表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

四、絶海の孤島

 

 翌日。

 2人はしっかりと生きるという目的を掲げ、夜明けとともに雄太の誘いで、2人は砂浜を歩いている。

 雄太も加奈も結局、一睡もしておらずハイテンションだった。

「夜明け、すごかったね」

 何も遮るもののない地平線の彼方から、光を覗かせると、海が黄金色に輝き、とてつもなく巨大な太陽が昇る。

 2人は息を飲んで見つめ続けた。

 加奈は思いだしていた2000年の大晦日に、家族と一緒に初日の出を見たことを、あの時は大勢の人で賑わう中の夜明け、背の高いおじさんのせいで、あまりよく見えなかったのを覚えている。

 それと比べると、この日の出のなんと素晴らしいことか、ただ家族のことを思いだし感傷的な気持ちが起きるのを、首を振って振り払う。

 いろんなことを考えだすと、一歩も動けなくなるのを彼女は知っている。

 雄太のように極端な前向きにはなれないけど、出来る限り前を向うと加奈は思っている。


「ああ、そうだね」

 雄太は頷くと立ち止まった。

「どうしたの?」

「ここで一周したよ」

 砂浜を歩く前に、何気に砂浜に、彼が書いたらくがきが目の前に見えた。

「ということは・・・」

「そう、島だね」

「無人島?」

「どうだろう。島の奥は調べてないからね。でも、歩いている時は全く人の気配はなかったよね・・・そうかもしれない・・・さてと」

 雄太は砂浜にしゃがみ込んだ。

「歩いてから、どれくらいかかったと思う」

 加奈の腕時計はすでに水没してしまった時に壊れてしまっている。

「・・・そうね。30分くらいかしら」

 体内時計で判断した。

「俺もそのくらいだと思う」

「小さな島だね」

「うん、そうだね。およそ毎時5㎞のペースで歩いたとして30分とすると・・・」

「えっと、きのしたのじっちゃんばっちゃんで、・・・・・・2.5㎞くらいね」

「周囲2.5・・・ずいぶん小さな島だな・・・」

 雄太は腕組みをして、思案する。

「じゃあ・・・次は」

「次は?」

 加奈は次の行動を雄太に尋ねた。それは、少しでも動くことにより不安を消したいという願望でもあった。

「どうしようか?」

 彼から彼女へ返ってきた言葉は逆質問だった。

「どうしようかって・・・そんな」

 表情を曇らせる加奈。

「君が決めてよ」

 彼女に委ねる雄太。

「えっ・・・私が・・・苦手なんだけども」

 と、戸惑う加奈。

「そうだよ。俺ばっかりじゃ、押しつけみたいになっちゃうだろう。それじゃ、つまんないし・・・俺は波戸さんの考えも聞きたいよ」

 彼は出来るだけソフトな物言いで、彼女を促した。

 しばらく黙ったまま考え込む加奈だったが、

「・・・わかった。お腹空いたし、朝ごはん。それから寝床の確保かな」

「よしっ!ありがとう。そういや、俺たちあの時から、なんも食べてないんだよね」

 そう言った途端、雄太のお腹の音がぐるっ~と鳴った。

 それを横目で見た加奈は、声をあげて笑った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ