、二人の騎士は頷いた。


「そして、突如侵入してきた魔獣の群れにニンナは殺された」

「は、はあ。簡潔に言えばそうなりますが――」

「そなたら騎士は勇敢に戦い、アカッシャは奮戦したが、及ばなかった。という次第だ。相違ないか」


「――はい。殿下」


 これで騎士のメンツは立つ。

 真実は闇に葬られた。

 加えてアカッシャの心に付ける鎖を手に入れたのだった。



 そして――、



 シャビア・シティーを手に入れた。

 だが、南方平原の平定は終わっていない敵地である。

 そこに大公を戦場に引きずり出すことができたのだ。

 そしてアカッシャは行動したはずである。


「万事、いいようだ」


 イムスタは一人笑った。

 吉報を待ちながら、夜が明けた。

 昼が過ぎてしばらくし、カシーシ市から大公の使者の訪問を受けた。

 緊急の用であり、士気に関わる内密の話ということだった。

 接収した庁舎の執政官室で、会った。


 窓から差し込む夕日に、部屋は赤く輝いている。

 使者として現れた男に見覚えはある。

 炎騎士隊長のギシュボ・ダナースだった。

 手に、箱を抱えている。

 座ったまま机を挟んで炎騎士隊長を見る。


「何があった?」

「昨日、大公閣下が暗殺されました」

「な、なに? それは事実か?」


 イムスタは大げさに驚いて見せた。


「はい。これが証拠にございます」

 炎騎士隊長が持っていた箱を差し出した。

「なんだ?」

「御覧くださいませ」


 蓋が開けられ、中が見えるように傾けてきた。

 何かがごろんと机の上に落ちて転がった。

 異臭が漂う。

 イムスタはその物から目が離せなかった。


「あ、あっ――」


 目を見開いたままの、アカッシャの首だった。


「大公閣下の仇!」


 炎騎士隊長が腰の剣に手を掛けるのが見えた。

 イムスタは呼び鈴に手を伸ばしたが、騎士の動きは速い。

 呼び鈴が剣で払い飛ばされる。

 イムスタは背を向けて、奥の部屋へと駆けた。

 騎士が机を踏み越えてイムスタの背後に迫る。

 呼び鈴が床に落ちて鳴ると同時に、イムスタは背中を斬り裂かれた――。

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