1 盗賊が禁止になった理由
――――盗賊はギルドの立ち入りを禁ずる。
一見、泥棒を入れさせないようにするための言葉であるが本当の意味は違う。
文字通り盗賊はギルドに加入することはできないのだ。
この世界には数多の職業が存在する。
剣士、戦士、魔法使いや僧侶、商人などの生産職。
職業に合わせてギルドも存在するし、戦闘職と生産職は持ちつ持たれつの関係を保っている。
だがしかし、その中でも一つだけ異例の職業が存在する。
――――盗賊。
パーティー内では斥候の役割を持ち、危険を顧みず敵の懐へ潜り込み、宝を奪取する。
しかし、それはお伽噺の中でしかない。
盗賊はその特性上、多くの職業から忌諱されている。
なぜなら――――盗賊が持つスキルはどの国でも使用が禁止されているからだ。
盗賊の持つスキルは全て盗みに関係している。
【強奪】【隠密】【索敵】など。
どれも使えば圧倒的に使用者が有利になる。
それのせいで様々な国で盗賊スキルを使った事件が頻発した。
強盗、強姦、のぞきに誘拐などの犯罪行為。
果てにはスキルを使った殺人まで行われるようになった。
盗賊スキルは一度所有者が認めれば許可された者は誰でも使用できる。
それも被害が増えた原因の一つだろう。
これを危惧した国々は盗賊スキルの使用、及び職業が盗賊である人の入国を禁ずることにした。
許可なく使用した者は禁固刑、ひどい場合は死刑という可能性もある。ギルドの規約は国が制定する以前の名残である。
そのおかげで盗賊の被害件数は劇的に減り、数も減った。盗賊関連のスキルしか習得できない盗賊はスキルを使用しないか、諦めて野盗になるかの二択しか選択できない。
そんなわけで職業盗賊であるこの俺――――アルス・ブランはギルドに入ることが禁止され、路地裏で生活するようになったのだ。