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 ローランの家は庭付き平屋の人間サイズの家だった。幼いころは人間に混じって生活していたと言っていたので、ドラゴンの姿での生活より人間としての生活の方が慣れているのかもしれない。こまごまとリリの世話を焼くくらいだし。

 家に入ると、とりあえずリビングに荷物を置き、部屋の案内をされる。寝室に来た時、ローランはあっ、と声を上げた。


「ベッドが1つしかありません。急いで手配しますね」

「なんで?」

「なんでって、リリの寝るベッドがないんですよ」

「一緒に寝ちゃダメなの?私は夫婦ってそうするものだと思ってたけど」

「………」


 ローランは口を開いたり閉じたりした後、少し照れた様子で、このベッドはやめて大きいベッドを用意しますと言った。

 一通り案内された後は、荷物をしまわせてもらった。もともと少ないリリの荷物は全て収納することができた。

 夜は歓迎の宴会が開かれるとのことで、少し休憩した後宴会場へ向かった。会場には既に人々が集まり、沢山の料理が並べられていた。会場の広さの関係上、全員人間の姿で参加するらしい。

 リリとローランが中央に座ると、飲み物が配られる。全員に杯が行き渡ると、里長であるローランの祖父が乾杯の音頭を取った。


「皆の者、今日は我が孫ローランのめでたき宴に集まってくれてありがとう。紹介しよう。ローランの妻、リリだ」


 リリは立ち上がると一礼した。拍手が沸き起こる。


「祝言はまた日を改めて行うが、今日は2人の帰郷を喜び、リリを歓迎する宴だ。存分に楽しんでくれ。乾杯!」


 全員の乾杯の声とともに宴会が始まる。リリたちの元には入れ代わり立ち代わり人々がやってきて、祝いの言葉と歓迎の言葉を述べていく。中には若い女性もいたが、特に意地悪されることもなく普通に歓迎されて、リリは少しホッとしていた。

 宴会は真夜中まで続いたが、リリたちは日付が変わる前にローランの家に戻ってきていた。


「リリ、ちゃんと食べられましたか?」

「いや、あんまり」


 何しろひっきりなしに話しかけられるので、食べている暇がなかったのだ。


「夜食を作りますけど、食べますか?」

「良いの?」

「ええ、私もあまり食べられなかったので」


 そう言うとローランは台所に立った。と言っても食べ物は移動中に買った日持ちのする芋や干し肉くらいしかないので、いつも野宿で作るようなスープを作るつもりらしい。


「手伝おうか?」

「大丈夫ですよ。リリは休んでいてください」


 リリはソファに座ったが、なんだか手持ち無沙汰でそわそわしていた。今までも食事はローランに作ってもらっていたのに、名実ともに妻になったのだと思ったら急にこれでいいのだろうか、と思い始めてしまった。

 台所をちらちらと気にしつつも何もすることがないリリ。どうしよう、どうしようと思っているうちにスープが出来上がってしまった。


「さ、食べましょうか…リリ?どうかしたんですか?」

「う、ううん。何でもない。いつもありがと」


 リリはスープを一口飲む。今日は調味料が揃っていたからか、いつもより複雑で優しい味のような気がする。


「美味しい…」


 リリの一言にローランは満足そうに笑って、スープを飲み始めた。

 黙々とスープを飲んでいるうちに、リリはだんだんドキドキし始めた。ここがローランの家で、リリはローランの妻で、2人きりだということを意識し始めたのだ。今までだって2人きりで過ごしていたはずなのに、どう過ごしていたのか全く思い出せない。

 母親みたいだなんてのんきに思っていた頃の自分が恨めしい。


「リリ」

「は、はい!」


 声が裏返りそうになった。ローランは不思議そうな顔をしているが、リリは何?と何でもない風を装って聞いた。


「今日はシャワーを浴びて寝ましょう。明日は里を案内しますね」

「あ、うん。お願い、します…」


 ローランが後片付けをしている間に、リリはシャワーを浴びた。ローランから借りたパジャマを着てリビングに戻ると、リリを見たローランが一瞬固まった。パジャマなんて着たのは初めてだったので、どこかおかしかっただろうか?サイズがあっていなくて裾も袖も何重にも折っているのはどうしようもないのだが。


「私のパジャマ…思ったより破壊力が…」

「え?何?」


 ローランがなにやらぶつぶつ言っていたが、よく聞き取れなくて聞き返す。


「いえ、髪を乾かしますから座ってください」


 ローランに促されてソファに座る。ローランが後ろに回っていつも通り髪を乾かしてくれた。優しい手つきにリリは眠くなってきた。


「はい、乾きましたよ。リリ、眠いでしょう。先にベッドで寝ていてください。私もシャワーを浴びてきますから」

「うん」


 リリは言われた通り寝室に向かうと、ベッドに潜り込んだ。ローランの匂いに包まれているようで、安心する。

 リリがほとんど眠りの世界に入りかけた頃、隣にローランが入ってきたのを感じた。

 おやすみなさい、という言葉とともに頬に何かが触れた気がしたが、リリは眠くて目を開けることができなかった。リリはそのままローランに抱きかかえられて眠った。

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